アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学

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本書はDaron Acemoglu, David Laibson, John A. List, Microeconomics (2015, Pearson Education)の日本語版です。アメリカ経済学をリーディングする3人が書いたミクロ経済学となります。最新のミクロのスタンダードをやさしく最先端を紹介しています。

ダロン・アセモグル (著), デヴィッド・レイブソン (著), ジョン・リスト (著), 岩本 康志 (監修, 翻訳), 岩本 千晴 (翻訳)
出版社: 東洋経済新報社 (2020/3/20)、出典:出版社HP

 

 

まえがき

経済学はとても面白い。経済は驚くべき仕組みでできている。スマートフォンを前にして私たちが思い浮かべるのは、とてつもなくすばらしいテクノロジーに関する複雑なサプライ・チェーンだ。そこでは、世界中で製造された部品を組み立てるために、多くの人々が生産に参加している。

誰の命令によるものでもなく、世界を動かす市場の力は、意識の存在や人生そのものと同じぐらいに、印象的で深淵な現象だ。市場システムの創造は、人類が創り出した最大の偉業であることは間違いない。

経済学の考え方はシンプルなものでありながら、世界の出来事を説明し、予測し、改善するうえでとても役に立つ。それを知ってもらおうと思い、私たちは本書を執筆した。学生たちに経済分析の基本的な原理を理解してもらうために、人間行動を理解するうえでの経済学のアプローチの核心を3つの原理にまとめた。3つの原理は抽象的な単語にまとめられているが、その内容は直観的に理解できるものだ。

経済学のアプローチにおける3つの原理

第1の原理は最適化である。最適化とは、人々は可能な選択肢の中で最善のものを選ぼうとする、という考えだ。誰もがつねに最適化ができているとは限らないが、人々は最適化を試みることによって、多くの場合にうまく最適化を行っている。最大の純便益をもたらす選択肢を選ぼうと努力する意思決定者にとっては、最適化とは人間の行動を予測するための有用なツールである。最適化はまた、有用で規範的なツールでもある。最適化のための方法を学ぶことに よって、人々は意思決定と生活の質を向上させることができる。本書を読み終えた後には、誰もが最適化行動をうまく選択することができるようになっていることだろう。最適化を行うには複雑な数式は必要なく、ただ経済学的直観を用いるだけでよい。

第2の原理は、第1の最適化の原理を拡張することによって導き出される均衡の原理である。経済システムは均衡の下で機能する。均衡とは、誰もが同時に最適化しようとしている状態だ。幸福度(ウェルビーイング)を最大限に高めようとしているのは、自分だけではない。各人が今とは違う行動をとっても状況は変化しないと誰もが感じるときには、その経済は均衡状態にある。均衡の原理は、経済主体のつながりに注目するものである。たとえば、アップルストアには、大勢の消費者がiPhoneを買いに来るので、大量のiPhoneの在庫が用意されている。その一方で、多くの消費者は、iPhoneが買えると思うからアップルストアを訪れる、とも考えられる。均衡においては、消費者も生産者も同時に最適化しているのであり、両者の行動は関係しあっているのである。最適化と均衡という最初の2つの原理は、概念的なものである。

それに対して、第3の原理である経験主義は、方法論である。経済学では、経済理論を検証したり、世の中について学んだり、政策担当者と話をする際には、データを使う。本書においても、データは主役である。ただし、実証分析は、極めて単純なものにとどめている。本書が他のテキストと違うのは、経済学の理論と現 実データのマッチングに重点を置いた点にある。すなわち本書では、経済学で はどのようにデータを用いて具体的な問題の解決策を示すのかを描いている。各章の記述は、具体的でかつ読んで面白いものであることに努めた。最近の学生は理論の背景にあるエビデンス(実証的裏づけ)を求めるものだが、それについても十分に提供した。

たとえば、各章では、実証的な質問を提示して、その後に、データを使ってその質問に答えていくというスタイルをとっている。たとえば、5章は、以下の質問からスタートする。
「月100ドルの報酬で禁煙できるだろうか?」
5章は、禁煙すれば報酬を支払うという実験では、どのように喫煙率が下落するかを考える。
自分たちの経験を振り返っても、経済学を学びはじめた当初の学生たちは、経済学は理論偏重でエビデンス(実証的裏づけ)に乏しいという印象を持っていることが多い。本書では、データを用いることによって、経済学ではどのように科学的分析や改善が行われているかを説明する。データを用いることによって、概念の理解は容易になる。

またエビデンスが示されることによって、学生は直観的に理解できる。データは、抽象的な原理をより具体的な事実に変換し てくれる。各章では、学生が興味を持ち続けることができるように、経済学ではどのようにしてデータを使って疑問に答えているのかについて焦点を当てる。どの章をとっても、経済学を科学的に応用するにはエビデンスが重要な役割を果たしていることが示される。

コラムの目的

3種類のコラムの目的は、現実社会の問題を直観的に理解することである。
「根拠に基づく経済学」(EBE) EBEは、各章冒頭で取り上げた問いに答えるコラムであり、経済学ではどのように現実のデータを用いて問いに答えるかが示されている。EBEでは、各章で議論する重要な概念に関係する実際のデータが使用される。それらのデータは、フィールド実験やラボ実験から得られるものもあるし、あるいは様々な事象(自然に起こる事象)を観察することから得られるものもある。そうしたデータを活用することによって、自分たちを取り巻く世界の中で経済学が果たしている役割について、読者はよりリアルに実感が湧くだろう。
各章の質問で取り上げるのは、無味乾燥な理論だけに基づく概念ではない。たとえば、以下のように、教室の外の現実社会に関連した問いが取り上げられる。

フェイスブックは無料か?(1章)
大学には、進学する価値はあるのか?(2章)
自由貿易は仕事を奪うのか?(8章)
最適な政府の大きさとは?(10章)
相手の立場で考えることは得策か?(13章)
イラスト(スクリーンショット 2020-06-10 13.48.50.PNG)省略

「データは語る」
2番目のコラム「データは語る」では、現実のデータを議論の根幹に据えることからスタートして、経済に関する疑問を分析する。以下のようなコラムがある。
マクドナルド社は、弾力性を考慮に入れるべきだろうか?(5章)
労働供給が増加すると貸金は本当に下がるのか?(11章)
広告を出す企業と出さない企業があるのはなぜか?(14章)
イラスト(スクリーンショット 2020-06-10 13.48.54.PNG)省略

「選択の結果」
最適化の原理を扱う本書では、現実の経済的意思決定の問題を考えたり、また過去に行われた経済的意思決定の評価をしたりする。そうした課題に取り組むコラムが「選択の結果」だ。そして、同じ意思決定の問題を、経済学ではどのように取り扱うのかについて学ぶ。以下のようなコラムがある。
人々は本当に最適化しているのか?(3章)
レブロン・ジェームズは自宅のペンキ塗りをすべきだろうか?(8章)
報復の進化論的解釈(18章)
イラスト(スクリーンショット 2020-06-10 13.48.54.PNG)省略

本書の構成

「第I部 経済学への誘い」の目的は、世界を知るための経済学的な考え方を理解するための基盤を作ることである。「1章 経済学の原理と実践」では、最適化の原理が私たちの選択のほとんどに関係していることを学ぶ。私たちは便益と費用を考慮に入れて優先順位をつけるのだが、そのためには、トレードオフ、予算制約、機会費用について理解しなければならない。続いて学ぶ均衡とは、誰もが同時かつ個別に最適化しようとしている状態であることを説明する。均衡では、自分の行動を変えることによって便益が変化することはない。また、個人の最適化と社会の最適化が必ずしも一致するわけではないフリーライダー問題についても紹介する。

データは経済学では中心的役割を担う。「2章 経済学の方法と問い」では、経済モデル、科学的方法、実証的エビデンス、そして相関関係と因果関係の重要な違いについて説明する。そして、人間の行動に関する興味深い疑問に答えるためには、経済学ではどのようにモデルやデータが利用されているのかを示す。補論では、グラフの作り方とその解釈の仕方について学ぶ。また、この補論では、インセンティブに関して実際に行われた実験が例として用いられる。

「3章 最適化:最善をつくす」では、最適化の概念について詳しく学ぶ。また限界分析を直観的に理解するために例を用いる。ここでは、アパートを探す際の、通勤時間と家賃のトレードオフが問題になる。ここでは、水準による最適化と差分による最適化という2つのアプローチが紹介されるのだが、経済学で用いられることが多いのは後者の差分による最適化(限界分析)の手法である。その理由についても学ぶことになる。

「4章需要、供給と均衡」では、ガソリン市場を例にとって、需要と供給の枠組みについて学ぶ。ガソリン価格は、どのようにドライバーなどの買い手の意思決定に影響を及ぼすのだろうか?また、エクソンモービル社などの売り手の意思決定に影響を及ぼすのだろうか?4章では、以下の手順でモデルが構築される。まず個々の買い手を足し合わせて市場の需要曲線を作り、個々の売り手を足し合わせて市場の供給曲線を作る。次に、買い手と売り手を合わせて、完全競争市場において交換される財の市場均衡価格と市場均衡取引量がどのように決定されるのかを示す。最後に、価格が、需要量と供給量が一致するように調整できないときには市場が機能しなくなることを示す。

「第II部 ミクロ経済学の基盤」は、需要と供給がどのように決まるのかについて詳しく説明することからはじめる。著者たちの教育者としての経験では、ほとんどの学生たちは、経済学を1年間学んだ後でさえ需要曲線と供給曲線に関する基本的な考え方――特に、これらの曲線がどのようにして作られているのか―を、理解できていない。そして、多くの教科書ではこの問題は放置されたままになっている。

5章と6章を執筆したときの著者たちの目標は、インセンティブの考え方に基づけば、消費と生産が実は表裏一体の関係にあることを示す意を用意することであった。他の教科書では様々な章でバラバラに学んでいた、消費者と生産者に関係する概念をここに集めることによって、消費者による最適化と生産者による最適化の間の共通する点と関連する点を明らかにすることを目指した。こうした構成をとることで、読者は、概念がどのように関係しているのかを理 解するために教科書の様々な章を前後して参照する必要もなく、1つの場所で全体像を学ぶことができる。

「5章 消費者とインセンティブ」では、需要曲線の背景に立ち入って、需要曲線がどのようにしてできるのかを考える。消費者が何を買うのかを決めるやり方を「買い手の選択」と名づける。買い手の選択に影響を及ぼすのは、買い手の選好、財とサービスの価格、予算の3つの要素である。この3要素を合わせて考えることによって、需要曲線が導き出される。このアプローチの延長で、消費者余剰と需要の弾力性を説明し、消費者がインセンティブにどのように反応するのかを見る。本章の議論から、政策当局や企業は、経済を需要側から考えるべきである理由が理解できるだろう。さらに理解を深めたい学生のために、補論では所得効果と代替効果について説明する。

「6章 生産者とインセンティブ」では、5章と同様の包括的なアプローチをとって「売り手の選択」について考える。題材としているのは、ある1つの企業(著者の1人が10代の夏休みにアルバイトをしたウィスコンシンチーズマン社)である。売り手の選択に影響を及ぼすのは、生産、費用、利益の3つの要素である。他の教科書では、これらの3要素を、様々な章でバラバラに学んでいたが、売り手の選択を考えるときには、3要素を1つにまとめるのが自然である。そもそも最適な選択を行う企業は、これらの3要素について同時に考えているのだ。また、1つの企業を題材にしたことによって、章全体の説明は一貫したものとなり、わかりやすくなっている。さらに理解を深めたい学生のために補論では、企業によって費用構造が異なると、長期でも経済的利潤が発生することを解説する。

「7章 完全競争と見えざる手」では、市場全体に目を向ける。まず、5章で説明した買い手と6声で説明した売り手が完全競争市場で出会うことによって、何が起きるかを考える。本章の冒頭の問いは、「利己的人間だけがいる市場は社会全体の幸福度を最大化できるか?」だ。この問いに関しては、我々の目を見張らせる経済学の考え方がある。完全競争市場では、「見えざる手」が働き、個人の利益と社会の利益を調和させるというのだ。価格が見えざる手を動かし、買い手と売り手にインセンティブを与えることによって、経済のあらゆる産業間と産業内で資源を効率的に配分し、社会的余剰を最大化する。さらに、バーノン・スミス(ノーベル経済学賞受賞)が行った実験で、価格と取引量は需要と供給が等しくなるところに近づく結果が得られていることを紹介する。

「8章 貿易」では、まず生産可能性曲線、比較優位、さらに貿易による利益を学ぶ。そして、個人間の取引の説明からはじめ、州間の取引である交易を説明し(入門レベルの教科書では画期的なテーマである)、最後に国と国の間の取引である国際貿易を説明する。このような流れに沿って学ぶことで、個人問で取引が生まれる原理が、州際交易でも、国際貿易でも同じように働くことが理解できる。貿易が行われることによって、一国の中で勝者と敗者が生まれることは多いが、勝者が貿易から得る利益は敗者の損失を上回る。政策の課題は、すべての人が貿易の利益を享受できるように、余剰の振り分け方を考えることである。

ここで本書を読むのを止めてしまったら、市場システムのすばらしさに魅了された自由市場のにわか信奉者のままで終わるだろう。しかし、自由市場がもたらすのは利点だけではない。「9章 外部性と公共財」では、見えざる手の働きを妨げる重要な状況を議論する。企業は操業をすることによって、大気や河川を汚染することがある。また、国防などのように、ひとたび提供されれば、すべての人々が消費できる財がある。9章では、外部性、公共財、共有資源と いう3つの市場の失敗のケースを取り上げる。この3つの市場の失敗に共通するのは、社会的便益と私的便益が一致しない、あるいは社会的費用と私的費用が一致しないことである。こうした場合には、7章で学んだ見えざる手はうまく働かないかもしれない。社会の幸福度を高めるためには、政府が介入して、外部性に対処する政策を実施し、公共財を提供し、共有資源を保護することがある。

しかし、政府の介入は両刃の剣になりうる。「10章 政府の役割:税と規制」では、「政府の介入はどの程度必要で、どの程度の介入が望ましいのだろうか?」を考える。租税と政府支出の概要を学んだ後に、外部性やその他の市場の失敗に対処するために政府が使用する主要な政策手段である規制は、費用が伴うものであり、限界があることを学ぶ。また、大きな政府を支持する議論と小さな 政府を支持する議論の違いの核心には、公平性と効率性のトレードオフの問題があることを述べる。章末コラム「根拠に基づく経済学」(EBE)では、所得税の死重損失について詳しく検討することを通して、「最適な政府の大きさとは?」という本書冒頭で問いかけられた難問に取り組む。

「11章 生産要素市場」では、企業が財やサービスを生産するために使用する投入物に目を向ける。ここでは、「労働市場に差別はあるのか?」という本章の冒頭の問いを詳しく検討することを通して、生産要素市場の重要性を学ぶ。この疑問は言葉を変えれば、「なぜ賃金には格差があるのか?」という一般にも関心の高い課題だ。この疑問に取り組むことによって、需要者(5章で学んだ、財の買い手)が、一方では(労働の)供給者でもあることが理解できるだろう。労働に関する議論の背景にある経済学をしっかり理解することができれば、その他の生産要素―物的資本と土地の市場を理解することも容易になるだろう。章末コラム「根拠に基づく経済学」(EBE)では、労働市場に差別が存在するかどうかを検証したエビデンスを紹介する。

「第II部 市場構造」では、独占、寡占、独占的競争という完全競争ではない市場を考え、これらの市場構造を理解するために必要な考え方を学ぶ。「12章 独占」では、まず6章で学んだ「売り手の選択」で生産と費用について学んだことが独占でも当てはまることを述べる。独占においても、限界費用と限界収入が等しくなる水準まで生産を拡大する、という原則はそのままだ。「独占企業の選択」を考える事例として、20年間の特許を得たアレルギー薬のクラリチンを製造する独占企業がどのように最適化を図るかを考える。見えざる手がうまく働かなくなっているために、独占企業は自社の利潤が増えるように資源配分に影響を与え、その結果として社会的余剰は減少することになる。そうすると、政府が規制によってこのような市場支配力を作り出すのはなぜだろうか、という疑問が生じるだろう。そこで、「独占は社会にメリットがあるか?」という問いを検討し、独占にはもう1つの側面があり、独占が社会に役立つこともある、という事例を紹介する。

ここまでの内容は、既存の教科書にも含まれている標準的なものだ。「13章 ゲーム理論と戦略的行動」では、従来の教科書とは趣を異にして、1章分をまるごとゲーム理論の説明に充てる。ゲーム理論には、非常に重要な経済的洞察が含まれている。特に重要なのは、相手の立場で考えることで、世界の動きをより良く理解できるようになることである。人々はどのように行動するのかを考えることによって、相手の戦略に対して、どういう戦略を立てれば良いかが わかる。また、この章では、広告、サッカー、公害などの様々な状況にゲーム理論を適用する。

「14章 寡占と独占的競争」で取り上げる寡占と独占的競争という2つの市場構造は、完全競争と独占という両極端の市場の間に位置するものだ。「市場 を競争的にするために必要な企業の数は?」という問いを軸にして、議論を進めていく。寡占企業と独占的競争企業の行動が、ここまでの議論と違うところは、競争相手の選択を考慮に入れて、自分たちの価格や生産量を設定することだ。しかし、これらの企業の最適化問題は、「寡占企業の選択」や「独占的競争企業の選択」と名づけて、これまでの議論と関連づけることができる。これらの企業の選択は、短期においては独占企業の選択と同じになり、長期では完全競争モデルの均衡と同じ結果となる。

「第IV部 ミクロ経済学の拡張」では、さらに発展した話題を取り上げる。第IV部の各章は、講義の目的によって、章を選択して教えられることになるだろう。経済学の基礎知識をせっかく数カ月間学んでも、それを実際に応用する醍醐味を味わう機会を得られない学生があまりにも多い。そうした状況を変える一助となることを願い、本書では以下の章が加えられた。

「15章 時間とリスクのトレードオフ」では、最初に、報酬をいつ受け取るかによって、その経済的価値がどのように変わるのかを考える。利子に利子が付く複利の効果によって、資金は年数を経るとともに大きくなっていく。また、将来の金銭を現在価値に割り引く計算方法を学ぶ。また純現在価値の考え方に基づいて、将来の価値が関係する経済判断を行う方法も学ぶ。15章後半では、確率とリスク、期待値を計算する方法を説明する。期待値は、ギャンブル、家電製品の延長保証、保険について考える際には必須の概念だ。

一度乗ると新車の価値が大きく下がるのはなぜか?「16章 情報の経済学」では、私たちの誰もが経験したことがある市場——売り手と買い手のどちらかがより詳しい情報を持っている市場について考える。売り手と買い手が持っている情報が異なるという状況を、隠された特徴(たとえば、健康上のリスクが高い人ほど医療保険を買おうとする)と、隠された行動(たとえば、自動車保険に加入しているドライバーは、危険な運転をしがちである)に分類して説明する。具体的には、中古車市場の不良車、医療保険市場の逆選択、リスクや保険市場に関係するモラルハザードの問題を取り上げる。

「17章 オークションと交渉」では、身近な存在となったオークションと交渉を取り上げる。様々な状況での最善の戦略や交渉も最適化の原理に基づいて考えていく。本章では代表的な4種類のオークションの働きを考察した後に、ネットオークションから不動産オークション、チャリティー・オークションに至るまで、オークションに参加するときに、経済学の知識がいかに役立つかを説明する。そして、私たちの日常の生活にも大いに影響がある交渉の場面として、コラム「根拠に基づく経済学」(EBE)では「家計のお金の使い道を決めるのは誰か?」を検証した実証的エビデンスを紹介し、交渉を分析する経済学 のモデルが有用であることを示す。

「18章 社会経済学」は、おそらくは経済学の入門教科書としては最も異彩を放つ意だろう。この章では、経済学が伝統的に想定する人間像(ホモ・エコノミカス)とは違った(拡張された)人間の行動を探求し、慈善活動、公正、信頼、報復の経済学を解説する。私たちは、寄付することや、人に報復することから満足を得ているのだろうかと問うことを通して、そもそも選好とはどういうものであり、どのように形成されるのかを、改めて考える。この章では、心理学、歴史学、人類学、社会学、政治学などの経済学とも関連している分野で培われた知見を動員することによって、世の中をより深く理解することにつながることを学んでほしい。

謝辞

私たち3人の執筆者は、テキスト・プロジェクトに取り組むにあたって、経済学だけではなく、教育(ティーチング)、執筆(ライティング)についても議論を重ねた。加えて、本書執筆の段階では多くの方々から、さらに多くを学ぶことができた。貴重な助言に対して、謹んで感謝申し上げたい。それらの助 言は、執筆開始時には想像もできなかったほど、大変に貴重なものだった。彼らの洞察とアドバイスのおかげで本書のアイデアは大きく改善されることとなっ た。

本テキストのレビュアー、フォーカス・グループ、テスト授業参加のみなさんには、どのように私たちのアイデアを組み立てていけばいいのかを示していただいただけでなく、執筆をサポートし、私たちの文章をより簡潔にするためのお手伝いをしていただいた。彼らのすばらしいフィードバックは、経済学についての私たちの誤解を修正し、概念的な思い込みを改善し、明快に執筆する方法を示してくれた。彼らのアドバイスによって、本書のあらゆるパラグラフ が改善された。サポートをいただいた方々を以下に紹介しよう。

リサーチ・アシスタントの Alec Brandon、Justin Holz、Josh Hurwitz、Xavier Jaravel、Angelina Liang、Daniel Norris、Yana Peysakhovich、Jan Zilinskyには、データの分析、文章の推敲、本書全体を貫く教育的原理についての深い洞察を生み出すなど、プロジェクトのあらゆる場面で重要な役割を果たしていただいた。彼らは、多くの役割を担っていた。本書の細部に至るまで影響を及ぼした彼らの才能と貢献がなければ、プロジェクトの成功はなかったであろう。とりわけ、Joshの貢献は特筆すべきものである。Joshの深更まで及んだ作業、優れた編集能力と経済学に関する深い洞察に対する感謝の気持ちは永遠に忘れることはない。

ZickRubinには、プロジェクトがスタートした初期の段階から助言と激励をいただいた。プロジェクトの内容に貢献してくれた多くの経済学者のみなさんにも感謝したい。ボストン大学のBruce Watson、Anuradha Gupta、Julia Paul には、章末問題の作成に貢献していただいた。テキサス工科大学のRashid Al-Hmoudには、革新的なインストラクターズ・マニュアルとアクティブラーニングの演習問題を作成していただいた。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校のSteven Yamarikと、インディアナ大学ブルーミントン校のPaul Grafには、本書の重要点を抽出したすばらしいパワーポイントのスライドとアニメーションを作成していただいた。 Anuradha GuptaとJulia Paulには、TestBank を作成していただいた。

最も重要な貢献は、編集者とピアソン社のみなさんによるものである。彼らとは、本書のすべての段階をともに過ごした。夜も週末も、数えきれないほどの時間をこのプロジェクトに注いでいただいた。このプロジェクトに寄せられた彼らの情熱、ビジョン、編集に際しての提案のすべてが、テキストの至るところに活かされている。プロジェクトにおける重要な決断のほとんどは、編集者の助言と協力の賜物である。この関係があったからこそ、本書を完成させる ことができた。

ピアソン社の多数の人たちが重要な役割を担ってくれたが、特にお世話になったのが、Executive Acquisitions EditorのAdrienne DAmbrosio, Executive Development Editor Mary Clare McEwing, Production Manager Nancy FreihoferProject Manager Sarah Dumouchelle, Andra Skaalrud, Diane Kohnen & Ann Francis. Product Testing and Learner Validation Manager Kathleen McLellan, Executive Field Marketing Manager Lori DeShazo, Senior Product Marketing Manager ) Alison Haskins, Digital Content Team Lead Noel Lotz, Digital Studio Project ManagerのMelissa Honig、Margaret E. Monahan-Pashallである。

なかでも特にAdrienneには感謝している。プロジェクトがスタートした当初から献身的に関わり、重要な決断のすべてに労を惜しまず貢献してくれた。プロジェクトの立案にあたったDigital EditorのDenise Clinton、そして、Vice President Product ManagementのDonna Battistaには、プロジェクトを通じて支援していただいた。みなさんは、私たち3人にとっては、筆者であり、教育者であり、コミュニケーターであった。本書は、プロジェクトに関わっ たすべての方々の忍耐と献身の証であり、良い文章(いや悪い文章!)を見い出した慧眼の証でもある。彼らのプロジェクトへの偉大な献身に私たちは感銘を受けてきた。完成までの助言と協力に心から感謝している。

最後に、私たちを支えてくれた人々に感謝したい。私たちを経済学者として導き、教育の力と経済学を学ぶことから得られる喜びを実例をもって示してくださった指導教授たち。私たちを育て、私たちのキャリアを可能にした人的資源を与えてくれた両親。私たちの子どもたち、Annika、Aras、Arda、Eli、Greta、Mason、MaxとNoah は、執筆に追われて犠牲にせざるをえなかった家族との時間を我慢してくれた。そして、プロジェクトを通して私たちをサポートし、理解してくれた配偶者にも感謝しきれない。

本書は、このプロジェクトにともに取り組んだ、慧眼と情熱を持った多くの 人々の成果である。数多くの協力者たちに心から感謝を捧げたい。

レビュアー

以下に挙げる方々は、本テキストのレビュアー、フォーカスグループ、テスト授業参加のみなさんである。彼らからは、様々な洞察と貢献を与えていただいた。

Adel Abadeer, Calvin College
Ahmed Abou-Zaid, Eastern Illinois University
Temisan Agbeyegbe, City University of New York
Carlos Aguilar, El Paso Community College
Rashid Al-Hmoud, Texas Tech University
Sam Allgood, University of Nebraska,Lincoln
Neil Alper, Northeastern University
Farhad Ameen, Westchester Community College
Catalina Amuedo-Dorantes, San Diego State University
Lian An, University of North Florida
Samuel Andoh, Southern Connecticut State University
Brad Andrew, Juniata College
Len Anyanwu, Union County College
Robert Archibald, College of William and Mary
Ali Arshad, New Mexico Highlands University
Robert Baden, University of California,Santa Cruz
Mohsen Bahmani-Oskooee, University of Wisconsin, Milwaukee
Scott L. Baier, Clemson University
Rita Balaban, University of North Carolina
Mihajlo Balic, Harrisburg Area Community College
Sheryl Ball. Virginia Polytechnic Institute and State University
Spencer Banzhaf, Georgia State University
Jim Barbour, Elon University
Hamid Bastin, Shippensburg University
Clare Battista, California State Polytechnic University, San Luis Obispo
Jodi Beggs. Northeastern University
Eric Belasco, Montana State University
Susan Bell, Seminole State University
Valerie Bencivenga. University of Texas,Austin
Pedro Bento, West Virginia University
Derek Berry. Calhoun Community College
Prasun Bhattacharjee, East Tennessee State University
Benjamin Blair, Columbus State University
Douglas Blair, Rutgers University
John Bockino, Suffolk County Community College
Andrea Borchard. Hillsborough Community College
Luca Bossi,University of Pennsylvania Gregory Brock, Georgia Southern University
Bruce Brown, California State Polytechnic University.
Pomona David Brown, Pennsylvania State University
Jaime Brown, Pennsylvania State University Laura Bucila, Texas Christian University Don Bumpass, Sam Houston State University
Chris Burkart, University of West Florida
Colleen Callahan, American University
Fred Campano, Fordham University
Douglas Campbell, University of Memphis
Cheryl Carleton. Villanova University
Scott Carrell, University of California,Davis
Kathleen Carroll. University of Maryland, Baltimore
Regina Cassady, Valencia College. EastCampus
Shirley Cassing, University of Pittsburgh Nevin Cavusoglu. James Madison University
Suparna Chakraborty, University of SanFrancisco
Catherine Chambers, University of Central Missouri
Chiuping Chen, American River College Susan Christoffersen, Philadelphia University
Benjamin Andrew Chupp. Illinois State University
David L. Cleeton, Illinois State University Cynthia Clement, University of Maryland
Marcelo Clerici-Arias, Stanford University
Rachel Connelly, Bow doin College
William Conner. Tidewater Community College
Patrick Conway, University of North Carolina
Jay Corrigan, Kenyon College
Antoinette Criss, University of South Florida
Sean Crockett, City University of NewYork
Patrick Crowley, Texas A&M University.Corpus Christi
Kelley Cullen.Eastern Washington University
Scott Cunningham,Baylor University
Muhammed Dalgin, Kutztown University
David Davenport, McLennan Community College
Stephen Davis,Southwest MinnesotaState University
John W.Dawson, Appalachian State University
Pierangelo De Pace, California State University,Pomona
David Denslow, University of Florida
Arthur Diamond, University of Nebraska,Omaha
Timothy Diette. Washington and Lee University
Isaac Dilanni, University of Illinois, Urbana-Champaign
Oguzhan Dincer,Illinois State University
Ethan Doetsch,Ohio State University
Murat Doral,Kennesaw State University
Tanya Downing, Cuesta College
Gary Dymski, University of California,Riverside
Kevin Egan,University of Toledo
Eric Eide,Brigham Young University,Provo
Harold Elder. University of Alabama,Tuscaloosa
Harry Ellis,University of North Texas
Noha Emara,Columbia University
Lucas Engelhardt,Kent State University,Stark
Hadi Esfahani, University of Illinois,Urbana-Champaign
Molly Espey.Clemson University
Jose Esteban,Palomar College
Hugo Eyzaguirre,Northern Michigan University
Jamie Falcon, University of Maryland,Baltimore
Liliana Fargo, DePaul University
Sasan Fayazmanesh, California State University. Fresno
Bichaka Fayissa, Middle Tennessee State University
Virginia Fierro-Renoy,Keiser University
Donna Fisher, Georgia Southern University
Paul Fisher,Henry Ford Community College
Todd Fitch. University of California,Berkeley
Mary Flannery, University of Notre Dame
Hisham Foad, San Diego State University
Mathew Forstater, University of Missouri,Kansas City
Irene Foster,George Mason University
Hamilton Fout,Kansas State University
Shelby Frost,Georgia State University
Timothy Fuerst,University of Notre Dame
Ken Gaines, East-West University
John Gallup,Portland State University
William Galose,Lamar University
Karen Gebhardt, Colorado State University
Gerbremeskel Gebremariam. Virginia Polytechnic Institute and State University
Lisa George,City University of NewYork
Gregory Gilpin, Montana State University
Seth Gitter,Towson University
Rajeev Goel,Illinois State University
Bill Goffe,State University of New York,Oswego
Julie Gonzalez, University of California Santa Cruz
Paul Graf, Indiana University, Bloomington
Philip Graves, University of Colorado,Boulder
Lisa Grobar,California State University,Long Beach
Fatma Gunay Bendas,Washington and Lee University
Michael Hammock.Middle Tennessee State University
Michele Hampton,Cuyahoga Community College
Moonsu Han, North Shore Community College
F.Andrew Hanssen, Clemson University David Harris, Benedictine College
Robert Harris,Indiana University-Purdue University Indianapolis
Julia Heath, University of Cincinnati
Jolien Helsel, Youngstown State University
Matthew Henry.Cleveland State University
Thomas Henry, Mississippi State University
David Hewitt, Whittier College
Wayne Hickenbottom. University of Texas,Austin
Michael Hilmer, San Diego State University
John Hilston, Brevard College
Naphtali Hoffman, Elmira College and Binghamton University
Kim Holder. University of West Georgia
Robert Holland, Purdue University
James A.Hornsten, Northwestern University
Gail Hoyt, University of Kentucky
Jim Hubert, Seattle Central Community College
Scott Hunt, Columbus State Community College
Kyle Hurst, University of Colorado, Denver
Ruben Jacob-Rubio, University of Georgia
Joyce Jacobsen, Wesleyan University
Kenneth Jameson, University of Utah
Andres Jauregui, Columbus State University
Sarah Jenyk. Youngstown State University
Robert Jerome, James Madison University
Deepak Joglekar, University of Connecticut
Paul Johnson, Columbus State University
Ted Joyce, City University of New York
David Kalist, Shippensburg University
Lilian Kamal, University of Hartford
Leonie Karkoviata, University of Houston. Downtown
Kathy Kelly, University of Texas, Arlington
Colin Knapp. University of Florida
Yilmaz Kocer. University of Southern California
Ebenezer Kolajo, University of West Georgia
Janet Koscianski, Shippensburg University
Robert Krol, California State University,Northridge
Daniel Kuester, Kansas State University
Patricia Kuzyk, Washington State University
Sumner La Croix, University of Hawaii
Rose LaMont, Modesto Community College
Carsten Lange. California State University. Pomona
Vicky Langston, Columbus State University
Susan Laury, Georgia State University
Myoung Lee, University of Missouri, Columbia
Sang Lee, Southeastern Louisiana University
Phillip K. Letting. Harrisburg Area Com
munity College
John Levendis, Loyola University
Steven Levkoff. University of California,San Diego
Dennis P. Leyden. University of NorthCarolina, Greensboro
Gregory Lindeblom. Brevard College
Alan Lockard, Binghamton University
Joshua Long, Ivy Technical College
Linda Loubert, Morgan State University
Heather Luea, Kansas State University
Rita Madarassy, Santa Clara University
James Makokha, Collin County Community College
Liam C. Malloy, University of Rhode Island
Paula Manns, Atlantic Cape Community College
Vlad Manole, Rutgers University
Hardik Marfatia, Northeastern Illinois University
Lawrence Martin. Michigan State University
Norman Maynard, University of Oklahoma
Katherine McClain. University of Georgia
Scott McGann, Grossmont College
Kim Marie McGoldrick. University of Richmond
Shah Mehrabi, Montgomery Community College
Saul Mekies, Kirkwood Community College
Kimberly Mencken, Baylor University
Diego Mendez-Carbajo, Illinois Wesleyan University
Catherine Middleton, University of Tennessee, Chattanooga
Nara Mijid, Central Connecticut State University
Laurie A. Miller, University of Nebraska,Lincoln
Edward Millner, Virginia Commonwealth University
Ida Mirzaie, Ohio State University
David Mitchell, Missouri State University. Springfield
Michael Mogavero, University of Notre Dame
Robert Mohr, University of New Hampshire
Barbara Moore, University of Central Florida
Thaddeaus Mounkurai, Daytona State College
Usha Nair-Reichert, Emory University
Camille Nelson, Oregon State University
Michael Nelson, Oregon State University
John Neri, University of Maryland
Andre Neveu, James Madison University
Jinlan Ni. University of Nebraska. Omaha
Eric Nielsen, St. Louis Community College
Jaminka Ninkovic, Emory University
Chali Nondo, Albany State University
Richard P. Numrich, College of Southern Nevada
Andrew Nutting, Hamilton College
Grace O.. Georgia State University
Norman Obst. Michigan State University
Scott Ogawa, Northwestern University
Lee Ohanian, University of California,Los Angeles
Paul Okello, Tarrant County College
Ifeakandu Okoye, Florida A&M University
Alan Osman, Ohio State University
Tomi Ovaska, Youngstown State University
Caroline Padgett. Francis Marion University
Peter Parcells, Whitman College
Cynthia Parker, Chaffey College
Mohammed Partapurwala, Monroe Community College
Robert Pennington, University of Central Florida
Kerk Phillips, Brigham Young University
Goncalo Pina, Santa Clara University
Michael Podgursky. University of Missouri
Greg Pratt, Mesa Community College
Guangjun Qu. Birmingham-Southern College
Fernando Quijano, Dickinson State University
Joseph Quinn, Boston College
Reza Ramazani, Saint Michael’s College
Ranajoy Ray-Chaudhuri. Ohio State University
Mitchell Redlo, Monroe Community College
Javier Reyes, University of Arkansas
Teresa Riley. Youngstown State University
Nancy Roberts, Arizona State University
Malcolm Robinson, Thomas More College
Randall Rojas, University of California,Los Angeles
Sudipta Roy, Kankakee Community College
Jared Rubin, Chapman University
Jason C. Rudbeck, University of Georgia
Melissa Rueterbusch, Mott Community College
Mariano Runco. Auburn University at Montgomery
Nicholas G. Rupp. East Carolina University
Steven Russell, Indiana University-Purdue University-Indianapolis
Michael Ryan, Western Michigan University
Ravi Samitamana, Daytona State College
David Sanders, University of Missouri,St. Louis
Michael Sattinger, State University of New York, Albany
Anya Savikhin Samek, University of Wisconsin, Madison
Peter Schuhmann. University of North Carolina, Wilmington
Robert M. Schwab, University of Maryland
Jesse Schwartz, Kennesaw State University
James K. Self, Indiana University. Bloomington
Mark Showalter, Brigham Young University. Provo
Dorothy Siden. Salem State University
Mark V. Siegler. California State University, Sacramento
Timothy Simpson, Central New Mexico Community College
Michael Sinkey, University of West Georgia
John Z. Smith. Jr. United States Military Academy, West Point
Thomas Snyder, University of Central Arkansas
Joe Sobieralski, Southwestern Illinois College
Sara Solnick, University of Vermont
Martha Starr, American University
Rebecca Stein, University of Pennsylvania
Liliana Stern, Auburn University
Adam Stevenson, University of Michigan
Cliff Stone, Ball State University
Mark C. Strazicich. Appalachian State University
Chetan Subramanian. State University of New York, Buffalo
AJ Sumell, Youngstown State University
Charles Swanson. Temple University
Tom Sweeney, Des Moines Area Community College
James Swofford, University of South Alabama
Vera Tabakova, East Carolina University
Emily Tang, University of California, SanDiego
Mark Tendall, Stanford University
Jennifer Thacher, University of New Mexico
Charles Thomas, Clemson University
Rebecca Thornton, University of Houston
Jill Trask, Tarrant County College.Southeast
Steve Trost, Virginia Polytechnic Institute and State University
Ty Turley, Brigham Young University
Nora Underwood, University of Central Florida
Mike Urbancic, University of Oregon
Don Uy-Barreta, De Anza College
John Vahaly. University of Louisville
Ross Van Wassenhove. University of Houston
Don Vandegrift. College of New Jersey
Nancy Virts, California State University.Northridge
Cheryl Wachenheim, North Dakota State College
Jeffrey Waddoups, University of Nevada,Las Vegas
Donald Wargo, Temple University
Charles Wassell Jr.Central Washington University
Matthew Weinberg,Drexel University
Robert Whaples, Wake Forest University
Elizabeth Wheaton, Southern Methodist University
Mark Wheeler, Western Michigan University
Anne Williams, Gateway Community College
Brock Williams, Metropolitan Community College of Omaha
DeEdgra Williams, Florida A&M University
Brooks Wilson, McLennan Community College
Mark Witte, Northwestern University
Katherine Wolfe. University of Pittsburgh
William Wood, James Madison University
Steven Yamarik, California State University, Long Beach
Bill Yang, Georgia Southern University
Young-Ro Yoon, Wayne State University
Madelyn Young, Converse College
Michael Youngblood, Rock Valley College
Jeffrey Zax, University of Colorado, Boulder
Martin Zelder, Northwestern University
Erik Zemljic, Kent State University
Kevin Zhang, Illinois State University

監訳者まえがき〜日本語版刊行にあたって〜

本書は、Daron Acemoglu, David Laibson, John A. List, Microeconomics (2015, Pearson Education)の日本語版である。同じ著者によるMacroeconomics (日本語版は2019年に出版)とともに、大学での経済学入門コースの教科書として、アメリカをはじめ世界各国で好評を博している。日本の大学では、4単位科目(通 年1コマか半期2コマ)の教科書に適した分量であるが、内容を取捨選択して2単 位科目か、マクロ経済学を合わせた4単位科目の半分をカバーする教科書として使用することもできるだろう。

翻訳された教科書で本書のレベルに相当するものには、「マンキュー経済学I ミクロ編』、『スティグリッツ ミクロ経済学」、「クルーグマン ミクロ経済学」(以上、東洋経済新報社)、『ハバード経済学II 基礎ミクロ編』(日本経済新聞出版社)等がある。これらと比較した本書の特徴は、「新しい」と「やさしい」である。

「新しい」面は、従来の入門レベルの教科書では扱われていないが、学界の最先端で議論されているような最新のトピックを、教科書の中核に取り入れていることである。改訂を重ねている教科書には、長年使われて改良が施されている利点がある一方で、経済学の新しい知見が現れても、教科書の骨格を変化させることが難しい。その結果、時代の変化とともに廃れつつある知識を最初にしっかりと学び、今重要な新しい知識は上級の教科書で触れられるものとし ていっさい取り上げないか、最後に少しだけ触れられるような構成になってしまうことが起こりがちである。結局、既存の教科書は変化できずに、新しい教科書に取って代わられることで、教科書は進歩してきた。

本書は、革新的業績で経済学を変貌させてきた著者たち(いわば教科書の書換えを迫る張本人)が、自分たちが変えた経済学の姿を教科書に盛り込もうと試みたものである。本書の最も優れた特徴は、実験経済学と行動経済学の知見を前面に出して、活用していることである。従来の教科書ではとってつけたように扱われていたこれらの内容が、教科書を読み進む過程で経済学の中に根づいた概念として身に付くように解説されている。

実験経済学については、本文とコラム「根拠に基づく経済学」「選択の結果」などで、実験室で行われるラボ実験と実際の現場で行われるフィールド実験の成果が多数、紹介されている。一国経済を対象とするマクロ経済学ではなかなか一国経済そのものを実験台にはしにくいが、ミクロ経済学の研究対象は実験的手法と親和的なものが多い。現在では、本書が経済学の3つの重要な原理の 1つに挙げた、事実とデータにより理論を検証しようとする「経験主義」の実 践として、実験で得られたデータを用いることがさかんに行われている。

市場の働きの解明はミクロ経済学の中心課題であるが、複雑な現実の市場をそのまま説明することは難しい。重要な要素を抽出した環境を実験室に作り出し、市場の働きの本質を解明しようとするのが実験的手法である。実験によって制御された環境によって、消費者はインセンティブに反応するのか(5章)、供給は価格に反応するのか(6章)、価格は本当に均衡に収束するのか(7章)、という問題が検証されている。フィールド実験の分野で活躍する、著者の1人のリスト教授の研究を含めて、実際に求人広告に応募したり(11章)、ネットオークションに出品したり(17章)、募金活動を行ったり(18章)した様々な実験が紹介されている。このような実験に基づくエビデンスが豊富に登場し、教科書の中心的地位を占めるのは、まさに革新である。

行動経済学の知見も随所に活かされているのは、この分野の重鎮であるレイブソン教授が執筆陣に加わっている賜物だ。伝統的な経済学の人間像である、利己的で合理的な「ホモ・エコノミカス」を、実際のより人間的な姿に拡張しようとするのが行動経済学だ。行動経済学の知見は、本書の経済主体の行動の説明の中心に置かれていて、3つの重要な原理の1つである「最適化」について、本書では、誰もがつねに最適化ができているとは限らないが、人々は最適化を試みることによって、多くの場合にうまく最適化を行っている、という説明から出発している。

入門レベルの教科書にも行動経済学は取り入れられつつあるが、これからの教科書は行動経済学を取り入れたかどうかではなくて、行動経済学のどの話題をどのように取り上げたかが問われる段階に来ている。本書で取り上げられた 主な話題は、15章での毎日、「明日からダイエットをはじめる」と決意する(ありがちな)行動(「選好の逆転」)と、18章での利己的な人間像から拡張された「社会的選好」である。いずれも、昔から教科書にある伝統的な教材かと思わせるような、しっかりとした取扱いがされている。

実は「選好の逆転」も「社会的選好」も合理的な行動であり、合理的な行動に絞った従来の教材からのギャップが小さく、とりかかりやすく、かつ身近に感じられる題材であり、これらを選択して、入門レベルの解説を行ったのは、巧みな構成である。なお、選好の逆転では何が合理的で、何が非合理的かは、行動経済学の教科書でもきちんと説明されていないことが多いが、本書では、 丁応に解説されている。

また、自分の状態が自らの選択だけではなく、他者の選択にも依存する状況をゲーム理論によって分析することは、ミクロ経済学の重要な研究領域であるが、本書では13章の1章全体を解説に充てて、しっかりとゲーム理論の基礎 を学べるようになっている。そして、その前までがゲーム理論を必要としない議論、それ以降がゲーム理論を用いた分析、となっていて、ゲーム理論が本書の全体の構成を特徴づける、斬新な構成になっている。13章以降では、ゲーム理論を使って、寡占市場での企業行動(14章)、経済主体が保有する情報が非対称な市場の問題点(16章)、他者への信頼と報復が生まれるメカニズム (18章)、等が分析されている。また、17章では、ネットオークションの普及で多くの人が経験するようになったオークション市場が取り上げられ、収入同値定理のような、かなり高度な内容まで解説されている。

こうした新しい内容を限られた紙幅に盛り込むためには、従来の教科書にあった話題を削らなければいけないが、そのことで何か学習に弊害が生じないか(たとえば、公務員試験の定番問題が扱われなくなる)という不安は杞憂である。主に削られているのは、完全競争市場をより掘り下げた議論である。標準的な経済学部のカリキュラムでは、この教科書が使われる入門レベルの科目の後に中級レベルの科目がある。従来の教科書にあり、本書で削られた題材は、中級レベルの科目で学ぶことができる。公務員試験を受験するには、そのレベルの教科書での勉強が必須なので、本書のような題材の選択は問題とはならない。なお、日本の教科書では入門と中級の区別がはっきりしないことが多いが、世界的には区別がはっきりしている。翻訳されている中級レベルのミクロ経済学の教科書には、「レヴィット ミクロ経済学(基礎編・発展編)」(東洋経済新報 社)等がある。

独習するなど、中級ミクロ経済学に進まない場合には、本書の知識までしか得られないが、これは限られた時間で何を学ぶかの選択の問題である(そこで賢い選択をする方法を学ぶことは、本書の大きな主眼でもある)。本書のように、読者の視野を広げてくれる内容を学ぶことは、十分に理にかなった勉強法である。
内容が複雑にならない、記述が難しくならない、という意味での「やさしさ」については本書のレベルは、従来の教科書では一番やさしいとされる「マンキュー経済学I ミクロ編』よりも少しやさしい水準だろう。また、重要な話題が精選されていることによって読みやすく、かつ学びやすくなっている。

翻訳でもそうした「やさしさ」を伝えることにひときわ気を遣った。原書で使われている英語は非常に平易なものであるが、翻訳によっては学術的で固い日本語になってしまいがちである。日本語版を企画した東洋経済新報社の佐藤朋保氏とも議論のうえに、本書は、高校生でも読めるような翻訳を目指した。そのため一部では、日本語として意味が通りやすい意訳を志向している(ただし、経済学の教科書であるので、原文の論理そのものを踏み外すわけにはいか ないとともに、日本語が固まっている専門用語はそのまま用いている)。

経済学の内容を読者にやさしく伝えるために、本書ではアメリカの学生が経験する身近な事例を多数取り上げている。翻訳教科書のつねとして、そのような事例は日本ではなじみのないもので、逆効果になることもある。その場合は、固有名詞を一般名詞に置き換えたり、日米の慣習や制度の違いについて訳注を付けたりして、日本の読者にも読みやすくなるようにした。また、10章では政府の収入と支出の内訳に関する節があるが、日本の読者はアメリカのことよりも日本のことを先に学ぶべきであるので、日本のデータに基づく節を追加した。

原書の節を[アメリカの場合]とし、同様の内容を日本のデータによって説明した節を[日本の場合]として[アメリカの場合]の直後に収めているので、アメリカでどのように教えているかが第一の興味でなければ、[アメリカの場合]を飛ばして、[日本の場合]だけ読めば十分である。
経済学のテキストを実際の大学の講義で使用するにあたっては、アメリカでは教科書に適合した様々なサポート教材が提供されている。本書でも、同様のセットが日本語版として提供される。テキスト各章に対応した、図表スライド、講義用スライド、TestBank、eラーニング、章末問題の解答、アクティプラーニング用スライドなどの様々なサポート教材のセットについては、東洋経済新報社の茅根恭子氏に準備していただいた。

本書の著者の経歴と業績は巻末に紹介されているが、プロフィールの若干の補足をしておこう。
アセモグル教授は、その業績を要約することが難しいほど、多岐にわたる分野で活躍をしている。専門分化が進んだ現代の経済学の中で、1つの専門分野にとどまることなく重要な問題に次々と関心を移し、それぞれで影響力のある業績をあげ、稀有な存在として業界の尊敬と畏怖の念を集めている。教授の活躍自体が、経済の様々な重要な問題をゴールドスタンダードに沿って検証するという本書のアプローチのお手本になっていると言ってよい。教授の知的好奇心は、最近では、人工知能(AI)の経済への影響に関する研究にも影響を発 揮している。

レイブソン教授は、心理学の知見を取り入れて発展した行動経済学の確立に貢献した重鎮である。3章で経済学の第1の原理である「最適化」を説明する際にも、人が最適化できない状況があることに注意を促して、行動経済学の考え方を最初から取り入れている。また、神経科学を取り入れた神経経済学、遺伝子情報をデータとして活用する遺伝子経済学でも活躍しており、隣接科学との交流によって経済学の方法論を大きく広げる活躍をされている。教授は2019年秋より、勤務するハーバード大学の経済学入門講義を担当することになった。長年、この講義を担当し、入門用教科書のベストセラーの著者であるマンキュー教授からの交代は、教科書の世代交代を印象づけることとなった。

リスト教授は、実験室内ではなく実際の社会で実験を行うという、フィールド実験を用いた研究の第一人者である。経済学の研究対象が自由貿易の是非のような国民経済全体に関わることであった時代には、経済学は自然科学とは違って実験ができない学問とされていた。しかし現代では教育、社会保障のような対個人サービスが重要な位置を占めるようになり、政策の効果の検証には実験が可能な研究課題が多くなってきた。それだけでなく教授は、人々の経済行動の研究にもフィールド実験を積極的に適用して、経済学の方法論を革命的に進歩させた。
こうした革新的な業績をあげ続けているスーパースターのチームが、教科書の世界を革新しようとする醍醐味を、本書を読むことで味わっていただきたいと思う。

最後に、佐藤氏に加えて東洋経済新報社の村瀬裕己氏と堀雅子氏には、本書の編集・校正作業にあたっていただいた。700ページを超える大部を隅々までチェックして、数多くの不備を修正していただいた。みな様の深いプロ意識と優しいサポートに厚く感謝を申し上げる。
この種の翻訳では複数人で分担して翻訳するところを、日本語版の意図を貫微する観点から、単独での翻訳を岩本千晴氏にお願いした。限られた期間で大部の原稿を翻訳することで大変なご苦労をおかけしたが、すばらしい翻訳をされたことに厚く感謝を申し上げたい。
岩本 康志

‘教員向けサポート教材については「教科書の森」サイトを参照。https://book.toyokeizai.net/textbook/

ミクロ経済学主要目次

第I部 経済学への誘い
1章 経済学の原理と実践
2章 経済学の方法と問い
3章 最適化:最善をつくす
4章 需要、供給と均衡

第Ⅱ部 ミクロ経済学の基盤
5章 消費者とインセンティブ
6章 生産者とインセンティブ
7章 完全競争と見えざる手
8章 貿易
9章 外部性と公共財
10章 政府の役割:税と規制
11章 生産要素市場

第Ⅲ部 市場構造
12章 独占
13章 ゲーム理論と戦略的行動
14章 募占と独占的競争

第IV部 ミクロ経済学の拡張
15章 時間とリスクのトレードオフ
16章 情報の経済学
17章 オークションと交渉
18章 社会経済学

目次

まえがき
謝辞
監訳者まえがき〜日本語版刊行にあたって〜

第I部 経済学への誘い
1章 経済学の原理と実践
1.1 経済学の対象
経済主体と経済資源
経済学の定義
事実解明的経済学と規範的経済学
ミクロ経済学とマクロ経済学

1.2 3つの原理

1.3 第1の原理:最適化
トレードオフと予算制約 機会費用
費用便益分析
EBE フェイスブックは無料か?

1.4 第2の原理:均衡
フリーライダー問題

1.5 第3の原理:経験主義

1.6 経済学は役に立つ?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

2章 経済学の方法と問い
2.1 科学的方法とは
モデルとデータ
経済モデル
EBE 大学を卒業すると、どれぐらい所得が増えるのか?
平均値
伝聞に基づく議論

2.2 因果関係と相関関係
赤色の広告キャンペーン
因果関係と相関関係
実験経済学と自然実験

2.3 経済学の問いと答え
EBE 義務教育が1年延びたら、賃金はどれぐらい上がるのか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題
補論 補論グラフの作成と解釈
インセンティブに関する研究
実験のデザイン
変数の説明
原因と結果
キーワード
練習問題

3章 最適化:最善をつくす
3.1 最適化の2つの方法:焦点の違い

3.2 水準による最適化
選択の結果 人々は本当に最適化しているのか?
比較静学

3.3 差分による最適化:限界分析
限界費用
EBE 立地は家賃にどのように影響するのか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

4章 需要、供給と均衡
4.1 市場
競争市場

4.2 買い手の行動
需要曲線
支払意思額
個人の需要曲線から総需要曲線を導き出す
市場需要曲線を作る
需要曲線のシフト
EBE ガソリン価格が安くなったら、もっとガソリンを買うだろうか?

4.3 売り手の行動
供給曲線
受入意思額
個別の供給曲線から市場供給曲線を導き出す
供給曲線のシフト

4.4 均衡における供給と需要
競争均衡における曲線のシフト

4.5 政府がガソリン価格を決めたらどうなるか?
選択の結果 市場価格を固定することによる予期せぬ出来事
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

第II部 ミクロ経済学の基盤
5章 消費者とインセンティブ
5.1 買い手の選択
好きなもの
財とサービスの価格
選択の結果 絶対水準 vs 割合
使える金額

5.2 3要素を合わせて考える
価格の変化
所得の変化

5.3 買い手の選択から需要曲線へ

5.4 消費者余剰
価格上昇による消費者余剰の減少
EBE 月100ドルの報酬で禁煙できるだろうか?

5.5需要の弾力性
需要の価格弾力性
需要曲線上の位置と価格弾力性
弾力性の判定:弾力的と非弾力的
需要の価格弾力性を決定する要因
需要の交差価格弾力性
需要の所得弾力性
データは語る マクドナルド社は、弾力性を考慮に入れるべきだろうか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題
補論 無差別曲線で選好を表す:予算制約のもう1つの活用法
キーワード
練習問題

6章 生産者とインセンティブ
6.1 完全競争市場における売り手

6.2 売り手の選択
財の生産:投入物と生産物
生産のための費用:費用曲線
生産から得られる利益:収入曲線
すべてを合わせる:3つの要素を活用して最善の選択を行う
選択の結果 1単位当たり利潤ではなく、総利潤を最大化する

6.3 売り手の選択から供給曲線へ
供給の価格弾力性
企業の操業停止
選択の結果 限界で判断するとサンクコストは無視される

6.4 生産者余剰

6.5 短期から長期へ
長期供給曲線
選択の結果 自動車製造工場:分業と規模の経済

6.6 企業から市場へ:長期競争均衡
企業の参入
企業の退出
長期では利潤はゼロになる
経済的利潤と会計上の利益
EBE エタノールへの補助金は生産者にどう影響するか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題
補論 企業の費用構造が異なるとき

7章 完全競争と見えざる手
7.1 完全競争と効率性
社会的余剰
パレート効率性

7.2 見えざる手の及ぶ範囲:個人から企業へ

7.3 見えざる手の及ぶ範囲:産業間の資源配分

7.4 価格が見えざる手を動かす
死重損失
計画鞋清
選択の結果 ハリケーン・カトリーナの災害:FEMAの対応とウォルマートの対応
中央集権国家
選択の結果 Kマートの計画と統制

7.5 公平性と効率性
EBE 利己的人間だけがいる市場は社会全体の幸福度を最大化できるか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

8章 貿易
8.1 生産可能性曲線
機会費用の計算

8.2 貿易の基本:比較優位
特化
絶対優位
選択の結果 比較優位の実験
取引の価格

8.3州際交易
選択の結果 レブロン・ジェームズは自宅のペンキ塗りをすべきだろうか?!
経済全体の生産可能性曲線
各州の比較優位と特化

8.4 国際貿易
国際貿易を決定する要因
データは語る フェアトレード:ブームの裏側
輸出国での勝者と敗者
輸入国での勝者と敗者
世界市場での価格はどう決まるのか?
国の比較優位を決めるもの

8.5反自由貿易の根拠
国家安全保障に関する懸念
グローバル化が自国の文化に与える影響に対する不安
環境問題と資源問題に関する懸念
幼稚産業保護論
関税の効果
EBE 自由貿易は仕事を奪うのか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

9章 外部性と公共財
9.1 外部性
「うまく働かない」見えざる手:負の外部性があるケース
「うまく働かない」見えざる手:正の外部性があるケース
選択の結果 あなたが想像したこともない正の外部性
金銭的外部性

9.2 外部性の民間による解決
民間による解決:交渉
コースの定理
民間による解決:正しいことをする

9.3 外部性の政府による解決
政府による規制の手段:直接規制
政府による規制の手段:市場に委ねる政策
補正的課税と補正的補助金
データは語る 外部性をどう推計するか?
データは語る ゴミ処理の有料化:消費者だって負の外部性を作っている!

9.4 公共財
政府による公共財の提供
選択の結果 フリーライダーのジレンマ
公共財の私的提供

9.5 共有資源
選択の結果 共有地の悲劇
選択の結果 釣り競争
EBE ロンドンの交通渋滞はどうすれば緩和できるのか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

10章 政府の役割:税と規制
10.1 アメリカの租税と政府支出
政府はどこから収入を得るのか? [アメリカの場合] 政府はどこから収入を得るのか? {日本の場合] 租税と支出の目的 (1) [アメリカの場合] 租税と支出の目的 (1) [日本の場合] 租税と支出の目的 (2)
データは語る 連邦所得税の税率等級
租税:租税の帰着と死重損失
選択の結果 死重損失の大きさは税の種類によって違う

10.2 規制
直接規制
価格統制:上限価格規制と下限価格規制

10.3 政府の失敗
官僚組織の直接費用
腐敗
地下経済

10.4 公平性と効率性

10.5 消費者主権とバターナリズム
意見の違い
EBE 最適な政府の大きさとは?
データは語る 政府探検隊と民間探検隊のどちらが効率的か?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

11章 生産要素市場
11.1 競争的労働市場
労働需要

11.2 労働供給:労働と余暇のトレードオフ
選択の結果 ウェブサイトとプログラムの作成
データは語る ホットドッグ販売と天気の関係
労働市場均衡:供給と需要の交点
労働需要をシフトさせる要因
労働供給をシフトさせる要因
データは語る 労働供給が増加すると賃金は本当に下がるのか?

11.3 賃金格差
人的資本の違い
選択の結果 労働者の訓練費用は誰が負担するのか?
補償貨金
選択の結果補償賃金の上乗せ
労働市場での差別
賃金格差の動向

11.4 その他の生産要素市場:物的資本と土地
EBE 労働市場に差別はあるのか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

第Ⅲ部 市場構造
12章 独占
12.1 新しい市場構造

12.2 市場支配力の源泉 |
法による市場支配力
自然市場支配力
選択の結果 公害規制が利益を生む
必要資源の支配 |
規模の経済

12.3 独占企業の選択
収入曲線
価格、限界収入、総収入

12.4 最適な生産量と価格の選択
最適な生産量の決定
最適な価格の決定
独占企業の利潤の計算
独占企業には供給曲線がない

12.5 「うまく働かない」見えざる手:独占がもたらすコスト

12.6 価格差別による効率性の向上
3つのタイプの価格差別
データは語る 第3種価格差別の実態

12.7 独占に対する政府の政策
マイクロソフト社の事例
価格規制
EBE 独占は社会にメリットがあるか?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

13章 ゲーム理論と戦略的行動
13.1 同時手番ゲーム
最良反応と囚人のジレンマ
支配戦略と支配戦略均衡
支配戦略が存在しないゲーム

13.2 ナッシュ均衡
ナッシュ均衡を求める
選択の結果 仕事か?遊びか?

13.3 ナッシュ均衡の応用
共有地の悲劇を考える
ゼロ和ゲーム

13.4 人々はどのように行動するか?
ペナルティーキックでのゲーム理論

13.5 展開型ゲーム
後ろ向き帰納法
先行者利益、コミットメント、報復
EBE 相手の立場で考えることは得策か?
選択の結果 お金より大事なものがある
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

14章 寡占と独占的競争
14.1 2つの市場構造

14. 2 寡占
寡占市場での企業の選択
同質の財の寡占
最善の方法:利潤を最大化する価格設定
差別化された財の寡占
データは語る 航空運賃の値下げ競争
談合:高価格を維持する手段
データは語る裏切るべきか、従うべきか、それが問題だ

14.3 独占的競争
独占的競争企業の選択
選択の結果 談合の現実
最善の方法:独占的競争企業の利潤最大化
データは語る 広告を出す企業と出さない企業があるのはなぜか?
独占的競争企業の利潤の計算
独占的競争産業の長期での均衡

14.4 「うまく働かない」見えざる手
市場支配力の規制

14.5 まとめ:4つの市場構造
EBE 市場を競争的にするために必要な企業の数は?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

第IV部 ミクロ経済学の拡張
15章 時間とリスクのトレードオフ
15.1 時間とリスクのモデル化

15.2 お金の時間価値
将来の価値と複利
貸し手と借り手
現在価値と割引

15.3 時間選好
時間割引
選択の結果 選好の逆転を予測できないことは非合理的
EBE 楽しいことは今やりたい?

15.4 確率とリスク
ルーレットと確率
独立性とギャンブラーの誤認
期待値
選択の結果 ギャンブルで儲けることはできない
延長保証

15.5 リスク選好
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

16章 情報の経済学
16.1 非対称情報
隠された特徴:中古車市場での逆選択
隠された特徴:医療保険市場での逆選択 |
逆選択に対する市場の解決策:シグナリング
選択の結果 あなたはどんなシグナルを出しているのか?
EBE 一度乗ると新車の価値が大きく下がるのはなぜか?
選択の結果 クジャクの尾羽はなぜ色鮮やかなのか?

16.2 隠された行動:モラルハザードがある市場
データは語る ヘルメット着用に関するモラルハザード
労働市場におけるモラルハザードの解決策:効率賃金
保険市場におけるモラルハザードの解決策:「リスクの一部を負担させる」
データは語る 教師に対してインセンティブを付与すべきか?
EBE 民間医療保険はなぜ高額なのか?

16.3 非対称情報がある場合の政府の政策
政府の介入とモラルハザード
公平性と効率性のトレードオフ
データは語る 求職者のモラルハザード
プリンシパル-エージェント問題としての罪と罰
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

17章 オークションと交渉
17.1 オークション
オークションの種類
公開入札・イングリッシュ・オークション
データは語る スナイピングは有効か?
公開入札・ダッチオークション
封印入札・第一価格オークション
封印入札・第二価格オークション
収入同値定理
EBE ネットオークションで賢く入札する方法

17.2 交渉
交渉の結果を左右するもの
オークションでの交渉:最後通牒ゲーム
交渉とコースの定理
EBE 家計のお金の使い道を決めるのは誰か?
データは語る 男女比率は交渉力も変える?
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

18章 社会経済学
18.1 慈善と公正の経済学
慈善の経済学
データは語る 寄付の費用(価格)が上がると、寄付金額は下がる
データは語る なぜ人々は寄付をするのか?
公正の経済学
データは語る 実験室の独裁者
EBE 人は公正を気にするか?

18.2 信頼と報復の経済学
信頼の経済学
報復の経済学
選択の結果 報復の進化論的解釈

18.3 意思決定における他者の影響
私たちの選好はどのように形成されるのか?
ピア効果の経済学
データは語る あなたは経済学に毒されていないか?
データは語る ヒア効果と身体能力
大衆に同調する:ハーディング現象
選択の結果 インターネットと確証バイアス
まとめ
キーワード
復習問題
演習問題

用語解説
索引
著者紹介

マクロ経済学主要目次
第I部 経済学への誘い
1章 経済学の原理と実践

2章 経済学の方法と問い
3章 最適化:最善をつくす
4章 需要、供給と均衡

第II部 マクロ経済学への誘い
5章 国の富:マクロ経済全体を定義して測定する
6章 総所得

第Ⅲ部 経済成長と発展
7章 経済成長
8章 なぜ豊かな国と貧しい国があるのか?

第IV部 マクロ経済の均衡
9章 雇用と失業
10章 クレジット市場
11章 金融システム

第V部 景気変動とマクロ経済政策
12章 景気変動
13章 反循環的マクロ経済政策

第VI部 グローバル経済のマクロ経済学
14章 マクロ経済と国際貿易
15章 開放経済のマクロ経済学