【最新】総合商社について知るためのおすすめ本 – 会社の概要から仕事の内容まで

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総合商社は何をしているのか?商社マンは忙しい?

総合商社は激務という印象が強いですが、海外で大規模な事業に携われるといった魅力はもちろん、給料が高く、福利厚生も充実しているため、非常に人気のある業界です。今回、総合商社の仕組みについて理解するための本をご紹介します。就職先として興味を持っている方にもおすすめです。

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出典:出版社HP

総合商社の研究―その源流、成立、展開

総合商社の背景

総合商社とは、世界中でいろいろな商品を扱っている大きな企業といったイメージを持っている人が多いでしょう。しかし、最近では、工場や倉庫の保有・運営や、日本国内での事業も増えています。本書では、総合商社がどのように生まれ、発展してきたのか、そしてこれからの展望を整理していきます。

田中 隆之 (著)
東洋経済新報社 (2012/3/23)、出典:出版社HP

はじめに

総合商社とは何か。商社と縁の薄い方でも、「世界中でいろいろな商品を扱っている大きな企業」といった程度のイメージはお持ちだと思う。そのイメージは、少なくとも1980年代ごろまでであれば、ほぼ正しいし、現在でも大筋において間違ってはいないだろう。しかし1990年代以降、総合商社は大きな変貌を遂げている。多様な商品・サービスを扱っていることに変わりはないが、単にこれらを売り買いするだけでなく、大きなバリューチェーンの中で、工場や倉庫、輸送設備を保有・運営して、商品の製造や輸送まで複合的に行うようになっている。鉱山や油田、農場、発電所や水道などのプロジェクトに関しても、ときに初期の開発段階から取り組み、これを事業化して、保有・運営している。

また、世界中であまねく事業を行っている姿は変わらないが、日本国内での事業も増えている。スーパーやコンビニエンス・ストアの経営にも本格的に関与するようになっているし、医療・介護を支援する事業や、放送局を持つ会社まである。もちろん、日本の産業や国民のために海外からエネルギーや資源を調達し、輸入するという役割は何ら変わっていない。いや、さらに強化されていると言えるだろう。福島の原発事故の影響で全国的に電力需給が一気に逼迫した際には、火力発電用の天然ガスの調達を大幅に増やして、電力不足の回避に一役買ったと自負している。

このように、現在の総合商社は、企業間の取引だけではなく、人々の生活に直結する事業にも幅広く進出しており、多くの人の目に触れる機会は増えているものと考えられる。しかし、事業分野があまりにも広くなり、その手法も多彩になってしまったことで、総合商社の実態はむしろ見えにくくなっているように思う。それは、必ずしも外部の方にとってだけではない。商社の内部にいる我々にとっても、総合商社とは何かという問いに答えることは難しくなっている。

そうした認識は、商社業界内部で広く共有されており、商社の業界団体である日本貿易会では、2010年度~2011年度の重点事業のひとつとして、総合商社のアイデンティティを再確認することを目的に、総合商社原論特別研究会を立ち上げた。本書は、その最終報告書という位置付けでもある。この研究会をあえて「原論」と銘打ったのは、総合商社の近年の動き、姿だけでなく、その成り立ちから今日までの歩みを整理するとともに、それぞれの時代に、学界やメディアからどのように見られていたかも含め、今一度原点に立ち返って、総合商社の本質を捉えなおしてみようという我々の思い、姿勢を明確にするためである。

それを実行するうえでは、現在の総合商社各社に関する詳細かつ包括的な情報を持ち寄る必要があることに加え、外部の客観的な視点、とりわけ総合商社の果たした役割を日本経済の歴史のなかで捉えていく視点が不可欠だと考えられた。そこで、研究会では、現時点で一般に総合商社と位置付けられている伊藤忠商事、住友商事、双日、豊田通商、丸紅、三井物産、三菱商事の7社に、阪和興業を加えた8社と日本貿易会の役職員が委員として参画し、専修大学経済学部で日本経済を専門とする田中隆之教授を主査に迎えて研究活動を行ってきた。

印象派の画家ポール・ゴーギャンの作品に「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」というタイトルの絵があるが、本書は、まさにそのような構成になっている。本書の前半、第1章から第4章までが「どこから来たのか」にあたるパートだ。第1章で「総合商社」という用語の出自を明らかにした後、第2章と第3章では明治の開国期から戦後の高度成長期に総合商社のスタイルが確立するまでの歴史を振り返り、第4章では日本以外の国で見られた類似業態の歴史を整理している。そして、第5章、第6章では、客観的な財務データと業界内部の認識を考え合わせて、今日までの総合商社の変質を追うことで「我々は何者か」を明らかにし、終章では、そこまでの整理を踏まえたうえで、「どこへ行くのか」という問いに答える仮説を用意している。

日本貿易会では、今日の総合商社の実態を、商社業界以外の多くの方に知っていただきたいと考えている。それと同時に、現役の総合商社の役職員にも、業界の歴史をきちんと知ったうえで、改めて総合商社とは何かを問い直していただきたいと思っている。本書がその一助となれば幸いである。

2012年3月
社団法人日本貿易会
会長 槍田 松肇一

田中 隆之 (著)
東洋経済新報社 (2012/3/23)、出典:出版社HP

目次

はじめに
序章 なぜ総合商社研究か

第1章 総合商社の概念、定義、類型―研究の出発点
【1】「総合商社」という概念はいつ成立したのか
【2】総合商社、商社の定義
〈1〉総合商社の定義と本書の研究対象/〈2〉商社の定義
【3】商社の類型と位置―総合商社と専門商社
〈1〉商社の類型と総合商社/〈2〉日本経済における商社、総合商社の位置――データによる確認
【4】総合商社の動態――源流から構造変化まで

第2章 戦前の「総合商社」形成と成立の条件
【1】商社の形成と「総合商社」の形成
〈1〉開国と貿易政策/〈2〉戦前の商社の産業組織とその推移/〈3〉総合商社の源流としての財閥系商社の発生と形態
【2】「総合商社」をめぐる諸学説の検討
〈1〉経済史における総合商社/〈2〉経営史における総合商社
【3】戦前に「総合商社」を必要とし、成立を可能にした条件
〈1〉戦前「総合商社」成立の四つの条件/〈2〉戦前の「総合商社」とは何であったか

第3章 戦後の総合商社体制の成立とその条件
【1】戦後における総合商社の形成
〈1〉戦後復興と貿易政策/〈2〉総合商社体制の形成過程――業界の再編成/〈3〉総合商社体制の成立と総合商社の機能
【2】戦後、総合商社化を促進した条件
〈1〉総合商社化を促進した四つの条件/〈2〉高度成長期に成立した総合商社とは何であったか

第4章 総合商社は日本独自の業態なのか―海外の類似業態との比較
【1】 諸外国における商社 (Trading Company)と総合商社
〈1〉世界の商社/〈2〉 諸外国の商社育成策と商社
【2】なぜ先進諸国の商社は総合商社化しなかったのか――経営史の研究成果を中心に
〈1〉イギリスにおける商社の盛衰/〈2〉ドイツとアメリカにおける商社の展開/〈3〉先
進諸国で総合商社が育たない理由
【3】海外の商社との比較からみた日本の総合商社の特徴
〈1〉日本の総合商社の特徴/〈2〉海外の商社研究をめぐる論点

第5章 総合商社体制確立後の展開
【1】「トレード」への不安と新たな業務展開
〈1〉総合商社の先行きに関する悲観論――「トレード」への不安/〈2〉新規分野への進出・既存分野での新事業開拓
【2】総合商社の危機、改革と再編
〈1〉総合商社の直面した危機/〈2〉リスク管理、ガバナンス体制の向上/〈3〉総合商社
の再編成と業績の回復

第6章 構造変化のとらえ方と総合商社の現在
【1】構造変化―コアとなる「収益モデル」の変化
〈1〉総合商社の構造変化をどうとらえるか/〈2〉収益モデルの6パターン/〈3〉コアと
なる収益モデルの変化を数字でつかむ/〈4〉コアとなる収益モデル変化の内実
【2】総合商社は自らをどう認識しているか
〈1〉総合商社の強さと弱さ/〈2〉総合商社の「理念」/〈3〉総合商社の現状認識と将来
の方向論議
【3】現在の総合商社は何であるか
〈1〉現在の総合商社――「総合事業運営・事業投資会社」/〈2〉総合商社の気質

終章 総合商社はどこへ行くのか
【1】総合商社の存立条件を探る
【2】総合商社の存続要因とは
【3】総合商社はどこへ行くのか――今後の方向性

要約的総括
おわりに

参考文献
戦前・戦後商社関連年表
日本貿易会総合商社原論特別研究会名簿
日本貿易会法人正会員名簿(加盟商社)

田中 隆之 (著)
東洋経済新報社 (2012/3/23)、出典:出版社HP

序章 なぜ総合商社研究か

総合商社は、極めてユニークな経営体として、戦後内外の経営者や学者の注目を浴びてきた。その理由は、おおよそ次のようなものである。

第1に、それはほぼ日本にしか存在しない業態である、という見方が一般化している。本当にそうであるかどうかは、総合商社をどう定義するかに左右される。しかし、日本で総合商社と呼ばれている何社かの企業が同質的であり、他国に存在する商社(Trading Company)と呼ぶことのできる企業体とはかなり異なるものであるという観察が、容易になされうることは間違いない。その意味で、総合商社は、世界の企業体の中でひとまず日本に独特の存在であるととらえてよいであろう。

第2に、それは戦後の日本経済において大きな位置を占め、日本の経済発展に大きな役割を果たしてきたからだ。総合商社は、戦後復興期以来、輸出入の促進のみならず産業構造高度化の過程にも深くかかわることで、高度成長に重要な役割を果たした、という評価が可能である。やや具体的にいえば、資源・エネルギーの安定的な調達(輸入)、急成長する製造業のための海外市場開拓(輸出)だけでなく、新規産業に投融資したり、企業集団による新規産業分野への進出をオーガナイズするという役割を果たした。

第3に、それは開港・明治維新後の日本経済の自立過程においても、重要な役割を果たしたことが知られているからだ。戦前の日本にも、総合商社と呼ぶにふさわしい商社がいくつか存在した。その典型は三井物産であり、これを数社が追いかけた。当時は総合商社という言葉自体は存在しなかったが、これらが日本経済の自立・発展に大きく貢献した。一例を挙げれば、日本の貿易は当初、居留地で外国人商館に牛耳られ、その直貿易化(日本人・企業による輸出入比率の向上)が政府の悲願であった。輸出入合計の日本商社取扱比率は1911年に5%を超えており、その半分を三井物産1社が占めていたから、これら「総合商社」が直輸出の促進に果たした役割の大きさがうかがえる。

総合商社研究が始まったのは、1960年代のことである。それは戦後この時期に10大総合商社体制が確立し、高度成長の牽引役として広く注目を浴びたからである。同時に、論壇で日本の戦前における近代化過程が論じられるようになり、やはり総合商社が果たした役割がクローズアップされた。1965年に三井文庫資料が公開されたことも、戦前の三井物産を中心とする実証的な商社 研究を可能にした。その中で、「総合商社とは何か」「総合商社の本質・機能は何か」「総合商社はなぜ日本にしか存在しないのか」などの問いが発せられ、戦前にまで遡ってその成立の条件、成立過程を明らかにする研究が数多く出現した。それは、1960年代から1980年代にかけてのことであった。し かし、本書でも第2章でサーベイを行うように、それらの研究は、必ずしもこうした疑問に一致した解答を与えるに至っていない。

現在、総合商社は7社とされているが、特に2000年代以降、多くの日本企業が目立った業績を上げられないでいるなか、未曽有の好業績を示している。その背景として、資源・エネルギー関連の投資からの収益が各社で大きく膨らみ、投資会社的な側面が強まっていることがしばしば指摘される。現在の総合商社のビジネスモデルは、戦後間もなく成立して高度成長を牽引した当時のそれと、もはや大きく異なるものになっている可能性が高い。そして、経済のグローバル化、国際資 本移動の激化を背景に、欧米の投資家やマスコミに向けて企業のコンセプトを説明することの重要性が増すなか、この総合商社というユニークな経営体を説明するのは非常に難しい。

このような時点において、この経営体のビジネスモデルは何か、経済におけるより本質的な機能や役割は何か、なぜ存在しうるのか、今後どのように展開していくのか、を明らかにすることは意義が大きい。そこで、本報告書の問題意識を次のように設定することにする。

①総合商社とは何か(他国の類似の経営体とどう違うか)
②総合商社の成立の条件は何か(なぜ日本にだけ成立したか)
③総合商社はどのように変わりつつあるのか

田中 隆之 (著)
東洋経済新報社 (2012/3/23)、出典:出版社HP

商社マンの「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本[第2版]

商社マンの生活を知る

モノをつくる人とモノを欲しがる人をつなぐ仕事をするのが商社マンであり、私たちの暮らしにとって商社の存在は、実はとても身近なものです。しかし、多くの人にとってその存在はとても遠いものであるのが現実です。そんな不思議な存在の商社マンは、どのような仕事をしていて、どのような人なのだろうか。本書は、商社マンの「お仕事」と「正体」を紹介しています。

秋山謙一郎 (著)
秀和システム (2016/12/15)、出典:出版社HP

プロローグ 商社マンという世界

人と人を繋ぐ仕事。モノをつくる人とモノを欲しがる人を繋ぐ仕事、これが商社マンといっていいだろう。わたしたちの暮らしにとって商社とは、実にその存在は身近なものである。にもかかわらず多くの人にとって、その存在はとても遠いものであるのが現実だ。一般消費者であるわたしたちにとって商社との直接の関わりがないためである。商社とは、おもに生産者である企業(=メーカーなど)と販売者である企業(=流通など)を繋ぐ存在である。ゆえに一般消費者であるわたしたちと直接の関わりはほとんどない。

それでもわたしたちの多くは、商社に行けばなんでも手に入るということをおぼろげながら知っている。その昔、商社をあらわすのに用いられた「エンピツからロケットまで」という言葉が頭の片隅にあるからであろう。ある商社マンはいう。

「商社に相談してもらえれば、なんでも欲しいものは揃う。そう思って貰っていい。ありとあらゆる顧客のニーズに応えられる存在。それが商社という存在意義だから」

ありとあらゆる顧客のニーズに応えることは当然、ときに顧客の望むニーズを上回るサービスを提供し、またあるときは、こんなアイディアがあれば顧客が喜ぶだろうと思うサービスを提案するのが商社である。

「いってみればビジネスの場での『ドラえもん』のような存在が商社。顧客が『こんなものが欲しいのだけど』といわれれば、そのニーズを汲んで、顧客が求める以上のなにかを取り出す。なにかお困りのことがあれば、こちらからアプローチして、なにかを取り出す。もっとも取り出すなにかがなければ、商社マンとはいえない。商社マンとは研究者やマスコミの記者とおなじで、ネットワークひとつでシゴトをする、とても創造性あるシゴト」

ある五十代の商社マンの言葉だ。もともと商社とは、自分たちでなにかをつくり出し、販売するという存在ではない。だからこそ商社は、どれだけのネットワークを持ち、そこからどれだけのビジネスに繋がるアイディアを提供できるかが勝負の世界なのである。そのため商社マンも、どれだけのネットワークを持ち、企画力や発想力が問われるシゴトとなることはいうまでもない。でも、商社マンに求められるのは、こうしたネットワークやアイディアだけがすべてではない。

・商社マンに求められるセンスとは?
では、商社マンに求められるセンスとはなにか。この商社マンに求められるセンスと商社で伸びていくヒトを推し量る有名な心理学的小噺がある。

ある外国にふたりの商社マンが出張を命じられた。その外国では靴を履く習慣がなかった。

ある商社マンA「この国ではビジネスチャンスはありません。まだ靴を履く習慣もない場所で、かつ産業も手付かずの状態なので、一からビジネスを起こしても成功の見込みは薄い。ビジネスとしての伸び代も感じない。時間の無駄なので、すぐに帰国します」

ある商社マンB「この国にはビジネスチャンスを大いに感じる。靴を履く習慣もまだないので、まず靴を売れば、きっと喜んで貰えるはず。また産業がまだ手付かずなので産業を掘り起こせば、この国の人たちも潤い、またわが社にとっても商機となる。すぐに応援を寄越して欲しい」

もちろん商社マンAは、商社に向いている人材ではないことはいわずともわかるだろう。商社マンBのようなバイタリティこそ、時代を問わず商社が求めている人材である。
「もちろんさっと見切りをつけることも大事。しかしまず見切る前に、なにかビジネスチャンスはないか。そしてただ自社が儲けるだけではなく、このケースのように出張した国の経済を潤すことまで考えなければ商社マンとしてはダメ」(前出・五十代商社マン談)

どこまでも前向き、押しが強い――。そんな人材が商社マンというヒトたちの共通項であるようだ。もちろん商社には、後ろ向きで押しが弱いヒトもなかにはいるだろう。とはいえそれはあくまでも「商社マンのなかでは」という枕詞がつく。日本のみならず世界を相手に大きなビジネスを繰り広げる商社は、総合、専門とその形態、企業規模を問わず、どこまでも前向きに、そしてみずからの持てるネットワークを広げて、大きなビジネスに繋げ、そして世界の人々すべてを潤わせよう…という志を本気で持ったヒトたちの集まりなのだ。

商社マンとは、キホン、皆、前向き、会社にしがみついて給料さえ貰えればいい……、そんなタイプの人間はいないという。「もし社内で腐るようなことがあれば、さっさと自分でなんとかする。周りもフォローを惜しまない。そういうタイプが多い」(前出・同)のだとか。つまりいるヒト、モノすべてをどこまでも上手に使い、繋がるネットワークすべてにおいてWINWINの関係を築くのが上手なヒトたち。それが商社マンといっていいだろう。

・たくさんの商社があれど「商社マン」のお仕事と正体はひとつ……
商社とは、いわゆる総合商社だけが商社ではない。たとえば特定のなにか……、プラスティックの原材料であったり、食材のなかでも、鶏肉、牛肉などなどでは、他の追随を許さない、そんな専門商社も存在する。
総合商社であっても、専門商社であっても、商社マンのシゴトに、そんなに違いはない。それはただひとつ、人(=企業)と人(=企業)を結びつける役割だ。こうした商社マンのお仕事では、意外にも、というか当然というか、商社マン同士は同業他社との連携が強いという。

「出身大学のルートもあるが、意外なところでは学生時代の就職活動時出会った同業他社の商社マン。これは意外に強い。とくに二次、三次面接まで残ったところで親しくなり、結果として、おなじ社ではないが、よその社にいったヒトもおなじ商社マン仲間。ビジネスでなにかあったときには支えあう仲間でもあり、ライバルでもある」(前出・同)

このある四十代の商社マンによると、学生時代、就職活動時に知り合った他社の同期、面接で一緒になり、異業種に進んだ人と、いまでも折に触れて連絡を取り合い、これはビジネスの場でも活きているとか。もちろんお互いにWIN-WINの関係で、だ。

「昔、ある事業部で営業をしていたとき、ちょっとしたミスから納品する商品が足りなかった。一瞬、ひやっとした。でも、まったく困らなかった。就職活動時に一緒だった専門商社に進んだ他大学の同級生に頼めばなんとかなると踏んだから。かなり無理してもらったが、結果は、きちんと納品できた。社内でも助けてくれる人もいるが、社外でも助けてくれる人がいる。逆にいえば社内なら、おなじ会社ということで誰でも助けてくれる。しかし社内で解決できないときは、社外に頼るしかない。そういうネットワークをどれだけ持てるかが勝負」(前出・同)

もちろん公(おおやけ)、表向きのルートではない。いわば裏の繋がりだ。でも、この「裏の繋がり、を、どれだけ持っているか――。これが商社マンとしての成功の鍵(かぎ)でもある。つまり人と人の繋がりをどれだけ持っているかが商社マンとしてのもっとも大きな資質であるといっていいだろう。ましてや、かつて商社の屋台骨とされた「資源・エネルギー分野」での凋落著しい時代、七大総合商社といえども創業以来初の巨額赤字を計上する時代である。社の垣根を超えて商社マンたちは「横の繋がり」が求められる時代だ。
商社マンに必要なのは、この人と人の繋がりから、金脈を見つけ出し、ビジネスに繋げられるかどうかである。

「目的と手段、若くてもその違いを理解しているかどうか。よく商社マンといえば、まず英語が話せて……といわれているが、英語が上手なだけなら、それを専門としている方には敵わない。英語がデキるに越したことはないが、英語を使ってなにをするかがわかってなければならない。商社マンならばビジネスしかない。でも商社志望の学生さんなんかと話をしていると、やたら外国語が話せるとかコミュニケーションスキルがあることを強調するが、そんなものは商社マンならあって当然。その一歩先のなにがデキるのかが大事」(五十代のある商社マン談)

これから商社マンになろうと思っている若い人には、むしろ、世間でわたしたちが考えている商社マン像”とは、真逆のタイプの人のほうが商社マンに向いているという。

「商社マンのシゴトは営業だけではない。シンクタンクやマスコミにもひけを取らない調査とか、あるいはファイナンスも、商社の大事なシゴト。これらのシゴトはむしろ物静かで黙々とこなすヒトのほうが向いている」(前出・同)

・求められる役割をこなしつつそれを上回るなにかを発揮するのが商社マン
営業、調査、ファイナンス、経営企画、総務………と商社マンのシゴトは幅広い。そんな商社では、まずなににでも興味を持ち、それを自分のモノにデキるヒトでなければ勤まらない。たとえ自分の興味のないものでも、それを自分の興味あるものに繋げていくくらいのバイタリティがなければだめだ。

「七つの海を駆け巡る商社マンに憧れて商社入り。配属されたのは経理部。面白くないなと腐っていたら、当時の上司からいわれた。『数字に強い商社マンになるための修行と思え』と。そしてこうもいわれた『誰も営業をするなとはいっていない』と。商社の配属先とは自分が責任を持つ場であって、自社の利益になり、多くの人が喜ぶビジネスモデルを考えられるのならば、営業でもなんでもやっていいのだと気づいた。そういう職場はほかではすくないのではないだろうか」

どのような状況でも、そこに自分をあわせて、そしてビジネスを切り開いていくのが商社マンである。これが時代を問わない商社マン像」だ。そんな商社マンとは、はたしてどのようなシゴトをし、どんなヒトたちなのだろうか。これからその「お仕事」と「正体」を詳しくみてみよう。

秋山謙一郎 (著)
秀和システム (2016/12/15)、出典:出版社HP

Contents

プロローグ 商社マンという世界

第1章 商社マンとして採用「入社1年目」
01商社マン人生最初の半歩 単なる秀才クンではダメ?
お勉強はデキて当然!遊び上手で、情報のアンテナ高く
商社志望「OB・OG訪問」はしなければダメ?

02どうすれば商社マンになれる? 過酷な採用試験をクリアするには
面接ではなにを聞かれる?/圧迫面接はこう切り返せ!
筆記試験の対策は

03商社マンになる前に覚えておきたいこと どういう商社マンになりたいのか
どんなシゴトをしたいのかは考えておこう!
覚えておきたい商社マンのドレスコード

04商社マンの第一歩 新人時代はまだラク
新人研修ではなにを学ぶ?/登山もすれば漫才も行う新人研修

05商社で生き残るには? いわれる前にシゴトを片付ける
考えながら動け!動いたら結果を出せ!
スペシャリストさん、ゼネラリストさん、経営候補さん

06近年の採用動向は? 難関と呼ばれる採用実態をレポート
総合商社の採用人数は概ねー40名程度
近年、増えつつある一般職採用希望の女性
やはり気になる出身大学・学部の有利・不利は?

ColumnCASE1 面接は「自分らしく」勝負!

第2章 商社マンの考え方「商社マンの目指すもの」
07目指せ!七つの海を駆け巡る商社マン 長い下積み期間中でも責任は大
十年間の新人期間、中ならミスしても会社の責任/商社マンの育てられ方は?

08頭で勝負? それとも体力で挑む?商社マンの正体
商社マンの考え方/商社にはどんなヒトが働いている?
商社で伸びるのはどんなヒト?

09元商社マンたちのその後 商社OBの誇りを胸に外で活躍!
ドロップアウトではなくスピンアウト!/三人の元商社マンたち

ColumnCASE2 接待とは情報戦!

第3章 商社マンという生き方 「キャリアパス」
10厳しく育てられるか。それとも優しく育てられるか 若手時代
一年目社員でも百億規模のプロジェクトに携われる世界
総合職入社ならほぼ全員が入社十年以内に海外駐在を経験/MBAを取って早期退職

11キャリアはオーダーメイド?それともレディーメイド? 若手から中堅へ
会社員としてのキャリアパスは年功序列?
商社マンとしてのキャリアパスは「巡りあわせ」か「みずから切り開く」か

12定年まで残る?それとも早めに第二の人生を? 商社マンでいられる時間
定年まで商社に勤めたとして稼ぐ額は/役員は年収一億円超も
役員にまで昇り詰められなかった商社マンのその後は?

ColumnCASE3 シゴトがデキるヒトは勉強上手?

第4章 商社マンの業務 「ワークス」
13事業部が違うとまるで別会社? おなじ社内でも異なるカラー
ゼネラリスト志向でなければ勤まらない商社マン
採用選考時、入社後「希望しています!」とはいってはいけないシゴトとは

14商社における事業部ごとのカラーは? 目指すところはおなじでも
時代を問わず商社の屋台骨~金属・鉄鋼事業/世界を狭くするビジネス~機械・建機事業
人に関するビジネス~食品事業/人に纏わるビジネス~繊維事業
いまや商社の花形事業?~資源・エネルギー、化学品事業

15スペシャリスト集団! バックオフィス商社を支える縁の下の力持ち
営業経験のあるヒトの職種とスペシャリスト職種が混在
経理の専門職として存在感抜群~財務・会計部門
年々、重要性増すシステム技術者〜商社におけるシステム専門家のシゴトとは?

16総合職・一般職 崩れつつある垣根
総合職と一般職の関係/総合職と一般職の違いとは?

17追跡!現役商社マンの一日のスケジュール いくつになっても激務は続く?
三人の総合職の一日から/二人の一般職の一日から

ColumnCASE4 採用面接ではどこをみている?

第5章 商社マンの私生活 「お休みの過ごし方」
18OFFタイムの過ごし方は? 商社マンにも休日はある!
ほんとうに休日は休める?/お休みは「週休二日+d」
実録ルポ「二人の商社マン」の休日

19商社マンの住宅事情は? 寮や社宅など
集団生活の独身寮で学ぶべきことは数知れず
独身寮で好かれるヒト・嫌われるヒトは?/商社マンの社宅は?

20商社マンの懐具合は? ほんとうに高給取りが多い?
商社マンの初任給は各社あまり変わらず?
やはり高給取り!総合商社では社員平均年収一千万円超…7

21商社マンの恋愛・結婚事情は? 出会いの場は多いが縁あるヒトは
社内結婚のほかにも「職場結婚」もあり/商社マンはモテる?

ColumnCASE5 自分を囲む他人は自分を映し出す鏡

エピローグ 商社マンというヒトたち

秋山謙一郎 (著)
秀和システム (2016/12/15)、出典:出版社HP

5大商社次の一手―週刊東洋経済eビジネス新書No.174

大手商社の現状

伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事、これらは5大商社と呼ばれており、日本経済の中心をになっています。資源価格の暴落と中国経済の失速の中、5大商社はそれぞれどのような戦略を取るのでしょうか。本書は、それぞれの会社の現状と展望を紹介しています。

週刊東洋経済編集部 (編集)
東洋経済新報社 (2018/5/1)、出典:出版社HP

はじめに

本書は、東洋経済新報社刊『週刊東洋経済』2016年4月16日号より抜粋、加筆修正のうえ制作しています。情報は底本編集当時のものです(標準読了時間30分)

週刊東洋経済編集部 (編集)
東洋経済新報社 (2018/5/1)、出典:出版社HP

目次

・資源安で大波乱
・三菱商事・三井物産巨額損失からの反攻

・総合力の三菱に異変 20年資源倍増に暗雲
・新社長で王者復活なるか

・なお資源投資続ける三井物産の強気の背景
・物産を変えた2つの不祥事

・【INTERVIEW】三井物産 社長 安永竜夫
・未曾有の危機だが資源の強化は続ける

・非資源の王者 伊藤忠の死角
・ファミマ・ユニー統合の難題

・【INTERVIEW】伊藤忠商事社長 岡藤正広
・総合商社は個性で勝負する時代や

・住友商事の川下戦略
・銅事件の教訓は生きたのか

・丸紅 背伸びした5番手商社
・丸紅の泣きどころ・ガビロン

・【INTERVIEW】丸紅社長 國分文也
・投資への感覚を切り替える

週刊東洋経済編集部 (編集)
東洋経済新報社 (2018/5/1)、出典:出版社HP

ふしぎな総合商社 (講談社+α新書)

商社の真の姿とは

日本の総合商社は、誰もが名前と存在を知っているにも関わらず、実際に何をしているのか知っている人はほとんどいないでしょう。知っていると思っている人でも、大抵は実態と異なる認識をしている人が多いです。本書は、長年商社に勤めていた筆者が体験した具体的なエピソードを織り交ぜながら、現在の商社の真の姿を紹介していきます。

小林 敬幸 (著)
講談社 (2017/9/21)、出典:出版社HP

はじめに

日本の総合商社(以下、本書では基本的には商社)は、誰もがその名前と存在を知っているのに、実際に何をしているのかほとんど誰も知らない。知っていると思っている人の認識も、たいていは実態と異なっていて間違っている。

もともと、取り扱う商品・サービスが多岐にわたり、しかも本社が消費者と直接接することがほとんどないので、一般の消費者には、わかりにくかった。

それに加え、2001年以降、商社は、そのビジネスの形態を大きく変えてしまった。だから、知っていると思っている人の認識も、いまの実態とはかけ離れていることが多い。

商社は、バブル以後の急成長業界であり、知られざる「ポストバブルの勝ち組」である。バブル崩壊で衰退した業界・会社はあまたあるけれど、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅の商社のトップ5社は、吸収合併もされず、会社名も変わらず、利益もバブル発生前の数百億円から数千億円へとざっと10倍くらい飛躍的に拡大した。

5商社平均の連結純利益(連結税後利益:税引後の最終利益)の、1986~2017年の30年間の推移を見てみよう(図0-1)。商社は、バブル発生まで、1社の年間純利益は、数百億円のレベルだった。その後バブル崩壊のダメージを手ひどく受け、1996~2000年では、5社5年の純利益平均がほぼゼロに近い赤字にあえぐ。ところが、2001年以降、収益が急成長し始め、5年から1社当たり純利益1000億円、8年からは2000億円を超え始める。

図0-1 総合商社(5社平均)連結決算純利益の推移

2001年からの7年の短期間で純利益が赤字から2000億円台に到達するというのは、グローバルで見ても一企業で見ても珍しい急成長ぶりである。しかも、同業界のトップ5社でそれができている。2007年には業界5位の丸紅も、純利益が1000億円を超えている。シリコンバレーでも、一つの業種・分野でこんなに急成長して大きな利益を出している企業群はないだろう。

これほどの高収益、高成長業界であるにもかかわらず、一般の人だけではなく、ベテランのビジネスパーソン、ビジネス系記者、経済・経営の学者でも、商社がどういうビジネスの仕方をしているのかよくわかっていない。

例えば、商社は財閥などの企業グループを遺產的基盤(レガシー)にして昔から持つ権益を維持して生き延びたと、したり顔で説明する人がいるが、これは全くあたらない。むしろ、利益を生まなくなった古い企業グループの枠を冷酷に断ち切って、別のパートナーと組んで新しい収益源を得ることによって成長につなげている。

資源バブルだったからという説明も、安易にすぎる。三菱商事、三井物産こそ資源への依存度が高いが、他の商社は、それほど資源への依存度は高くないのに、数千億円という利益水準をたたき出している。

本書で詳しく説明するように2000年頃を境に商社は、ビジネスの手法もビジネスの規模も社員の働き方も大きく変えてしまった。そのため、前世紀の頃に商社と付き合いがあった人ほど現在の商社を誤解していることも多い。就職活動をしている息子・娘から、ビジネスマンの父親が商社のことを尋ねられても、いまの商社のことを正確に答えられない。

この15年、商社の高い成長性と収益力ほどには、その株価が上がらなかったところを見ると、株式のアナリストでさえも、結果的に、商社のことを完全に理解して商社の成長性を読み切れなかったと言えるかもしれない。成長戦略が見えない成熟企業で、何年かに一度大きな減損が出る会社として扱われ、冒頭で述べた「ポストバブルの勝ち組」というような評価は、なかなか株式市場では得られなかったように思う。

それも批判できない。私も含め商社で働いている「中の人」でさえ、2000年代の商社の高成長期には、自社の決算数字を見るたびにあまりに大きな利益が出ているのに驚いていたくらいだから。

私は、1986年に新卒で三井物産に入社し、30年間勤めて2016年に円満に退職した。冒頭のグラフは、ちょうどその期間をカバーしており、それぞれの年の利益水準での会社の雰囲気が思い出される。

入社してしばらくは、昔ながらの商社の貿易・売買・口銭ビジネスを担当したが、その後、商社の変化に合わせ、新しい形のビジネスを立ち上げてきた。

「お台場の大観覧車」、ライフネット生命保険の立ち上げ、リクルート社との資本業務提携、米国人材派遣会社の買収、超小型人工衛星のベンチャーへの投資などの仕事を担当した。最初は、先輩から「これが商社の仕事か」と驚きあきれられ、叱られ、やがてサポートされて――たいていは、この順で受容された――、一つ一つ実現することができた。

それは、従来の商社が関係していなかった世間一般のビジネスと、商社のビジネスの違いを知り、その違いを商社の言葉によって社内で説明する作業でもあった。

そういう現場で経験した商社の変化と現在の商社の真実の姿を、本書では説明したい。

従って本書は、特定の商社に関する告発本でもないし、ある商社の経営戦略を誉めそやすものでもない。私が体験した具体的なエピソードも随所に織り交ぜているが、他商社の知人もうなずく、どの商社でも当てはまる「商社あるある話」ばかりだ。

商社は、バブル崩壊後各社とも巨額損失を何度も出し、四苦八苦して自らを変えて新しい儲け方を身につけ、「ポストバブルの勝ち組」として成長してきた。その変化は、社員の立場からどういう風に受け止められたかも含めて書いてみたい。

異なる業界、業種の会社が、商社が実行したことをそのまま行っても、すぐには成長に結びつかないかもしれない。しかし、商社の経験に触発されて、読者において、日本の経済や企業の活性化に新しいアイデアを浮かべていただければありがたい。

また、勤め先として必ずしも商社を勧めてもいないし、特定の商社を勧めたりもしていない。だからこそ、商社志望でない就活生にも参考にしていただければと思う。商社の新入社員に、入社前後で認識が変わったことなどを聞いたうえで、就職活動をする学生に参考になるように書いてみた。

結局のところ、商社の仕事にこだわらず、ビジネスというのは、じつに多様かつ自由で、変化が激しく、なかなか成功せず、だからこそ面白いというのが、伝わることを願っている。

2017年8月 スウェーデンのマルメにて
小林敬幸

小林 敬幸 (著)
講談社 (2017/9/21)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 「ヘンな会社」としての総合商社
売上ゼロでも優良「営業部」
世界的にも稀な業界全体の業態変革
世界的に見てもヘンな会社「SHOSHA」
すっかり変わる商社のランキングの基準
取引先との会話も変わる
社員の考え方も変わる?
一人で同時に何でもやる
事業投資型ビジネスでもすべてやる
一人の商社マンが手掛ける分野の広さ
就活生の息子と父親の会話
じつは平凡?

第2章 サラリーマンとしての商社マン
出世コースと左遷
タコツボ人事?
エビ博士
炎熱商人は絶滅危惧種?
職場の雰囲気
体力のいるハードな仕事?
長時間労働?
クリスマスイブの残業
商社の仕事は危険?
一番怖いのはヒト
SARS騒動体験
過酷な気候と事故

第3章 課題先進企業としての総合商社
コア機能も変化させてきた
商社元来の貿易機能
従来の貿易機能喪失と業態の変容
資源の調達機能
資源調達は、ずっと商社の中心的機能
工業製品の輸出機能
製造業のグローバル展開サポート
国内産業の育成機能
先進ビジネスの導入と開発
「○×ジャパン」の蹉跌
事業投資型の新規事業開発

第4章 ビジネスとしての総合商社
商社と投資会社ファンドの違い
商社=カエル論
ポストバブルの勝ち組
関連会社・子会社で稼ぐ
事業投資型ビジネスの業績評価
連結決算税後利益へのつながり方
商品の多様性から収益方法の多様性へ
キャッシュか利益か
内部の業績評価と仕事の実際
稼いでいる人は一握り
業績評価の難しさの

第5章 仕事としての総合商社
どんなときに仕事は楽しいのか
商社で仕事が楽しいとき
商社ならではの仕事の楽しさ
利益の意味
新規事業立ち上げはやめられない
クレーム対応は辛いよ
ブエノスアイレスでクレーム対応
売れないときは全く売れない
プロの仕事とは
大きな仕事と小さな仕事
参謀的仕事

第6章 商人としての総合商社
商業は虚業か
江戸商人に見る商業の意味
現代のビジネス
中国ビジネスに見る「商売」の原点
「ものつくり」的発想と商業的発想
商人がものつくり文化と付き合うとき
コンプライアンスとビジネス
行政組織と民間組織的
NPOとビジネスの違い
分配に関わる仕事の危険性的

終章 総合商社の未来
なぜ商社は、変革できたのか?
商社の寿命
商社が衰退する兆候とは
成熟社会へ向けて

付表

小林 敬幸 (著)
講談社 (2017/9/21)、出典:出版社HP

業界と会社研究 2021年度版 商社

商社に関する疑問を解決

商社というのはどのようなことをやっているのかわかりにくく、業界研究をするのは大変でしょう。本書では、「商社とはどのような仕事をしているのか」、「商社にはどのような人材が必要なのか」、「それぞれの商社の特色はどのようなものなのか」このような疑問を、実際の社員の声を聞きながら全て解決していきます。

美原 融 (監修)
日本実業出版社 (2019/12/19)、出典:出版社HP

◆商社業界研究クイズ

Q1 純利益業界トップの三菱商事の年間純利益(二〇一九年三月期・連結・国際会計基準)は?
a 約五〇〇〇億円
b 約六○○○億円
c 約七〇〇〇億円

Q2 総合商社の年間純利益(二〇一九年三月期・連結・国際会計基準)順位ベストスリーは?
a 1位 三菱商事 2位 伊藤忠商事 3位 三井物産
b 1位 三菱商事 2位 三井物産 3位 住友商事
c 1位 三菱商事 2位 住友商事 3位 伊藤忠商事

Q3 「総合商社の雄」といえばどこ?
a 住友商事
b 三井物産
c 三菱商事

Q4 財閥系商社三社のうち、最後発の企業は?
a 住友商事
b 三菱商事
c 三井物産

Q5 三井物産の創業者は誰?
a 伊藤忠兵衛(初代)
b 岩崎彌太郎
c 益田孝

Q6 三菱商事の企業理念として受け継がれている「三綱領」に当てはまらないものは次のうちどれ?
a 「立業貿易」
b 「所期奉公」
c 「質実堅忍」
d 「処事光明」

Q7 三井物産が掲げる企業スローガンは、次のうちどれ?
a ひとりの商人、無数の使命
b 360° business innovation.
c New way, New value

Q8 現在各社で行っている長中期経営計画の中で丸紅が行っている計画のネーミングは?
a Driving Value Creation
b Global crossvalue platform
c 新たな価値創造への飽くなき挑戦

Q9伊藤忠商事が行っている中期経営計画におけるネーミングは、次のうちどれ?
a Brand-new Deal 2020
b Commitment to Growth
c 中期経営戦略2021 ~事業経営モデルによる成長の実現~

Q10 二〇〇年四月、「双日」として合併を行ったのはニチメンとどこ?
a 日商岩井
b 豊田通商
c 兼松

Q11 二〇〇六年四月、トーメンと合併を行ったのはどこ?
a 豊田通商
b 兼松
c 日商岩井

Q12 二〇〇三年、商社二社の鉄鋼製品事業部門の統合によって誕生したメタルワン。母体となった商社はどことどこ?
a 伊藤忠商事と丸紅
b 住友商事と川鉄商事(現・JFE商事)
c 三菱商事と日商岩井(現・双日)

Q13 二〇一三年十月、同グループ内の二社に共通する鉄鋼関連事業を中心に経営統合を行った商社はどことどこ?
a メタルワンと住金物産
b 日鐵商事とメタルワン
c 住金物産と日鐵商事

Q14 一九四九年、大建産業が過度経済力集中排除法を適用され、四社に分割。そのうちの商社二社とは?
a 丸紅・兼松
b 伊藤忠・丸紅
c 伊藤忠・住友

Q15 コンビニを拠点としたEコマースで、三菱商事が組むのは?
a ローソン
b セブンイレブン
c ファミリーマート

Q16 大手商社で最初に本格的な中国ビジネスに乗り出したのは?
a 三菱商事
b 三井物産
c 伊藤忠商事

Q17 豊田通商が二〇一〇年より近畿大学と提携して行っている事業は次のうちどれ?
a 地熱発電事業
b クロマグロ完全養殖事業
c 水素事業

Q18 一九七三年オイルショック後の「商社冬の時代」の原因として適切でないのは?
a 素材産業の不振
b アジアNIESの台頭
c 商社取り扱いの商品が少ない加工産業の輸出増

Q19 一九九七年、環境に関する国際的なマネジメントシステム「ISO 14001」認証を、総合商社として初めて取得したのは?
a 伊藤忠商事
b 三菱商事
c 三井物産

Q20 商社の収益性を示す重要な指標として注目される「ROE」とは?
a 株主資本利益率
b 修正経常利益
c 海外売上高比率

Q21 総合商社のうち、もっとも早く社内カンパニー制をとりいれたのは?
a 三菱商事
b 伊藤忠商事
c 兼松

Q22 ASEAN十か国のうち、もっとも最後に参加したのはどこ?
a カンボジア
b ブルネイ
c ミャンマー

Q23 商社が得意とする規制緩和ビジネスの典型であるIPPとは何の略?
a 燃料電池事業
b 二酸化炭素排出権事業
c 独立系発電事業

Q24 米ゴールドマン・サックス命名による、BRICsに続く経済大国予備軍十一か国「ネクストイレブン」に入らない国はどこ?
a アルゼンチン
b ベトナム
c インドネシア

解答と解説

●Q1 [b] 純利益は国際会計基準における「親会社の所有者に帰属する当期利益」の数字で算出(Q2も同様)。●Q2 [a] ランキングは、三菱・伊藤忠・三井・住商・丸紅・豊通・双日・兼松の順。●Q3 [c] ●Q4 [a] 住商のみ戦後生まれ。●05 [c] 1876年、益田孝氏が旧三井物産を創業。初代伊藤忠兵衛氏は伊藤忠商事・丸紅の2社を創業。岩崎彌太郎氏は三菱グループの基礎を築いた創業者。●Q6 [c] 四代社長岩崎小彌太の1920年の訓諭をもとに、1934年に旧三菱商事の行動指針として制定されたもの。「所期奉公=期するところは社会への貢献」「処事光明=フェアープレイに徹する」「立業貿易=グローバルな視野で」を意味する。●Q7 [b]「ひとりの商人、無数の使命」は伊藤忠、「New way, New value」は双日。●Q8 [b] Driving Value Creationは三井物産、新たな価値創造への飽くなき挑戦は住商。●09[a] 「Commitment to Growth」は双日、「中期経営戦略2021~事業経営モデルによる成長の実現~」は三菱。● Q10[a] 2005年10月には、持株会社双日ホールディングスと双日が合併し、商号が双日株式会社に。●Q11 [a] 新生・豊田通商株式会社としてスタート。●Q12 [c] 伊藤忠と丸紅の統合によって誕生したのは伊藤忠丸紅鉄鋼、JFE商事は川鉄商事とエヌケーケートレーディングの合併によって誕生。 ●Q13 [c] 新日鐵住金グループの両社が合併し、4つのコア事業を複合的に展開する商社「日鉄住金物産」として発足。2019年4月より「日鉄物産」に商号変更。●Q14 [b] ●Q15 [a] セブンイレブンは三井物産、ファミリーマートは伊藤忠。●Q16 [c] 1971年から始まり、翌年には総合商社で初めて中国から友好商社に指定される。●Q17 [b] ●Q18 [c] ●Q19 [a] ●Q20 [a] 企業の資本金及び再投資資金のうち何%の収益をあげているかを示している。●Q21 [b] ●Q22 [a] ●Q23 [c] Independent Power Producerの略。●Q24 [a] N-11(ネクストイレブン)とは、イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコの11国。

あなたの業界研究習熟度

25~21点◆プロ級
まだまだ厳しい就職戦線だが心配は無用。あとは自分をうまくアピールするだけです。商社はあなたの入社を待っている!

20~16点◆セミプロ級
業界研究は十分のようです。間口の広い業界だけに今後もその調子で研究を続けましょう。常に情報の更新を心がけて。

15~11点◆王手級
国際情勢やIT関連など最新情報をさらに収集し、二一世紀の商社のあり方をシミュレート。知識とともに分析力を養おう。

10~6点◆心配級
他者や世界への好奇心が薄い人に商社は向きません。あらゆることにアンテナをむけるバイタリティがあなたには必要かも。

5~0点◆
就職戦線最強のノウハウは採用担当者に期待感を持たせること。こうなったら、自分のキャラクターに磨きをかけるしかない??

美原 融 (監修)
日本実業出版社 (2019/12/19)、出典:出版社HP

リスク管理は商社ビジネスの基本
―はじめに―

美原 融

専門商社であれ、総合商社であれ、商売の基本は買いと売りがある仲介ビジネスになる。リスクの無い代行と呼ばれるエージェント業務やしっかりとした上場企業だけとの取引なら問題ないのだが、商社にはリスクをとらざるをえない取引も取引先も多い。取引先が信用できるか否かは極めて重要だ。売り先が破綻すれば、買持になり、売れない商品を抱えてしまう。逆に買い先が破綻すると、売り先に商品を提供できなくなるリスクを負う。

新入社員は、まず買い先と売り先が信用できるか否か、リスクを軽減できる手法はあるか等商社の仕事の基本を徹底的に習熟する訓練をやらされる。取引自体にリスクが内在する仕事もある。海外からの商品作物の輸入等は、気候変動による作物不出来、価格・為替変動等、もし予想と現実が異なった場合、大きな損失になる。この場合には先物市場で先物を手当てする等のリスクヘッジを図る。支払いが手形になる機械等の販売等は、手形が決済される前にもし取引先が倒産すれば、担保となっているその機械を物理的に差し押さえる等の荒業も仕事の一つだ。

売り先と買い先を慎重に評価し、リスクを取れるときは取り、ヘッジやリスク軽減の仕組みを考える等、常にリスク管理を仕事の前提にする慣習が商社には内在し、慎重な仕事の継続が現在に至るまでの商社の発展を支えてきたともいえる。この意味では、商社パーソンは極めてリスクにセンシティブになるような教育を受ける。

仕事が国内なら単純だが、グローバル化した時代では、輸出入・三国間等買い先あるいは売り先、あるいはそのどちらも海外ということもあり得る。この場合には一定国の仕事を企業としてどのレベルまで許容できるかというカントリーリスクを評価せざるを得なくなる。

単純輸出入取引の場合には、契約の遂行までのリードタイムは短く、リスクを取る時間も短い。ところが、工事契約や延べ払いのプラント輸出になると、数年から七~八年の長い期間のリスクになってしまう。外国で投資事業を行う場合には、これに加え政府転覆や法律変更等の政治的・社会的リスク・不可抗力リスク等管理すべきリスク領域は更に増える。勿論政治リスクを担保する制度的な保険があると共に、物的損害や第三者損害賠償等は市場における保険にてリスクを軽減することはできる。

商社の資産はヒト、カネ、情報、知恵であり、これらを総動員し、どうしたらリスクを管理しながら、リスクが起こる蓋然性を縮小化し、ビジネスチャンスを広げるかが商社マンにとっての仕事のベースになるといっても過言ではない。この仕事は大丈夫か、本当にリスク管理はできるのかを不断に問われるわけであり、商社マンは結構リスク管理のプロになっていることが多い。

もっとも日本企業を巡る社会的・政治的環境は、単純に仕事のリスクを評価するどころではなくなりつつある。

コンプライアンス(遵法)はあらゆる組織人が順守すべき仕事の前提になっており、違反行為等があった場合は企業にとり大きなリスクになる。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等社内における人間関係すらリスクになると共に、社外第三者(弁護士)に対する違法行為の通報制度がある。これらの不断の教育のためにコンピュータによる自己教育プログラムの実践が何と毎年義務付けられる等、商社の仕事にも昔にはなかったリスク領域が増えている。またこれを担う専門部署もある。

商社もえらい窮屈な世界になったものだなどと考えているのは、今や社内にいる年長者のみかもしれない。商社にとり、社内外における人間関係や取引先との関係や評価がビジネスの基本でもある。商社マンにとり、リスクのある領域に果敢にチャレンジし、知恵を絞り、リスクを管理し、個別の案件を実現することが仕事の本質になる。知力も体力も必要だがそこに商社の仕事の面白さと醍醐味がある。

この様なリスクにチャレンジできる元気な若人を、商社は求めている。

CONTENTS

商社業界研究クイズ

――はじめに――リスク管理は商社ビジネスの基本 美原融

第1章 商社の仕事人たち
ドキュメント仕事人① 成長する大陸・アフリカビジネスの武器として=三菱商事・島村寛人
ドキュメント仕事人② 人生もビジネスもアップセットが面白い!=伊藤忠商事・林亮太郎
ドキュメント仕事人③ 「明日、自由に生きられる世界」を目指して=丸紅・小笠原夏雄
ドキュメント仕事人④ インドの地で事業会社を一から創り上げるという挑戦=メタルワン・内川浩樹
ドキュメント仕事人⑤ “鉄鋼”に新たなインパクトを与えるために=伊藤忠丸紅鉄鋼・中村剛生
ドキュメント仕事人⑥ この星の何処からでも、新たなビジネスを創り出すために!=住友商事グローバルメタルズ・ジェイソンリン
ドキュメント仕事人⑦ “裸の王様”が、“真の王様”になる日――EVへの野望に突き進む=稲畑産業・宇尾野大介
ドキュメント仕事人⑧ 資機材ビジネスのプロフェッショナルとして=JFE商事・山﨑拓人
ドキュメント仕事人⑨ 究極のどん底を乗り越え、海外ビジネスに突破口を開く=日鉄物産・桑原侑希
ドキュメント仕事人⑩ 新入社員、化学品の市場を強かに駆け抜ける=阪和興業・長田明子
ドキュメント仕事人⑪ リスクを背負う“陰の主役”として=ユアサ商事・折戸秀平
ドキュメント仕事人⑫ 顧客ファーストのきめ細かな提案力で商権の奪取に挑む=ダイワボウ情報システム・中村和博
ドキュメント仕事人⑬ 自由な発想でビジネスをゼロから築き上げる!=CBC・家田治郎
ドキュメント仕事人⑭ 類まれな情報収集能力とスピード感で未知なるビジネスの地平を切り拓く=第一実業・小西賢治
ドキュメント仕事人⑮ 社内外の人を巻き込み、自分だからこそ生み出せる付加価値を追い求める=岡谷鋼機・渡邊順平
ドキュメント仕事人⑯ 商社が手がけるeビジネスの可能性を開拓する=トラスコ中山・高橋佑輔
ドキュメント仕事人⑰ 「紙」は、持続可能な社会を支えるグローバル商材だ!=日本紙パルプ商事・堀本育哉
ドキュメント仕事人⑱ 世界のスポーツブランドに、僕が新風を吹き込む!=帝人フロンティア・曽根勝周平
ドキュメント仕事人⑲ プロ経営者の視点で大学改革に取り組む=津田塾大学理事長・島田精二

第2章 商社の仕事と組織
商社の仕事
商社ってナンなんだ?
商社の仕組み
社内カンパニー制 鉄鋼部門 非鉄金属部門 機械・プラント部門 繊維部門 化学品部門 エネルギー部門 食料部門 物資・物産部門 建設部門 情報エレクトロニクス部門 金融・保険部門 管理部門
商社の職種
一般職掌と事務職掌
商社の投資・買収と出向
国内外のM&Aと株式投資 入社“即”出向の現実

第3章 商社の企業模様
商社の歴史
総合商社の発生 躍進・敗戦・財閥解体 再編・高度成長 オイルショック 商社冬の時代 バブル崩壊後の総合商社 リーマンショック 世界で台頭する強烈な存在感 トランプ大統領誕生後の世界 好況に沸く商社だが…背後に迫るデジタル革命
年表 「激動の商社業界、この1年」
主な企業のプロフィール
伊藤忠商事=非財閥系の強みを最大化しつつ「新たな商社像」へ邁進~
三井物産=急変する世界を舞台に新たな価値創造へ変革を加速
丸紅=二〇三〇年に向けた長期的な企業価値向上に向けて突き進む
三菱商事=総合力・構想力・実行力で持続的な成長を実現
豊田通商=激変する環境をチャンスと捉えて世界の未来に貢献する
双日=前中経計画の成果を踏まえて一層のイノベーションに突き進む
住友商事=次の一○○年に向けて「稼ぐ力」をたゆまず高める
日鉄物産=「その道では誰にも負けないプロフェッショナル」が未知なる未来を開拓し続ける「複合専業商社」
JFE商事=『百年先の世界を創る、その最前線へ』
伊藤忠丸紅鉄鋼=地球規模のベストソリューションを創造する「鉄鋼総合商社」
メタルワン=「グローバルNo.1の鉄鋼総合商社」を目指し変革に挑む
住友商事グローバルメタルズ=総合商社に比肩する“鉄のプロフェッショナル集団”
兼松=創業三〇周年を迎え、中期ビジョン達成に邁進
阪和興業=“プロフェッショナル&グローバル”を掲げ成長を続ける独立系商社
ユアサ商事=「Growing Together」ともに挑み、ともに創造する未来へ
岡谷鋼機=「グローバル最適調達パートナー」として海外取引を拡大
稲畑産業=さらなる海外強化と未開拓分野へ。創業一四〇年を見据えた新たな挑戦
帝人フロンティア=商工融合で進化する繊維ビジネスのリーディング・カンパニー
トラスコ中山=独創戦略でモノづくりに“なくてはならない”「インフラ企業」へ
第一実業=事業軸体制の拡大でさらなる成長を目指す独立系商社
日本紙パルプ商事=紙の無限の可能性を追求し、世界最強の紙流通企業へ!
ダイワボウ情報システム=変化の激しい業界で国内のIT流通を支えるトップディストリビューター
CBC=ベンチャー感覚でビジネスに挑む「開発型“創造”商社」
日通商事=世界規模の商流・物流を最適サポートする「高機能複合商社」
守谷商会=卓越した技術提案力で百二十年の歴史を刻む「エンジニアリング商社」

第4章 商社の待遇と勤務条件
初任給
平均年収
勤務時間

第5章 商社の求める人材と採用
大きく変わった採用状況
人事部発「学生たちに告ぐ!」<君たちはどう見られ、何を求められているのか>
三菱商事 三井物産 丸紅 双日 伊藤忠商事 兼松 伊藤忠丸紅鉄鋼 メタルワン 住友商事グローバルメタルズ 稲畑産業 ユアサ商事 ダイワボウ情報システム 第一実業 守谷商会 JFE商事 岡谷鋼機 阪和興業 日鉄物産
人事部発「私が読んでほしい“この一冊”」

第6章 商社業界に入るには
採用スケジュールの流れ
採用サイトは三月オープン
業界・企業研究
まずはネットで分析を! OB・OG、知り合いの社員を探し出せ!
セミナー・資料請求
セミナーは出会いの場 会社案内を入手しよう!
ES(エントリーシート)
筆記試験
商社業界の面接
インターンシップ
三年生の夏から始まる“就業体験”
就活“応援”伝言板

第7章 商社業界企業データ
伊藤忠エネクス/伊藤忠商事
伊藤忠丸紅鉄鋼/稲畑産業
岩谷産業/エトワール海渡
岡谷鋼機/片岡物産
兼松/カメイ
キヤノンマーケティングジャパン/興和
三洋貿易/JFE商事
CBC/JALUX
昭光通商/新光商事
住友商事グローバルメタルズ/西華産業
双日/双日食料
第一実業/大同興業
ダイワボウ情報システム/田村駒
蝶理/帝人フロンティア
豊田通商/トラスコ中山
中川特殊鋼/長瀬産業
日産トレーデイング/日通商事
日鉄物産/日本アクセス
日本紙パルプ商事/阪和興業
日立ハイテクノロジーズ/ホンダトレーディング
丸文/丸紅
ミスミ(ミスミグループ本社)/三谷商事
三井物産/三菱商事
三菱商事マシナリ/三菱食品
明和産業/メタルワン
守谷商会/森村商事
山善/ユアサ商事
菱電商事

美原 融 (監修)
日本実業出版社 (2019/12/19)、出典:出版社HP

総合商社――その「強さ」と、日本企業の「次」を探る(祥伝社新書)

ビジネス環境の変化への対処を探る

日本独自の業態として戦後復興期や高度経済成長の日本を牽引し、その後も衰退することなく、現在でも発展を続けている総合商社。本書は、「総合商社とは何か」「なぜ日本にだけ存在するのか」を考察し、「今後も存続するのか」「どこへ向かうか」を明らかにしていきます。

はじめに

二〇一六年三月期決算は、波乱に富んだものとなった。総合商社の純利益ランキングが大きく入れ替わったのだ。それまで、ほぼ不動の1、2位の座を占めていた三菱商事、三井物産が赤字に転落、代わって伊藤忠商事が一躍トップに躍り出た。その原因は、二〇一四年からの資源価格の大幅下落である。

図表1(5ページ)をみると、二〇〇五年頃から総合商社全体の利益が急拡大してきたことがわかる。その勢いは、二〇〇八年のリーマンショックを頂点とする世界金融危機でいったん鈍るものの、止まることはなかった。この間、伊藤忠商事は二〇一二年三月期から住友商事を抜いて3位に浮上、首位の座をうかがっていたようにもみえる。

図表1 総合商社の純利益推移

一九九〇年代後半から二〇〇〇年代初頭にかけて、総合商社はビジネスの構造を大きく変化させ、それを支える経営上の諸改革と、バブル崩壊後の不良資産の処理を同時に行なった。この過程で、業界は7社に再編成されたが、幸運にもこの時期に資源価格が上昇し、総合商社全体の収益を押し上げた。とりわけ、合併・再編に巻き込まれずに、従来からの社名をキープした上位5社が、収益力の面で強みをみせ、隆盛を誇ってきた。

なかでも、三菱商事、三井物産は、資源分野に強みを持っていた。これに対し、二〇〇○年代以降の伊藤忠商事は、むしろ非資源分野への業務展開に力を入れてきた。そのコントラストが鮮明に表われたのが、この決算だった。

本書は、このようなカレントな動きだけを論じようとするものではない。

総合商社は日本独自の業態として知られ、戦後復興期や高度成長期の日本経済を牽引した企業群として、注目されてきた。単なる貿易の担い手であるだけでなく、外務省顔負けの情報収集機能を持ち、プロジェクトのオーガナイザー機能や、資金調達力を生かした投資機能を駆使して高収益を上げる企業群として、世界の関心を集めた。

そのため、「なぜ日本にだけ存在するのか」「その成立の条件は何か」などの問いが提起され、論争が繰り返されてきた。しかも、そうした問いに必ずしも決定的な答えが得られないなか、バブル崩壊後のリストラで復活した総合商社は、ビジネスの構造を大きく変化させている。われわれは、「総合商社とは何か」を、もう一度問うべき時点に立っているのだ。

本書は、以下の点を明らかにしようとしている。

第1に、「総合商社とは何か」「なぜ日本にだけ発生したのか」という、古くて新しい命題に答える。

「総合商社とは何か」の回答が難しいのは、一つには、総合商社が時代によって、その内実を大きく変化させているからである。総合商社という固有の業態が生まれたのは、実は戦後である。戦前にも、三井物産、三菱商事のような総合商社と呼ぶことができる企業が存在していたが、経営環境が大きく異なるなか、戦後のそれと同じものととらえるのには無理がある。そして、現在の総合商社のビジネスは、戦後成立した総合商社のそれともまた大きく異なっている。対象である総合商社自体が変化しているのである。この変化を検証することで、この命題に答えていく。

第2に、バブル崩壊後、総合商社は「投資会社化」したとされるが、その内実を探る。

投資機能は、そもそも戦後の総合商社に備わっていた。また戦前には、総合商社と呼べる三井物産などはもちろん、専門商社ですらこの機能を持っており、戦後顔負けの投資を行なっていた。

一九二七(昭和二)年の金融恐慌を引き金に倒れた鈴木商店は、現在の双日の前身の一つだが、投資により戦後も残る多くの製造業を設立した。双日のもう一つの源流をなす巨大繊維商社の日本綿花は、戦時中の一九四三(昭和十八)年に日綿実業(のちにニチメン、現・双日)に社名変更するが、その理由は、投資による工場経営など事業活動の多角化である。また、十九世紀から二十世紀の第二次大戦後にかけて、世界を股にかけて活躍したイギリスの多国籍商社も、多くの投資活動を行なっていた。

商社の基本的な業務は商品取引であり、総合商社業界ではこれを「トレード」と呼んでいる(本書でもこれを踏襲する)。しかし、投資はトレードと並んで、商社に当初から付随する機能であると言っても過言ではない。したがって、バブル崩壊後の「投資会社化」を正しくとらえるため、総合商社のビジネスのなかで投資の役割がどう変わったのかに焦点を合わせて、みていくことにする。

第3に、「総合商社という業態は今後も存続していくのか」「変化するとすれば、どのように変わっていくのか」を考える。

総合商社はビジネスの構造を変化させた結果、日本独自と言われたその業態は、さらに独自性の高いものになった。かつて、韓国や中国は、経済成長を主導する目的で総合商社を設立することを目論んだ。しかし、世紀が変わった今、そうした動きはみられない。彼らがすでにそれなりの成長をはたしたからでもあるが、現在の総合商社のビジネスの構造が複雑で、他の追随を許さないという可能性も高い。

この独自の業態が仮に存続しないとすれば、どのように変わっていくのだろうか。純粋な投資会社に移行していくのか、資源メジャー化するのか。あるいは、ダウンサイジングや専門商社化、製造業化の道もないわけではない。総合商社は、どこへ行くのかを探る。

具体的には、第1章で変化しつつある総合商社のビジネスモデルを解説。第2章・第3章では戦前、戦後の総合商社の歴史を振り返る。第4章で海外における類似業態の企業との比較を行ない、その特殊性を掘り下げたのち、第5章で総合商社の行方を論じる。

総合商社は日本経済の成長と深くかかわってきた。総合商社の過去を学び、「次」を知ることは、今後の日本経済を占ううえで不可欠である。また、総合商社が今世紀はじめに復活を遂げるにあたって行なった経営改革とビジネスモデルの変革は、多くの日本企業に“気づき”を与えるだろう。経済の大きな流れをとらえ、ビジネス環境の変化への対処を探る書として読み進めていただきたい。

二〇一七年二月
田中 隆之

目次

はじめに

第1章 総合商社、近年の大変化
総合商社の投資会社化
総合事業運営・事業投資会社総合商社の構造変化
総合商社の収益モデル
商権と投資の関係
事業運営・事業投資1 関係会社の活用
事業運営・事業投資2 バリューチェーン戦略
事業運営・事業投資3 投資のリサイクル
経営改革1 選択と集中
経営改革2 リスク管理体制の拡充
経営改革3 コーポレートガバナンスの強化

第2章 商社の歴史・戦前――総合化と投資活動
戦前の商社について
江戸時代の貿易
開港と居留地貿易
幕末・維新期の「商社」
日本人商社の誕生
三井物産の誕生
専門商社の登場
第一次大戦と商社設立ブーム
戦後不況と淘汰
戦前商社の「総合商社」化
三井物産の「総合商社」化
戦前の「総合商社」と専門商社
戦後盛んになった、戦前の商社研究
中川・森川論争
生き残りのための企業活動説
「総合化の論理」
マルクス経済学からのアプローチ
財閥のコンツェルン形成を担った三井物産
財閥の中核ではなかった三菱商事
広範な事業投資を行なった鈴木商店
戦時下の商社
戦前商社の事業運営・事業投資について

第3章 商社の歴史・戦後――総合商社の成立と展開
戦後の復活
国営貿易下の商社
民間貿易の再開
総合商社化への動き
三井物産、三菱商事の解散
繊維系商社の総合商社化
鉄鋼系商社の総合商社化
三井物産、三菱商事の復活
住友商事の新設
10大総合商社体制の成立
戦後の総合商社の特徴
総合商社の四つの機能
「商社斜陽論」がはずれた理由
高度成長下の業容拡大
商社冬の時代
逆風下の対策
業績の回復
バブル期の事業展開
バブル崩壊と「商社不要論」
模索と飛躍への助走
再編成と7大総合商社体制

第4章 総合商社の特殊性
世界での位置づけ
なぜ欧米の商社は総合商社化しなかったのか
アメリカの商社育成
総合商社育成に成功した韓国
総合商社を必要としなかった中国
投資家の低評価に悩む、日本の総合商社
イギリスの多国籍商社の隆盛
イギリスの多国籍商社の消滅
日本の総合商社は消滅するか
総合商社と投資会社
総合商社と投資銀行の比較
総合商社と資源メジャーの比較
格付け会社からみた総合商社

第5章 「総合商社の「次」なる形
資源価格急落の衝撃
今後の業界地図
なぜ日本にだけ総合商社が成立したのか
失われつつある存立条件
なぜ生き延びることができたのか
二つの軸と四つの方向性
総合商社の行方1 資源分野と非資源分野のバランス
総合商社の行方2 国内産業との関係
総合商社の行方3 事業運営・事業投資とトレードの関係
ますます強まる特殊性
総合商社でなくなる可能性
今後の課題

おわりに
参考文献

図表作成……篠 宏行

図解入門業界研究 最新総合商社の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版]

時代の変化に商社がどう対応しているか

総合商社は、人と人とのつながりが重要部分を占める業態です。大規模な設備を持たないことで、他業態に比べて相対的により柔軟に組織・ビジネスを作り替えることができます。本書では、7大商社がこれからの時代の変化に対してどのような取り組みをしているのかを解説していきます。転職や就職に役立つ最新情報もたくさん掲載しています。

丸紅経済研究所 (著)
秀和システム (2019/4/19)、出典:出版社HP

はじめに

「現在は、ネットワークの時代だ」とは第3版の「はじめに」の書き出しでした。そしていま、目前に迫る5G導入を控え、まさにネットワーク社会/産業が本格的に動き始めるタイミングだといえます。これから2030年に向う10年間は、従来にはないまったく新しいサービスや、まったく新しい産業が芽生える非常に重要な時期となるはずです。

これから社会に出る皆さんが就職して中堅として社会を担うころ、2033年にもなると、21世紀も3分の1が終わるタイミングです。おそらく、21世紀的社会/産業の形はほぼ見えてきているでしょう。目に見えて変わるのは自動車かもしれません。自動運転は2030年代の技術ともいわれます。そうだとすれば、2030年代はドライバーレスカーが街を走る自動車のマジョリティを占めてくる時代になります。世界に先駆けて、ロボットタクシーの商用化を始めた米ウェイモは地下鉄や小売、ホテルなどと提携しており、これら産業を利用する消費者に便利で快適な移動を提供することになります。ロボットタクシーは多くのビジネスに対してビジネスモデルの転換を迫ることになるのです。

AI利用もこれからどんどん広がって行くでしょう。様々な新しいサービスが登場してくるとき、目には見えないけれども背後でAIが使われている、ということがこれから普通に起こってくることでしょう。

こうした新しい取組みの多くがスタートアップと呼ばれる生まれたばかりの企業によるものです。大企業もその多くが、スタートアップの買収で新たな機能を取り込んでいるのです。

総合商社は、資金力を別にすればもともと人の集まりであり、人と人のつながり、あるいは、つながりを生み出す力が強みの重要部分を占める業態です。大規模な設備を持たないことで、他業態に比べて相対的により柔軟に組織・ビジネスを作り変えることができる、作り変えてきた業態である、とも言えようかと思います。上にあげたような変化に対しても果敢にチャレンジしている姿を見出すことはそれほど難しいことではないでしょう。本書を通じて、そういう商社の側面を少しでも紹介できることができましたら幸いです。

丸紅経済研究所 (著)
秀和システム (2019/4/19)、出典:出版社HP

最新総合商社の動向とカラクリがよ~くわかる本[第4版] ●目次

はじめに

第1章 商社業界の歴史
1-1 開国と商社誕生
1-2 旧財閥系と関西繊維系
1-3 第二次世界大戦までの商社
1-4 戦後から高度経済成長期
1-5 高度経済成長の終焉と商社冬の時代
1-6 バブル崩壊後の業界再編
1-7 最近の業績は堅調
1-8 なぜ日本で総合商社が発達したのか
コラム 社会のために尽くした商社の先人たち

第2章 商社の基本機能
2-1 商社の役割
2-2 商取引
2-3 投資・経営
2-4 情報・物流・金融
コラム 幻の総合商社 鈴木商店
2-5 リスクマネジメント
2-6 オーガナイザー機能

第3章 7大商社比較
3-1 商社業界概観
3-2 当期純利益比較
3-3 株主資本比率比較
3-4 ネットDER比較
3-5 ROA・ROE比較
3-6 キャッシュフロー比較
3-7 三菱商事―豊かな社会の実現に貢献することを目指して
3-8 三井物産―大切な地球と、そこに住む人びとの夢溢れる未来作りに貢献
3-9 伊藤忠商事―伊藤忠ブランドのさらなる価値向上を目指す
3-10 住友商事—変化を先取りし新たな価値を創造するグローバル企業を目指す方
3-11 丸紅―「正・新・和」の精神に則り、誇りある企業グループを目指す
3-12 豊田通商―人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりを目指す
3-13 双日―誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造する
コラム 企業の儲けが読み取れる損益計算書

第4章 商社の組織
4-1 商社の組織はこうなっている
4-2 張り巡らされた海外ネットワーク
4-3 組織の横の連携を強化する動き
4-4 子会社との連携プレー
コラム 企業の富を表す貸借対照表

第5章 商社の人材育成
5-1 商社は「人がすべて」
5-2 商社が求める人材とは?
5-3 商社の採用
5-4 商社の人材戦略
5-5 充実した研修制度
5-6 ダイバーシティへの取り組み
コラム お金の流れが一目瞭然のキャッシュフロー計算書

第6章 商社で働く
6-1 新入社員A君の場合―商社パーソンの一日①
6-2 入社10年目Bさんの場合―商社パーソンの一日②
6-3 最先端で活躍するC課長の場合―商社パーソンの一日③
6-4 商社の仕事、実は地味?
コラム 商社はドメスティックだった?
6-5 海外出張・海外駐在
6-6 商社パーソンはどこまでも行く
コラム 時差ぼけに負けない出張術

第7章 商社を取り巻く環境
7-1 金属資源・エネルギー価格の変動
7-2 ESG・サステナビリティ経営
7-3 グローバルなバリューチェーンの構築
7-4 M&Aの動向
7-5 中国―新興市場国の台頭①
7-6 ASEAN―新興市場国の台頭②
7-7 サブサハラ―新興市場国の台頭③
7-8 不確実性の高まり
7-9 コンプライアンスへの取り組み
コラム 丸紅が誇る「丸紅コレクション」

第8章 商社のビジネスモデル
8-1 食料
8-2 資源・エネルギー開発
8-3 インフラ事業
8-4 発電所経営
コラム 商社を題材にした経済小説
8-5 再生可能エネルギー
8-6 アパレルブランド導入
8-7 ITソリューション導入
8-8 流通加工と関連サービス
8-9 金融

第9章 商社業界の課題と将来
9-1 「モノ」だけではなく「機能」を売る
9-2 ビジネスコンセプトの変化
9-3 複数事業のクロスオーバー
9-4 事業創造への取り組み
コラム 20世紀起源の技術が花開くのは何時?
9-5 ヘルスケア―新ビジネスを拓く①
9-6 モビリティ―新ビジネスを拓く②
9-7 環境―新ビジネスを拓く③
9-8 水素エネルギー―新ビジネスを拓く④
9-9 更に時代の先へ

Data 巻末資料
●総合商社と主な商社業界関連団体
索引

丸紅経済研究所 (著)
秀和システム (2019/4/19)、出典:出版社HP

日本の成長戦略と商社: 日本の未来は商社が拓く

商社のビジネス事例を紹介

医療、食品、資源・エネルギー、コンテンツなどあらゆる分野を手がける商社が、日本経済の成長戦略実現のために果たす役割は大きいでしょう。本書では、分野ごとの、具体的な商社のビジネス事例を中心として記述しており、現在の商社活動および商社が目指す未来像についてわかりやすく紹介していきます。

日本貿易会「日本の成長戦略と商社」特別研究会 (著), 戸堂 康之 (監修)
東洋経済新報社 (2014/5/30)、出典:出版社HP

はじめに

2012年12月に誕生した第2次安倍政権は、長引くデフレからの早期脱却を目指して、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」という3本の矢からなる「アベノミクス」を打ち出した。金融緩和と財政出動による景気刺激は一定の成果を上げ、足元ではようやくデフレからの脱却が見えつつあるが、その動きを確かなものにするためには第3の矢である成長戦略を着実に実行することが不可欠である。

安倍総理は、2014年1月に開催されたダボス会議において、「法人実効積率の国際的水準への引き下げ」や「国家戦略特区の枠組みを利用した岩盤規制の打破」などを国際公約にし、今後2年間で集中的に改革を推し進めることを表明した。

2014年6月には、これまでの産業競争力会議や規制改革会議でなされた議論なども踏まえ、2013年閣議決定された「日本再興戦略」に続く成長戦略の第2弾が公表される予定であるが、それが着実に実行され、民間の力が存分に活かされることを期待している。

われわれ総合商社は、これまで幾多の困難に直面しながらも、時代の先を読み、新しい市場の開拓者として、また産業基盤の下支え役として、日本経済の発展に寄与してきた。そして、まさに今、わが国は長期のデフレから抜け出し時代の変わり目となりうる重要な時期を迎えているが、このような時代環境の中で商社が果たすことができる役割は大きいといえるのではないだろうか。

こうした認識のもと、商社の業界団体である日本貿易会では、2013~2014年度の重点事業のひとつとして、わが国の成長戦略の実行において、商社はどのような役割を果たしてゆけるかについて掘り下げていくことを目的として、特別研究会を立ち上げた。

この研究会には、総合商社7社(伊藤忠商事、住友商事、双日、豊田通商、丸紅、三井物産、三菱商事)の代表者および日本貿易会の役職員が委員として参画し、国際経済学および開発経済学の専門家、戸堂康之東京大学教授(当時、現早稲田大学教授)を主査に迎えて、「日本の成長戦略と商社」というテーマで議論を重ねてきた。本書は1年以上に及ぶ研究会の成果をまとめたものである。

研究会においては、まず、わが国を取り巻く内外環境を分析し、対処すべき課題を整理したうえで、中長期的な世界経済と日本経済の潮流について考察した。さらに、時代とともに大きく変貌を遂げてきた商社機能の変遷をたどりながら、今後日本が目指してゆく成長戦略の実現に向けて、商社業界が貢献し得るビジネスモデルについて研究し、できる限り、当該ビジネスモデルの各社における具体的な事例を紹介することを主眼とした。

また、戸堂主査には、第4章として、「経済成長の経済学から見た商社の役割」という観点で、アベノミクスの評価および成長戦略実現に向けた商社への期待などについて、経済学者の立場から論評いただいた。

総合商社は事業分野が多岐にわたり、ビジネスの手法も複雑化しているため、わかりにくい、といわれることがあるが、本書においては、分野ごとの、具体的な商社のビジネス事例を中心として記述しており、現在の商社活動および商社が目指す未来像について少しでも多くの方にご理解いただければ幸いである。

最後に、本書を取りまとめるに当たり、戸堂主査、瀧本座長をはじめとする特別研究会の委員の皆さまには、ご多忙の中、執筆などで多大な貢献をいただいたことに、謹んで謝意を表した

2014年5月
一般社団法人日本貿易会
会長 槍田松瑩

日本貿易会「日本の成長戦略と商社」特別研究会 (著), 戸堂 康之 (監修)
東洋経済新報社 (2014/5/30)、出典:出版社HP

「日本の成長戦略と商社」~日本の未来は商社が拓く~目次

はじめに

序章 日本の成長戦略と商社
1 「アベノミクス」の真価を問う成長戦略の実行
2 「失われた20年」と商社の歩み
3 変わり続ける世界、日本が「変わる」ための課題
4 成長戦略実現に向けた商社の役割と本書の意義
5 本書の構成

第1章 大きく変わる世界と日本
(1 リーマンショック後の世界と日本
1 米国発の世界的な金融危機の発生
2 欧州債務問題の長期化
3 明暗の分かれた新興国経済
4 東日本大震災に見舞われた日本
5 資源・エネルギー政策の動向
6 様変わりした日本の貿易収支
(2 世界経済の潮流と課題
1 カギを握るグローバル化の潮流
2 世界経済の持続的成長に向けて
(3 日本が抱える課題
1 日本を取り巻く環境
2 課題先進国としての日本
(4 実行力が試されるアベノミクス
1 課題の解消に向かう2つの方向性
2「日本再興戦略」の実現に向けて

第2章 進化を続ける商社の機能
(1 総合商社の持つ機能とは?
1 商社機能の変遷をたどって
2 総合商社の「いま」
(2 商社に期待される役割とは?
1 商社の特性
2 成長戦略における商社の3つの役割

第3章 日本を元気にする商社ビジネス
1.新たな事業を創造する
(1 農林水産業の未来を切り拓く(農林水産業)
1 わが国の農林水産業を取り巻く環境と商社に期待される役割
2 グローバル・バリューチェーンの構築
3 各国消費市場におけるマーケティング力の強化
4 新技術の活用、異業種連携などへの挑戦
(2 高齢化社会の課題にチャレンジ(医療・介護・健康)
1 超高齢化社会を迎える日本
2 注目を浴びる医療・介護・健康ビジネス
3 商社への期待
4 商社の活動と具体的な取組み事例
(3 先端技術と総合力で市場のニーズに応える(ICT)
1 進化を続けるICT
2 総合力を活かしたECサイト
3 先端クラウド技術の応用的
4 重要度を増すサイバーセキュリティ
(4 クリーンで経済的な社会を目指して(再生可能エネルギー)
1 再生可能エネルギーの位置付けと課題
2 成長戦略の中の再生可能エネルギー
3 再生可能エネルギーへの商社の取組み

2.拡大する国際市場へ挑戦する
(1 インフラ輸出を通じて世界の成長を支える(インフラ輸出)
1 新興国の新規需要と先進国の更新需要
2 インフラ輸出の複合的な波及効果
3 インフラビジネスと商社の役割
(2 商社がはぐくむクールジャパン(クールジャパン)
1 クールジャパンとは何か
2 日本政府の推進するクールジャパン戦略
3 商社にとってのクールジャパン
4 クールジャパンの具体的な戦略や取組み
(3 グローバル展開の先導役として(海外進出支援)
1 国際展開戦略・現地の国家計画に基づいた大型開発
2 長期にわたる取組みとトータルサービスの提供、産業クラスターの形成
3 低炭素社会の実現を目指したスマートシティ開発

3.日本産業の成長基盤を強化する
(1 資源小国日本を支えるグローバルな取組み(資源・エネルギー)
1 世界の資源・エネルギー情勢
2 日本の状況
3 資源・エネルギーにおける商社の役割
4 資源・エネルギーでの商社の具体的な取組み事例
(2 食料の安定調達の担い手として(食料)
1 世界の食料需給と商社の役割
2 「調達」「物流」「販売」における商社の活動
(3 民間の資金や知恵を活用する(国内インフラ)
1 インフラ問題に直面する日本
2 注目を浴びる民間の資金や知恵を活用したインフラ整備
3 商社への期待
4 国内のインフラ整備での商社の活動と具体的な取組み事例

第4章 経済成長の経済学から見た商社の役割(戸堂康之主査)
(1 経済成長のためには何が必要か
1 経済成長の源泉
2 イノベーションを生む「つながり」
3 つながりに対する政策支援
(2 アベノミクスの経済学
1 経済学から見たアベノミクスの評価
2 アベノミクスの成長戦略への期待外
3 成長戦略の課題
(3 経済成長における商社の役割
1 つなぎ手としての商社
2 変革者としての商社
3 商社へのさらなる期待

終わりに

参考文献
日本貿易会「日本の成長戦略と商社」特別研究会・開催状況
日本貿易会「日本の成長戦略と商社」特別研究会名簿
一般社団法人日本貿易会 法人正会員名簿
執筆者紹介

日本貿易会「日本の成長戦略と商社」特別研究会 (著), 戸堂 康之 (監修)
東洋経済新報社 (2014/5/30)、出典:出版社HP

序章 日本の成長戦略と商社

1 「アベノミクス」の真価を問う成長戦略の実行

日本経済は1990年代初めに始まったいわゆる「失われた20年」の長期にわたる停滞からようやく明るさを取り戻しつつあるように思える。
2012年12月16日の衆議院議員選挙での自民党圧勝を経て成立した第2次安倍政権は発足当初から、長年にわたるデフレからの脱却と日本経済の再生、および日本経済・企業が抱える6つのハンディキャップ、すなわち過度な円高、高い法人税率、自由貿易協定への対応の遅れ、不安定な電力事情、厳しい環境規制、製造業派遣禁止などの労働規制という、いわゆる六重苦の克服に向けて、矢継ぎ早に経済政策を打ち出した。
第1の矢、デフレマインドを一掃するための「大胆な金融政策」、第2の矢、湿った経済を発火させる「機動的な財政政策」、そして第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」、すなわちアベノミクスの3本の矢がそれである。それは同時に、民主党時代の「縮小均衡の分配政策」から、「成長による富の創出の好循環」への政策転換でもあった。
第2次安倍政権の本格稼働から1年あまりを経過した現在、消費者物価指数が上昇に転じるなど、長らく続いたデフレにも歯止めがかかり、同時に株価の上昇、超円高の修正、あるいは雇用者数の増加、企業収益の改善、さらには賃金上昇への期待など、今のところアベノミクスは成長の好循環に向けて順調な歩みを続けているように思える。しかし、これまでのアベノミクスの順調な滑り出しは、第1の矢の「金融政策」と第2の矢の「財政政策」の2本の矢の効果に負うところが大きく、安定的かつ持続可能な経済成長とそれによる富の創出の好循環を確実なものにするためには、第3の矢である新たな「成長戦略」の実行が欠かせない。
新たな「成長戦略」は、第1の矢、第2の矢によりようやく国民や企業が自信を回復しつつある中で、その自信回復を確実なものとし、安定的、持続的成長へのしっかりした道筋を具体的かつ明確に示すものでなければならない。
そうした成長戦略への期待の中、2013年6月には安倍政権の成長戦略のコアである「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」が閣議決定され、2013年末には、臨時国会で産業競争力強化法案、国家戦略特区域法案など成長戦略関連の9つの法案が成立した。「日本再興戦略」は、民間の活力を最大限に引き出すことを主目的に、10年間平均で実質成長率2%程度、10年後には1人当たり名目国民総所得の150万円以上拡大という数値目標とともに、産業基盤の強化と国内・海外の市場開拓を目指すアクションプランから構成されている。
具体的施策の中には踏み込み不足のものや、法人税減稅など期待されながら盛り込まれなかった施策もあり、また優先順位が必ずしも明確でないとの批判もあるが、その豊富な内容と、主要政策について過去の成長戦略に比べより具体的な中長期の工程表が示されていることなど、総じて評価できるものとなっている。
成長戦略は、過去政権交代のたびに打ち出されたが具体的かつ有効な政策の実行が伴わず大きな成果が得られなかったきらいがある。今回の安倍政権の成長戦略についても、これからの具体策の実行力が真に問われるところであり、積み残し案件や医療・介護、農業などにおいてさらに踏み込むべき施策を付け加えるとともに、そのメニューの確実な運用・実行が強く期待される。

2「失われた20年」と商社の歩み

総合商社は、この「失われた20年」において、1990年代にはIT革命により商社の仲介機能が必要なくなる、いわゆる「商社不要論」が叫ばれ、またバブル崩壊とその後遺症による日本経済の悪化、低迷と軌を一にして業績が低迷、不採算事業の整理や不良債権の償却など経営体質の改善を余儀なくされた時期もあったが、特に2000年代に入り、日本経済が低空飛行を続ける中で、必ずしも平たんな道ではなかったものの、総じて成長を続け、業績を伸ばしてきたといえる。
1990年代初めから現在に至るこの時期は、日本においては「失われた20年」であるとともに、世界経済においても大きな構造変化がもたらされた20年といえる。日本経済は、それまでの高度成長とそれが頂点に達したバブル経済から一転、バブル崩壊とその後の低迷期に突入した。一方世界経済は、冷戦構造の崩壊により東西の融合が進み市場経済化が進展、拡大していくとともに、先進国が低成長を余儀なくされる一方でBRICsに代表される新興国が台頭、フロンティア市場が拡大していったが、新興国の急成長は資源需給の逼迫と資源価格の上方シフトをもたらした。同時に成長著しい新興国を巻き込んだ二国間経済連携や地域経済連携の拡大など世界的な貿易自由化も大きく進展、その間IT技術も格段の進歩を遂げた。言いかえれば、世界はグローバリゼーションと情報化の進展により大競争時代を迎えたといえる。
日本経済における「失われた20年」は、ある意味グローバリゼーションや情報化の進展により世界の産業構造や地軸が大きく変化し、大競争時代が到来する中で、日本としてその大きな変化への対応を怠り、世界経済の潮流に乗り遅れた20年ではなかっただろうか。一方、総合商社は、その成立以来それぞれの時代の中で、世界・日本経済の発展度合いや環境の変化に対応して、すなわち「変化への適応力」という総合商社の本質を駆使して、その時代時代に必要とされる機能を磨き、役割を演じることによって、ビジネス基盤を拡大、成長を続けてきた。
1990年代以降世界経済がグローバリゼーションと情報化により大きく変化していく一方で日本経済が長期低迷を余儀なくされた間も、総合商社は「変化への適応力」というコア・コンピタンスを研ぎ澄まし、グローバリゼーション、情報化など時代の潮流に対応し、情報産業分野など新たなフィールドへの事業展開、新興市場・フロンティア市場へのシフト、資源・エネルギー権益確保への取組み、バリューチェーンの構築・展開による事業拡大など、その役割と機能を進化、拡大させ、また長年にわたり培われ、構築されてきたグローバルなネットワークを活用し、時代を先取りしたビジネスを創造し成長を続けてきている。

3 変わり続ける世界、日本が「変わる」ための課題

グローバリゼーションと情報化が進展を続ける世界においては、変化のスピードとそのマグニチュードは従来の比ではなく、世界は今も変わり続けている。途上国・新興国の成長も、いわゆるLeap Frog(蛙とび)現象といわれるように、従来先進国が経験した経済成長とはまったく違った経路をたどる可能性が高い。
足元の世界経済は、高成長を続けてきた新興国経済にも構造問題の顕在化や資金フローの変調などから総じて逆風が強まるなど、2000年代に入り続いてきた先進国低成長、新興国高成長の構図が崩れかけている感があるが、一方で、人口動態から考えれば新興国・途上国の経済発展は疑うべくもなく、特にアジア地域における中間所得層の拡大は、今後とも世界経済に大きなインパクトを与えることは間違いない。変わり続ける世界では、足元の状況、短期的な動きと中長期にわたる潮流をきっちり峻別して見極めるとともに、地域・国によって一様ではない変化を読み取っていくことが肝要である。
翻って日本を見れば、先の「日本再興戦略」で指摘されるまでもなく、六重苦に代表される、「失われた20年」、すなわち日本が世界の潮流に乗り遅れている間に積み重なったさまざまな課題、さらには2011年3月に日本を襲った東日本大震災により、震災復興のみならず、原子力発電停止に伴う電力・エネルギー問題などの課題も顕在化し、さらにより中長期的には、少子高齢化や持続可能な社会保障制度の構築など、対応、克服すべき課題は山積している。

4 成長戦略実現に向けた商社の役割と本書の意義

そして今、変わり続ける世界の中で、こういった山積する課題を克服しつつ、日本経済における「失われた20年」を脱し健全で安定的かつ持続可能な経済成長を実現していくための成長戦略の推進が求められているこの時代に、これまでも日本や世界の変化に対応して、幅広い分野で、時代を先取りしたビジネスをグローバルに展開してきた総合商社、世界に張り巡らせたネットワークを通じ世界の変化をリアルタイムで感じることができる総合商社が、ビジネスや事業を通じて、日本の成長戦略実現に貢献できる可能性は大いに高まっているのではないだろうか。
本書でも詳しく紹介するように、商社が取り組んでいる、あるいは取り組もうとしている事業・ビジネスには、既に成長戦略を先取りして展開しているケースも数多く見受けられる。
本書では、以上のような問題意識をベースとして、わが国を取り巻く内外環境の変化と中長期的な世界と日本の潮流を理解しつつ、日本経済の持続的成長の実現に欠くことのできない成長戦略の必要性とその課題を考えるとともに、商社が日本の成長戦略の実現に向けて果たすべき機能は何か、役割は何かを、数多くの具体的事業・ビジネスを紹介、参考にしながら、考えていきたい。
総合商社が世界経済、日本経済をその中長期的な先行きも含めどのように認識しているのか、そのうえで長年にわたり培われた総合商社の機能を活用し、どのようなビジネスや事業で、日本経済の持続的成長の実現に貢献しようとしているのかを理解する一助にしていただきたい。

5 本書の構成

第1章「大きく変わる世界と日本」では、世界経済の現状をあらためて確認するとともに、中長期的な世界経済と日本経済の潮流を考察する。前半では、リーマンショック以降の環境変化を踏まえた世界経済の現状と課題、さらに日本においては2011年3月1日に発生した東日本大震災の影響、特に資源・エネルギー政策の動向と日本の貿易収支・経常収支の動向に焦点を当てている。後半では、中長期的な世界および日本経済の潮流を考える。世界経済においては、引き続きグローバル化が進展する中で、比較的高い成長が期待されながらも構造的脆弱性を抱える新興国と、成熟化が進み経済成長が低下していく先進国が今後ともwin-winの関係の構築を進めていく必要があるが、基礎的なインフラ整備、各種資源・エネルギーの供給不安、省エネ・環境問題、あるいは経済連携・地域経済統合などwin-winの関係構築、世界経済の成長のために対応すべき課題や潮流について考えていく。また日本経済については、上記のような世界的課題に加え、東日本大震災からの復興、少子化・高齢化と労働人口の減少、健康・医療・介護問題、財政再建問題という中長期的な課題と、その処方箋としてのアベノミクスについても考えていきたい。
第2章「進化を続ける商社の機能」では、時代とともに変化を続ける商社機能の変遷をたどるとともに、成長戦略実現に向けた商社の機能と役割について考えてみたい。第2次大戦後の日本の経済発展段階に応じて商社が果たしてきた機能と役割、特に1990年代から現在まで世界がグローバル化と情報化の中で迎えた大競争時代における商社の機能と役割を考えるとともに、現在商社が持っている機能をベースにして、日本産業の下支え、新たな事業創造、市場開拓、海外進出に向けた先導役など、成長戦略の実現、日本経済の成長実現に向けて商社に期待される機能と役割についてあらためて整理してみたい。
第3章「日本を元気にする商社ビジネス」では、具体的なビジネスの事例を数多く紹介し、成長戦略実現に向けて商社が実際にどのようなビジネス、事業を展開しているか、しようとるかを見ていただく。10の事業分野を「新たな事業を創造する」(農林水産業、医療・介護・健康、ICT、再生可能エネルギー)、「拡大する国際市場へ挑戦する」(インフラ輸出、クールャパン、海外進出支援)、「日本産業の成長基盤を強化する」(資源・エネルギー、食料、国内インフラ)の3つのカテゴリーに分け、商社がいかにダイナミックに成長(戦略)実現に向けしているかを具体的事例とともに理解していただければ幸いである。
第4章「経済成長の経済学から見た商社の役割」では、本書全体を通じて監修いただいた戸堂主査より、経済学の立場から、経済成長の源泉や成長に必要な政策、アベノミクスの評価、および成長戦略実現に対する商社への期待について論じていただく。経済成長の源泉であるイノベーションを生む「つながり」の重要性、排他性と衰退の悪循環を回避するための多様なつながり、よそ者とのつながり構築を支援する政策、アベノミクスの評価とその成長戦略への期待と課題、最後に、経済成長においてつなぎ手としての商社、変革者としての商社が果たすべき役割と商社への期待について提言いただく。

日本貿易会「日本の成長戦略と商社」特別研究会 (著), 戸堂 康之 (監修)
東洋経済新報社 (2014/5/30)、出典:出版社HP

総合商社論

総合商社の事業革新について学ぶ

1990年代末に経営破綻の危機にあった総合商社は、2000年代に流通会社からトレーディングと事業投資を柱とする総合事業会社へと事業革新することで危機を逃れました。商社の成功は、物流・商流網を再編し、グローバル分散したことにあります。本書では、総合商社の事業革新について学ぶことで、日本の企業がグローバル化にどのように対応していけば良いのか明らかにしていきます。

榎本俊一 (著)
中央経済社 (2012/11/7)、出典:出版社HP

はじめに

国内経済が長期デフレから脱却できず成長性を喪失しつつある中,我が国企業の多くは内外の企業戦略の見直しを迫られている。1990年代末には経営破綻の危機に瀕していた総合商社が,2000年代に資源・エネルギー市況の高騰などの「追い風」もあったものの,事業ポートフォリオ管理やトータル・リスク・マネジメントを武器としつつ,ビジネス・モデルを変革して事業基盤・収益基盤の再構築に成功し,国際的な「優良会社」に生まれ変わったことは,総合商社以外の企業にとり大いに示唆に富むのではないだろうか。

現在の総合商社の好業績は,「総合事業会社」等のビジネス・モデル上の革新,ポートフォリオ管理やトータル・リスクマネジメントなどのビジネス基盤の構築,グローバル化への積極的な対応に要因を求められると考えるが,本書では,その商社の「強み」について財務データ分析とケーススタディ分析の双方を行い,実態の解明に努めた。総合商社関係者のみならず,我が国でビジネスに取り組む方にとり,本書が商社ビジネスへの理解を深める助けとなれば幸いである。また,総合商社の経営分析・産業分析にあたられる研究機関や研究者にとり,現在の商社ビジネスの展開を考える視点の一つを提供できれば,筆者としては名誉なことである。

また,学生諸氏には,経営学部等において,商社関連文献の研究に取り組んでいる方もあろうかと思う。ただし,総合商社のビジネス・モデル論には,特定商社だけでなく商社全般に援用できるものがないため,個別商社の研究は楽ではない。本書が商社研究の助けとなれば幸いである。若者は「現在」に強く惹かれるものだと思うが,日本経済や世界経済の構造変化の中で,総合商社がいかに変わったか,変わらなければならなかったかを理解することは大切である。今日の商社の成功も,初めから計画や成算があったわけではなく,目的地の見えない試行錯誤の過程で「最善」を尽くすことで勝ち取られたものである。このことを知れば,学生各位がこれから進むリアル・ビジネスへの興味も一層高まるのではないだろうか。

停滞する日本経済を尻目に,新興国等は目覚ましい成長を続けているが,我が国のグローバル企業にとり,国内市場依存から脱却して収益構造のグローバル分散を果たせるかが今後の命運を握る。2000年代央以降,総合商社は海外戦略を「世界企業」化に転換し,収益のグローバル分散に取り組んでいる。ただし,現在の「超円高」の中で中堅・中小メーカーまでが海外移転に社運を儲ける状況を見ると,国内雇用基盤の維持は深刻な問題である。読者各位も,総合商社のグローバル展開に関する考察をお読みいただいたならば,この点にも思いを巡らしていただきたい。

なお,本書は第三者が検証可能であることという学術論文の原則に忠実に,総合商社が公表している有価証券報告書,アニュアルレポート等を含む刊行資料にのみ基づき分析を行った。ご多忙中にもかかわらず多くの実務家・研先者の方々から,ご協力とご指導を頂戴した。本書の内容は一切が著者個人の見解であり,所属組織を含む如何なる特定の団体・組織の見解ではないものの,この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

2012年10月
榎本俊一

榎本俊一 (著)
中央経済社 (2012/11/7)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1部 総合商社を巡る論点~高業績を続ける商社ビジネスを支える基盤~
第1章 業績好調を続ける総合商社
第2章 総合商社ビジネスを支える基盤
1 過去の商社ビジネス
1 主要経営指標
2 ビジネス・モデル
3 リスク・マネジメント
4 コーポレート・カバナンスと資本政策
2 現在の商社ビジネス
1 成長性・効率性・財務安全性の3点セット
2 総合事業会社
3 リスク・マネジメントとポートフォリオ管理
4 グローバル戦略
5 コーポレート・カバナンスと資本政策
第3章 本論の検討課題と構成
1 総合事業会社を巡る論点
1 財務データに基づく「総合事業会社」モデル分析
2 トレーディングと事業投資に関する統一的なフレームワーク
3 “Value Chain Design”等の射程
2 リスク・マネジメントとボートフォリオ管理を巡る論点
1 歴史的な試行錯誤の産物としての商社ビジネス・モデル
2 「攻め」のリスク・マネジメントとポートフォリオ管理への変化
3 経営の導入との関連
3 商社の事業・収益基盤のグローバル分散を巡る論点
1 「世界企業」への道
2 商社ビジネス分析における世界経済構造変化への配慮の重要性
4 本書の構成

第2部 総合商社のビジネスモデル
第1章 「総合事業会社」モデルとその問題点
1 伝統的な総合商社ビジネス
2 現在の総合商社ビジネス
1 ビジネス・モデルの転換
2 「総合事業会社モデル」
3 検証
1 総合商社全般の収益構造の推移
2 総合商社各社の収益構造の相違
第3章 “Value Chain Design”モデル
1 “Value Chan Design”モデル
1 三菱商事によるモデル説明
2 自動車のサプライ・チェーンにおける”Value Chain Design”
2 “Value Chain Design” モデルの射程
1 “Value Chain Design”モデルの適用条件
2 “Value Chain Design”モデルの親和的な「商流」
3 “Value Chain Design” モデルは三菱商事的?
3 商社各社により普遍的な「ビジネス・モデル」
1 伊藤忠商事のカンパニーの成長戦略
2 “Value Chain Design” との共通点と相違点
4 まとめ ~「サプライ・チェーン」と商社ビジネス~
第4章 総合商社と投資会社の比較
1 商社ビジネスにおける事業投資の位置づけ
2 外国投資家の総合商社観~なぜ外国投資家は投資会社との比較にこだわるのか〜
3 投資会社に優る収益率を上げる総合商社
1 投資会社の収益率
2 総合商社のROEの推移
4 総合商社に対する投資家の冷静な評価
5 まとめ
第5章 “Value Chain Design” 私論
1 “Value Chain Design” の前提とする市場
2 新興国市場における事業展開
3 「世界企業」化に伴うビジネス・モデルの変換
4 企業活動の多国籍化とビジネス・モデル
補論:総合商社と資源会社との比較
1 資源・エネルギー部門の好調
2 資源会社との相違点
1 資金調達力の劣後
2 資源開発の制約
3 配当の制約
4 その他
3 非資源会社として健闘する総合商社

第3部 優良会社(“Excellent Company”)
第1章 バブル崩壊後のパラダイム転換
第2章 バブル期の企業経営
1 バブル期の企業経営
1 1986~1990年の企業業績
2 「含み益経営」の罠
3 企業の資産取得競争を支えた背景
2 商社経営
3 三菱商事の主要指標の推移
第3章 「バブル崩壊」後の財務体質改善と収益基盤再構築の取り組み
1 「バブル崩壊」に伴うビジネスモデル転換
1 企業収益・財務の急激な悪化と進行
2 「縮み志向」の経営への転換
3 収益基盤の再構築
2 リスク・マネジメントとポートフォリオ管理
1 個別案件対応型リスク・マネジメントの限界
2 「縮み志向」の経営時代のリスク・マネジメント
3 リスク・マネジメント事例
1 三菱商事のポートフォリオ管理
2 伊藤忠商事のポートフォリオ管理
第4章 1990年代後半の”Corporate Governance”改革
1 長期戦化した財務体質改善
2 グローバル・スタンダード経営
3 総合商社の米国型経営への対応
第5章 2000年代前半の「リストラ」成功と「企業統治」改革
1 海外投資家の所有比率の向上が後押しした企業統治改革
2 収益構造の再構築の前提としてのリストラ
1 不良資産償却による資産圧縮
2 具体的な財務体質の改善状況
3 企業統治への米国型経営スタイルの導入
第6章 2000年代の”Excellent Company”改革
1 2000年代の”Excellent Company”
2 「攻めの経営」と”Portfolio”管理の展開
1 「積極投資」時代の「ポートフォリオ管理」の課題
2 個別事例1「三菱商事におけるポートフォリオ管理」
3 個別事例2「伊藤忠商事におけるポートフォリオ管理」
4 三菱商事と伊藤忠商事のポートフォリオ管理の相違
第7章 結び

第4部 グローバル経営~新興国台頭と「世界企業」への道~
第1章 グローバル・ビジネス
1 総合商社のグローバル・ビジネスの変質
2 長期間に及んだグローバル・ビジネスの転換
3 第4部の構成と狙い
第2章 1990年以降の内外経済の構造転換~2000年代の総合商社のグローバル展開を用意した経済環境の変化~
1 1990年代の世界経済の構造転換
1 ASEAN を「世界の工場」とする生産ネットワーク
2 総合商社におけるグローバルな商流・物流の構築
2 2000年代の世界経済の構造転換
1 日米欧三極から米欧中三極への世界貿易の構造転換
2 「東アジア生産ネットワーク」の変容
3 総合商社におけるグローバルな商流・物流の再編
3 国内市場の停滞と新興国市場の胎動
1 長期デフレと高齢化により成長性を喪失した国内市場
2 海外市場のビジネス・チャンスの拡大
3 総合商社ビジネスの変化
第3章 三菱商事の海外戦略
1 事業基盤再構築にフォーカスした「MC2003」
2 「INNOVATION 2007」~製造業のグローバル展開と中国台頭への対応~
3 「INNOVATION 2007」期間中の変化~国内成長停滞への懸念と「グローバル成長の取込み」への軸足シフト開始~
1 地域戦略の横串化
2 国内成長からグローバル成長への重心移動
4 「INNOVATION 2009」における主役交代~新規産業待望からグローバル・ビジネスへ~
1 グローバル成長の取込みに向けた取り組み
2 リーマン・ショック後も維持されたグローバル成長の取込み戦略
5 「中期経営計画2012」~健全性・効率性に配慮した積極策~
1 ポートフォリオ・マップ上の地域軸の明示
2 新規成長分野もグローバル市場の成長分野にフォーカス
3 新興国等の成長の取込みに舵を切った投資計画
4 積極的な海外事業展開状況
第4章 伊藤忠商事の海外戦略
1 財務・収益基盤の再構築の中での中国・北米戦略の模索
2 「Frontier-2006」~連結純利益の50%を海外で稼ぐことを目標化~
3 「世界企業」を経営理念に打ち出した「Frontier+2008」
1 収益のグローバル分散とビジネスの現地化を目標に
2 北米・中国・アジア市場に注力しアジア大の取引拡充へ
4 海外展開を加速化させた「Frontier e2010」~リーマン・ショック後の海外事業を中心とした業績回復~
5 「Brand-new Deal 2012」~新興国に限定しないグローバルな活動を目標に~
第5章 公表数値による検証
1 伊藤忠商事の海外事業状況~道半ばの世界企業化~
1 連結純利益の6割台半ばに達した海外事業損益
2 売上高・収益より見た海外事業のウェイト
3 純利益・商取引のグローバル分散する「世界企業」へ
2 三菱商事の海外事業状況~国内市場との太い結びつきに立脚する収益構造〜
3 住友商事の海外事業状況~事業間だけでなく地域間にも貫徹されたポートフォリオ管理~
1 地域リスク分散を重視した基礎収済のグローバル分散
2 6割台を維持する国内収益比率
3 リスク分散,事業ポートフォリオのバランスを重視するグローバル戦略
第6章 各社各様の「世界企業」への道

おわりに
参考文献

榎本俊一 (著)
中央経済社 (2012/11/7)、出典:出版社HP