株式投資の未来: 永続する会社が本当の利益をもたらす

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目次  – 株式投資の未来: 永続する会社が本当の利益をもたらす

序文—

第1部「成長の罠」を暴く
第1章成長の罠
技術革新の果実成長の罠
だれが儲け、だれが損をする?
長期投資に最適の銘柄
(20世紀半ばの経済 / IBMか、スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーか? / なぜスタンダード・オイルがIBMにまさるのか / バリュエーションと成長率)
株式と長期的リターン
投資家の未来
人口動態から予想される危機
世界的解決
投資の新アプローチ
本書の構成

第2章創造的な破壊か、創造の破壊か?
「買い持ち(バイ&ホールド)するなら、どの銘柄か?」
創造的な破壊と株式市場過去に答えを求める
S&P500種株価指数の歴史S&P500
当初銘柄のポートフォリオ3種
長期的リターン
実際のS&P500のリターンが当初採用銘柄にかなわない理由
ヤフー時価総額とリターンのちがい
(配当再投資の意味 / 時価総額が減少し、リターンが上昇するケース /時価総額が増加し、リターンが下落するケース)
スピンオフ銘柄を保有するか、売却するか?
投資家のための教訓

第3章時に裏打ちされた価値 黄金銘柄(コーポレート・エメナルド)を探して
黄金銘柄(コーポレート・エメナルド) – 運用成績ナンバーワン
企業にとっての悪材料が投資家にとって好材料になる理由
S&P500生き残りの運用成績ナンバーワン
(消費者ブランドのカ / 医薬品会社)
黄金銘柄(コーポレート・エメナルド) – 投資家リターンの基本原則
(バリュエーションは物を言うどんなときも/上位20銘柄の実績/配当による増幅効果/PEGレシオと「成長株にはいくらでも払う」アプローチ/黄金銘柄(コーポレート・エメナルド)に共通する特徴)
過去の黄金銘柄—1970年代の「素晴らしい50銘柄」
投資家のための教訓

第4章成長すなわちリターンにあらず成長セクター投資に潜む罠―
世界産業分類基準(GICS)セクター・バブル:石油セクター、ハイテク・セクター
(エネルギー/ハイテク)
金融とヘルスケア-成長産業
(金融/ヘルスケア)
消費者向けセクター – 一般消費財と生活必需品
(資本財/素材/電気通信/公益事業)
セクター別構成比の推移とリターン
セクター戦略
投資家のための教訓

第2部過大評価される成長株
第5章バブルの罠-市場の多幸症(ユーフォリア)をどう止め、どう避けるか―79
インターネット&ハイテク・バブル投資家は教訓を学んだか?
教訓その1:バリュエーションはいつも重要
(アメリカ・オンライン)
教訓その2:買った銘柄に惚れ込んではいけない
教訓その3:時価総額が大きく、知名度の低い銘柄は要注意
教訓その4:三桁のPERは避ける
大型ハイテク銘柄
ハイテク企業の増益率を予想する。
教訓その5:バブルで空売りは禁物
投資家への奨め

第6章新興の中の新興に投資する――新規公開株(IPO)
IPO投資は儲かるか?
IPO銘柄の長期的リターン
IPOの運用成績上位グループ
IPOポートフォリオのリターン
IPOのリスクI
PO市場が高騰するとき
老舗と新興と創造的破壊
創業者、ベンチャーキャピタル、投資銀行
(電気通信セクターをめぐる災難/ベンチャーキャピタル/投資銀行)
利益を出さず、資産もない企業のIPO
常軌を逸した集団妄想と群集の狂気
(南海バブル/NETJ・ドットコム、完璧なバブル会社/事後評)
総括

第7章資本を食う豚―テクノロジー:生産性の源泉にして価値の破壊者
「たのむから発明を止めてくれ」
合成の誤謬
節約家と浪費家
技術の進歩
競争激化
航空業界
経営陣と技術力

第8章生産性と収益―負け組業界の勝ち組経営陣
航空業界――サウスウエスト
航空小売業界――ウォルマートウォルマートの成功戦略
鉄鋼業界―ニューコア
勝ち組と負け組

ジェレミー・シーゲル (著), 瑞穂 のりこ (著)
日経BP (2005/11/23)、出典:出版社HP

第3部株主価値の源泉
第9章 金をみせろ(ショー・ミー・ザ・マネー) – 配当とリターンと企業統治
全体像を眺める
配当利回りの低下
成長オプションと配当
ウォーレン・バフェットとバークシャー・ハザウェイ
配当と企業統治(コーポレートガバナンス)
配当赤字
配当課税ストック・オプションと配当
オプション改革
まとめ

第10章配当再投資——下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
大恐慌時代
大恐慌がなかったなら
下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
下落相場のプロテクター-フィリップ・モリスのケース
配当と運用成績上位銘柄
配当利回りと投資戦略
S&P10種
コア10種
アクセルのギアを調整する
自社株買い戻し
ドルコスト平均法
キャッシュを生む投資
まとめ

第11章利益-株主リターンの源泉
利益の測定
当期利益は本物か?
利益の定義従業員ストック・オプション会計をめぐる論争
なぜストック・オプションの経費計上が必要なのか
(オプション経費計上に対する反対意見/株主にとってのリスク/オブションを経費計上する企業)
年金費用会計をめぐる論争
(確定給付型と確定拠出型/確定給付プランの問題とリスク)
スタンダード&プアーズのコア利益
利益の質
利益のバイアス押し上げ要因と押し下げ要因
終わりの一言と、将来の見通し

第4部高齢化をめぐる危機と世界経済の力学シフト
第12章過去は未来のプロローグか?-
資産の長期的リターン
シーゲルの一貫性-株式の実質リターンは6.5~7%
株式のリスク・プレミアム
株式リターンの平均回帰性
世界の株式リターン
過去は未来のプロローグか?
人口動態が突きつける課題

第13章変えられない未来——目前に迫る高齢化の波
投資家にとってどんな意味がある?
高齢化する世界
労働者枯渇
出生率の上昇と下落
延びる寿命
退職年齢の低下
社会保障制度の危機
社会保障制度–永続するマネー・マシーンか?
社会保障信託基金
投資家の対策——高齢化の波に襲われたら

第14章高齢化の波を乗り越える役立つ政策、役立たない政策
退職年齢をモデル化する
それでも早期退職するなら
生産性の伸びを加速する
生産性の伸びの源泉
生産性の向上と高齢化の波
社会保障税率引き上げ – 解答にならない
移民
では、どうするか

第15章世界的解決(グローバル・ソリューション)—真のニューエコノミー
(発見の土壌と伝承/情報伝達の重要性/中国の興隆と衰退/産業革命の前触れ
会の前触れ印刷機/国家間の競争―欧州と中国)
産業革命
真のニューエコノミー
(イノベーションとインターネットの未来/中国とインド)
21世紀半ばの世界
(中国とインドだけではない/貿易赤字と新興国による欧米企業買収/雇用の喪失と創生/
好機であって、脅威ではない)
わたしたちの未来

第5部ポートフォリオ戦略
第16章世界市場と国際ポートフォリオ259
中国とブラジル
(中国/ブラジル/評決)
一般通念はここでもまちがい
成長とリターン
国際ポートフォリオ
国内株バイアス
世界市場の相関性上昇
セクターの分散と国の分散
配分の推奨
外国株に投資するなら
上場投資信託(ETF)
米国株インデックス・ファンド
国際インデックス運用をポートフォリオのコアに

第17章未来に向けた戦略D-I-V指針——277インデックス運用からD-I-V指針へ
配当
(高配当戦略/高配当戦略の実行/不動産投資信託(REIT))
国際
バリュエーション
セクター戦略
(石油/ヘルスケア、生活必需品/「低RER」戦略/「生き残り上位」戦略/バークシャー・ハザウェイ)
インデックス投資とリターン補完戦略
株式ポートフォリオ結論
付録S&P500当初構成企業の変遷とリターン
各章の注釈一覧
主要企業名索引

ジェレミー・シーゲル (著), 瑞穂 のりこ (著)
日経BP (2005/11/23)、出典:出版社HP

 

序文

わたしの初の著書『Stocks for the Long Run』が出版されたのは1994年のことで、当時、米国の株式市場は過去に例がないほど長く力強い上昇相場の真っ最中だった。この本でわたしは、独自の調査に基づく次の事実を紹介した。運用期間を長くとれば、株式は債券に比べてリターンが高いだけでなく、インフレを調整すると、リスクも債券より低くなる。そしてこれを理由として、長期的に投資するなら、株式をポートフォリオの中心にするべきだと結論した。

本が好評だったおかげで、わたしは個人投資家やファンドマネジャーを前にして講演する機会に何度も恵まれた。講演後の質疑応答で、かならず訊かれる質問がふたつあった。「買い持ちするなら、具体的に、どの銘柄を買えばいいだろう?」と、「ベビーブーマ世代が退職して、株や債券を売りはじめたら、わたしの株や債券はどうなる?」のふたつだ。
わたしが本書『株式投資の未来』を執筆したのは、このふたつの問いに答えるためだった。

1990年代の長期上昇相場
前著『Stocks for the Long Run』でわたしは、株式で資産を運用するなら、幅広く市場をカバーするインデックスと連動させる方法がいちばんだと説いた。たとえばS&P500種や、ウィルシャー5000種などだ。市場の先行きを占って、底値で拾って高値で売ろうと売り買いを繰り返す投資家をいやになるほどみてきたので、単純で節度あるインデックス投資にまさる方法はないと考えていた。本書では、インデックス運用のリターンを引き上げる方法としていくつか補完戦略を紹介しているが、それは本書のテーマではない。

1990年代、こうしたインデックス投資はかなり優秀な成だが1990年代も終盤に近づいた頃、わたしは一部の銘柄の株価評価に懸念を深めていた。
わたしの大学院生時代の指導員で、米国人として初のノーベル経済学賞を授賞したポール・サミュエルソンが、『Stocks for the Long Run』に寄せてくれた推薦文が何度も思い出された。

ジェレミー・シーゲルの本書を読めば、長期的な買い持ち戦略の強さを納得しないではいられない。読むがいい。そして儲けるがいい。手っ取り早く稼いだ誰かの話を聞いた日は、我が戦略の真っ当さをもういちど我が身に言い聞かせ、ぐっすり寝ることだ。ただしわたしのような経済学者には、次の問いにじっくり思いを巡らせてほしい。いつか、シーゲルの読者が市場という市場でその戦略を真似する日がくるなら、真っ当を旨とするこの新たな投資哲学が、我が身を滅ぼすのはいつのことだろう?

サミュエルソンがこれを書いたのは1993年のことで、バリュエーションは過去の平均に近い水準にあった。市場が「我が身を滅ぼす」心配は、まずなかった。ところが、ダウ工業株平均が1万ドルの大台に乗せ、ナスダックが5000に近づき、PERでみても配当利回りでみても、株価は過去に例のない高水準に達していた。ここまで上昇すれば、先々のリターン悪化は目にみえていると思えた。いますぐ撤退して、相場が落ち着くまで戻ってくるなと投資家に説いて回りたいくらいだった。

だが市場を詳しく調査したところ、過大評価されているのは、ひとつのセクターだけであることがわかった。ハイテク・セクターだ。それ以外のセクターは、PERでみるかぎり、さほど買われ過ぎではない。1999年4月、わたしはインターネット銘柄の株価水準について考えをまとめて、”オールストリート・ジャーナル紙のコラム面に発表した。タイトルは「”ンターネット株は高過ぎか?そのとおり」だ。わたしが株価水準を公に警報を発したのはこれが初めてだった。

この論文が掲載される少し前、わたしはウォーレン・バフェッートをスクールに招待していた。学生や関係者を前に講演してもらうためだ。バフェットがウォートンのキャンパスを訪れるのは、1949年にここの学部課程を去って以来初めてだった。会場は1000人を超える学生で溢れ反っていた。何時間も行列してようやく入場した者も大勢いる。株式について、経済について、なんであれ物事について、バフェットの言葉を聞き、その見識に触れたい一心からだった。

わたしはバフェットを聴衆に紹介し、その水際立った投資成績を詳しく説明した。バフェットは、光栄きわまりないことに、インターネット銘柄についての質問に答えたとき、わたしのジャーナル紙の論文を読むように聴衆に奨めてくれた。数日前に掲載されたばかりの論文だ。「バフェットの推奨に力を得て、わたしはさらに詳しくハイテク銘柄を調査することにした。PERは前代見聞の水準まで上昇していた。

当時のハイテク・セクターはまさに沸騰状態で、セクターの時価総額がS&P500全体の3分の1に近づいていただけでなく、ナスダックの売買高が、史上初めて、ニューヨーク証券取引所を上回っていた。2000年3月、わたしはジャーナル紙にもう1本論文を寄稿した。タイトルは『大型ハイテク株はポンカス』だ。この論文でわたしは、シスコ、AOL、サン・マイクロシステムズ、JDSユニフェーズ、ノーテルといった銘柄を挙げ、いまの株価水準が続くはずがなく、いずれ大きく下げると指摘した。

バブル期にハイテク銘柄に手を出さなかったなら、その投資家のポートフォリオは、バブル後の下落局面にもまずまず堅調だったはずだ。堅調どころか、S&P500からハイテクを除いた422銘柄の累積リターンをみると、市場がピークを迎えた2000年3月の水準を上回っている。

個別銘柄の長期運用成績
わたしが個別銘柄の長期的リターンに興味を持ちはじめたきっかけは、ある親しい友人の次の経験だった。50年前、その友人の父親はAT&T株を買った。配当を再投資して、マーベルからスピンオフされた子会社の株もすべて保有しつづけた。50年後、ささやかだった投資は、かなりの額の遺産になっていた。

ウォーレン・バフェットの成功も、かなりの部分まで、傷白有する戦略にその理由を求められる。本人がかつて、好みの彼方遠だと語っているくらいだ。わたしはここで、投資家がそれをせたらどうなっていたか知りたくなった。つまり大型株をひとまとまり買って、何十年も保有しつづけたら、どうなっていただろう。

「買って永遠に持ちつづける」だけなのだから、長期的リターンの簡単だと思えるだろう。だが実際にやってみると、簡単どころではなかった。個別銘柄のリターンについて、研究者や機関投資家が利用できるコンピュータは一定の前提に基づいていて、そこでは交付された株式やスピンオフされた子会社の株式は、すぐに売却し、売却代金を親会社に再投資することになっている。だがこの前提どおりに行動しない投資家も大勢いる。1950年頃にAT&T株を買った、友人の父親がそうだった。

わたしは半世紀を遡り、当時のニューヨーク証券取引所の上場銘柄から時価総額上位20銘柄を拾い出して、長期リターンを算出した。配当は再投資し、交付された株式もすべて保有することを前提としたリターンだ。こうした買い持ち戦略のリターンを再計算するのは、時間のかかる作業だったが、終わってみれば、苦労した甲斐は十二分にあった。意外にも、「時価総額上位20銘柄」の運用成績は、市場平均に連動させて運用した場合の成績を上回っていた。

市場平均には、その後登場した新興企業、新興業界の銘柄がすべて含まれている。
この予備調査を終え、今度は1957年に組成されたS&P500の当初の特成銘柄のリターンを、ひとつひとつ追跡することにした。この調査からも、やはり意外な結果があきらかになった。当初の構成銘柄の成績は、その後採用された新興銘柄の成績を上回っている。

この結果は、わたしの日頃の疑いの裏付けとなった。投資家は銘柄をはじめ新興銘柄を過大評価し、これといって話題性のない柄を無視する傾向がある。そしてこうした話題性のない業界のしばしば目覚しいリターンをもたらす。わたしはここで「成長の罠」言葉を使いはじめた。技術革新の先端を行き、経済成長を牽引し、投資家に卓越したリターンをもたらすとの通念のまちがいを説明するためだ。

リターンの追跡調査を進めるうちに、成長の罠が作用するのは、個別銘柄だけではないことがわかった。市場のあらゆるセクターで、国際市場でさえ、おなじ傾向が確認できる。飛ぶ鳥落とす勢いの新興企業、新興業界、新興国にかぎって、リターンが極端に低くなっている。わたしはこうした発見を、投資家リターンの基本原則としてまとめた。つまりこんな原則だ。成長率が高いだけでは、リターンは高くならない。ただ高いだけでなく、投資家が株価に織り込む、たいていの場合は楽観的すぎる予想を上回らなければならない。成長の罠が、投資家と投資の成功とを隔てる大きな障壁であることはあきらかだった。

目前に迫った高齢化の波
過去半世紀にどういった銘柄が高いリターンを稼ぎ出したかを理解できたことで、いつも訊かれるふたつの質問のうち、問いその1には答えられるようになった。その2に答えるためには、急速な高齢化が経済に及ぼす影響を調べなければならない。1945年生まれのわたしは、かなり以前から、自分がベビーブーマー世代の波の第一波であることを意識してきた。この波はじきに、寄せては返す退職者の波となる。

人口トレンドと株価の関係が急に投資家の関心の的となったのは、ハリー・デントの1993年のベストセラー『経済の法則――3つの波が予測する「グレート・ブームの時代」』がきっかけだった。ここで過去の株式市場のトレンドが、これまでない観点から紹介された。デントの説によると、過去1世紀にわたり、株価のトレンドは、45歳から50歳までの人口トレンドと相関しあってきた。この年代は消費支出がピークを迎える年代でもある。人口予測に基づくデントの予想によると、株式の上昇相場は2010年まで続き、ブーマー世代の退職が始まると同時に、暴落する。

ハリー・デントとわたしは、講演者としてたびたびおなじ会議や集会に招かれていた。もっとも、おなじ演台に立ったことはめったにない。わたしはそれまで、人口トレンドから株価を予想しようと考えたことはなかった。将来のリターンを予想するには、過去のリターンに照らすのがなによりだと思っていた。

だが人口動態について調べるにうちに、つぎの点を確信するようになった。人口トレンドは経済にとっても投資家にとっても決定的な音米国、欧州、日本は急速に高齢化しているが、世界の大部分はきわめて、この若い経済がようやくその存在を世界に示そうとしている。はウォートンスクールの学生たちの協力を得て、その呆れるほど高度なコンピューター技術の助けを借り、世界の人口動態と生産性のトレンドを織り込んだ世界経済モデルを構築した。そしてこのモデルを使って、世界経済の未来を予測した。

モデルからみえたのは、胸踊る未来であり、デントの予想とは、まるでちがっていた。途上国の急速な経済成長は、このまま持続すれば、高齢化する国々の経済にきわめて重要なプラスの影響をもたらす。ようするに、高齢化の波がもたらすマイナスの影響が緩和される。「成長の源泉について調べるうちに、わたしはこの成長は持続すると確信した。通信革命によって、膨大な量の知識が、世界中の数十億人に行き渡るようになったからだ。史上初めて、これまで世界の高等研究所でしか手に入らなかった情報が、インターネットをつなぐだけで、だれにでも利用できるようになった。

知識の世界的な広がりは、きわめて広い範囲で影響をもたらす。たとえばわたしは大学教授として、国外からやってくる優秀な学生の数が急激に増えるのを目の当たりにしてきた。ウォートンスクールの博士過程では現在、留学生の数が米国人学生の数をはっきり上回っている。そうなく。将来、西欧による知識と研究の独占が終わりを迎えるのはあきらかに。報が世界中に行き渡ることは、どの国の投資家にとっても、かなり大きな意味を持つ。

投資の新たなアプローチ
こうした調査を行う以前と以降で、わたしの投資に対する考えは大きく変わった。わたしはよく、ここ数年の間にバブルが弾けて株価が暴落したことで、株式に対する見方が変わったかどうかと質問される。答えはイエスだ。たしかに変わった。ただし変わった結果、投資家の未来は明るいと考えるようになった。

市場がとくに理由もなく上下する局面は、撤退の合図ではなく、インデックス・ファンドで実現できる以上のリターンを目指す絶好の機会だ。しかも世界経済の成長を通じて、新たな機会、新たな市場が、世界的に事業を展開する企業の目の前に、かつてない規模で広がっている。

こうした機会を存分に利用したいなら、ポートフォリオの幅を広げると同時に、一般通念の落とし穴を避けることが大切だ。運用成績が市場平均を下回るのは、たいていはこれが原因だからだ。本書『株式投資の未来』が、そのための指針となれば幸いである。

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ジェレミー・シーゲル (著), 瑞穂 のりこ (著)
日経BP (2005/11/23)、出典:出版社HP