大人の語彙力が使える順できちんと身につく本

【最新! – 大人・社会人のための語彙力を身につけるおすすめ本リスト】も確認する

使いやすい語彙から学べる

本書では、言葉、意味、例文、解説が1セットになっていて、1単語につき1~2ページでまとめられています。また、各単語に使いやすさのレベルが5段階でつけられているので、使いやすい語彙から学べるのが本書の特徴です。

吉田裕子 (著)
出版社: かんき出版 (2017/7/12)、出典:出版社HP

はじめに

裸の王様にならないために

あなたは語彙力に自信がありますか? きっと、いくらかの不安があるからこそ、この本を手に取ったのではないでしょうか。
表現力が足りないせいで、思っていることがうまく伝わらない気がする……。
自分が何気なく使っている言葉は、実は間違っているのでは?
言葉の引き出しが少なくて、バカっぽく見られているかもしれない。
そうした不安を持つ人は大勢います。正しい日本語を確かめたい、たくさんの言葉を知りたい。そんな思いから、本書のように日本語や語彙力をテーマにした本をお読みになるのではないかと思います。
子どもであれば、多少、言葉が間違っていても、ご愛嬌ですまされます。若者であれば、やや崩れた言葉づかいでも、笑って注意される程度で終わります。では、大人は?
たとえば、五十代になっても「マジで」ばかり言っている人や、「愛くるしい」「可憐」「清楚」などと表現すべきことをすべて「かわいい!」のひと言ですましてしまう大人を見て、どう思いますか?
少なくとも、知性や品性を感じることはないでしょう。
いい年になると、言葉に関して注意を受ける機会は減ります。
年下の人や部下・後輩が注意してくることはないでしょうし、目上の人だって「この年齢までこんな言葉づかいだったなら、もう変わらないだろう」とあきらめて、わざわざ注意などしません。はっきりと言葉や態度に出さなかったとしても、内心ではあきれ、軽蔑しているものです。そして、本人は注意されないのをいいことに、乱れた言葉づかい、幼稚な言葉づかいを続けるのです。まるで裸の王様状態ですね。傍から見れば、最も恥ずかしい状況です。裸の王様になりたくないなら、定期的に自分の言葉を見直し、年齢や経験・立場に応じて使う言葉を磨くことが必要です。

語彙力に関する二つの罠

言葉を磨くアプローチとして、本書では語彙力を高めることを提案します。同じ内容を言葉にするにしても、年齢や相手、状況に応じて、格の高い表現を用いたほうがいい場合があります。たとえば、「頑張ります」よりも「精進いたします」と宣言するほうがふさわしい場面があります。「すみません」よりも「申し開きもできません」と謝罪するほうが、反省の色がにじむことだってあるでしょう。言い方の引き出しを増やし、語彙力を高めていれば、仕事でもプライベートでも、まわりの人から一目置かれる存在になることが可能です。

ただし、語彙を広げ、正確な言葉づかいをしようとする際、陥りがちな二つの残念パターンがあるので、注意が必要です。
一つは、にわか敬語の就職活動生状態です。就職活動の際、それまで敬語や接遇用語を使ってこなかった学生が、急に言葉づかいを正そうとして、不自然になっていることがあります。やたらと「御社」を連発したり、面接官への挨拶で「お目通りが叶い、恐縮至極に存じます」などと、いったいいつの時代の手紙なのかと思うような、堅苦しい言葉づかい をしたりするのです。

慌ててマニュアルを暗記したのでしょう。言葉が自分のものになっておらず、それこそ「身についていない」状態です。そのため、面接での定番の質問にはすらすらと答えられるのに、少しひねった質問になると、言葉がたどたどしくなってしまうのです。
ここであなたにお伝えしたいのは、「言葉やその意味を、表面的に覚えるだけでは足りない」ということ。言葉の本質をおさえたうえで、自分のものとして柔軟に使いこなせるようになってはじめて、真に「語彙力を培った」ということができます。

もう一つの残念なパターンが、格言引用癖のあるおじさん状態です。「論語」を読むと、「論語」の格言を朝礼で引用する。大河ドラマに熱中すると、ドラマの台詞を部下との会話で口にしてみる。新しい知識をひけらかしたくて、すぐに引用するおじさん……あなたのまわりにいませんか。語彙習得も、そうした知識自慢に陥りかねません。故事成語などを学ぶことは素晴らしいことですが、だからといって、気の置けない相手との昼食時に、
「身内に甘いのはだめだね、泣いて馬謖を斬るって言うだろう?」 などと言うと、まわりはしらけてしまいます。
言葉は使いどころが肝要です。学んだものを闇雲に披露すればいいわけではありません。状況や、相手と自分の年齢、立場などをふまえ、適切な言葉を選ぶことが必要です。

「認知語彙」と「使用語彙」

言葉の知識には、二つの段階があります。
まず、文章の中で見れば、何となく意味がわかる「認知語彙」。語彙の数え方によっても語彙数は変わってきますが、一般に日本人の大人には、この認知語彙が数万語あるとされています。

一方で、実際に自分の発言や文章の中で使いこなすことのできる言葉の範囲を「使用語彙」といいます。使用語彙の数は、認知語彙の三分の一から五分の一程度だといわれています。実は、この二種類の語彙をバランスよく増やすことが、語彙力のある知的な大人への近道です。

そもそも認知語彙の少ない人は単語数を増やさなくてはいけません。しかし、認知語彙ばかりに力を注ぐと、ただ雑学 的な知識が増えるだけです。身につけたいのは、日常のさりげない言葉に知性を感じさせるような、大人の語彙力です。それには、使用語彙を増やすこと、つまり、本当にわかっている言葉を増やすことが欠かせません。

本当にわかっている、とは少し抽象的な言い方ですが、別の言い方をすれば、手ごたえをもって理解しているということです。言葉の語源や由来、ニュアンスなどを理解し、どのような状況で使うのが妥当なのかを実感し、適切な文脈で使うことができる状態をいいます。意味の三択クイズで正解することがゴールではありません。

本書が目指す「大人の語彙力」

本書では、一つひとつの言葉に対し、それを本当に使いこなす(=使用語彙に加える)ための詳しい解説をつけました。辞書的な意味だけでなく、例文、由来、どういった状況なら使えるか、類似の表現とは何が違うかなどを詳しく説明 しています。また、本書で紹介する言葉は、使えるシーンや難易度を考慮して「使える順」に配列し、五段階評価もつけています。大学生や若手社会人はまず★五つを自分のものにすることを目指してください。三十代、四十代以上の方は★三~四つが使えるようになるとよいでしょう。★一~二つは、あらたまった文章・スピーチ向けですが、いざというときのために、少なくとも知っている状態(認知語彙)にはしておきましょう。

言葉は、世の中をとらえる窓です。言葉を知ることは、その言葉が背負う価値観、気づかいなどを知ることでもあります。本書で取り上げた表現にも、謙虚さや思いやり、誠実さを感じられるものが多くあります。それらを深く学ぶことは、単なる言葉の習得を越え、ビジネスや人づきあい、自己研鑽をしていくうえで、大いに役立つはずです。
本書を読むことが、正しい日本語知識を習得するのみならず、あなたの心のひだを増やし、より豊かな人生を送ることにつながれば、著者としてこのうえない喜びです。

二〇一七年七月
吉田裕子

吉田裕子 (著)
出版社: かんき出版 (2017/7/12)、出典:出版社HP

目次

はじめに
この本の使い方

第1章 仕事がなめらかに進む挨拶の定番表現
01 おそれいります
02 心待ちにする
03 お足もとの悪い中
04 ひとかたならぬ
05 有終の美
06 身に余る
07 趣向を凝らす
08 心ばかりの
09 お粗末さまでした
10 僭越ながら
11 はなむけ
12 肝煎り
13 鋭意
14 お引き立て
15 お相伴にあずかる
16 末席を汚す
17 相成りました
18 ひとかどの
19 ご指導ご鞭撻
20 忌憚のない
21 お運びくださいました
22 つつがない
23 相身互い
24 幸甚に存じます
COLUMN1| 実は『論語』にある言葉 その1

第2章 さりげなく人を立てる表現
25 あやかる
26 圧巻
27 おかげさまで
28 たしなむ。
29 奥ゆかしい
30 みずみずしい
31 板につく。
32 懐が(の)深い
33 堂に入る
34 筋金入り
35 草分け
36 心づくし
37 金字塔
38 真骨頂
39 珠玉
40 雲泥の差
41 お株を奪う
42 遜色ない
43 私淑する
44 慧眼(炯眼)
45 眼福
46 通暁
47 矜持
48 謦咳に接する
COLUMN2| 実は『論語』にある言葉 その2

第3章 反省を真摯に訴える表現
49 面目ない
50 身のほどをわきまえず
51 申し開きのできない
52 襟を正す
53 気を揉ませる
54 しがらみ
55 断腸の思い
56 不徳のいたすところ
57 かまける
58 忸怩たる思い
59 うかつ
60 粗相
61 のっぴきならない
62平に
COLUMN3| 時候の挨拶はもうこわくない!

第4章 文書・メールでよく使われる表現
63 ご自愛ください
64 一身上の都合」
65 教示
66 厚情
67 平素
68 愛顧
69 拙
70 万障お繰り合わせのうえ
71 笑覧
72 踏襲
73 腐心
74 清祥
75 寛恕
76 畏友
77 上梓
78 恵投
COLUMN4| 語彙力が試される漢字の「読み」

第5章 伝統をふまえた日本ならではの表現
79 花道
80 土壇場
81 しのぎを削る
82 手塩にかける
83 土俵際
84 独擅上・土壇場
85 お隠れになる
86 正念場
87 二の句が継げない
88 来し方行く末
89 糊口をしのぐ
90 お福分け
91 しゃちほこばる
COLUMN5| 含蓄の深い四字熟語に人生を学ぶ

第6章 言いにくいことを穏やかに伝える表現
92 あいにく
93 手前味噌
94 お手やわらかに
95 亀裂が入る
96 お汲み取りください
97 不躾
98 精彩を欠く
99 おこがましい
100 したり顔
101 老婆心
102 手あかのついた
103 沽券にかかわる
104 お戯れ
105 語弊
106 差し出がましい
107 折り行って
108 言わずもがな
109 寡聞にして
110 拙速に過ぎる
111 あられもない
112 膠着状態
COLUMN6| 歴史から生まれた言葉

第7章 大人なら知っておきたい表現

本来の意味から変化した言葉
113 (議論が)煮詰まる
114 破天荒
115 姑息
116 こだわる
117 御の字
118 潮時
119 白羽の矢が立つ
120 垂涎
121 穿った見方
122 やぶさかでない
123 微妙
124 確信犯

目上の人には使えない言葉
125 上手
126 ご苦労さまでした
127 そつ(が)ない
128 したたか
129 智る
130 一筋縄ではいかない
131 お見それしました
132 頑張ってください

間違いやすい言葉
133 胆(肝)に銘じる
134 琴線に触れる
135 この親にしてこの子あり
136 敷居が高い
137 しめやかに
138 すべからく
139 世間ずれ
140 双璧
141 他山の石
142 体よく
143 なおざりにする
144 二つ返事
145 眉唾もの
146 耳ざわり
147 役不足
148 やおら
149 奥さん
150 流れに棹さす
151 佳境
152 お力添え

ビジネスシーンで見聞きするカタカナ用語
153 ニッチ
154 フレキシブル
155 アウトソーシング
156 キャパシティ
157 ダイバーシティ
158 コミットメント
159 コンセンサス
160 フィックス
161 プライオリティ
162 アジェンダ
163 クロージング
164 コンプライアンス
165 サマリー
166 シナジー
167 ブラッシュアップ
168 ブルーオーシャン
169 ブレインストーミング (ブレスト)
170 マイルストーン
171 リスクヘッジ
172 リテラシー

あらたまった場で使われるかたい表現
173 忖度
174 退転
175 可及的速やかに
176 割愛
177 如何ともしがたい
178 鑑みる
179 粛々と
180 喫緊
181 遅滞無く
182 顛末
183 励行
184 目下

吉田裕子 (著)
出版社: かんき出版 (2017/7/12)、出典:出版社HP