大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる

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言い換えで語彙力を増やす

ビジネスの場で使える語彙がなかなか出てこない、というときにおすすめの一冊です。話し言葉を言い換えた表現が1文につき複数個記載されているので、効率よく語彙力を増やすことができます。

齋藤 孝 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2017/9/9)、出典:出版社HP

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はじめに

今、大人の言葉遣いが問題になっています。 子どもっぽい話し方をしている、社会人らしく見えない。そして、そのことで損をしてしまう。言葉の比重は、どんどん大きくなっています。これはもうすでに就活の時期からはじまっています。就活の時期に、あまりにも学生言葉、もしくは子どもっぽい言葉遣いをしてしまうと、この人は社会に出すにはちょっと不安である、その教育を担うだけの余裕がうちの会社にはないというふうに判断をされて不利になることもあります。

また、メールのやりとりが仕事の中心になってきています。メールでの言葉遣いというのは、ちょうど書き言葉と話し言葉が混ざったような新しい文体の文章です。純粋な書き言葉と違って、メールには話し言葉のような気安さもちょっと含んでいる。

ですから、日本語の中の話し言葉の伝統と書き言葉の伝統の重なる部分が、ちょうど今メールという形で非常に拡大してきているということなのです。

ベースになるべきなのは、書き言葉です。しかし、今SNSなどで話し言葉で文をつくる傾向があるので、書き言葉にあるよ
うな“きちんとした大人の言葉遣い”というものが、失われつつあるように思います。きちんとした言葉遣いを練習する必要があります。

語彙力を「言い換えカ」で身につける

今必要なのは、語彙を増やすということ、語彙力を高めるということです。日本語の語彙は大変豊かです。ですから、一つの言い方だけではなく、「言い換え力」を身につけていく。こうも言えるし、ああも言える。あるいはニュアンス的にはAよりもBのほうがよりニュアンスが伝わるといったように、細かなニュアンスが伝わるように言葉をセレクトする。そういう力が語彙力というものです。
語彙力がない人は、決まりきった言葉、あるいは子どもっぽい言葉しか使えません。そうすると、正式な場面での挨拶、たとえば結婚式、あるいはお葬式、あるいはみんなの前でプレゼンテーションをするとか、会を取り仕切るといった場面で恥をかくことにもなってしまう。そこで、フレーズとしてまずは使いこなせるようになってみようというのがこの本の趣旨です。

フレーズというのは非常に実用的なものです。フレーズを一つ覚えておきますと、様々な場面でそつなく振る舞えます。たとえば、「このたびは誠にご愁傷さまでございます」という言葉が言えたら、お葬式のときにはひとまず落ち着けます。この場面ではこう言っておくと、その場がおさまるという便利なフレーズを使いこなせるようになることで、大人の言葉遣いが身につきます。漢語、大和言葉で「語彙力」のあるフレーズに言い換える際に、できれば、フレーズの中に日本語としてこなれた大人の語彙が入っているといいでしょう。ただ言い換えるのではなくて、「語彙力」が感じられるフレーズになるといっそういいと考えます。

語彙力を高めるには、二つの軸があります。一つの軸は漢語を身につけることです。漢語というのは中国から入ってきた言葉ですが、その比重は、実は日本語の中では非常に大きいものです。
ですから、夏目漱石の時代ぐらいまでは、男性はほとんど漢語になじむことが勉強の中心だったわけです。それを素読という形でやる。それが勉強の中心でした。漢籍になじむというのが、教養があるということそのものだったわけです。
漢語のほうは、コンパクトに言いたいことを伝えます。そういう意味では非常に凝縮力がある。意味を 凝縮する力があるのは漢語のよさです。ですから、新聞などでは漢語が多用される。短い文章の中に意味をたくさん入れていくときには漢語が便利ということになります。

それともう一つの軸が大和言葉です。大和言葉は、漢語が入ってくる以前から、成立している日本語です。やわらかないい雰囲気の言葉が多いので、挨拶などでは大和言葉が活用されていることが多い。そして、雰囲気や人間関係を和らげるのに役立つのが大和言葉のよさです。ひらがな表記が似合うのが、大和言葉です。

友達同士のおしゃべりだけでは「語彙力」は増えない

今の全体の国語力、日本語力を各世代で見ていきますと、漢語の活用の力というのは、年々、落ち続けています。
それは大きな流れとしては、漢籍というものを中心とした勉強から離れてきたということが一つ。もう一つは、そもそも活字離れが進んでしまっていることです。
私は活字文化を推進する委員会に所属しているぐらいなのですが、新聞や書籍などで使われている活字、それが日本人の教養、あるいは頭の働きそのものを支えていると考えています。

活字文化から離れてしまって、友達同士のおしゃべりだけでやっていると、語彙が増えない。語彙の少ない友達と延々と話しても、やっぱり語彙は増えない。500語ぐらいですべての用が足りてしまう。場合によっては、すごいとかヤバいなどと言っていたら、20語程度ですべての会話が終わってしまう。そうすると、新しい言葉に出会えないわけです。
書き文字である活字というものを吸収しながら語彙を増やしていくことによって、日本語として使える語彙力を飛躍的に高めることができるのです。その際に、この言葉というのはこういう大本があるんだとか、この漢字はこういうふうな成り立ちなんだとか、そういうところも同時に知ることができると、記憶が定着しやすくなり、応用もしやすくなっていきます。ですので、この本ではフレーズとともに、語彙に注目して、語彙の広がり、応用の仕方というものも含めて、表現が豊かになるようご紹介しました。

それにプラスして、現代の社会では、いわゆる外来語、カタカナ語というものも実際に機能しています。そういうものも完全に無視していると、会議の場面でも機能しませんし、野球の試合などでストライクを「良し」と言っていた戦前に戻るわけにもいきません。そこで、外来語は、日本語として定着したものは日本語としてみなすというスタンスを今回はとります。その一つの基準は、各種の信頼できる国語辞典に採用されているものに関しては、外来語を日本語として扱うというものです。たとえばイノベーションという言葉や、コンセプトという言葉は、もうすでに日本国語大辞典や広辞苑などにも採録されています。そういうものは使えるのが望ましいですし、すでに日本語であるというふうに考えていいのではないかと思うのです。そういうものを完全に排除した純粋な日本語ということを考えるのもまた偏狭な考えだと思います。

元々日本語というのは外来語である中国の漢字を音読みで読んで、そのまま取り入れたわけですから、柔軟性、雑種性というものが特徴でもあります。
カタカナ語というのも、日本語の武器の一つですから、それも取り入れたいということで、現代の生活において非常に便利に使いこなせる、実用的な場面を想定しつつ、日本語としての語彙の奥行きというものを勉強できる、そのような本を目指してみました。
なお、「何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます」などといった敬語は、二重敬語ではありますが、すでに一般的に用いられているものは、今回は良しとしました。この本を使って、大人の語彙力、大人の言葉遣いができるようになっていただければ幸いです。

2017年8月
齋藤 孝

齋藤 孝 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2017/9/9)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第1章 「普段の会話で品よく見せる」語彙力ノート
・なるほど→おっしゃる通りです
・大丈夫です→問題ございません
・今、お金がなくて…→今、持ち合わせがなくて…
・わかりません→勉強不足で申し訳ございません
・それでいいです→異存はございません
・楽しみにお待ちしています→首を長くしてお待ちしております
・やばい→大変だ!
・ぶっちゃけて言うと→ありていに言えば
・教えてください→ご教示ください
・上手ですね→お手の物ですね
・すみません、忘れておりました!→すみません、失念しておりました!
・つまらないものですが、お受け取りください→ご笑納ください
・忘れてください→ご放念ください
・伝言です→お言づけがございます
・確認してください→確認のほど、よろしくお願い申し上げます
・一緒に行きます→お供させていただきます
・いただく→賜る

第2章 「お願いする」ときの語彙力ノート
・お願いして申し訳ございません
→お使い立てして申し訳ありません お手を煩わせて申し訳ございません
・どうぞよろしくお願い申し上げます→何卒よろしくお願い申し上げます
・手伝ってください→お力をお貸しください/手をお貸しください
・知っておいてください→お含みおきください
・見ておいてください→お目通しのほどお願いします
・自分のことを覚えておいてください→お見知りおきください

第3章 「言いづらいことを言い換える」語彙力ノート
・当日は都合がつきません→当日はあいにく都合がつきません
・残念ですが、おうかがいできません→よんどころない急用ができまして
・絶対無理です→私には荷が勝ちます
・~できません→~しかねます
・苦手なので、勘弁してください→不調法なもので、勘弁してください
・(目下の自分から言いづらい…)→僭越ながら申し上げます
・それを責めるのは間違いでしょう→それはお門違いではないでしょうか
・私のミスです→私の不手際です
・反省しています→平にご容赦ください
・言い過ぎだよ→口が過ぎるよ
・あの人とどうも合わないんだよね→あの人とはしっくりこないんですよね
・一見立派に見えるけど、実際は違うよ→砂上の楼閣だね
・中止になりました→お蔵入りになりました
・あの人の言い方は不愉快だ ウザい→あの人の言い方は耳に当たる
・(これを言うと自慢になってしまうな….)→手前味噌ですが

第4章 「気持ちを伝える」語彙力ノート
・うれしく思います→冥利に尽きます
・おめでとうございます→慶賀にたえません
・ありがたい言葉に感謝します→もったいないお言葉でございます
・助けていただき→ひとかたならぬご尽力をいただき
・来てくれてありがとうございます→ご足労おかけいたします
・お送りくださいましてありがとうございます
→ご恵贈(恵送)くださいまして、御礼申し上げます
・ごちそうになりました→思わぬ散財をさせてしまいました
・(へりくだって)普通のものですが→月並みですが
・残念です→遺憾に思います
・やりたくないなあ→気が乗らないんですよね
・もやもやとしてすっきりしない→しこりが残る
・大変(つらい)ですね→ご心痛のほどお察しします
・ひどい→開いた口がふさがらない
・そのままにしておけない→看過できない
・納得できない→潔しとしない
・ラッキーだったよ→もっけの幸いでした

第5章 メール・ログセで自分を下げない「同じ言葉の繰り返しをなくす」語彙力ノート
・「考えます」を言い換える
・「思う」を言い換える
・「感じる」を言い換える
・「頑張ります」を言い換える
・「すごい」を言い換える
・「確かに」を言い換える
・「かわいい」「素敵」「きれい」を言い換える
・「おいしい」「うまい」を言い換える
・「本当に」を言い換える
・「超」を言い換える
・「多い」「たくさんある」を言い換える
・「少ない」「ちょっと」を言い換える
・順次 逐次 随時
・適宜適切適当

第6章 会議・打ち合わせで「できる!」と言われる語彙力ノート
・だいたいお話の通りです→概ねおっしゃることに同意します
・とりあえずの日程です→暫定的な日程です
・OKです→かしこまりました
・一つにまとめます→一元化します
・いろいろと考えてみたところ→勘案してみたところ
・うまくいくよう努力します→善処します
・主導権を握る→イニシアチブをとる
・定性的定量的の違い
・他と比べてよい傾向です→相対的によい傾向です
・お客様のビジネスに役立てるため→お客様のビジネスに資するため
・代わりの案をお持ちしました→代替案をお持ちしました
・朝いち→○時○分と適切に示そう
・コンセプト スキーム フェーズ
・マター タスク
・フィックス ブラッシュアップ ロジック
・アジェンダ レジュメ サマリー エビデンス オルタナティブ
・コミット アサイン アテンド アライアンス
・ボトルネック リソース リスク イノベーション
・インスパイア リスペクト メンター
・ステークホルダー クライアント

第7章 「訪問・宴会・手紙で使える」語彙力ノート
・ごちそうになって恐縮ですが、そろそろ帰ります
→いただきだちで恐縮ですが、そろそろお暇させていただきます
・気楽にしてくださいね→心置きなくお過ごしくださいね
・いただきもので失礼ですが→おもたせで失礼ですが
・ご記帳をお願いします→ご芳名をお願いします
・自由にお話しください→ご歓談ください
・(お悔やみのときに励ます)→お力落としになりませんように
・ぜひ出席ください→ご臨席いただきますようお願い申し上げます
・ご清祥のこととお喜び申し上げます
・様殿
・突然で恐縮ですが→卒爾ながら
・遅くなりましたが→遅ればせながら
・幸いです→幸甚です
・心より御礼申し上げます→衷心より御礼申し上げます
・ご厚誼を賜り、御礼申し上げます
・ご配慮をありがとうございます→ご厚情、痛み入ります
・いつもありがとうございます→いつもお引き立ていただき、ありがとうございます
・久しぶりです→久方ぶりでございます
・お元気ですか?→つつがなくお過ごしですか?
・直接お会いして御礼申し上げるところ→拝眉の上御礼申し上げるところ
・お体を大切に→ご自愛ください
・敬具→かしこあらあらかしこ
・寸志 厚志 芳志
・もう一度繰り返します→復唱いたします

第8章 センスが伝わる「季節の言葉」ノート
・春めいてきました
・桜狩り
・風薫る
・秋篠
・冬隣
・篠突く雨
・淡雪

齋藤 孝 (著)
出版社: SBクリエイティブ (2017/9/9)、出典:出版社HP