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学科共通で使える都市計画の教科書
本書は建設系の諸学科や社会工学科などの諸学科で共通して利用できる都市計画教科書です。幅広い専門分野について書かれているため情報量が多いですが、図表などの資料が豊富にあるためわかりやすい内容になっています。また、教養書としても通読しても楽しめるでしょう。
都市計画教育研究会
企画・編集
川上 秀光
鈴木忠義 (東京工業大学名誉教授)
戶沼幸市(早稻田大学教授)
広瀬盛行 (TPI 都市計画研究所代表)
執筆
渡辺貴介
川上秀光
広瀬盛行 (TPI 都市計画研究所代表)
石黒 哲郎 (芝浦工業大学名誉教授)
田畑貞寿 (千葉大学名誉教授)
深海 隆恒*(東京工業大学名誉教授)
版本一郎(明海大学教授)
内山 久雄 (東京理科大学名誉教授)
鹿島茂 (中央大学教授)
牛見 章*(元埼玉県住宅防火对策推進協議会会長)
鈴木 忠義 (東京工業大学名誉教授)
保野健治郎 (元近畿大学教授)
森村道美
尾島俊雄(早稻田大学名誉教授)
戶沼幸市(早稻田大学名誉教授)
相羽康郎 (東北芸術工科大学教授)
川手 昭二 (筑波大学名誉教授)
日端康雄 (慶應義塾大学教授)
小泉元圀 (元明海大学教授)
宮澤美智雄*(元社会開発総合研究所理事長)
長峯 晴夫*
中出文平 (長岡技術科学大学副学長)
勝又 济(国土交通省国土技術政策総合研究所主任研究官)
(*印は編集分担者)
序文
1984(昭和 59)年頃,建築学科だけでなく,土木工学科はじめ建設系の諸学 科一公園・緑地系や都市工学科,社会工学科などの諸学科で共通して利用できる都市計画教科書を,現在,教育に携わっている人々がそれぞれ専門の立場から協同して編集,執筆する構想が浮かび上がった。それ以来3年程の間,東京 大学・川上光秀,東京農大・鈴木忠義,早稲田大学・戸沼幸市,明星大学・広 瀬盛行各教授が編集メンバーとして集まり,都市計画教科書構想の具体化を進 めたのであった。初期の段階において内外から数冊の都市計画教科書を選び, 比較・検討を試みたのである。その際,気がついたことを挙げると,まず著者 の出身分野が土木・建築あるいは造園のいずれであるかにより,また,著者の 学生が所属する学部・学科,さらに教科書利用の想定対象によって,当然のこ ととは言え,それぞれの教科書に見られる著しい特徴として内容のいわば偏りがあった。
すなわち土地利用計画,交通計画および公園緑地計画の何れか一つ を柱として選び,これに著者が必要と考えた類の都市施設の立地論,計画論と 都市計画制度, 事業論に,都市計画の沿革を加えて教科書を構成するのである。 要するに著者の出身分野と関心によって柱と都市施設の選び方が異なるのであ る。とりわけ顕著に見られたのは,都市計画の歴史,制度・手法,公共建築物, 住宅問題,住宅地計画,交通施設計画と環境計画に対する比重の置き方であっ た。大学教育では、著者の立場,思想が色濃く現れることは当然にせよ,都市 計画の全領域をカバーしている教科書は見当たらないことに気がついたのであ る。現代社会の都市計画課題の必要に対応する教育には不十分の恐れなしとは 言えない訳であって、改めてわれわれが都市計画教育の研究に関心を持たなか ったことに気がついたのであった。このような観点からこの教科書の編集は企 画されたのである。
この教科書は,都市と都市計画を知る(1~4章),人間生活・居住の場とし ての都市(5,6章),都市の仕組みと構造の計画(7,8章),都市設計(9 章),都市計画の制度手段 (10章),国土 (11 章),第三世界の都市計画 (12 章), の12章構成を取っている。原則として, 16 ページを1単位とし,3章(1.5単 位)、8章(2.5単位)以外はすべて1単位の分量からなっている。
各大学における都市計画の講義は,半年間の場合と通年の場合があり,その 学部・学科に応じて特徴があるのは当然であり,もとより必ずしも都市計画の 全領域を講義する必要はない。しかしながら,講義担当者自身が得意とする領 域だけにとどまってよいはずはなく、必要な分野についても正確な知識を伝授する必要がある。この教科書はそれを意図して編集している。したがって講義の担当者はこの点に特に留意いただいて、専門領域とそれに近い分野は自分の学識と持ち味を生かした講義を,この教科書とは別に独自の内容にしていただき,専門外の諸分野について、必要,重要と思われる部門・分野についてはこの教科書を十分に活用していただきたい。 またこの教科書は図表などの資料が豊富であるが,これらは努めて原典から直接引用することとし,かつ最新の資料を選択する方針を採っている。各章の執筆者は、専門領域について的確に把握した内容を平易に表現しており、本教科書は教養書として通読しても楽しく、編集の意図は,この意味では成功したと自負している。
この教科書が最初に刊行されたのは 1987(昭和62)年の6月であった。その後都市計画法の改正等もあり、内容に不十分な点も生じてきたので,今回小改訂を行った。また改訂にあわせて年表・都市計画資料を新しく加え,参考文献にも解題をつけるなどの工夫をした。うまく利用して頂けたら幸いである。
1994年12月
都市計画教育研究会
第三版によせて
1987 年に初版を刊行以来、好評を博してきた本書は,1995年に新規データの追加や都市計画法等の改正等の改訂を行い第二版を出し、今回 2000年の都市計画法の改正に伴って関連事項の見直しを行い,ここに第三版として刊行する。
2001年1月
編集部
目次
1 都市論
1.1 都市の時代
都市の時代の到来/都市の基本的性格,機能,立地/都市の範域/都市の分類
1.2 都市化と都市問題
近代の都市化と都市の変容/古典的都市問題/現代的都市問題
1.3 現代日本の都市と都市化
日本の都市の形成課程/日本の都市 と都市化の特徴/現代日本の都市の 課題
2 都市計画論
2.1 都市の機能・構造と都市計画
2.2 都市計画とその社会的役割
都市計画とその基本的機能/都市計 画と地域社会の事象の物象化と空間化/都市像の発想・描出と情報伝達機能/自治体行政と国家政策の道具/調整と総合機能
2.3 現代都市計画の思想,概念,方法の ルーツ
オスマンのパリ改造/北海道開拓使 の函館街区改正/東京市区改正/都市拡張と区画整理/田園都市/工業都市/シティ・ビューティ フル運動/ゾーニングの思想/ 公園系統の思想/生物学,社会学的 視野に立つ都市計画の調査と表現/ 自動車交通への対応/アムステルダ ムの会議の7原則と大都市問題対策/ル・コルビュジエの 300万人の都市 とアテネ憲章/ジードルング/ 近隣住区理論/都市の適性規模と配 置を求めて/国土・地方計画へ視野 の展開/大ロンドン計画/ニュータウン/都市再開発/都市の マスタープラン
3 都市の構成要素
3.1 道路とサーキュレーション
都市と道路/道路の分類/道路 網の構成/道路の段階構成と居住環 境地域/住宅地における細道路網と 歩道車の分離/都心商業地における道路網/各種道路の断面構成
3.2 建築と敷地
都市における建築の存在と作用/建 築の形態を決定する基本的要因/都 市の環境と建築/建築に対する都市からの規制
3.3 緑と都市オープンスペース
緑地・オープンスペースの意味/緑 地オープンスペースの機能/緑 地・オープンスペースの分類/緑 地・オープンスペースの段階的構成/緑地とオープンスペース計画
4 都市の把握と解析
4.1 都市計画の資料と情報処理
都市計画の計画立案プロセス/都市計画と情報/情報の収集と処理
4.2 都市把握の理論
都市の本質の理解/都市の分布と位 置付け/土地利用のパターン/ 土地利用のメカニズム /都市の内部構造のあり方
4.3 計画策定の計量モデル
解析方法の種類/事象の計量的表現/数理統計解析/数理計画法/シミュレーション・モデル/計 量評価モデル
5 都市と居住
5.1 都市化と住宅問題
地価高騰と住宅難/居住立地限定階 層の住宅問題/日本の住宅事情と住宅問題
5.2 居住環境と住宅水準
5.3 住宅政策
住宅・宅地・都市政策の変遷/国の 制度の一覧/行政組織/問題点
5.4 住宅・宅地供給計画
5.5 これからの課題
上からの住宅・都市政策の破たんと下か らの住宅・都市政策への転換/新し い土地政策への転換/高齢社会にお ける居住問題への対応/国際社会で果たす役割
6 都市の環境
6.1 人間と環境
6.2 人間・都市・環境
6.3 都市環境を理解するためのキーワード
自然と文明/マクロとミクロ/公と公害/公共と私/ハードとソフト/サービスと セルフサービス/過去と未来/学習と遊び/生産と消費
6.4 都市環境と用・強・美
都市における”用”/都市環境 における”強”/都市環境における”美”
6.5 都市の安全
年と災害/都市と火災/都市と公害/都市と自然災害
7 都市の構成計画
7.1 都市空間構成の実態
市街地規模/都市空間の捉え方/各種利用空間単位の構成/各種利用空間単位の立地パターン
7.2 都市空間構成の計画
都市基本計画の立案プロセス/密度と密度計画/住区と住区計画
7.3 都市空間構成の実現
実現の手法 135/実現につなぐ計画の形
8 都市の構造計画
8.1 都市交通計画
都市交通の特性と計画の課題/総合交通体系計画の内容と方法/都市交通調査/将来交通需要の予測/都市総合交通体系計画
8.2 緑地網計画
緑被地調査法/緑地構造の把握/緑地の計画基準/公園などの施設計画・設計
8.3 都市水系計画
都市水系/利水計画/親水子 画/上水道計画/下水道計画
8.4 情報システムとエネルギー供給計画
新しいインフラストラクチュアと地下利 用/エネルギー使用量の増大と地 域冷暖房/情報化社会の新基盤施 設/ハイブリッド・システムの活用
9 都市設計
9.1 都市と形
現代都市の形の特徴/都市生活と形
9.2 都市設計のためのキーワード
都市美と人間尺度/快適さ (アメニ ティ)とその場所らしさ(アイデンティ ティ) /私と公/風土と歴史
9.3 都市設計の対象の大きさと内容
建築物と土木構造のスケール/都市の構成単位の階層性と場所の特似/施設系の都市設計
9.4 都市設計の道具と技法
花想を得るための道目と技法/設計のための道具と技法/表現の道具と技法
9.5 都市設計の実例
新宿西口副都心/丸の内オフィス街/原宿表参道
10 都市の基本計画を実現する手段としての都市計画法
10.1 都市の基本計画とは何か
都市計画法の「整備・開発または保全の 方針」/市町村の都市計画に関する基本的な方針
10.2 都市計画規制
都市計画区域/市街化区域・市街化 調整区域/地域地区/地区計 画/開発行為の規制/建築等の規制
10.3 都市計画事業
新住宅市街地開発事業/土地区画整理事業/市街地再開発事業
10.4 都市計画事業の財源
事業主体と負担主体/各主体の事業費の財源
10.5 都市計画決定手続
11 都市計画と国土の利用
11.1 国土の成立ちと国土利用
国士の成立ち/国土利用計画/土地利用基本計画/土地利用規制
11.2 地域の計画
市町村の計画/都道府県の計画/広域生活圏の計画/特定地域の計画
11.3 大都市圏と地方圏の計画
首都圏整備計画/近畿圏と中部圏の計画/地方圏の開発計画
11.4 国土の総合開発計画
国土総合開発計画の推移/三全総から四全総へ
11.5 都市計画と国土の利用
国土利用の展望/国土政策の方向/都市計画の課題
12 第三世界の都市と都市計画
12.1 都市と都市化の実態
12.2 都市開発政策
農村自体の開発整備計画/地方中 小都市の総合開発/大都市の開発 整備をめぐる重要課題 /都市開発政策の今後の課題
12.3 都市計画ならびに関連諸制度
都市計画年表
都市計画関連資料
演習問題
参考文献(解題)
図版提供・出典
索引