落語ことば・事柄辞典 (角川ソフィア文庫)

【最新 落語について学ぶためのおすすめ本 – 初心者から上級者まで】も確認する

落語辞典の決定版

落語を知るためのキーワード616項目が掲載されています。キーワードを6つのジャンルに分類し、それぞれ観どころや聴きどころを丁寧に解説していきます。落語初心者におすすめの、読んで腑に落ちる1冊です。

榎本 滋民 (著), 京須 偕充 (編集)
出版社 : KADOKAWA (2017/8/25)、出典:出版社HP

落語ことば・事柄辞典 (角川ソフィア文庫)

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目次

一 時・所・風物
二 金銭・暮らし・衣食住
三 文化・芸能・娯楽
四 男と女・遊里・風俗
五 武家・制度・罪
六 心・体・霊・異
主要演目掌解題
あとがき
演目索引
項目索引

榎本 滋民 (著), 京須 偕充 (編集)
出版社 : KADOKAWA (2017/8/25)、出典:出版社HP

本書は、著者・榎本滋民氏が、東京の国立小劇場で月一回開催されているホール落語の会、落語研究会(TBS主催)のプログラムに連載されていた「落語学事典」を集大成したものです。
毎回、口演五演目の落語それぞれから一項目ずつ、簡潔明快に、また適確に解説されたこの「落語学事典」は読んで楽しく、また落語を味わう者にとって何よりの肥やしになる読物でした。時折り添えられる独特のエスプ リが巧まずして落ちになり、知識の小咄の趣きさえありました。平成十五(二〇〇三)年一月十六日、著者の急逝 によって連載に突然のピリオドが打たれたのは、返すがえすも残念なことでありました。
榎本滋民氏は昭和五(一九三〇)年二月二十一日、東京で生まれました。國學院大學文学部に学んだ後、雑誌編 集のかたわら劇作に従事、昭和三十六(一九六一)年ごろから劇団新派の台本脚色を手がけました。同年、『孤 塁」で『オール讀物」募集戯曲第一席に入賞、これは新派で上演されました。
以後は松竹、東宝などの商業演劇を中心に制作に脚色に演出に活発な活動を展開され、代表作に新国劇の『同 期の桜」、新派の『花の吉原百人斬り」、「寺田屋お登勢」(初代・水谷八重子十種の内)、歌舞伎の『大江山酒呑 童子」、山田五十鈴とのコンビで「浮世節立花家橘之助・たぬき」(山田五十鈴十種の内)、『同・新編たぬき』、『愛染め高尾』、『樽屋おせん」、『お市の方」などのほか、『ぼたん刷毛・女優松井須磨子」、『桃中 軒雲右衛門」など多数があります。
作風は史実、逸話にもとづいて綿密周到な考証を重ねた上に重厚な人間ドラマを築くものですが、随所に洒落 や遊びを施すところに、落語などの諸芸に通じた作者の面目が躍如としています。
小説にも『夢二恋歌」『お前極楽」(ともに講談社刊行)、『明日のことは知らず候」、などがあります。 落語ほか芸能一般に精通するところから、多年にわたって芸術祭賞、芸術選奨などの選考委員もつとめられました。TBSが、落語研究会で収録した口演をテレビ放映した「落語特選会」での名解説者ぶりもっとに名高く、二十年の長きにわたって担当されました。
落語関係の著作には『落語小劇場」上下、『落語俗物園」(ともに三樹書房)、『古典落語の世界」(講談社)、『古典落語の力」(筑摩書房)、『長屋歳時記」(たくみ書房)などがあります。
「落語学事典」連載開始にあたって、著者は次のような短い舌代―前口上を添えています。
山本文郎アナウンサーとの対談でおなじみのTBS「落語特選会」のように、演目に関係のある、風俗・ 制度・故事・用語などを、演目ごとに紹介してまいります。ただし雑学・珍学・駄学の学術的価値について は、責任を負いません。
雑学・珍学・駄学と自称し、学術的価値については責任を負いません、と突き放すところに、著者の人柄と見 識がうかがわれます。
著者は、江戸の、江戸文化の大切な要素であるシャイネスの気風をとても尊重されました。そこから風刺や川 柳や落語が生まれ、冗談が一味ちがった洒落になる。落語の、そして芸のこころは、シャイネスの気風を失って はならない――、そんな思いがあったように思われます。
シャイな対応や言動は必ずしも当世向きではなく、また、シャイ迎えにやさしさが正反対の悪態になって表れ たり、ひそかな自負が謙遜どころか自虐のスタイルさえとってしまう――、そんな「江戸気質」が落語愛好者の 間でさえ理解されにくくなっている昨今ですが、著者は終生、シャイネス居士を貫き、江戸の、落語の「気質」 に殉じた人だったように思われます。
考証や研究には、ひととおり以上の力を注がれ、確信したことのみを解説する著者でしたが、学識を誇るよう に受け取られるのは心外だったにちがいありません。そこはそれ落語に通じた人、「やかん」や「千早振る」のエセ識者と並べられる愚は百も承知だったのです。
対談のテレビ画面で、山本アナウンサーにちょっと視線をそらして照れたポーズをとり、しかし淀みなく明快 に解説されていた著者の姿は、いまは懐かしいものとなりました。
連載「落語学事典」は、その日の会の、あらかじめ公表されている落語演目にもとづく解説でしたから、実演 を離れた時点で集めてみると、全くのアトランダム、いわば五目の集積と化してしまいます。そこで、ごく大まかに六つの世界に分類して、その中で五十音順に揃えてみました。とはいえ、庶民の生活に根ざした複合的な事 象を単純に色分けし切れるものではなく、多少の無理や重複が生じたことは否めません。
同一項目について複数の稿が存在するものについては、文章が重複しないよう、ただし原文を極力損ねないよう編集して一項にまとめました。そのためにオリジナルの記載より文字数が倍増している場合も多くあります。
また、たとえば『がまの油」について書かれた「口上難解語句」の項は、当日の公演を離れてみると、何についての語句のことかわからなくなりますので、「がまの油口上―難解語釈」と項目名を修正しました。
そのほか、「辞典」にまとめるにあたって、利便性の観点から小さな修正、変更を施した箇所がありますが、 原文そのものを極力そのまま生かしたつもりです。
また、落語に精通した読者には無用のものですが、これから精通の道をたどる読者のためにと、巻末に拙文 「主要演目掌解題」を掲載しております。噺の片鱗をチラリと見せるのが精一杯の、廓噺風に言えば「三日月解 題」にしかすぎませんし、全項目の演目には、とても手が届きませんでした。
また、たとえば『酢豆腐」のような普及演目であっても、著者執筆期間に落語研究会で口演がなかった演目は 外しております。
生前、著者が「落語掌事典」を一巻にまとめる意図があったかどうかは確かめるすべがありませんし、また、 かりにその意図があったとすれば、もっとちがったかたちを想定されていたのではないか、とも思われます。
こうした仕上がりになったことを、泉下の著者がどのように思われるか、編者としては冷汗ものではあります が、それでも著者の該博な江戸知識と落語へのあたたかいまなざしがひとつの結晶を見たことに、僭越ながら、 やすらぎに似た思いを感じております。
ここで、本辞典の辞典的価値については責任をと締め括ったのでは、「大工調べ」の与太郎ではあるまい し、とんだ著者の猿真似になってしまうことでしょう。
京須惜充

榎本 滋民 (著), 京須 偕充 (編集)
出版社 : KADOKAWA (2017/8/25)、出典:出版社HP

凡例

一、項目は六つのジャンルに分類、その中で五十音順に配列した。
一、項目に関連する落語演目については、それぞれの項目名の下に*をつけて記した。
一、参照項目については、各項の最終行に示した。
一、巻末に全項目の五十音順索引・演目別索引を付した。

一 時・所・風物

主要項目

時・所・風物
愛宕山/丑三ツ時
江戸の花見/近江八景
福籠/祇園祭
蔵前/麹町
三十石船/四宿
品川宿/庄屋・名主
人力車/鈴ヶ森
隅田川の渡し/住吉
高砂/宝船
茶店/ 佃島
十日戎/土用
乗合船/旅籠
備前焼/本所の七不思議
宮戸川/向島
屋根船/數入り

榎本 滋民 (著), 京須 偕充 (編集)
出版社 : KADOKAWA (2017/8/25)、出典:出版社HP