安楽死・尊厳死の現在 -最終段階の医療と自己決定-

日本では高齢者が増えていることで、葬儀や墓、死そのものに関する関心が高まってきています。その中の議論を呼ぶ問題として、安楽死、尊厳死を行うべきなのか、行うとしたらどのような基準の人が対象となるのかという問題があります。

尊厳死における個人の決定権

現在の日本は超高齢化社会に突入しており、葬儀や墓、相続などのトラブルや問題がニュースや新聞などで大きく取り上げられています。本書は、今後考えていかなければならない問題の一つである安楽死・尊厳死について取り上げています。
安楽死を国家として合法化した国は、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダの4カ国あります。オランダでは安楽死をめぐる裁判が多くあり、それが2001年世界初の安楽死合法化の道を開きました。現在オランダでは安楽死を受ける人は年間6000人を超えていますが、安楽死を要請した人の約半数以上が医師によって実施はしないと判断されています。これはオランダでの安楽死のあり方を反映している事例です。

安楽死というのは患者の「死ぬ権利」ではなく、「死の医療化」であり、患者の要望に応えて安楽死を実施するか否かの決定権は医師にあるというのがオランダの考え方です。しかし、拒否された患者の要望に応えるために「生命の終結クリニック」(SLK)という団体が設立され、実際に患者の安楽死を実施している。また、安楽死を法律化する上で課題となる、弱い立場にあるものが本人の意思に反して安楽死をさせられてしまう問題は、要件を満たしていないと思われるケースを隠さずに公表し透明性を確保することで公共の議論にして解決しようとしている。そして、実際に不本意な安楽死は減少しているようです。このオランダの法律と他の国の安楽死に関する法律は、似ている部分が多いですが違った部分も多々あります。

尊厳死と安楽死の違いはなにかという質問に、尊厳死は延命措置を断って自然死を迎えることで、安楽死は医師など第三者が薬物などを使って患者の死期を積極的に早めることだと日本尊厳死協会は回答しています。世界的な傾向として安楽死と尊厳死は明確に区別されませんが、日本は両者が峻別されています。日本でいう尊厳死は国際的な用法とはずれがあります。日本での尊厳死をめぐる議論は、人生の最終段階における医療のあり方を問うもので、具体的には、生命維持措置の中止ないしは不開始をめぐる問題です。