【最新】認知行動療法を学ぶおすすめ本(一般、専門教科書も紹介)

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認知行動療法を知ろう

認知行動療法では、認知をマイナスであったり、ネガティブなものから現実的で可視化できるものに変えていくことを目指します。今回は入門、基礎から学べる認知行動療法の書籍を紹介します。新書や図表付き・マンガの入門本から様々な角度から認知行動療法を学んでいきましょう。

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出典:出版社HP

はじめての認知療法 (講談社現代新書)

認知療法入門書

本書は、初心者向けにわかりやすく解説されているので、認知療法の入門書としておすすめです。まずは認知療法を理解するところから、具体的な方法であるコラム方まで載っているので、認知療法について一通り学ぶことのできる一冊です。

大野 裕 (著)
講談社 (2011/5/18)、出典:出版社HP

まえがき

五人に一人が一生に一度かかる病気。それが精神疾患です。
医学的な治療が必要な病気とは言えなくても、悩みをかかえた人はもっともっとたくさんいらっしゃいます。二〇〇七(平成一九)年の労働者健康状況調査によれば、仕事に関して強い不安やストレスを感じている人は六割近くになるということです。悩みは仕事に限りません。家事や育児、人間関係などで落ち込んだり不安を感じたりすることも、よくあり ます。

そうしたときに利用していただきたいのが、本書で紹介する「認知療法」(「認知行動療法」とも呼ばれます)のメソッ ドです。認知療法は、うつ病や不安障害などの精神疾患の治療法として、薬物療法と同様に世界的に注目されている精神療法(カウンセリング)です。

認知療法は、ラスカー賞(臨床医学研究部門)を受賞し、ノーベル賞にもノミネートされたとされる米国の精神科医ア ーロン・T・ベック博士が初めて提唱し、その効果を実証しました。認知療法が米国の精神科医療で注目されだしたの は、私が米国に留学していた一九八〇年代半ばのことです。
その後、認知療法は、うつ病だけでなくパニック障害や強迫性障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの不安障害、摂食障害、パーソナリティ障害、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症など多くの精神疾患の治療や再発予防に効果的であることがわかってきました。こうして認知療法は世界の標準的な治療法になってきたのです。
さらに、認知療法には日常生活でのストレスを和らげる効果があることもわかってきました。認知療法を利用した社員 向けの講習会で、社員のうつ度が改善したという報告もあります。トレーダーなどのビジネスマンのセルフコーチング や、教育現場の生徒指導などにも活用されています。

ストレスを感じるとどうしても私たちは悲観的に考えがちになって、問題を解決できない状態に自らを追い込んでいくのですが、認知療法では、そうした考え方のバランスをとってストレスに上手に対応できるこころの状態を作っていきま す。悲観的になりすぎず、かといって楽観的にもなりすぎず、地に足のついた現実的でしなやかな考え方をして、いまの 問題に対処していけるように手助けします。

こうしたしなやかな考え方や対処は特別なことではなく、私たちがいつもなら普通にできていることです。ところが、 ストレスのためにそれができなくなることがあります。そうしたときに認知療法のメソッドを使えば、自分の持っている 「こころの力」を取り戻し、さらに伸ばしていくことができるようになります。
二〇一〇(平成二二)年は、わが国の認知療法にとって大きな転換点でした。認知療法がうつ病の治療法のひとつとし て認められ、医療保険が使えるようになったのです。これにより、薬物療法中心だったわが国の精神医療の変革が期待で きるようになりました。米国に遅れること二〇年あまりで、わが国にもようやく認知療法が広まる基盤ができたのです。

しかし、認知療法に対する誤解はまだまだ残っています。そのひとつが、薬物療法には問題が多く、認知療法は万能で あるという誤解です。これは、認知療法で言う「白か黒か」の発想です。薬物療法は副作用もありますが、効果もじゅう ぶんに期待できる治療法です。また認知療法も効果が期待できますが、万能ではありません。精神疾患を効果的に治療す るためには、それぞれの治療法の長所を理解して、上手に組み合わせていくことが大切です。

認知療法は、うつ病の人の間違った考え方を変える治療法だという誤解もあります。つらい環境が続いていても、考え 方次第で楽に感じられるようになるはずだと言われることもあります。しかし、いくら考え方を変えても環境が変わらな ければ、また、問題を解決できなければ、楽になれないことがあるのもたしかです。
自分の極端な考えに縛られすぎていて、問題を解決できなくなっていることがあります。そうしたときに、その考えか らいくらかでも自由になれれば気持ちが楽になりますし、問題を解決する糸口も見つけやすくなります。もちろん、自分 の考えがすべて間違っているというわけではありません。ある面、当たっているところもあります。そうしたときに、そ の極端な考えに縛られないようにするためには、もう一度ていねいに現実を見直して問題に対処していくこころの柔軟性 を持つことが大事です。

私の恩師でもあるアーロン・T・ベック博士は、「肌で体験する」ことの大切さを常に強調していました。経験を通して認知を再検討することが大事なのです。認知療法は決して頭の体操ではないのです。博士は私にも、彼の本拠地である フィラデルフィアに滞在し、認知療法を肌で感じて帰国するように勧めてくださいました。私が、ニューヨークにあった コーネル大学からペンシルベニア大学に移ったのはそのためです。おかげで多くの体験をすることができました。
認知療法を利用する人には「肌で体験する」ことを大切にしていただきたいと思います。

わが国の認知療法の治療者の育成体制のどれも大きな問題です。認知療法を受けたいと希望する人たちが多い一方で、 認知療法を実践できる治療者はまったく不足しています。こころの健康危機が大きな問題になっているいま、認知療法の 役割は大きく、国家的な対応が望まれています。それはまた、私たち専門家の課題でもあります。私も、そのために専門 家の研修・育成に力を注ぎながら、書籍やモバイルとウェブのサイトで認知療法について広く知っていただく努力を続け ています。
本書を通して、さらに多くの方が認知療法について知り、充実した毎日を送っていただけるようになれば望外の幸せです。

大野 裕 (著)
講談社 (2011/5/18)、出典:出版社HP

目次

まえがき

第一章 気持ちを切り替えるために――認知療法を理解する
うつ病特有の考え方/悲観的になり自分を責める/こころの中の悪循環/自動思考/現実に目を向けるために/ 解決策を考える第一歩/こんなふうに考えを切り替える/考えの偏りに気づく、「ポジティブ思考万能説」のワ ナ/自分はなぜ悩んでいるのか/ 「自動思考」に気づこう/「スキーマ」という落とし穴/精神科医にできるこ と/認知の修正/柔軟に考える余裕を/気持ちを切り替えるために「考え」に注目する/自分の「こころのク セ」を知る/認知療法の流れ
コラム―コンピュータ支援型認知療法「うつ・不安ネット」

第二章 まず行動を少しだけ変えてみよう
あきらめないで行動を起こしてみる/思い切って行動すると、意欲がわいてくる/できることから少しずつ/ 「活動記録表」のすすめ/「楽しいことリスト」/毎日の計画に反映してみよう/優先順位をつける/行動計画 を立てることの意味/できることから行動範囲を広げていく/行動計画の立て方/計画は大まかに/修正し、振 り返る/「できない」のではなく「していない」/行動するのがつらいのには理由がある/行動の結果を評価し て次に生かす/自動思考と快適睡眠
コラム―「一度にたくさん」でなく、「できることからひとつずつ」

第三章 問題を解決する手順
問題を解決しましょう/「問題リスト」で、取り組む問題をはっきりさせる/「問題解決技法」を使って問題に 対応する/認知的リハーサル/自分の良いところをリストアップする/死にたいほどつらいときにも「問題解決 技法」/問題を解決できなくても自分を責めない
コラム―人生に「万策が尽きる」ことはない

第四章 身体とこころをリラックスさせる方法
ひと休みのすすめ/注意転換法/腹式呼吸と漸進的筋弛緩法でリラックスする
コラム―「自分」を感じ取る力を育てるマインドフルネス・ウォームアップ

第五章 自分の気持ちを伝えるには
人間関係における距離の関係・力の関係/人間関係はストレスの最大要因である/自分の気持ちを上手に伝える。 アサーション/気持ちを伝えるキーワード「みかんていいな」/自分の気持ちを伝える前に―ロールプレイの すすめ
コラム―相手の長所を認めた上で要望を伝える

第六章 コラム法のすすめ
コラム法を使ってバランスの良い考え方を手に入れる/どんな用紙を使うか/非機能的思考記録表(コラム、思 考バランスシート)の書き方/特徴的な認知の偏り/適応的思考を三つの視点で見直し、評価する/認知の偏りを修正するためのヒント/非機能的思考記録表(コラム、思考バランスシート)の記入例|Aさんの場合/非 機能的思考記録表(コラム、思考バランスシート)の記入例―Bさんの場合

第七章 「後ろ向きスキーマ」に気づくために
スキーマとは何か/前向きスキーマと後ろ向きスキーマ/後ろ向きのスキーマの特徴/六つの後ろ向きスキーマ /自分のスキーマに気づこう/自分の個人的な「テーマ」は何かを考える/下向き矢印法でスキーマを見きわめ る/スキーマに挑戦して、現実的なものに変えていく/行動を通してスキーマを修正する/最後に

付録1 「こころのクセ」チェック
付録2 QIDS-Jうつ度チェック
付録3 快適睡眠のコッ
付録4 認知療法面接チェックリスト
あとがき

大野 裕 (著)
講談社 (2011/5/18)、出典:出版社HP

マンガでやさしくわかる認知行動療法

マンガで流れを掴む

本書では、認知行動療法の流れがわかりやすくマンガで示されています。流れをマンガで掴んだ後は、方法とポイントが詳細に説明文で記載されているので、より理解を深めることができ、認知行動療法入門書としておすすめの一冊です。

玉井 仁 (著), 星井 博文 (その他), 深森 あき (その他)
日本能率協会マネジメントセンター (2016/4/24)、出典:出版社HP

はじめに

「職場の上司からつらく当たられて、会社に行きたくない」
「仲がいいと思っていた人と関係がこじれて、どうしたらいいのかわからない」
「自分ばかりが責任を押しつけられていて、納得がいかないことが多い」
「人とのやり取りの場面で、どうしても感情がうまく出せない」

臨床心理士としてカウンセリングをなりわいとしていると、日々多くの方の悩みや苦しみと向かい合います。その内容 は、冒頭で紹介したような日常の悩みから、新聞の紙面やニュースを賑わす虐待、依存症、PTSDなどまで、程度も色 合いもじつにさまざまです。
人は普通に生活していれば、多かれ少なかれほとんどが人間関係に悩み、自分の手に負えない出来事に出会って落ち込 んだり、モヤモヤとした気持ちになったりするものです。では、そんな苦しみの中にいる時、人はどのような状態にあるのでしょうか?

じつは、強い感情を体験している時には、視野が狭くなり、行動もワンパターンになっています。それに気づいたとし ても「自分ではどうしようもない」「こうするしかない」と思い込んで、感情を和らげるポイントが見えなくなってしま っています。
みなさんも、人が悩んでいることに対してはうまいアドバイスができるのに、自分のこととなるとそうは簡単にいか ず、いつまでたっても苦しみを引きずった経験があることでしょう。

認知行動療法は、そんな苦しい状況に自分自身で対応するための心理療法のひとつです。いつものあなたのものの見方 や考え方、行動に少し手を加えることで、あなたを楽に、そしてあなたの心を強くすることができます。

本書は、おもに認知行動療法をはじめて学ぶ方を対象とした入門編として、認知行動療法の全体像をつかみ、実際に日々の生活に役立てていただくことを目指しています。
まずは、各パートの解説に入る前にマンガのストーリーを読んでいただきます。
子会社に出向を命じられ、心のバランスを崩してしまう25歳の梨香さんを主人公に、彼女が認知行動療法と出会って、 心を強くしていく様子を描いています。マンガの展開を追いながら、ところどころあなた自身と重ね合わせながら読んで いただけるはずです。文字の解説だけでは伝えきれない雰囲気や感覚を、ストーリーやビジュアルから感じてください。

はじめての方でもすんなり読んでいただけるよう、専門性の高い内容は避け、説明でも専門用語をできるだけ使わず、 重要な部分に的をしぼってシンプルに説明することを心がけました。すでにカウンセリングや心理療法を受けてきた方 は、認知行動療法が進む際に目を配っておきたいポイントをざっと確認するためにお役立てください。
紹介したさまざまな視点は、必ずしも私が独自に見出したものではありません。多くの先生方や先輩、同僚、そしてお 会いしてきたクライエントのみなさんからいただいたものです。

それらがちりばめられた本書を通じて、今度はみなさんが新しい視点を手に入れ、抱える苦しみを少しでも和らげるお 手伝いができたら、これほどうれしいことはありません。

2016年4月
玉井仁

玉井 仁 (著), 星井 博文 (その他), 深森 あき (その他)
日本能率協会マネジメントセンター (2016/4/24)、出典:出版社HP

目次

はじめに

Prologue 認知行動療法って?
Story0 ウチの猫がしゃべった?
01 認知行動療法とは
02 認知行動療法の仕組み
03 認知行動療法の進み方
Column1 「正しい考え方」「プラス思考」ありきではない

Part 1 自分の気持ちや考えを整理する
Story1 モヤモヤとランチの問題について
01 自分を整理、観察する
02 セルフモニタリングのやり方とその効果
03 どうなりたいかを確認する
04 感情とはどんなもの?
05 できそうなことを試してみる
Column2 主観と客観

Part 2 考え方のクセをつかんで新しい考えを手に入れる
Story2 心のバランスを見直そう
01 考え方のクセとは
02 新しい考え方のための基本ポイント
03 楽になる考え方とは
04 新しい考え方を探す4ステップ(認知再構成法)
Column3 変化が進む時とは

Part 3 「いつもと違う行動」で世界を広げてみる
Story3 「できない」って言ってみたら・・・
01 人はどのように行動しているのか?
02 行動のタイプとパターン
03 行動を変えるための3ステップ
04 人間関係を確認する
Column4 協働的実証主義

Part 4 問題解決に取り組む。
Story4 消えた「期待」と「モヤモヤ」
01 問題解決のための視点
02 問題解決に取り組む
03 苦手なものに挑戦する
Column5 人間関係は育てるもの

Epilogue いなくなったおしゃべり猫
おわりに

玉井 仁 (著), 星井 博文 (その他), 深森 あき (その他)
日本能率協会マネジメントセンター (2016/4/24)、出典:出版社HP

マンガでわかる認知行動療法 (池田書店のマンガでわかるシリーズ)

マンガで知る認知行動療法

本書は、マンガのストーリーに沿いながら、うつやストレスへの認知行動療法について学ぶことができます。マンガでわかりやすいだけでなく、認知行動療法の詳細については第一人者である大野裕先生が手掛けていて、おすすめの一冊です。

大野裕 (著), さのかける (その他), サイドランチ (その他)
池田書店 (2019/9/11)、出典:出版社HP

はじめに

本書は、認知行動療法的アプローチを地域や企業、学校などのこころの健康増進のために活用するポイントをわかりやすく解説したもの です。その内容は、医療現場で働く人たちも、また悩みを抱えた家族 や仲間を手助けしたいと考えている人たちも役立てることができます。
そこでまず、認知行動療法の考え方について説明することにします。
「私たちは、いろいろなことを絶えず判断しながら生活を送っています。このように次々と行っている判断を「認知」と呼びますが、それ を意識することはほとんどありません。「自動運転」のように、まわりの状況をとっさに判断しながら行動しているのです。ですから、通常は認知を意識することはありませんし、その必要もありません。

しかし、強いストレスがかかったときには、判断に狂いが生まれることがあり、認知を確認する必要が出てきます。それは、認知がその ときどきの感情や行動に影響するからです。「認知」というのは、次々に出合う情報を判断するこころの働きで、それに応じて私たちのこころが反応します。
現実にそぐわない極端な判断をしてしまうと、気持ちがつらくなったり、不適切な行動を取るようになったりします。そのようになったときには、こころの「自動運転」モードを一旦停止して、「手動運転」モードに切り替える必要があります。
その切り替えを上手にできるように手助けするのが、本書で紹介する認知行動療法です。認知行動療法は世界中の精神科医療の現場で広く使われるようになってきていますが、そうした方法を職場や地域、学校など、医療現場以外の活動で役に立てることができるのだろうかと疑問に思う人もいるでしょう。
心配はありません。認知行動療法は、精神疾患に苦しんでいる人の 治療に役立つのはもちろんですが、それ以外の人が毎日のストレス状 況で自分らしく生きていくためにも十分に役に立ちます。

それは、認知行動療法で使われる方法が、私たち誰にとっても役立つストレス対処の方法でもあるからです。本書を通じて認知行動療法 の方法を身につけることができれば、普段は自分を信じて自然に行動していて、ストレスがかかったときには状況に応じて対処することができるようになります。
大野 裕

強いストレスがかかると判断に狂いが生まれる
強いストレスがかかったときには「手動運転」 モードに切り替える必要があるのね!
私たちはまわりの状況 をとっさに判断しながら「自動運転」のように行動しています

「自動運転」モード→「手動 運転」モードへの切り替えを上手にできるように手助けするのが“認知行動療法”

大野裕 (著), さのかける (その他), サイドランチ (その他)
池田書店 (2019/9/11)、出典:出版社HP

CONTENTS

マンガ 上手に相談に乗る方法を学びたい!
はじめに

第1章 認知行動療法とは?
マンガ 支援者は応援団でコーチ!
[こころの特徴] ボジティブシンキングが正しいとは限らない
[ストレス対処のステップ] こころと体の警報に気づく
[ストレス対処のステップ] 立ち止まり、起きている出来事に目を向ける
[ストレス対処のステップ] とっさに浮かんだ考えに目を向ける
[ストレス対処のステップ] 期待する現実に向かって行動する
[支援者の役割] こころの力を生かせるように支援者がサポートする
[認知行動療法の型] コーチするうえでの基礎になる認知行動療法
column1_支援者のこころがまえ

第2章 認知を見直す ~面談と認知再構成法~
マンガ 周産期うつの気配がある新米ママ
[理解] 信頼関係を築き相談者を理解する
面談の流れ(詳解)
[話題選択] 話題を決めて問題に対処する
[会話のポイント] 共感し、気づきを深める会話をする。
[会話のポイント] 原因探しではなく、手立て探し
[会話のポイント] 支援者の考えを押しつけない
[会話のポイント] 相談者の主体性を大切にする
[メカニズム] メンタルヘルス不調のメカニズムと支援のボイント
[症状の確認] 症状の程度と経過を確認する
[理解] 相談者をあらゆる角度から理解する
[理解]”みたて”を大切にする
マンガ 「かんたんコラム」で客観的に捉え直す
[基礎知識] こころの扉を開く認知再構成法とは?
[基礎知識]「かんたんコラム」でこころを客観的に見る
かんたんコラム記入例
[状況] つらくなった現実場面を切り取る
[自動思考] 頭に浮かんだ考えに目を向ける
[自動思考] 思考のエラーに気づこう
[自動思考] 自動思考の見つけ方
[自動思考] 認知によって感情、行動が変わる
[適応的思考] 問題解決につなげる適応的思考とは?

大野裕 (著), さのかける (その他), サイドランチ (その他)
池田書店 (2019/9/11)、出典:出版社HP

ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1

自分のために役立つ1冊

本書は、看護師の方をはじめとして、患者さんのケアをする立場の方々に向けて書かれています。しかし認知行動療法についてやさしく解説されているので、自身のストレスマネジメントに使いたいという方にもピッタリです。

伊藤 絵美 (著), matsu (イラスト)
医学書院; 第一版 (2011/2/1)、出典:出版社HP

目次

BOOK 1
はじめに:
ケアする人のセルフケアに認知行動療法を役立てよう

第1章 ストレス状況とストレス反応を目に見える形にしてみましょう
①ストレスって何?
②認知行動療法の基本モデル
③階層的認知モデル

第2章 アセスメントしてみましょう
①アセスメント
②コーピング
③認知行動療法の進め方
④認知行動療法の適応と限界、および実施にあたっての注意点

第3章 プリセプティとの相性が悪く悩む先輩看護師アヤカさん
①認知行動療法に望みをかけて来談したアヤカさん
2自己観察と外在化で
かなりスッキリ
3目標リスト作成までこぎつけた
4認知再構成法で「認知」に
焦点を当てる
5 問題解決法で「行動」に
焦点を当てる
6コーピングレパートリーを
可能な限り増やす
1これまでより上手に
ストレスと付き合えるようになった
アヤカさん

第4章
BOOK1で紹介した 理論・技法・ツール
索引
BOOK2はこんな展開になります

ちなみに BOOK2の目次は
第1章
無能な同僚管理職に腹が立って 仕方がないカオルコさん
第2章
キレる医師のいる職場に 恐怖を感じるサチコさん
第3章
精神的に不安定な看護学生との かかわり方に悩む教員タマキさん
第4章
BOOK2で紹介した 理論・技法・ツール
第5章
さらに学びたい人へのガイド

伊藤 絵美 (著), matsu (イラスト)
医学書院; 第一版 (2011/2/1)、出典:出版社HP

はじめに

ケアする人のセルフケアに 認知行動療法を役立てよう

◎ケアする人のために書いた本です

本書は、ケアを職業とする人たち、特にナースの方々を対象に書きました。
ナースを対象とした認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)の本と書くと、「患者さんの心のケアのため に、認知行動療法を活用しましょうという本なのかな」と思われてしまいそうですが、実はそうではありません(全く違って いるわけでもないのですが、これについてはあとで述べます)。
本書の主な目的は、ナースの方々自身の心身のセルフケアの ために、認知行動療法を学び活用できるようになっていただき たい、というものです。

◎ストレスマネジメントにぴったり

私は大学と大学院で心理学を学び、大学院の博士課程に在籍しているときから、臨床心理士として精神科クリニクリニックにて心理療法やデイケアの仕事に携わるようになりました。
そのときに学んだのが認知行動療法です。
当時日本では認知行動療法はあまりよく知られていませんでした。私は認知行動療法のことを知り、特に米国においてうつ病に対する治療法として薬物療法に匹敵するエビデンスが揃い、 はじめていると知ったことで、「これは絶対に勉強しなくちゃ」 と思ったのでした。そして実際にクリニックで患者さんに対して認知行動療法を適用することをはじめましたが、その当時か ら強く感じていたのは、「認知行動療法を単なる“治療法”のまにとどめるのはもったいない。もっと広く健康な人の“スト レスマネジメント”の手法として使えるはずだ」という思いで した。
そこで「認知行動療法の考え方や手法を、一般の人々のメン タルヘルスやストレスマネジメントに役立てるためにはどうし たらよいか」ということを研究テーマに選び、博士論文を書き ました。その後、クリニック以外にもいくつかの現場で臨床の 仕事を行い、2004年より認知行動療法に特化したカウンセリ ング機関を東京の大田区に開設しました。
このようにしてかれこれもう20年近く認知行動療法を学び、 実施しているのですが、「認知行動療法を病気の治療法にとど めず、一般の人びとのセルフケアに広く役立てていきたい」と いう強い思いは、今も変わりありません。本書はそのような私 の個人的な思いが発端となっています。

◎ 私自身が助けられています

なぜ私が強くそのように思うか、というと、それにはいくつ かの理由があります。
まず、私自身が自分のために認知行動療法を使っていて、実 際とても助かっているということがあります。私はよくいろいろな人から、「いつも元気でいいね」「ストレスとか、あんまり ないでしょ」と言われるのですが(「能天気な人」とみなされ やすい。それはそれでありがたいのですが)、実際はそうでも 「ありません。自分では、気が小さく、ささいなことにストレス を感じやすく、グジグジうだうだしやすい人間だと思っていま す(家族はこれに同意してくれるでしょう)。
そんな自分がこれまでなんとかやってこられているのは、間 違いなく認知行動療法のおかげです。つい数年前も、仕事や家 庭の負荷やストレスがどっと増え、「このままだと本当に参ってしまうかもしれない。うつ病になってしまうかもしれない。 やばい!」という危機状態に陥りましたが、それをなんとか乗り越えられたのも、自分のために必死に認知行動療法を行った からだと考えています。
このように、認知行動療法を専門とする私自身が、自分のためにも認知行動療法を実施して効果を実感している、というの が一般の方々に認知行動療法を勧めたい最大の理由です。
認知行動療法の専門家には、私のような人が少なくありませ ん。クライアントさんや患者さんをよりよく援助したり治療したりするために学んだ認知行動療法を、同時に自分自身のストレスマネジメントのために活用している臨床心理士や医師を私は何人も知っています。皆さん口を揃えておっしゃるのは 「患者さんの治療のために学んだ認知行動療法だけれども、自分自身が認知行動療法によって大いに助けられている」 ということです。 そうです。皆さん、私と全く同じなのです。

◎病気は予防できるに越したことはありません

一般の人々に認知行動療法をお勧めするもう1つの理由は、 これまでの臨床経験を通じて、特にうつ病や不安障害などの精 神疾患の予防教育がいかに重要か、私自身骨身にしみて感じているからです。
私は普段自分のオフィスでは、病名がすでについている人、すなわち、すでにはっきりと具合が悪くなっており、何らかの 治療や援助が不可欠になってしまっている状態の人びとを対象 として認知行動療法を行っています。慢性化した人、再発を繰り返している人、いくつもの併存疾患をかかえて苦しんでいる 人も少なくありません。
そういった方々との認知行動療法は非常に時間がかかります。 面接も50回、100回というふうにかなりの回数がかかります し、それに伴って2年、3年と終結までにかなりの期間を必要 とします。もちろん回数と時間がかかれば、そのぶんお金もかかります。
つまり診断がつくような状態にまで悪くなって、さらにそれが長期化してしまうと、回復までにコスト(時間、エネルギー、 お金)がものすごくかかるのです。私は一般の人びとがそのような状態に陥るのを予防するための方法を、できれば健康な状 態のうちに習得しておくのがよいと考えています。風邪を予防 するのに手洗いとうがいが役立つことを知っていれば、それを しない手はないでしょう。認知行動療法もそれと同じです。

みんなの感想「これは使えそう!」
実際に私は、一般の方々を対象として認知行動療法の研修や ワークショップを行う機会が以前より増えています。そして一 般の方々に認知行動療法をお勧めするさらなる理由としては、 おおむね参加者の方々の「受けがよい」ということが挙げられ ます。
「一般の方々」とは、会社員や公務員、主婦の方、学生さん などさまざまです。ちょっと変わったところでは、刑務所や保 護観察所や少年院といったところで認知行動療法を教える機会 も最近増えています。
「認知行動療法」という名称がちょっと堅苦しいこともあっ て、どこで教えても最初はとっつきづらそうな様子の方がいらっしゃいますが、一緒にワークをやったり話し合いをしたり して実際に体験してもらうと、多くの方が、「これは自分のために使えそう」と言ってくれるようになります。刑務所や保護 観察所では、罪を犯した方がそれこそ半強制的に認知行動療法のプログラムを「受けさせられる」わけですが、驚いたか、 にそういった方がプログラムを受講し終わると、「今後の人生に役立つ方法を学べてよかった」「もっと早く認知行動療法を知っておきたかった」など、非常にポジティブな感想を述べる。 ことが少なくありません。 このような体験を続けているうちに、私は、「やはり認知行 動療法は一般の方々のセルフケアの方法として役立つのだ」と 確信するようになりました。

人をケアする職業人のストレスこそが問題です
さて、本書のもう1つの特徴は、一般の方々のなかでも、あ えてナース(本書では看護職の方を基本的に「ナース」と呼ぶ ことにします。「看護師」より「ナース」という呼称のほうが、 「私にとって親しみやすいからです)を対象にしているということです。
一般の方々に認知行動療法を広めたいのであれば、幅広く一 般の人向けの本を書けばよいということになりますが、今回は、 あえてナースに対象を絞って書いてみることにしました。その 理由もいくつかあります。 第1の理由は、私自身、だいぶ前から、人をケアする職業 の人(対人援助職)のストレスの問題に関心があったからです。 対人援助職のストレスは、他の職種に比べて深刻になりやすい。 ことは、皆さんもご存知のとおりです。言うまでもないことですが、人間は誰しもユニークでかつデリケートな存在です。そういった人が何らかの事情により他人のケアを必要とするとい うことは、それだけでその人がすでに深く傷ついている可能性 があると考えられます。ということは、傷ついている人のケア をするという仕事は、仕事とはいえ(仕事だからこそ、とも言 えるかもしれませんが)、ケアする側も同時に傷つく可能性を 常に孕んでいるのではないかと私は考えます。ケアする側の人 は、傷ついている当事者に最も近い存在であるからこそ、ケア する人自身もまた当事者になりうるということです。
この思いは私自身、心理学的な立場から他者をケアする仕 事をずっとしてきたことによる実感でもあります。このことは、 対人援助職、なかでもナースのバーンアウト(燃え尽き)に関 する研究がさかんに行われていることともおそらく関連するで しょう。 「だとすると、他者をケアすることを職業とする人は、それだけ自分自身のケアやストレスマネジメントを自覚的に行う必要 があることになりますし、実際にそうするべきだと私は考えて います。そこで本書では、人をケアする職業の中心的存在とも いえるナースのセルフケアに焦点を絞って、認知行動療法という手法を紹介してみようと考えたわけです。

私はナースが好きだから
ナースを対象として本書を書いた第2の理由としては、これは非常に個人的なことですが、私の妹がナースをしており、 またなぜか親戚にもナースが多く、私が勝手に親近感を抱いていることが挙げられます。 かつて精神科のデイケアの仕事をしていたとき仕事をしたナースが皆非常に気持ちのよい方々で、互いに出会ったり役割分担をしながら大変楽しく仕事ができた、という 個人的な体験もあります。本書がそういうナースの方々に小)
でも役に立つのであれば、私としては個人的にも非常にうれしいのです。

そして患者さんのケアに役立ててほしいから
さて、本書がナースを対象とする理由の最後です。それは、 冒頭に書いた「本書は患者さんの心のケアのための本ではない」ということと矛盾するかもしれませんが、ナースの方々が セルフケアのために認知行動療法を使いこなせるようになった あとに、ぜひ多くの患者さんのケアに認知行動療法を役立てて もらいたい、という思いです。

「認知行動療法は多種多様な疾患や症状や問題に効果のあるア プローチとして、世界的に注目され、急速にその普及が進んで いる心理学的手法です。しかし、実は日本では認知行動療法の 普及そのものがだいぶ遅れているという現状があります。
今はインターネットのおかげで、たとえ専門的なことであれ 情報を入手する手立てがありますので、認知行動療法のエビデ ンスを多くの方が知ることができます。となると、うつ病や 安障害やその他の問題をかかえる多くの方々が、「自分も行動療法を受けたい」と思われるのは当然です。
しかし大変残念なことに、現在日本においては認知行動療法 を提供できる対人援助職が非常に少ないのです。需要が爆発的 に増えているにもかかわらず、供給が全く追いついていないと いうのが現状です。「認知行動療法を受ければ助かるかもしれ ない」という確実な情報があるにもかかわらず、それを受ける ことができないというのは、なんてむごい現実なのだろうと思います。

この問題を解消するためには、認知行動療法を提供できる専 門家をできるだけ早く、そしてできるだけ多く育成する必要が あります。私自身このような問題意識にもとづき、これまでに ワークショップを開催したり、ワークショップをもとにした教 材を作って出版したり、スーパーヴィジョンを行ったり、という活動をずっとしておりますが、まだまだ不十分であると自覚しています。
そこで今回、ナースを対象とした認知行動療法の本を書くに 「あたって、もちろん最大の目的はナース自身のセルフケアを支援することですが、さらにその後、今度はナースの方々が認知行動療法を使って、患者さんや周囲の方々のケアを行ってくださるようになるといいなぁという思いを込めることにしたので

まずは自分のケアに使ってみてください。
「認知行動療法は心理療法の一種ですが、精神分析など他の 心理療法と異なり、特別な心理学的知識がないとできないとか、
事例は1つにつき1章を割き、ストーリー仕立てで紹介し ています。各章のタイトルから事例のおおよその内容は想像が つくと思いますので、興味のある章から読んでいただいて大丈 夫です。各事例をお読みいただいたあとに再度BOOK 1に戻って読んでいただけると、認知行動療法に対する知識がさらに深 まるでしょう。 2つの本とも巻末に、その本で紹介した「認知行動療法の理 論・技法・ツール」をまとめています。また、BOOK 2には 「さらに学びたい人へのガイド」を書きました。認知行動療法 を本書だけでパーフェクトに学ぶというのは不可能です。本書 を読んで認知行動療法に興味を持った方には、ぜひ「さらに学びたい人へのガイド」を参考に、学びを継続し、深めていって いただけるとうれしいです。

安全第一で使ってくださいね
最後に。認知行動療法はとても役に立つツールです。私自身 認知行動療法をずっと使い続けて、その効果や魅力を深く実感 しています。だからこそこのように本などを書いているわけで すが、本書を読むと、あたかも認知行動療法が万能なツールの ように見えてしまうかもしれません。
が、この世に「万能なツール」はあり得ません。しかもツー ルですから、「使う人次第」というところも多分にあります。 認知行動療法というツールにももちろん限界はあり、また使い ようによっては人の役に立つどころか、逆に人を傷つけてしまうことだってあり得ます。したがって認知行動療法を実際には、くれぐれも慎重に、安全第一で使っていただきたい お願いいたします。
本書は医学書院の石川誠子さんと一緒に企画したものです。 本当はもっと早く世に出るはずだったのが、ひとえに私の「ぐずぐず病」によって、こんなに時間が経ってしまいました。心 からお詫びを申し上げると共に、ここまで辛抱して付き合ってくださったことに心から感謝いたします。ありがとうございました。「ぐずぐず病」は治らないながらも、なんとか本書を世に出すことができました(これから認知行動療法を使って「ぐずぐず病」に取り組みます)。

2011年1月吉日 伊藤絵美

伊藤 絵美 (著), matsu (イラスト)
医学書院; 第一版 (2011/2/1)、出典:出版社HP

ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK2

具体例で理解する

本書は、具体的な事例を使いながら、どう対処していけばいいのかをまとめられています。具体例としてあげられるのは看護師の例が多いですが、その他の方にもわかりやすく、おすすめの一冊です。

伊藤 絵美 (著), matsu (イラスト)
医学書院 (2011/2/1)、出典:出版社HP

目次

BOOK2へようこそ
無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん
第1章
1自分が参ってしまいそうなほどの怒り
2「マナブストレス」を自己観察&アセスメントする
3アセスメントを通じてカオルコさんが気づいたこと
4目標を設定する
5新たなスキーマを作る
6サポート資源を増やす
7コーピング レパートリーを増やす
8カオルコさんが見つけた、現実的な落としどころ
第2章
キレる医師のいる職場に 恐怖を感じるサチコさん
1笑顔で語りながら涙を流すクライアント
2リラクセーション法: 過剰な不安緊張に対するコーピング
3アセスメントを通じて、「自分は悪くない」ことを発見する
4心理教育と読書療法
5再帰属法(円グラフ法)
6バランスシートの作成
7 2年後のサチコさん
8 環境要因が大きい場合、 認知行動療法でどこまで太刀打ちできるか
第3章
精神的に不安定な看護学生とのかかわり方に悩む教員タマキさん
1ふたを開けてしまった教員
2 タマキさんの対応の仕方をアセスメントする
3「境界型パーソナリティ障害」「スキーマ」についての心理教育
4 構造化された枠組みのなかで相談に応じる.
5 アセスメントを一緒に行い、「当事者研究」をする
6当事者を専門家につなぐ
7サポートネットワークを作る
8この事例の読み方
BOOK2で紹介した 早理論・技法・ツール
第5章さらに学びたい人へのガイド
索引
おわりに

ちなみに BOOK 1の目次は
第1章 ストレス状況とストレス反応を目に見える形にしてみましょう
第2章 アセスメントしてみましょう
第3章 プリセプティとの相性が悪く 悩む先輩看護師アヤカさん
第4章 BOOK 1で紹介した理論・技法・ツール

伊藤 絵美 (著), matsu (イラスト)
医学書院 (2011/2/1)、出典:出版社HP

BOOK2へ ようこそ

またお会いできましたね。
BOOK 2では、ケアする人たちにとってストレスフルなお悩み事例を取り上げて、BOOK1とはさらに違った認知行動療法の技法を使って解決していきます。
ストーリーを読み進めると、自然に認知行動療法の新しい技法と使い方が理解できます。「こんなとき自分だったらどうするかな」を考えながら読んでみてください。
BOOK2で解説する認知行動療法の新たな理論・技法・ツールは、以下です。
「モードワーク(スキーマ療法)」「リラクセーション法」 「心理教育」「読書療法」「再帰属法(円グラフ法)」 「バランスシート」「コンサルテーション」「構造化」 「当事者研究」「サポートネットワーク」

自分が参ってしまいそうなほどの怒り
認知行動療法を勧められて

カオルコさんは40代半ばのベテランナース。とある精神科病院の慢性期病棟の師長さんです。彼女は隣の病棟のマナブさんという、やはり40代半ばのナースであり師長である同僚の男性に対して、多大なストレスを感じていました。
あるときカオルコさんは看護学校時代の友人と食事に行き、 マナブさんの存在がいかにストレスかという不満をその友人に ぶちまけました。するとその友人はカオルコさんにこう言ったのです。
「カオルコがその人にストレスを感じるのは、すごくよくわかるよ。私の病院にもそういうダメダメ管理者がいるもの。でも話を聞いていると、そのストレスのせいでカオルコ自身がかなり参っちゃっているみたいで、心配なんだけど。そんな奴のせいであなたが参っちゃったりしたら、余計腹立たしいじゃない」。
「カオルコさんは「確かにそのとおりだ」と思いました。するとその友人はカオルコさんに「認知行動療法」を勧めてくれました。
実はカオルコさんに認知行動療法を勧めてくれた「その友人」は、私(伊藤)の元同僚で、私と一緒に働いていたときに 認知行動療法のことを知り、いたく気に入ってくれた人でした。 彼女自身、バーンズの『いやな気分よ、さようなら」*1という本をバイブルにして、認知行動療法を自分のストレス対処の ために実践していました。
というわけで、その友人(私にとっては元同僚)を介して、 カオルコさんは私のカウンセリングの予約をとり、初めてお目にかかることになりました。
初回のカウンセリングではまず、その方の困りごとを共有し、 その困りごとに対して認知行動療法が適用できるかどうか一緒 に検討します。私がカオルコさんに困りごとをたずねたところ、 彼女は以下のことを息も継がずにワーッとまくしたてるように 話しました。

カオルコさんの話の内容
ストレスの元凶は同僚管理職マナブ
シフトも組めない業務能力のなさ

その人はマナブという男性ナースで、私と同じ師長。年 も私と同じ46歳。マナブは業務能力も管理能力もとことんなく、とにかく彼と仕事をするとこちらが尻拭いばかりさせられる。たとえばスタッフのシフトを組むのは私たち師長の仕事だが、マナブは必ずシフトを組み間違えてあとで大変なことになるので、3か月前から上司の指示でマナブの病棟のシフトもチェックすることになったが、 それがかなり大変だし、手間もかかる。だというのに当のマナブは何とも思っていないようで、お礼や謝罪の言葉をいうわけでもない。

患者さんに不利益が出ている
そもそもマナブは鈍感で、患者さんの状態の変化に気づ くのがすごく遅かったり、時には見逃したりして、そのせいで保護室からもっと早く出られたはずの患者さんが出られなかったり、患者さんの症状が悪化してしまったりする。 マナブのせいで病棟全体の看護の質が落ちてしまっている。 ドクターに報告しなければならないこともすぐあと回し したり先送りにするので、そのせいでドクターの指示が遅れて、結局は患者さんの不利益につながっている。

何事につけ最善を尽くすことがない
マナブはレクリエーションを担当しているが、会議で院長が「笑いが脳を活性化する」と言ったことを受けて、レクリエーションに漫才師を呼ぶという。しかし当日連れて きた漫才師は人を落として笑いをとるタイプで、患者さんをバカにしたようなところもあって、全く笑えないしろも のだった。やらないほうがマシなぐらいで、患者さんから もナースたちからも苦情が続出したのに、「限られた予算しかないから」と言って、他の漫才師を探し出そうともせず、次回も呼ぶという。限られた予算のなかで最善を尽くすのが私たちの仕事なのに、マナブには「最善を尽くす」 ということがない。見ていてイライラする。マナブが患者 さんのケアをよくしたいと本気で考えているのか疑わしい。

皆が私に苦情を言いに来る
見ていてイライラするのは私だけじゃなく、病棟のスタッフ皆がそうみたいだ。特に常勤のドクターとマナブの病棟のナースたちは、ストレスが溜まると、マナブに言っても仕方がないから結局私のところに言いに来る。マナブの悪口を私に言い、しかもこれは冗談だとわかっているが、「カオルコさん、なんとかしてくださいよ」と にする。そう言われると、「なんとかしてほしいのは私のほうだ!」と叫びたくなる。

本人に注意してものらりくらり
私だって最初の頃はなんとかしようと思って、マナブにアドバイスしたり、注意したりしていた時期もある。でも、 やさしく言うと、のらりくらりと言い訳するか聞き流され て終わり。少し強めに注意をすると、「カオルコさん、こわーい!」などと言われてしまい、私がマナブをぶん殴りたくなるだけで、意味がないのでやめた。

管理職だから被害が大きくなる
マナブが単なるヒラのナースならまだしも、こういう奴が管理職であるために、職場への被害が大きく、結局マナブの仕事のできなさが患者さんの不利益につながるので、私としてはとにかくマナブを許せない気持ちでいっぱいに
なってしまう。最近はあいつの顔を見るだけでムカムカし てくるし、仕事が終わってもマナブのことを考えると腹が 立って仕方がない。

なんでこんな奴を管理職にしたんだ
「なんでこんな奴を管理職にしたんだ!」と病院に対して思うが、実はマナブは上層部には受けがよく、上から非常にかわいがられている。この間も病院の全体会議があっ たとき、理事長が「これからの病院経営は・・・・・・」など と理想論を長々と話しはじめた。みんなうんざりしてい るのに、マナブは「理事長のおっしゃるとおりです。僕も ずっと同じことを考えていました!」などと追従するものだから、理事長をはじめ幹部はすごく喜んでマナブを評価するのだが、それを見ている私たち現場の人間はしらける 一方だった。そのせいで、会議で重要な議題について話し 合う時間がますます減ってしまったし……..。現場にお ける治療や看護の質を上げるために私たちがすべきことを 具体的に話し合うのが会議の目的のはずなのに、上の人たちもマナブもバカなんじゃないかと思う。ただでさえ病棟 は忙しいし、立場上、患者さんだけでなく部下のケアまで やらなきゃならないからストレスが溜まるというのに、マナブというバカのせいで余計にストレスを背負わされてしまい、そのことで腹が立って仕方ない。

カオルコさんが感じている「理不尽さ」をどう扱うか
このような話をしているうちにカオルコさんは次第にエキサイトしてきたようで、顔が紅潮し、口調が強く速くなっていきました。お話を聞きながら、私は「ああ、カオルコさんは、 マナブさんにとことん腹を立てているのだなぁ」と実感します。
が、同時に、カオルコさんのまくしたてるような口調に焼れ も感じてしまいました。私の感じたこの「疲れ」はおそらくカオルコさん自身の「疲れ」でもあるに違いないと、まだまだ続 きそうな勢いのカオルコさんの話をさえぎって、このように言 いました。
「カオルコさんがマナブさんにとことん腹を立てていること が、今までのお話からよくわかりました。ところで、そんなに 腹を立て続けるというのは、カオルコさんにとって、ものすご く疲れることなのではありませんか?」。

するとカオルコさんはふうっとため息をついて、今までとは 「異なる口調で、ゆっくりと、というか、うんざりしたように言 いました。
「そうなんですよ。ここを紹介してくれた友人にも言われた のですが、マナブの話になると、ついつい興奮してしまうみた いで……。そして、おっしゃるとおりすごく疲れちゃうんです よね。それで余計腹が立つんです。なんでマナブなんかのこと で、この私がこんなに興奮したり疲れたりしなくちゃな んだ!って」。
私はカオルコさんに認知行動療法の基本モデルを提示して、 マナブさんの存在や彼の仕事のやり方がカオルコさんにとっ て大きなストレス状況になっていること、その結果カオルコさ んのほうにさまざまなストレス反応が生じてしまっていること、 残念ながらカオルコさんがそのようなストレス状況やストレス 反応を自分で処理しきれていないようであることを指摘しまし た。

さらに困ったことに、マナブさんは他のスタッフ(医師、 ナース)のストレス状況にもなっていて、そうしたスタッフが カオルコさんにマナブさんへの文句を訴えてくることが、カオ ルコさんにとってのさらなるストレス状況になってしまっており、それがストレス反応を悪化させている可能性があることに ついてもお話ししました。
カオルコさんは大きくため息をついて、「おっしゃるとおり です。マナブのせいですごく参ってしまっているんです。
でも、悪いのはマナブなのに、なんでマナブ自身ではなく 私が参らなくてはならないんでしょう?……そんなの理不尽だ と思いませんか!?」と言いました。言いながらカオル はまた少しエキサイトしたようでした。
カオルコさんの言う「理不尽」はもっともです。マナブさんは現場のスタッフにとってストレスを撒き散らすもとであり、カオルコさんをはじめ皆が多大なストレスを感じているん いうのに、当のマナブさん自身はさほどストレスを感じること もなく、しかもなぜか病院の上層部から評価されるという恩恵 (?)にあずかっているのですから。
しかし、こうした理不尽なことはどこの職場でもあるものです。もちろんカオルコさんもそんなことは百も承知で、だから こそ職場では黙って耐え、マナブさんに対する他のスタッフの 訴えを聞いてあげたりもしているのでしょう。そして気の毒な ことに、そのせいでさらにカオルコさんのストレス反応が強く なってしまっているのです。

「理不尽」としか言いようのない事態です。
のカウンセリングに来ない人を 変えることはできない
私はカオルコさんに次のように言いました。

★ カウンセラーである私が、カオルコさんの話を一方的に鵜呑みにして、マナブさんを悪人扱いしていると感じられる方もいらっしゃるかもしれません。全くそのとおりで、 は基本的に相談者の話を鵜呑みにするところからはじまります。
カウンセリングにおいてまず重要なのは「何が客観的な事実か」 談者にとって何が事実か」ということだからです。自分の思っていること、感じていることを事実として受け止めてもらえなかったら、相談者はカウンセラーを信じて話をすることができなくなってしまいます。逆に自分の思っていること、感じていることを、そのまま「その相談者にとっての事実」として受け止めてもらえると、相談者は安心して自分の思いをカウンセラーに伝えることができるようになります。 この事例の場合、マナブさんにはマナブさんの言い分があるのでしょうが、私は学さんではなくカオルコさんの担当カウンセラーなので、カオルコさんの話をまず鵜呑みにして、マナブさんを「ストレスを撒き散らす存在」として扱ったのです。

「カオルコさんが“理不尽”とおっしゃるのは、もっともなことだと思います。カオルコさん自身はちっとも悪くないのに、 マナブさんにストレスを撒き散らされて、そのせいで苦しんで いらっしゃる。“理不尽”以外の何物でもないですよね。カオル コさんにしてみれば、張本人であるマナブさんにこそ、研修を 受けるなりカウンセリングを受けるなりしてもらって、まとも になってもらいたい、周囲にストレスを撒き散らさないように なってもらいたい、と思うのではないでしょうか」。 「カオルコさんは、うんうんと何度も首を縦に振って、私の話を聞いてくれています。 「私は続けました。「しかし、実に残念なことに、周囲にスト レスを撒き散らして平気でいるような張本人は、絶対に自ら研 修やカウンセリングを受けようとはしないんです。そんなこと をするぐらいなら、そもそも周囲にストレスを撒き散らしたり はしないはずですから。そして結局さらに理不尽なことに、そ のような張本人に苦しめられている周囲の“まともな人”がカウ ンセリングを受ける羽目に陥るんです。カオルコさんだって、 今日ここにいらっしゃったこと自体、ご自身にとっては理不尽 なことですよね」。 カオルコさんは、うんうんと首を縦に振り続けています。

できるのは、ストレス反応に対する対処法を一緒に探すことだけ

「カウンセリングでできることは非常に限られています。まず、ここに来ない人を変えることはできません。カオルコさんがここに通われたからといって、カオルコさんのストレスであるマナブさんが変わることは、残念ながらほとんど期待できません。またマナブさんが変わることが期待できないし、期待したら、マナブさんのせいでもたらされるカオルコさんの、 ストレス反応を予め防いだりゼロにしたりすることもできません。 ここでできることは、カオルコさんのお話をうかがって、カオルコさんの理不尽な思いを共有させてもらうことと、マナブさんによってもたらされたストレス反応に対する対処法を一緒に探していくことだけです」。 私は続けました。
「今の話をお聞きになって、“悪いのはマナブさんなのに、なんで自分がカウンセリングに通ってお金と時間を使わなきゃな らないのか、なんで自分だけが頑張らなければならないのか” と、さらに理不尽に思われたかもしれません。そのお気持ちももっともだと思います。ですが、働いていると、理不尽なこ とってたくさんありますよね。カオルコさんもこれまで仕事を してきたなかで、さまざまな理不尽なことを体験し、乗り越えてこられたのではないでしょうか。そして今、マナブさんとい う新たな理不尽に直面し、今のところそれを乗り越えきれずに いて、ご自身が参ってしまっている。ただ、これまでも数々の 理不尽を乗り越えてこられたカオルコさんですから、今はつらくても、そのうちご自身で乗り越えられるのではないかと私は思います。ですがもう1つの選択肢として、ここに通って 知行動療法に取り組むことで、新たな乗り越え方を私と一緒に 探すこともできます」。
カオルコさんは黙って聞いています。 「こういう言い方をすると無責任だと思われてしまうかもし れませんが、私としては、カオルコさんが、ここに通わずに1 人で今の理不尽を乗り越えるという選択をしてもよいし、ここ に通って私と一緒に乗り越えるという選択をしてもよいし、ど ちらでもよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか?」。

私がこのように話し終えると、カオルコさんは次のように話 してくれました。
「正直言って、今日ここに来るまでは、まさに先ほど先生が おっしゃったとおり、マナブのせいで私がカウンセリングを受 けなくちゃいけないということについて腹を立てていました。 もちろん今でもそういう気持ちはあります。でも先生が先ほ どはっきりと“理不尽だ”と言って、私の気持ちをわかってくれ たことで、胸のつかえが少し取れたような気がします。それに、 今の先生のお話で、確かに自分はこれまでもいろいろと理不尽 な目にあってはきたけれども、そういえばそれらを1つ1つ なんとか乗り越えることができてきたんだなぁ、と思ってハッ としました。マナブのことで頭がいっぱいになってしまっていて、これまでそのことを思い出せずにいたのでしょう。だから本当はマナブの件もできれば1人で乗り越えたいと思いますし、 時間をかければ乗り越えられるのだろうとも思います」。 カオルコさんは一呼吸置いて続けました。 「でもクミ(カオルコさんに私を紹介してくれた看護学校時代の友人)がここを紹介してくれて、クミ自身が認知行動療法を気に入っているという話ですし、私も精神科のナースとして認知行動療法を学びたいと前から思っていましたので よい機会と考えて、先生に教えていただきながら、認知行動療法を身につけたいと思います。私が認知行動療法を学べば、それを病棟のナースに教えることができるようになりますし、それが結果的に患者さんの役に立つことにつながるのではないか、 と思いますので、頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします」。

私は話を聞きながら、カオルコさんの向上心や患者さんに対する思いやりの深さに、感心というより、ほとんど感動に近い ものを覚えました。そういうカオルコさんだからこそ、マナブ さんのような人にひどく腹が立つのでしょう。

結局私たちは、マナブさんに対する怒りをターゲットにして 認知行動療法を開始することに合意し、初回のセッションを終 えました。 「カオルコさんに感想をたずねると、「第三者に話を聞いてもらうって、こんなに気持ちがスッキリするんだということが実 感できました。明日から今よりもっと患者さんの話をちゃんと 「聞いてあげたいなと思いました。あと、やはり第三者から“理 不尽だ”と言ってもらえたことで、すごくホッとしました。人 にわかってもらえるって、とても安心できることなんだなぁと いうことが実感できました。このことも明日からの仕事に活かせそうです」と話してくれました。

伊藤 絵美 (著), matsu (イラスト)
医学書院 (2011/2/1)、出典:出版社HP

心がスッと軽くなる 認知行動療法ノート ―自分でできる27のプチレッスン―

ワークで進める認知行動療法

本書の特徴として、書き込みながら自分のペースでできるということが挙げられます。ワークに沿って自分の行動や思考を書き込むことで、自分自身と向き合うことができるので、負荷なく認知行動療法を進めることができます。

福井 至 (監修), 貝谷 久宣 (監修)
ナツメ社 (2015/4/7)、出典:出版社HP

はじめに

東京家政大学教授
福井至
赤坂クリニック・ なごやメンタルクリニック理事長
貝谷久宣
ナツメ社

私たちの生活には、ストレスがつきものです。
学校や会社に行くのがつらくなったり、家族関係や友人関係で悩んだりした経験は、誰しもあるでしょう。ストレスが強くなりすぎると、うつ病や不安障害にかかったり胃潰瘍などの心身症などにかかることがあります。医師ら臨床心理士の力を借りなければならなくなる前に、ストレスとの上手なつきあいかたを身につけることも大切です。そのために役立つのが、認知行動療法です。医療保険が適用される「うつ病の認知療法・認知行動療法」がとくに有名ですが、「社交不安障害」などの各種不安障害でも、有効な治療法が開発されています。どの治療法にも共通しているのは、認知と行動を変えて感情や生理反応を改善していくという手続きです。
本書は、認知と行動を簡単に変えられるよう、ひとりでできるワークブック形式で構成しています。最先端の技法「マインドフルネス認知行動療法」の要素も取り入れており、予防的メンタルケアにも、病気療養中のセルフヘルプにも役立ちます。人生には、つらいこともたくさんあります。しかし、つらさに飲み込まれずに、楽しみや喜びを感じられるようになれば、
人生は捨てたものではないと思えるはずです。つらい気分から解放されるだけでなく、あなたが望む人生を手に入れることができますように。それが私たちの願いです。

福井 至・貝谷久宣

目次

はじめに プロローグ)心がつらくなるのはなぜ?
本書のワークの進めかた
こんなときどうする? はじめての認知行動療法Q&A
Part 1 心のつぶやきを見つめ直す 脳のプチトレ 日本茶かコーヒーをゆっくり淹れる
考えかた 心を守るための「ゆがみ」に気づく。
ワーク
Lesson1心がつらくなるのはどんなとき?
?いてみよう! 【イヤなできごとシート】
Lesson2 自分の気持ちに点数をつける
?いてみよう! 【気持ちの点数シート】
Lesson3 心に浮かんだ思いを言葉にする。
?いてみよう! 【心のつぶやきと気分のシート】
Lesson4心のつぶやきは事実? それとも思い込み?…
いてみよう! 【心のつぶやき検証シート】
Lesson.5できごとをありのままに受け止める
いてみよう! 【心のつぶやき書き換えシート】
Lesson6頭に浮かぶイメージを修正する
いてみよう! 【心のイメージ修正シート] Lesson7 心がつらくなった別のできごとにも取り組む
書いてみよう! 【トリプルカラムシート】
Lesson8 いつもの考えが浮かんだら「と思った」と付け加える
やってみよう! 【葉っぱのトレーニング】
やってみよう! 【シアター鑑賞トレーニング】
Lesson9 いまやっていることだけに意識を向ける
やってみよう! 【3分でできる呼吸法】
Part 2 はじめの一歩を踏み出す
脳のプチトレ
計算問題をスピーディに解く
考えかた
行動を変えると新たな「気づき」がある
うつでつらいとき/不安でつらいとき
ワーク Lesson 1 1週間の行動を表に書き出す
書いてみよう! 【気分と活動のモニタリングシート】
Lesson2 気分がつらくなる行動はどれ?
書いてみよう!【気分がつらくなる行動シート】
Lesson 3 気分がよくなる行動を1日1個増やす
書いてみよう!【気分をよくする行動シート)
Lesson 4行動後の気持ちに点数をつける
書いてみよう! 【気分の変化チェックシート)
Lesson 5先延ばししていることを片づける… 書いてみよう! 【メリット&デメリット比較シート】
【先延ばし行動克服シート】
Lesson 6やったことのない行動にチャレンジ
書いてみよう! 【自分を変えるチャレンジシート】
Lesson 7アクションプランをたてる・
書いてみよう! 【アクションプランシート】
Lesson 8 とっさの呼吸法で不安をしずめる
やってみよう! 【パニック発作を防ぐ呼吸法】
Lesson 9アクションプランを実行、検証する。
書いてみよう! 【アクションプラン検証シート】
Lesson 10のこれからやってみたい 10のことを書き出す
書いてみよう!【やってみたいこと、10のリスト】
Column 鏡のなかの自分をのぞいてみよう.
Part3 心のルールから解放される
脳のプチトレ 文章の書き取りをする
考えかた
気分がつらくなる「生きかたのルール」に気づく
過去のルールと決別し、 とらわれない生きかたをめざす
「あなたにとって人生で大切なものは何?」
ワーク Lesson 1あなたを苦しめているルールは何?….
書いてみよう! 「生きかたのルール」チェックリスト】
Lesson 2 自分がつくり上げてきた「マイルール」に気づく。
書いてみよう! 【マイルール発見シート】
Lesson3 いまのルールのメリット、デメリットを書く
書いてみよう! 【メリット&デメリット比較シート】
Lesson4 新たなルールを書き出して3回つぶやく。
書いてみよう! 【心の新ルール記入シート】
Lesson5 1日1個、よかったことを書き留める
書いてみよう!【ポジティブなできごとシート】
Column 就寝前のヨガで頭をすっきりさせる
Lesson 6 人生で大切な7つのことを言葉にする
書いてみよう!【人生で大切な7つのこと】
Lesson 7コントロール欲求を手放す…
一番いてみよう!【怒りを小さくするイメージシート】
Lesson8 1日1日をマインドフルに生きる
やってみよう! 【マインドフルな関係チェックシート】
参考文献

福井 至 (監修), 貝谷 久宣 (監修)
ナツメ社 (2015/4/7)、出典:出版社HP

プロローグ 心がつらくなるのはなぜ?

この腹痛はただの痛み? それとも失敗の予兆?
今日は大事なプレゼンの日なのに、急におなかが痛くなってしまいました。
開始まであと3時間。あなたなら、こんなときどうしま すか? どんなことを思い浮かべるでしょうか。 「すぐに薬局に行き、早く効く薬を飲む」 「いいですね。確実に腹痛をしずめられそうです。 「痛みが治まりますようにと祈る」 「悪くないですね。あと3時間もあるのですから、自然に 治まる可能性はおおいにあります。痛みが少しでもやわらいでいれば、がまんしてプレゼンを終えることもできそうです。 「どうしよう、また失敗する!と頭が真っ白になる」
そう思う気持ちもわかります。人前で話すのは苦手だし、 肝心なときはいつも失敗ばかり。急な腹痛なんておしまい だ! 変な汗が出て、頭がパニックになってしまいそうです。
このように、「きっと失敗する」という不安で頭がいっぱいになると、肝心の内容にはとても集中できません。
その結果、プレゼンに本当に失敗し、「やっぱり自分はダメだ」と絶望的な気持ちになってしまう。これが、心がつら」くなるときに多くの人が陥っているパターンです。

「きっと失敗する」というメガネをはずす。
「どうしよう、また失敗する!」という考えは、無意識のうちに頭に浮かび、うつや不安の引き金となります。いつも失敗しているわけではないのに、なぜかそう思ってしまう。何ひとつうまくできない気がして、自分がイヤになる。失敗という名のメガネをかけて、世の中を見ているようなものです。
心のメガネをはずし、現実をありのままにとらえることができると、生きることはずっとラクになります。これが、認知行動療法の基本的な考えかたです。
ものごとが偏って見えるゆがんだメガネを、新しいメガネにつくりかえるというわけです。 「あなたのものの見かたがいけない」といっているわけでは ありません。問題は、落ち込みや不安、それにまつわる考え にとらわれて、人生を楽しめなくなってしまうこと。ものの見かたを少しチューニングすることで、つらい気持ちにとらわれず、あなたの望む人生を取り戻すことができます。

あなたを苦しめる思い込み、 自分ルールはもういらない
そのような規拠はどこにもないのに、なぜ「どうしよう、また失敗する!」と思ってしまうのでしょうか。
それは「人前で恥をかくなんて、あってはならないことだ」、「つねにいい結果を出すべきだ」といったルールの奥に抱えているから。
ルールを守れないことを恐れ、実際に少しでも守れないと自分をきびしく罰してしまうのです。
このようなルールは、あなたが生まれ育った環境や親や社会の考えかたをもとにつくり上げられてきたものです。最初は意味のあるルールだったはずですし、そのルールのおかげでよい結果を出せたこともあるでしょう。でもいまやそのルールが足かせとなり、あなたの心を苦しめています。 心のなかのルールが、苦しみの源泉となってしまっているのです。

「よくある思い込み&自分ルール」
「私はいつもこうだ」といった思い込み、「世の中はかくあるべきだ」といった自分なりのルールを、多くの人がもっている。
「何をやっても思うようにいかない…」 「人から笑われるなんてぜったいにイヤだ!」
「友だちに仕事のグチをいってはいけない」「努力した人が報われるのは、当然だ」
「私は誰にも必要とされていない」
「とらわれない生きかた」を手に入れる
ルールを新しいバージョンに修正し、「恥をかいてもいい」 「うまくいかないことがあってもいい」と思えるようになる と、世の中の見えかたが変わってきます。
現実に起こるできごとも変わります。臆せず行動できるよ うになり、結果的にうまくいくことが増えるのです。
人間関係も同じです。「つねにいい人でなくては」「誰からもきらわれたくない」という考えを捨てると、素直な気持ちでコミュニケーションをとることができ、親密な関係が築けます。「きらわれることがあってもいい」と思えると、いままで以上に人に好かれるようになるのです。「新しいルールをすぐに信じられなくても、大丈夫。 「これから毎日おこなうワークで、現実の様相と心の様相の ズレが、少しずつ埋まっていくはずです。

とらわれずに生きるための新ルール
いいこともあれば、よくないこともあるのが現実。柔軟な視点でものごとを受け止められると、心のつらさが軽くなる。
「思うようにいくこともあれば、いかないこともある」
「できれば笑われたくないけど、笑われてもたいしたことじゃない」
「ときには仕事のグチをいったっていい」
「努力が報われたらうれしいけれど、報われないこともあるよね」
「私のことを必要としてくれる人もいる」

本書のワークの進めかた

本書では3つのステップを踏んで、心のメガネをかけかえていきます。
最初に取り組むのは、「どうしよう、きっと失敗する!」といった思考を変えること。これができたら、行動パターンと価値観の変容に取り組みます。
いきます。

Part1 心のつぶやきを見つめ直す

あなたの考えの多くは、心のメガネを通して生まれたもの。現実に即した考えとは限りません。事実と違う点がないかを検証し、いつもの思考パターンを見直してみましょう。

Part2 はじめの一歩を踏み出す

新しい思考、心がつらくなりにくい思考を見つけたら、それが正しいかどうかを行動で試してみましょう。いつもと違う行動をとることで、気分そのものも変わってきます。

Part3 心のルールから解放される

心のメガネをかけかえて、現実をありのままに見るための最終ステップ。これまであたりまえのように信じ込んできたルールを見直します。新しいメガネは、人生の喜びをもう一度運んできてくれるはずです。

Point1 うつや不安の治療にも、 ストレスケアにも効果的

認知行動療法は、うつ病や不安障害などのさまざまな心の病気において、効果が実証されています。うつや不安の引き金となる考えかたが変わるので、心の病気の予防、 ストレスケアにも役立ちます。

point2 1日15 ~20分、 毎日取り組む

本書の認知行動療法は、書き込み式のワークが中心。ひとつのレッスンにつき、15~ 20 分程度でできるように構成されていま す。1日1レッスンをめやすに毎日取り組むと、途中で挫折することなく、確実に進められます。

point3 ワーク前の準備で 心をととのえる

ワークに取り組む前に、各章の最初にある「脳のプチトレ」をおこなってください。 単純作業をおこなうことで脳が活性化し、 ワークの効果が高まります。

point4 行動療法は、家族やカウンセラーに手伝ってもらう

ひとりでできるワークが中心ですが、パニック症(パニック障害)の人が電車に乗る場合などは、手助けが必要なこともあります。ひとりで心配なときは、カウンセラーや家族に付き添ってもらうと安心です。

はじめての認知行動療法Q&A

認知行動療法にはじめて取り組む人も、過去に試したけれどうまくいかなかったという人も、よくある疑問、悩みを通じて不安を解消しておきましょう。
Q1
どうしても気分がのらない日は、 やらなくていい?
体調に問題がなければ、 やったほうがすっきりします
認知行動療法は「気分がのらず、何もしたくない」という状態に変化をもたらします。 重度のうつ病でとても手をつけられない場合、体の不調がある場合などを除いてはゆううつであってもワークをおこなったほうが効果的です。
Q2
やっているうちに、 よけいつらくなりました。どうすればいい?
A2
ワークの内容によっては、 一時的につらくなることもあります。 不快なできごとや思考に向き合うことで、つらくなることもあるかもしれません。ただし、それは一時的な感情。 ワークを進めるうちに気分は変わってきます。少しつらくても、がんばって取り組んでみてください。

Q3 むずかしくって、20分以内ではとても終わりません。

A3
時間がかかっても」かまいません。 あせらずじっくり進めましょう。
1回のワークにかかる時間は、あくまでもめやすです。時間がどれだけかかってもいいので、自分のペースで取り組んでください。ひとりではむずかしい場合は、カウンセラーや信頼できる友人などに手伝ってもらいましょう。

福井 至 (監修), 貝谷 久宣 (監修)
ナツメ社 (2015/4/7)、出典:出版社HP

自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法

「自信をもてない理由」から理解する

自分に自信をもつために、自分の考え方や行動を変えていく方法を一般向けに丁寧に書かれた一冊です。改善策だけでなく、そもそもなぜ自己評価が低くなってしまうのか、ということから解説されているので、認知行動療法について学習している人にもおすすめです。

メラニー フェネル (著), 曽田 和子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2004/6/26)、出典:出版社HP

自分自身をもっとやさしく見つめるために

曾田和子
世界の人口の常に一割近くがうつ病を病んでいるそうです。さらに一割以上がなんらかの不安障害を抱え、そのほか多くの人が広い意味での精神障害に悩んでいると言います。そういう人たちはもちろん、そこまでいかなくても、自信がも てずに「自分はだめだ」と落ち込んでいる人は少なくないでしょう。何をしてもうまくいかず、すっかり自信をなくして いる人にとって、「自分はだめ人間だ」というのは自明の理であって、疑問の余地のないことのように思われます。

ところが、「自分はだめだ」というのはかならず実現してしまう予言のようなもので、ある種の考え方のパターンによ って「だめな」方向に導かれ、結局は「だめな」結果となって、それがまた同じパターンの考え方を生むという、悪循環 の罠にはまってしまうのだということが解明されてきました。そういう困った考え方のパターンを日常の行動を通して変 えていくことで、たとえばうつ病や広い意味での精神障害に高い治療効果が得られることがわかったのです。

この治療法を「認知行動療法」と言います。一九六〇~七〇年代、画期的なうつ病理論をもとに、主にうつ病治療のた めに開発された「認知療法」と、それ以前から症状そのものを取り除くことを目指し、特に不安障害に有効とされていた 「行動療法」とが一体化し、理論と実践の一大体系ができあがったのです。これは非常に厳密な科学的テストにかけられ てきた信頼できる療法であり、現に高い効果をあげることが証明されています。しかも、ほかの療法に比べて、再発の可 能性が低いと言われています。適用範囲も広く、さまざまな不安障害、恐怖症、強迫性障害、ギャンブル強迫、アルコー ル依存、薬物依存、摂食障害などに対してそれぞれ特別の療法が確立されています。そしてこの療法が、自分に自信のも てない自己評価の低い人や、夫婦間の葛藤を抱えている人にも応用され、効果をあげてきているのです。

こうして、広く効果の実証された素晴らしい療法が開発されました。でも、それが専門家の手のなかだけにあっては、恩恵をこうむることのできるのはごく限られた人ということになります。しかも、専門家に相談せずに自分で手当てしよ うとすると、かえって苦痛を長引かせたり、悪化させたりすることにもなりかねません。たとえ急場の危機は乗り切って も、奧に隠された問題はそのまま残ります。そこで、認知行動療法に携わる専門家たちが立ち上がりました。個々の障害に対する認知行動療法の原則と治療方式をまとめ、それを自力治療のマニュアルにしたのです。これらのマニュアルには、問題を抱えている本人が障害を克服するために実行すべき系統だった治療プログラムが紹介されています。

イギリスのレディング大学ピーター・クーパー教授らが、この治療マニュアルを利用して、さまざまな障害を自力で乗 り越えるためのOvercomingシリーズを刊行しました。オックスフォード大学のメラニー・フェネル博士によるこの「自 信をもてないあなたへ」は、そのシリーズの一環として、自分をだめな人間だと思っている自己評価の低い人に、いかに 自己評価を高めたらいいかを、詳細に、わかりやすく説明してくれています。これを読めば、低い自己評価が人生のあら ゆる面にいかに悪影響を及ぼし、人を不幸にしているかがわかります。また、自分はだめな人間だという思い込みは、多 くが幼児体験に根ざしていて、以来ずっと養われつづけ身にしみついたものであるだけに、そこから抜け出すことは簡単 ではないことも理解できます。そういう否定的な思い込みから脱却して、困った悪循環を断ち切り、自分をもっと寛大な 目で見る見方を手に入れるための方法が、段階をおって、丁寧に紹介されているのです。深刻に悩んでいる人も、それほ ど深刻でなくてももっと自信をもちたいと願っている人も、目からうろこが落ちるように納得でき、それぞれの状況に応 じて、自己評価を高める作業に取り組むことができるようになっています。

何十年も昔のこと、中学生だった私は今から思えば「社会恐怖症」で、真剣に悩んでいました。思い余って、当時マス コミで活躍していた高名な心理学者に相談の手紙を出したものです。見ず知らずの子供から相談を受けた心理学者はいい 迷惑だったでしょうが、返事をくれました。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とあります。早速、辞書で調べてみる と、「身を犠牲にするだけの覚悟があって初めて物事に成功できる」という意味だとか。心理学者の言いたいことはなん となくわかりましたが、だからといって、そういう心がけだけではなかなか問題は解決しないのでした。

この本の原著Overcoming Low Self-Esteemを読んだとき、当時の記憶がよみがえりました。そして、その学者のアド バイスは、認知行動療法の見地からしても正しいものだったことを知りました。自己評価の低い人は、何かしなければならない場面で、うまくやれないのではないかと否定的な予測をし、不安になって、その場面そのものを回避しようとしま す。したがってその否定的な予測が正しかったのかどうか確かめる機会を逸してしまうことになり、いつまでも同じことを繰り返して、結局は自分で自分の生き方を狭め、ストレスにさらされつづけてしまうのです。ありがたいことに、そういうことを(ただ心がけだけでなく)どうやって克服していくかという具体的な方法が、この本には示されています。自 分はだめだという思いから解放されたい人にとって、きっと救いになることでしょう。

メラニー フェネル (著), 曽田 和子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2004/6/26)、出典:出版社HP

もくじ

自分自身をもっとやさしく見つめるために

【第一部】 自信がないとはどういうことか
第一章◆「自信がない」=「自己評価が低い」
「自己評価が低い」とは? あなたの自己評価は?
自己評価が低いと……
低い自己評価はどこからくる?
低い自己評価がもたらす影響の度合
この本の使い方
認知行動療法を用いて
この本の概要
第一章のまとめ

【第二部】 「自己評価が低い」とは何かを知る
第二章◆低い自己評価はどのようにして生まれるか
はじめに
経験――思い込みのルーツ
過去と現在を結ぶ橋――「最終結論」
「考えのゆがみ」
「生きるためのルール」
第二章のまとめ

第三章◆何が低い自己評価を存続させるのか
はじめに
「生きるためのルール」が破られると…
脅威に対する反応―不安な予測
不安な予測が心理に及ぼす影響
不安な予測が行動に及ぼす影響
「最終結論」の確認
自己批判的考え
自己批判的考えの心理的影響
自分の悪循環を図に描く
第三章のまとめ

【第三部】「自己評価が低い」ことを乗り越える
第四章◆不安な予測を点検する
はじめに
不安をもたらすもの
不安な考えはどう働くか
予防策を講じる――不要な自己防衛
現状を変える第一歩――あなた自身の「不安な予測」と「不要な予防策」に気づく
不安な予測を見直す
代替案を見つける
不安な予測に代わるものを見つけるための質問集
実験――新しい見方を実地に試す
実験をどう進めるか
一つの例――ケイト買い物にいく
第四章のまとめ

第五章◆自己批判と闘う
はじめに
自己批判の影響
自己批判はなぜプラスではなくマイナスに働くか
自己批判的考えにどう対処するか
自己批判的考えに気づく
「自己批判的考えを見分ける 記録シート」の使い方
「自己批判的考えを見分ける 記録シート」を活用する
自己批判的考えに疑問を呈する
「自己批判的考えと闘う 記録シート」を活用する
自己批判的考えに代わる見方を見つけるための質問集
第五章のまとめ

第六章◆自分を受け入れる
はじめに
肯定的考え方をタブー視するのは不公平
自己評価を高める第一歩――肯定的な資質に目を向ける
肯定的な資質を見つけるための質問集
書いたことを実感する
あなたのいいところを日常的に自覚する――「肯定ノート」をつくる
いい人生を自分に奮発しよう
満足度を高め、楽しみを増やす――「活動日誌」をつける
第一ステップ――自己観察
「活動日誌」の活用法
第二ステップ――変えていく
プランを活用する
第六章のまとめ

第七章◆「生きるためのルール」を変える
はじめに
「生きるためのルール」はどのようにして生まれるのか
あなたの「最終結論」と「生きるためのルール」との関係
「生きるためのルール」とはどんなものか
あなたの「生きるためのルール」を突きとめる
「生きるためのルール」の影響を調べる
突きとめたことを整理する
ルールを変える
学習したことを整理し、強化する
第七章のまとめ

第八章◆「最終結論」を突き崩す
はじめに
あなたの「最終結論」を突きとめる
「最終結論」を突きとめるための情報源
より肯定的で現実的な「新しい最終結論」をつくる
あなたの「最終結論」を突き崩す
あなたの「最終結論」の「証拠」とは何か
「証拠」に別の解釈ができないか
「新しい最終結論」を裏付け、「古い最終結論」の反証となるものは?
長い目で見る
第八章のまとめ

第九章◆すべてを総合してこれからのプランをつくる
はじめに
自己評価を高める――それぞれのステップはどのように関わり合っているか
これからのプラン
完璧な行動プランに到達するためのステップ
「サ行」基準でさっそうと
第九章のまとめ

メラニー フェネル (著), 曽田 和子 (翻訳)
CCCメディアハウス (2004/6/26)、出典:出版社HP

図解 やさしくわかる認知行動療法

認知を変えれば、心がラクになる

本書では、認知行動療法の考え方と治療の流れから、実践方法まで初心者向けにやさしく解説されています。イラストやワークも掲載されているので、気軽に取り組むことができる一冊となっています。

貝谷 久宣 (監修), 福井 至 (監修)
ナツメ社 (2012/7/6)、出典:出版社HP

はじめに

こころの病気の概念は、この数十年で大きく変化しています。
たとえば、こころの病気としてもっともよく知られている、うつ病前は、「何をしていてもつらい」「楽しみをいっさい感じられない」という 慢性的なうつ症状を訴える人が中心でした。しかし現在は、特定の時間 に抑うつ症状が現れたり、仕事中はうつ状態だけれど、旅行などの趣味は 楽しめるといった「非定型うつ病」が急増しています。とくに、都市部の 女性でこのような病態がめだつようになりました。

また、非定型うつ病の前ぶれとして起こることも多い、不安障害の患者さんも増えています。電車のなかなどの公共の場面で発作を起こす「パ ニック症(パニック障害)」や、人前で何かをすることに、強い不安や恐 怖を感じる「社交不安障害」などは、その代表例です。
こうしたこころの病気の治療には、まず薬を使った治療がおこなわれます。しかし、薬で一時的に症状を改善できても、再びうつや不安の症状に悩まされる人は少なくありません。

そこで現在、こころの病気に有効な治療法として、薬物療法と並んでおこなわれているのが、認知行動療法です。認知行動療法の最大の特徴は、なんといっても、効果が科学的に実証されていることです。そのため現在は、もっとも有効な心理療法として、世界的な広がりを見せています。

本書では、認知行動療法の基本的な考えかたと治療の流れを、初心者にもわかりやすく解説しています。
とくにPart2~4では、自分でおこなう認知行動療法の実践法を詳しくとり上げました。認知行動療法は、うつ病や不安障害などの病気の改善だけでなく、病気未満のこころのつらさを感じている人、ストレスに悩むすべての人に役立つ方法です。章末にはワークシートも設けていますので、毎日少しずつでもとり組んでみてください。
また、Part5、6では、症状や病気に合わせておこなわれる、認知行動 療法のバリエーションを紹介しています。うつ病や不安障害に悩んでいて、専門家のもとで認知行動療法を受けてみたいと考えている人、認知行 動療法を専門的に学びたいと考えている人は、ぜひ本章を参考にしてください。
本書が、こころの病気や、こころのつらさに悩むすべての人に、少しで もお役立ていただけることを願っています。

東京家政大学教授 福井至
赤坂クリニック・なごやメンタルクリニック理事長貝谷久宣

貝谷 久宣 (監修), 福井 至 (監修)
ナツメ社 (2012/7/6)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに
認知を変えれば、気分が変わる!

1認知行動療法とは 考えかたと治療の流れ
認知行動療法で、 ものごとの捉えかたを変える
つらくなりやすい認知を 別の認知に変える
COLUMN ポジティブ・シンキングとは何が違うの?
認知には、 自動思考とスキーマがある
行動を変えて、 新たな認知の効果に気づく
COLUMN うつのときに、無理して行動してもいいの?
認知行動療法は、 行動療法と認知療法の発展形
COLUMN 論理療法の原点は、不運なエリス博士の自己変容法
従来の心理療法に比べ、 効率よく問題を解決できる
認知行動療法のおもな種類
<行動へのアプローチ法>
認知行動療法のおもな種類2
<認知へのアプローチ法>
COLUMN 認知行動療法と認知療法はどう違うの?
メンタルヘルスの予防的とり組みと しても役立つ
治療の流れ1
まずは医療機関を受診。
医師やセラピストに相談する
治療の流れ2
治療の前に、心理検査で症状や気分を調べる
治療の流れ3
ケースフォーミュレーションで 治療の見とおしを立てる
COLUMN 患者さんとセラピストの見解が異なるときは?
治療の流れ4
10~20回の面接で、 認知の変容と問題解決をめざす
治療の流れ5
面接は1回30分~1時間。テーマを明確にして話し合う
仲間とともにおこなう 集団認知行動療法もある
本やウェブを使って 自己学習もできる
ここが知りたい! 認知行動療法 Q&A

2《自分でおこなう認知行動療法1 思考パターンを変えてみよう
自分の気分に気づき、 数値で評価する
気分を左右する 自動思考に気づく
代表的な認知のゆがみを知る 推論の誤り
推論の誤りに気づく
ホットな自動思考に気づく
状況と自動思考の明確化
自動思考がうまく見つからないときは
自動思考のゆがみに気づく
自動思考を変える習慣をつける トリプル・カラム法
ワークシート1
現在の問題と、 自動思考に自分で気づく
ワークシート2
自動思考に反証し、 適応的認知を見つける
ワークシート3
DACS 質問用紙で自動思考に気づく
ワークシート4
トリプル・カラムで 認知の変容を習慣にする

3 〈自分でおこなう認知行動療法2》 行動を変えてみよう
行動によって、 新たな認知の効果を試す
行動プランのアイディアを出す
ブレインストーミング
行動の結果を予測しておく
トリプル・カラム法
行動の結果を振り返る
トリプル・カラム法
ケース別・行動を変えるテクニック1
気分がひどく、 アクションを実行できないとき
ケース別・行動を変えるテクニック2
不安や恥ずかしさで 行動できないとき
ケース別・行動を変えるテクニック3
行動をつい先延ばししてしまうとき
ワークシート1 アクションプランのための ブレインストーミング
ワークシート2 行動選択のためのポイント加算シート
ワークシート3 トリプル・カラムでアクションを 計画、評価する。
ワークシート4 不安階層表で、 不安の低い項目から行動化
ワークシート5 週間活動記録表で、 行動と気分を記録する
ワークシート6 メリット、デメリットを数表で 先延ばしをやめる
ワークシート7 アクションの難易度・満足度を 記録する

4<自分でおこなう認知行動療法3〉 考えかたのクセを見直そう
自動思考の共通点からスキーマが見えてくる。
ゆがんだスキーマに気づく 下向き矢印法
スキーマがうまく見つからないときは JNBT-R質問用紙
スキーマのデメリットに気づく。 メリット、デメリット比較表
適応的なスキーマのヒント 強固な価値基準の例
新たなスキーマを実感する PDL(ポジティブ・データ・ログ)
ワークシート1 下向き矢印法で非適応的スキーマに気づく
ワークシート2 JIBT-R 質問用紙で不合理な信念に気づく
ワークシート3 スキーマのメリット、 デメリットを表で比較する
ワークシート4 PDLで新たなスキーマを実感する

5症状に合わせておこなう、その他の認知行動療法
その他の認知行動療法を とり入れる
手軽なリラクセーション法1 こわばった筋肉をゆるめる 漸進的筋弛緩法
手軽なリラクセーション法2 自己暗示でリラックスする 自律訓練法
手軽なリラクセーション法3酸素を適切にとりこむ 呼吸法
COLUMN パニック発作が起きそうなときも活用できる
感情や思考を無理にコントロールせず、受け止める
ACT(アクセプタンス& コミットメントセラピー)
思いきってやってみることで、 不安や恐怖を克服 エクスポージャー法
他者をモデルにし、社会的スキルを高める SST(ソーシャル・スキルス・トレーニング)
円滑な人間関係のための、 自己主張のしかたを学ぶ アサーション・トレーニング
トラウマとなっているできごとを乗り越える EMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing)
ストレスに強くなるための、 新たな認知行動療法プログラム ストレス免疫訓練

6 疾患別・より効果的な治療法
気分障害の治療1 うつ病治療のための認知行動療法
気分障害の治療2 双極性障害治療のための認知行動療法
不安障害の治療1 パニック症治療のための認知行動療法
不安障害の治療2 社交不安障害治療のための認知行動療法
不安障害の治療3 恐怖症治療のための認知行動療法
不安障害の治療4 強迫性障害治療のための認知行動療法
不安障害の治療5 全般性不安障害治療のための認知行動療法
不安障害の治療6 PTSD 治療のための認知行動療法
和文INDEX
英文INDEX
参考文献

認知を変えれば、気分が変わる!

認知行動療法をおこなうと、なぜつらい気分がなくなるのでしょう? AさんとBさん、2人のケースから、その活用のしかたと効果を見てみましょう。

最近、元気がない Aさんのケース (28歳・男性・ 会社員)
28歳のAさんは、いつも 快活で、仕事熱心な営業 マン。しかし最近、Aさんの様子がいつもと少し 違うようです

パニック発作に悩む Bさんのケース (34歳・女性・会社員)
34歳のBさんは、家事や 育児をしながら、バリバり働く女性。いつも充実 していて、幸せそうです

医療機関を受診
自分でも変だなと思い、思いきって メンタルクリニックを受診
検査を受けても体には異常がなく、 精神科を受診することになりました。

ストレスやうつに関する本を探しに書店へ行 くと、認知行動療法の本に出合いました

パニック症とは
不安障害と呼ばれる病 気の一種
動悸などの症状をともなうパニック発作を起 こし、発作への不安に苦しむ
日本人の有病率は100 人に3~4人にも上る。
パニック症といわれ、 服薬と並行して、認知 行動療法を受けるよう に勧められます。

認知行動療法とは、気持ちを つらくする考えかたの クセを変える心理療法です
心をつらくするような考えかた、ものの見か た(認知)を変える治療法。うつ病をはじめ、さまざまな病気への有効性が認められている。

セラピストとともに おこなうのが一般的 ですが、自分でとり 組むこともできます

Point
認知行動療法は、うつ病や不安障害など の病気に有効な治療法として、世界的に 普及しています。病気の一歩手前の「つらい気分」の改善にも役立ちます!

診察後
本をもとに、認知行動療 法を始めたAさん。スト レスをためないコツが、 徐々に見えてきました
面接で発作への不安の 対処法を学び、セラピ ストといっしょに電車 に乗る練習もしました

コツコツと学習を続け、 考えかたを変えることに成功したAさん。今 では、以前のような笑 顔をとり戻しています
自分を追いこむような 考えかた、働きかたを変えたら、つらい気分 がなくなりました!

発作への不安を克服し、 落ちついて電車に乗れるようになったBさん。 今では、以前のように 外出を楽しんでいます
発作への不安が消えると、 発作も起きなくなりました。今は、薬なしで元気 に過ごせています!

貝谷 久宣 (監修), 福井 至 (監修)
ナツメ社 (2012/7/6)、出典:出版社HP

今日から使える 認知行動療法

日常のストレスや憂鬱が軽減される!

本書は、イラストやマンガを多く取り入れて分かりやすく解説しているため、初心者の方でも分かりやすい一冊となっています。また、本書に対応したワークブックもついているので、読み進めながら実際に取り組みやすくなっています。

福井至 (監修), 貝谷久宣 (監修)
ナツメ社 (2018/4/9)、出典:出版社HP

はじめに

落ち込みや不安、パニック、怒り――このような感情が強いとき、私たちの心は「つらい」「苦しい」という思いでいっぱいになります。このつらさが一生続くかのような、絶望的な気分に陥ることもあるでしょう。しかし、つらさには必ず原因があり、つらくなったきっかけがあるはず。そこに着目し、つらい感情をとり除く技法を体系化したのが、認知行動療法です。「つらいときにどんな思考が浮かぶか」をワークで整理し、認知(ものごとの捉えかた)と行動を変えることで、つらい気分に飲み込まれにくい心の状態をめざします。

認知行動療法には長い歴史があり、最近は、新たな技法も増えています。代表的なの は、思考や感情にとらわれない状態をめざす「マインドフルネス認知療法」、幼少期の体 験に着目した「スキーマ療法」など。技法の増加とともに、より多くの人に効果を発揮するようになりました。本書では、このような新しい技法も含め、数多くのワークを紹介しています。人によって、とり組みやすさや好みの違いもあるかもしれません。付録のワークブックを使い、いくつも試していくなかで、あなたにとって「これは効く」と実感できるものを見つけてください。

大切なのは、「心が疲れたな」と感じたときに、早めに対処することです。私たちは、目まぐるしく変化する社会のなかで、膨大な情報にさらされながら生きています。これだけでも大きなストレスなのに、社会の空気は息苦しいものとなり、仕事や学業におけるプレッシャーは増すばかり。仕事と家庭の両立に悩み、疲れ果てている人も多くいます。無理をしすぎて、心の病に至る前に、ぜひ認知行動療法にとり組んでみてください。

同時に、すべてをひとりで抱え込まないことも大切です。心の病かどうかの判断は、ひとりではできません。うつ病ひとつとっても、毎日が苦しくてたまらない「大うつ病性障害」、状況によってはポジティブな気分を感じられる「非定型うつ病」など、複数の分類があり、治療法も異なります。じつはうつ病ではなく、躁症状が比較的軽い「双極=型障害」であることも。最近はメンタルクリニックの雰囲気も変わり、受診しやすい医療機関が増えています。つらいときは、一度受診したうえで、認知行動療法にとり組みましょう。
本書を手にとってくださった皆さんが、ご自身の心を大切にし、上手にケアできるように なれば、望外の喜びです。人生の価値や喜びに向かって、いっしょに歩んでいきましょう。

福井至
貝谷久宣

福井至 (監修), 貝谷久宣 (監修)
ナツメ社 (2018/4/9)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに
本書の使いかた
プロローグ
マンガ 考えかたのクセに気づく!
「私はいつも失敗ばかり」

Part1 5分でわかる 認知行動療法超入門

マンガ 気分は変えられる!
認知行動療法に出合う

認知って何?
「自分はダメだ」と思うと、誰だってつらい
つらい気分は頭のなかでつくられる

認知を変える
ものごとを見るときの「心のメガネ」を替える
認知を変えると人間関係もよくなる
頑なな思い込みも認知行動療法で変わる

行動を変える
行動を変えると自信がもてる

ワークにとり組む
1日10分のワークで心が軽くなる!
方法はいろいろ。自分に合うものを選んで
Column 不安な場面では呼吸法でリラックス

Part2 つらさの原因は、考えかたのクセだった!

マンガ 思考と気分の関係に気づく
「完璧にやりたい、でも現実は……」

つらさの原因は?
とくにつらかった場面を振り返る
つらかったときの気分を言葉にする
100点満点で数値化する
《やってみよう!》 よくある状況から、気分を点数化

自動思考に気づく
つらいときに浮かぶ考えに注目する
よくある自動思考からあなたの思考を探る

偏りに気づく
認知のゆがみには10のパターンがある
よくあるケースから推論の誤りに気づく
《やってみよう!》 推論の誤りを当てるレッスン
あなたの自動思考、誤りはどこにある?
Column  前の緊張をゆるめて不安や緊張をやわらげる

Part3 心が軽くなる考えグセを身につける

マンガ 心をつらくする思考を変えるには?
偏りのない自動思考を見つける

思考を変える
自動思考に反論してみよう
適応的な考えといまの気分を書き出す
適応的思考を見つけるコツは?
友人へのアドバイスとして考える
別の場面で浮かんだ自動思考も見直す

新たな思考を習慣に
つらくなったら新たな考えをつぶやく

古い考えを消す
いつもの考えがつい浮かんでしまったら
いつもの思考をもっと極端にする
頭に浮かぶイメージを置き換える

具谷先生に聞いてみよう!
認知行動療法カウンセリング
仕事の悩み編
相談1「納期にいつも間に合いません」
相談2「評価に納得できません」

Part4 一歩踏み出せば、気分は変えられる

マンガ 自信や意欲がもてないときは
行動パターンを変えてみる

行動を変える
思考とともに行動を変えてみる
がんばればできそうな行動にチャレンジ
実行のためのアイデアを出す
アクションプランを立てる
行動後にアクションプランを検証する
不安に悩む人は不安階層表を使う

習慣を変える
気分が沈む行動パターンに気づく
気分がラクになる行動を増やす
習慣を変えたあとの気分をチェック

先延ばしをやめる
「面倒だな」と思っていた行動にとり組む
やる前とやったあとで満足度を比べる

福井先生に聞いてみよう!
認知行動療法カウンセリング
日々のストレス 編
相談1「友人のグチにイライラします」
相談2「ストレスで間食ばかりしています」

Part5 心のルールから解放される

マンガ 自分を好きになれないのはなぜ?
頑なな信念を変える

スキーマって何?
人の心には“マイルール“がある

スキーマを見つける
心の奥に隠されたスキーマを見つける
質問紙を使ってスキーマを探る

スキーマを検証
スキーマのメリット、デメリットを比較

適応的なスキーマは?
柔軟で生きやすいスキーマに書き換える
世の中の基準をルールにしない
新たなスキーマの証拠を、1日1個書く

スキーマモードとは
心のなかに現れるスキーマモードに注目
あなたの心のスキーマモードは、どれ?

モードを変える
心をつらくする「モード」と対話する

貝谷先生に聞いてみよう!
認知行動療法カウンセリング
自己評価編
相談1「彼女も友だちもいません」
相談2「誰にも必要とされていません」

Part6 つらい人間関係も、認知でラクになる

マンガ 思いをうまく言えないのはなぜ?
つらい人間関係を、認知で変える

人間関係の悩み
人は変えられない。でも、自分は変えられる
他人を尊重すれば関係は必ずよくなる

上手な自己主張
自分の思いを犠牲にしていない?
自己主張的な表現を身につける
相手の怒りにコントロールされない
スキーマモードから自分の行動を理解する
いつもの回避モードを別の対処に変える

怒りの対処法
私のルールを破らないで!
怒りのメリット、デメリットを検証
セリフを書き出して次回の対応にいかす
怒りがわいたときのスキーマモードに気づく
過剰保障モードの出番を減らす

福井先生に聞いてみよう!
認知行動療法カウンセリング
人間関係編
相談1「何もしない夫に腹が立ちます」
相談2「自分の意見を言えません」
相談3「SNSの反応ばかり気にしています」

Part7 幸せ力を手に入れる

マンガ 悩みがあっても大丈夫!
よりよく生きるために

マインドフルネス
「いま、ここ」に集中し、心のとらわれをなくす
ボディスキャンを習慣にする
味わうことだけに意識を向ける
マインドフルネス日記をつける

ストレングス&レジリエンス
認知と行動の変化が人生を豊かにする
生きるうえでのあなたの強みは?
ストレングスに基づく行動を書き出す

価値を生きる
あなたにとって価値ある人生をめざす

さくいん
参考文献

福井至 (監修), 貝谷久宣 (監修)
ナツメ社 (2018/4/9)、出典:出版社HP

認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第2版 -ジュディス・ベックの認知行動療法テキスト‐

認知行動療法における決定版ガイド

本書は事例を取り上げて、治療者と患者の会話形式で解説が進められていく点が特徴的です。分量は多いように見えますが、会話ベースなので読み進めやすく、詳細に記載されているので、認知行動療法についてきちんと学習したいという方にもおすすめです。

ジュディス・S・ベック (著), 伊藤 絵美 (翻訳), 神村 栄一 (翻訳), 藤澤 大介 (翻訳)
星和書店; 第2版 (2015/7/25)、出典:出版社HP

アーロン・T・ベック博士による巻頭言

著者による『認知療法実践ガイド・基礎から応用まで―ジュディス・ベッ クの認知療法テキストー』(以下『認知療法実践ガイド』)の成功が,その第 2版である本書の出版につながったというのは大変喜ばしいことである。読 者は『認知療法実践ガイド』を通じて認知療法のアプローチを学び,心理療 法に対して新鮮な気づきを得たことだろう。『認知療法実践ガイド』は,心 理療法を学び始めの学生だけでなく,すでに認知行動療法に精通している心 理療法家にとっても大いに歓迎されただろうと私は確信している。認知療 法・認知行動療法の世界では、日々新たなアイディアと研究が生み出され, わくわくするような新たな展開が繰り広げられている。患者をよりよく概念 化し,治療するために,認知行動療法の新たな展開を取り入れ,第1版を大 幅に拡張したこの第2版を完成させた著者の尽力に拍手を送りたい。
私はまずこの巻頭言において,認知療法が提唱された当初を振り返り,そ の後認知療法がどのように発展してきたかを読者とともに見ておきたいと思 う。私自身が後に「認知療法」と命名した一連の治療法(現在では「認知行 動療法」と呼ばれるようになっているが)を通じて,最初に私が患者を治療 し始めた頃,この新しいアプローチ(私が受けた精神分析学のトレーニング からは、かなり逸脱してしまったアプローチ)がいったいどうなっていくの か、私自身にも見当がつかなかった。臨床での観察および体系的な臨床研究 や実験から、私は、抑うつや不安のような精神医学的な症状の中核には思考 障害がみられるという理論を主張するようになった。この思考障害は,患者 が自分の体験を解釈する際に、体系的な偏りとして表れる。これらの偏った 解釈を指摘し、代わりとなる別の解釈(すなわち,より現実的な解釈)を提案することで、患者の症状が速やかに軽減することに私は気づいた。また、 このような認知的スキルを患者に教えることは,患者の回復状態の維持にも 役立った。治療を目の前の現実的な問題に焦点づけすると,ほとんどの症状 が10~14週で軽減した。後に,我々のグループや他の臨床家や研究者らが追跡調査を行った。これらの調査結果は,このアプローチが不安障害やうつ病性障害,そしてパニック障害に効果のあることを支持している。
1980年代の半ば頃までには,認知療法は,「体系的な心理療法」の地位 獲得したと主張できるまでに成長した。体系的な心理療法とは,以下の3つ の要素から構成されるべきものである。「パーソナリティおよび精神病理, に関する理論。これらの理論は,その療法の基本仮説を支持する強力なり 的発見に基づくものでなければならない。2ひとつの心理療法としてのモデ ル。モデルにおいて,その心理療法における原則と戦略とが一連のセットと して提示される。またモデルは,1の精神病理学理論と整合するものでなければならない。3そのアプローチを支持する強固な実証的結果。この結果 は、臨床的な効果研究から導き出されたものでなければならない。
私が認知療法を始めた初期の頃から今に至るまで,新しい世代の治療者. 研究者・教育者たちが、認知療法を研究し,実践してきた。彼らは認知療法 における精神病理学の理論モデルに関する基礎研究を行い,同時に,広範囲 の精神障害に認知療法を適用してきた。これらの体系的研究が明らかにしようとしたのは、パーソナリティと精神障害における基本的な認知の特性, 様々な精神障害における情報の処理と再生の特異性,脆弱性とストレスとの 関連性などである。
今では、心理学的なそして医学的な諸障害に対して,認知行動療法が広く 適用されているが,それは私が抑うつや不安のごく少数の事例に対し,認知 療法を適用し始めた頃に想定していた範囲をはるかに超えるものである。世 界中の研究者,とりわけ米国の研究者が,認知療法の治療効果研究を行った が、その結果,認知行動療法は,外傷後ストレス障害,強迫性障害,あらゆる恐怖症,そして摂食障害に効果的であることが証明された。また,認知行 動療法が薬物療法と併用されれば,双極性障害や統合失調症にもしばしば効 果的であることが明らかにされた。さらに,腰痛,大腸炎,高血圧,慢性疲 労症候群など、広範囲の医学的な諸症状に対する認知行動療法の有効性も、 明らかにされた。

認知行動療法の適用がこれだけ多様になった今、音欲的な治療者は、いつたいどのようにして認知行動療法の基礎を学び始めればよいのだろうか? 「始まりから始めよう」と『不思議の国のアリス』で言われているように, 我々もまた,この巻頭文の冒頭で発した問いに立ち戻ってみよう。もっとも 意欲的な第二世代の認知行動療法家の一人であるジュディス・ベック博士に よる本書の目的は,読者の認知行動療法の実践に向けて,しっかりとした基 礎的土台を提供することである(まだ10代だった頃の彼女は、私がこの新 たな治療法について語るのを,初めて聞いた一人でもあった)。今では驚くべきほど多様な対象に適用されている認知行動療法だが,いかなる場合でも それは,本書で概説される基本原則に沿って行われる。一方,他の認知行動 療法に関する本(私自身が著した数冊を含む)は,特定の障害に対する認知 行動療法の指針を,詳細に示したものである。本書は間違いなく,認知行動 療法家のための標準的な基本テキストとなるだろう。経験豊富な認知行動療 法家であっても,概念化のスキルを改善したり,治療技法のレパートリーを 増やしたり,より効果的な治療計画を立てたり,治療における諸問題を解決 したりするために、本書が極めて有用であることがわかるだろう。

もちろん、スーパービジョンの代わりになる認知行動療法の本はない。それでも本書が大変重要な書物であることには変わりなく,さらにスーパービ ジョンが本書を補ってくれるだろう。スーパービジョンに関する情報は,ベテランの認知行動療法家のネットワークから容易に入手できる(付録Bを 参照)。
ジュディス・ベック博士は,本書のような認知療法のテキストを出版する のに極めて適した人物である。ここ 25 年間彼女は,認知行動療法に関する ワークショップと事例検討会,および講義を行い,初心者および経験を積んだ治療者に対して数多くのスーパービジョンを行った。また,様々な障害に 対する認知療法の治療プロトコルの構築に寄与し、さらに認知行動療法に関 する調査研究にも積極的に関与してきた。彼女はこのような豊かなバックグ ラウンドから、認知行動療法の適用についての多大な情報を抽出し,本書の 第1版を執筆したのである。第1版は認知行動療法を代表する教科書とし て、心理学,精神医学,ソーシャルワーク, カウンセリングの領域で,多くの人に購読されてきた。

認知行動療法を実践することは,それほど単純なことではない。
私はこれまで,臨床効果研究に参加する多くの臨床家を観察してきたが,たとえの中には,患者が抱いている世界に対する見方を十分に把握せずにあっは認知行動療法の原則である〈協同的実証主義〉について全く理解せず)。〈自動思考〉に対する作業を患者に提案してしまった人がいた。ジュディス・ ベック博士の仕事は,認知行動療法の初心者と経験者の両者に対し,教育 訓練を行うことをその目的としているが,本書は,彼女がこの使命を見事。 成功させたことを示している。
アーロン・T・ベック博士 (ベック認知行動療法研究所・ペンシルヴァニア大学精神医学研究科)

序文

認知行動療法の領域において,この20年間は非常にエキサイティングな 期間であった。次々と新たな研究が生み出され,認知行動療法は今や,数多 くの障害にとって第一選択となる治療法となった。その理由としてまず挙げられるのは,認知行動療法が人々の苦しみを除去し,すみやかに寛解に導く ことができる治療法であるということである。しかしもうひとつ重要な理由 がある。それは,認知行動療法が,人々が寛解後の良好な状態を保つために 役立つから(すなわち再発予防), というものである。我々の運営する非営 利組織であるベック認知行動療法研究所(Beck Institute for Cognitive Behavior Therapy) の第一の使命は、フィラデルフィアおよび国内外の精 神保健の専門家に対し、最先端のトレーニングを提供することである。しか し心理療法をしっかりと身につけるためには,種々のワークショップと訓練 プログラムだけではどうにも不十分である。私は 25年間にもわたって何千 人ものトレーニングに携わってきたが,認知行動療法の理論,原理,そして 実践について十分に学ぶためには,繰り返し何度も参照することのできる基 本的な教科書がどうしても必要であると考えている。

本書は,心身の健康に携わる様々な領域の専門家に向けて書かれたもので 「あり,認知行動療法の初心者のみならず,かなりの経験を積んだ専門家もその対象である。どのように患者の抱える問題を認知的に概念化し,どのよう に治療の計画を立て,どのように多様な技法を適用し,どのように治療効果 を評価し、そしてセッション中に生じる様々な問題にどのように対応する か、といったことを学ぶことを通じて,認知行動療法のスキルを向上させたい専門家であれば誰でも,本書が役に立つであろう。本書では認知行動療法 についてできるだけわかりやすく提示するため、ある一人の患者の事例を一貫して提示することにした(もちろん患者の氏名や個人を特定できる情報は 改変してある)。サリー”は、私が以前に担当した患者で、教科書的には 《理想的な》患者である。彼女の事例は、あまり複雑でない単一のエピソードによる抑うつに対する〈標準的な〉認知行動療法の進め くれるからである。サリーの事例は,不安の強い抑うつ症状に ルな認知行動療法を示したものだが,そこに提示される技法は 問題を抱えた様々な患者に適用することができる。参考文献の欄 害に対する認知行動療法の文献を挙げたので、読者はそれらを 書で提示した標準的な認知行動療法を,個々の障害や患者に合わせてカスタマイズしてほしい。

本書の第1版は 20 以上もの言語に翻訳され,世界中の人が私 想を寄せてくれた。私はそれらに基づき第2版である本書を書いか 加えた内容としては、インテークセッション,行動活性化
(治療者のスキルを測定するための尺度で,多くの訓練プログラムや調究で使われている), ケース提示のための書式(Cognitive Case Write ITm) (認知療法アカデミーで資格審査のために用いられるケースレポートのみ の書式)が挙げられる。私は本書において,治療関係,誘導による発見し、 クラテス式質問法,患者の強みとリソースを引き出すこと,およびホーム ワークについて、第1版よりもさらに強調して記述した。私を成長させてく れたのは、私自身の臨床実践,人に教えたりスーパービジョンを行ったりすること、そして認知行動療法に関わる研究や出版といった諸活動であるが、 同様に、国内外の認知行動療法を志す多くの専門家(初心者からエキスパー トまで、その専門性も様々)との数多くの議論が,私を導いてくれたのは言うまでもないことである。
認知療法の父であるアーロン・T・ベックによる革新的な仕事がなければ、本書は生まれなかったであろう。彼は私自身の父でもあり,非常に優れた科学者,理論家,実践家である、そして人間的にも素晴らしい人物である。私が出会ったすべてのスーパーバイザースーパーバイジー,患者から も,私は多くのことを学んだ。これらすべての方々に対し,心から感謝の意 を表したい。

ジュディス・S・ベック博士

ジュディス・S・ベック (著), 伊藤 絵美 (翻訳), 神村 栄一 (翻訳), 藤澤 大介 (翻訳)
星和書店; 第2版 (2015/7/25)、出典:出版社HP

目次

アーロン・T・ベック博士による巻頭言
序文
第1章 認知行動療法入門
1. 認知行動療法とは何か?
2.認知行動療法の根底にある理論とは?
3.様々な研究からわかること
4.ベックの認知療法はどのように構築されたか
5.認知行動療法の基本原則8
6.認知行動療法における治療セッション
7.認知行動療法の治療者としての成長
8.本書の活用法20

第2章 治療の流れ
1. 治療関係を形成する
2.治療計画を立て、セッションを構造化する
3. 非機能的な認知を同定し、対応する
4. ポジティブな側面を強調する
5.セッション間において認知と行動の変容を促す(ホームワーク)

第3章 認知的概念化
1. 認知モデル
2.信念
3. 自動思考と行動の関係

第4章 インテークセッション
1. インテークセッションの目標
2. インテークセッションの構造
3. インテークセッションを開始する
4. アセスメント
5. アセスメントの最終段階
6. 家族との関わり
7. 治療者の見立てを伝える
8. 治療目標を設定し,治療計画を伝える
9. 治療に対する見通し
10. 認知的概念化と治療計画の作成を開始する

第5章 初回セッションの構造
1. 初回セッションの目標と構造
2. アジェンダ設定
3. 気分をチェックする
4. 現状を把握する
5.診断について検討する
6.問題を同定し、目標を設定する
7.認知モデルについて心理教育を行う
8. 患者の抱える問題について,あるいは行動活性化について話し合う
9.セッション全体をまとめ,ホームワークを設定する
10. フィードバックを引き出す

第6章 行動活性化
1. 「不活性」の概念化
2. 「達成感や喜びの欠如」の概念化
3.予測の正確さを検証するために活動チャートを用いる

第7章 第2セッション以降:面接の構造とその進め方
1. セッションの序盤
2. セッションの中盤 154
3. セッション最後のまとめと患者からの感想
4. 第3セッション以降

第8章 治療セッションを構造化する上での諸問題
1.治療者の認知
2.患者の話をさえぎる
3.患者に進め方に親しんでもらう
4.主体的に取り組む姿勢を患者に維持してもらう
5.治療同盟を強化する
6. 気分のチェック
7.前回の後で起こったことを簡潔に表現してもらう

8. セッション間の橋渡し
9. ホームワークの振り返り
10. アジェンダの各項目について話し合う
11. 新たなホームワークを設定する
12. セッション全体のまとめ
13. 患者からのフィードバックを引き出す

第9章 自動思考を把握する
1. 自動思考の特徴
2.自動思考について、患者に説明する
3.自動思考を引き出す
4.自動思考の把握の仕方を患者に教える

第10章 感情を把握する
1. 自動思考と感情を区別する
2. 感情にラベルづけをする際に生じやすい問題
3. 感情の強度を評定する
4. 感情強度の評定を治療の指針とする

第11章 自動思考を検討する
1. 鍵となる自動思考の選び方
2.自動思考を評価する質問をする
3.自動思考の検証のプロセスの結果を評価する
4.自動思考の検討が効果的でなかった理由を概念化する
5. 思考の検討に役立つ他の方法を試す
6.自動思考が正しいときの対応
7. 思考を評価するよう教育する
8. ショートカット:質問を全く使わない方法

第12章 自動思考に対応する
1. 治療ノートを振り返る
2.セッション間で新たな自動思考を評価し対応する
3.他の方法で自動思考に対応する

第13章 媒介信念をとらえて変容する
1. 認知的概念化
2. 信念の変容

第14章 中核信念をとらえ変容する
1. 中核信念の分類
2. 中核信念をとらえる
3. 中核信念の提示
4. 中核信念の心理教育と成果の確認
5. 新しい中核信念を形成する
6. 新しい中核信念の強化
7. ネガティブな中核信念の変容
8. 中核信念ワークシート

第15章 その他の認知技法と行動技法
1.問題解決法とスキル訓練
2.意思決定
3.再焦点付け法
4.活動記録表を用いて気分を測定する
5.リラクセーション法とマインドフルネス
6.スモールステップ化
7.エクスポージャー
8.ロールプレイ
9.円グラフ法を使う
10.比較癖と「いいね」リスト (credit list)の作成

第16章 イメージ技法
1. イメージを同定する
2. イメージ技法についての心理教育を行う
3.自発的に浮かんでくるイメージに対処する
4.治療ツールとしてイメージを導入する方法

第17章 ホームワーク
1.ホームワークを設定する
2.ホームワークのアドヒアランスを高めるためのコツ
3.困難を概念化する
4.ホームワークを見直す

第18章終結と再発予防
1. 治療早期で行うこと
2. 治療の全期間を通じた活動
3. 終結が近づいたら行う活動
4. ブースターセッション

第19章 治療計画
1. 大きな治療目標を立てる
2. セッション間にまたがる治療計画を立てる
3.治療計画を立てる
4.各セッションの計画を立てる
5. ある問題を取り上げるかどうかの決め方
6.特定の障害に合わせて標準的治療を柔軟に適用する

第20章 治療上の問題
1.問題の存在を明らかにする
2.問題を概念化する
3. 行き詰まったとき
4. 治療上の問題を解決する

第21章 認知行動療法家としての進歩

付録A 認知行動療法ケース報告書
付録B 認知行動療法のリソース
付録C 認知療法尺度
文献
訳者あとがき
索引

ジュディス・S・ベック (著), 伊藤 絵美 (翻訳), 神村 栄一 (翻訳), 藤澤 大介 (翻訳)
星和書店; 第2版 (2015/7/25)、出典:出版社HP

第1章 認知行動療法入門

メンタルヘルスの世界で革命が起きたのは, 1960 年代の初め頃であった。 革命を起こしたのは、アーロン・T・ベック博士(Aaron T. Beck, MD) で、彼は当時、ペンシルヴァニア大学の精神科の助教授であり,十分な訓練 を受けた精神分析の実践家でもあった。科学者としてのベックは,医学の領 域で精神分析がもっと受け入れられるためには,精神分析の理論の妥当性を 実証的に示す必要があると信じていた。そこでベックは、1950 年代後半か ら1960年代の初頭にかけて、精神分析の妥当性を証明するための一連の実 験を行った。当時ベックは、これらの実験によって精神分析の妥当性を示せるものと信じていた。しかし一連の実験の結果は,精神分析の理論的妥当性 を示すものではなかった。ベックは,実験結果を説明するために,抑うつに ついての新たな視点を探索し始めた。そしてついに,偏った否定的認知(思 考と信念)が抑うつの主要な特徴であるとの視点に達し,患者の抑うつ的な 思考を現実的に検討することを主眼とする短期間の治療を考え出した。 本章では、以下の問いについて読者の皆さんにお示ししたいと思う。

・認知行動療法とは何か? ・認知行動療法はどのように構築されたのか? ・認知行動療法の効果研究からどのようなことがわかるか? ・認知行動療法の基本原則にはどのようなものがあるか? 有能な認知行動療法家になるにはどうしたらよいか?

1. 認知行動療法とは何か?

アーロン・ベックは 1960年代初頭,新たな体系的な心理療法を機 それに「認知療法(cognitive therapy)」と名づけた。現在「認知 いう用語は、「認知行動療法(cognitive behavior therapy)」とは 用いられており,本書では基本的に「認知行動療法」という用語を用 とにする。ベックの認知療法は,構造化された,短期の,現在志向的、 療法であり,非機能的な(正確ではない,そして/あるいは,有用であり、 思考や行動を修正し,今抱えている問題を解決しようとするものである。) ベックたちはそれ以降,認知療法に様々な工夫を加え,驚くほど多種多様も 障害や問題に適用させることに成功した。それによって時には治療の進占が 変わったり,用いられる技法が異なったり、治療の期間が長くなったりはさ るものの、根底にある治療理論そのものが変化することはなかった。ベックのモデルから発展した認知行動療法はすべて,それがどのような形態を取る うとも、認知的フォーミュレーションに基づくこと,そして治療の対象となる障害に特有の信念を扱い,それを変容させるための行動的戦略を用いる、 とに変わりはない。

認知行動療法の治療は、個々の患者の信念および行動パターンを理解し 概念化したものに基づいて進められる。治療者は患者の認知的変化(患者の 思考と信念システムの変容)を引き起こすために様々な手立てを探索し,認 知的変化が患者の感情や行動にしっかりとした変化をもたらすよう工夫する。
ベックは多種多様な思想や理論を統合して認知行動療法を構築した。それ はたとえば古代ギリシャ哲学者のエピクテトスの思想や、カレン・ホーナ イ,アルフレッド・アドラー,ジョージ・ケリー アルバート・エリス,リチャード・ラザルス, アルバート・バンデューラらの理論である。それに えて、ベックは米国内外の最新の研究や理論を多数、認知行動療法に組み込んだ。

現在,認知行動療法には数多くのアプローチが存在する。どのアプローチ も概念化や強調点に多少の違いはあるが,ベックの理論との共通点を有する。 主なアプローチとしては,論理情動行動療法 36),弁証法的行動療法 61,問題 解決療法”, アクセプタンス&コミットメント・セラピー 45,曝露療法”, 認知処理療法 75,認知行動分析システム精神療法 6,行動活性化 10.0″, 認知 行動変容 70 などである。ベックの認知行動療法はこれらのアプローチの技 法を統合的に用いるが,他の心理療法の技法も,認知的な枠組みの中で用い ることがある。認知行動療法のこれまでの歴史を概観すれば,多くの異なる 流れが認知行動療法の名のもとに統合されていったことがよく理解できるだ ろう 4.11.28.34.47) 「認知行動療法は多様な人々に適用可能である。すなわち教育レベルや収入 の高低に関わらず、また文化的背景にも関わらず,そして子どもから高齢者 まで幅広い年齢層の人に適用できる。認知行動療法が行われる場も様々であ る。それはたとえばプライマリケアの場であったり,他の医療機関であった り,職業訓練の場であったり、刑務所であったりする。個人療法やグループ 療法で使われることもあれば、カップル療法や家族療法で用いられることも ある。本書では1セッション 45 分の設定の,個人療法として行われる認知 行動療法について具体例を紹介するが, セッションの時間はもっと短くても 構わない。たとえば統合失調症を有する患者などは,長時間のセッションに 耐えられないかもしれない。また,たとえば通常の医療やリハビリテーショ ンの場,そして健康診断の場などでは,認知行動療法を通しで行うのではなく,部分的にその技法を適用することもできるだろう。

2. 認知行動療法の根底にある理論とは?

端的に言うと,「認知モデル(cognitive model)」が提唱するのは、すべての心理学的な問題の背景には,非機能的な思考(それが患者の気分と行動 に影響を与える)が存在するというものである。もしある人が、自らの思考 をより現実的かつ適応的に検討することができるようになれば、その人の感情的な状態や行動の仕方は改善されることだろう。たとえば、あれ 気持ちがひどく落ち込んだり動揺したりしているとする。あなた、 思考(automatic thought)といって、心の中にポンと浮かんで 思考が生じるだろう。それはたとえば「私は何ひとつちゃんとでき、 いった思考かもしれない。そのような自動思考は, 悲しみ(感情)。 に引きこもる(行動)といった,特定の反応を誘発する。しかし いったんそのような自動思考の妥当性を検討し,それが物事を過度, した思考であったことに気づけば,あなたは再び物事にうまく対処す ができるようになる。新たな視点から自分の体験を眺められるよう ば、ネガティブな感情は和らぎ,より機能的な行動が取れるようにな患者の気分や行動の改善をより確実なものにするために,認知療法の治療 者は、患者の認知のより深い面に焦点を当てる。それは,患者の自分自身 自分を取り巻く世界、そして他者に対する基本的な信念である。背景にある 非機能的な信念を修正することができれば,患者の治療的変化はより確実な ものとなる。たとえば、もしあなたが常に自分の能力を過小評価していると したら、おそらくあなたの中には「自分は無能である」といった信念が存在 すると思われる。このような一般化された信念を修正することができれば (すなわち、自分自身について,長所と短所の両面から現実的に見ることが できるようになれば),日常生活における個々の状況におけるあなたの感じ 方も変わってくるだろう。「私は何ひとつちゃんとできない」といった自動 思考が頻発することはなくなり,たとえ何かうまくいかないことがあったと しても、「私はこの課題が得意ではない」といったぐらいの思考に留まるようになるだろう。

3. 様々な研究からわかること

表 1.1 認知行動療法の効果が高いことが示されている障害と問題のリスト(一部)
精神医学的な障害
大うつ病性障害
老年性うつ病
全般性不安障害
老年性不安
広場恐怖
社交恐怖
強迫性障害
行為障害
物質乱用
注意欠如/多動性障害
健康不安
身体醜形障害
摄食障害
パーソナリティ障害
性犯罪
習慣の障害
双極性障害 (藥物療法併用)
統合失調症 (藥物療法併用)

心理学的な問題
カップルの問題
家族の問題
病的赌博
複雜性悲嘆
介護者のストレス
怒りと敵意の問題

医学的な問題における心理学的要因
慢性腰痛
鎌状赤血球症による痛み
偏頭痛
耳鳴り
癌による痛み
身体表現性障害
過敏性腸症候群
慢性疲労症候群
リウマチ性疾患による痛み
勃起不全
不眠症
病的肥满
外陰部疼痛症
高血圧症
湾岸戰争症候群

認知行動療法は、1977年に最初の効果研究が示されて以降,幅広くその効果を検証され続けている。現時点で500以上もの効果研究が行われ, 精神医学的な諸障害,心理学的な諸問題、そして医学的な諸問題における心理学的要因など、幅広い対象に対する効果が示されている(たとえば,文献 23,24)。表 1.1 は,認知行動療法の効果が高いことが示されている障害と 問題をリスト化したものである。より詳細なリストを知りたければ,ベック 研究所のウェブサイトをご参照いただきたい(www.beckinstitute.org)。

地域で行われる認知行動療法の効果を示した研究も,いくつも発表されて いる(たとえば,文献82, 83,85)。コンピュータを用いた認知行動療法の 効果を示した研究もある(たとえば,文献 53,92)。さらに,様々な障害に 対する認知行動療法が神経生物学的な変化を引き起こすことを示した研究も いくつか発表されている(たとえば,文献 42)。何百もの研究によって、うつと不安の認知モデルの妥当性が示されている。これらの研究について包括 参照していただきたい。

4. ベックの認知療法はどのように構築されたか

1950年代の後半および 1960年代の前半,ベック博士は、精神分析におけるうつ病の概念,すなわち「うつ病は自己の内面に向けられた敵意である」という概念を検証しようとした。彼はうつ病患者の夢を調べることにした うつ病患者の夢は、統制群の健常者の夢に比べて,敵意をテーマにしたもの が多いのではないかと考えたのである。しかしベックが驚いたことに、と なに調査研究を重ねても,うつ病患者の夢における「敵意」は統制群に比べて少なく,むしろ「欠陥」や「剥奪」,そして「喪失」というテーマのほう がはるかに多いという結果となった。これらのテーマ(「欠陥」「剥奪」「喪 失」)はうつ病患者の覚醒時の思考と類似しているとベックは結論づけた。 ベックは他に行った研究からも,「うつ病患者は苦悩への欲求をもつ」と いった精神分析的な見解は妥当ではないと結論づけた。これは「精神分 析」という長いドミノが一気に倒れていくようなものであった。精神分析の これらの理論が妥当でないとしたら、我々はどのようにうつ病を理解することができるのだろうか?

ベック博士は,カウチに横たわる患者の話に耳を傾けながらあることに気 づいた。それは,患者の報告する思考の流れには2種類あるということであ る。ひとつは一連の自由連想で,もうひとつは自分自身に対する素早く評価 的な思考である。たとえばある女性患者は,自らの性的経験を詳細にわたって語った後,不安な感情を報告した。ベック博士はその不安を、「私があなたを批判するのではないかと考えて、不安に感じているのですね」と解釈し たところ、彼女はこう答えた。「いいえ。私は、先生が私の話にうんざりしているのではないかと思って不安になったのですか。他の患者にもこの 質問を重ねることを通じて、ベック博士は、患者たちがこの種の「自動的(automatic)」でネガティブな思考を経験し,それらの思考が感情と強く結びついていることに気づいた。これが2種類ある思考のうち,2つめの思考 である。ベック博士は、患者が自らの非現実的で不適応的な思考を同定し評 価するよう,そしてこの種の思考に対応するよう手助けすることを始めた。 するとどうだろう,患者は速やかに回復に向かったのである。

ベック博士は次に,ペンシルヴァニア大学の研修医たちに,自らが構築し たこの新たな治療法について教えることにした。するとそれら研修医たちの 担当患者も皆,この治療法に対して良好な反応を示した。当時,主任研修医 であったジョン・ラッシュ博士は(彼は現在,抑うつの認知行動療法の第一 人者である),ベック博士とともに,この新たな治療法の効果検証を行うことを計画した。認知療法の効果を対外的に示すためには,この種の研究が不 可欠であるとの合意に至ったのである。うつ病患者に対するランダム化比較 試験を通じて、認知療法が当時抗うつ薬として主流だったイミプラミンに比べて効果的であるという結果が得られ,この研究は 1977 年に公表された。 この研究結果は驚くべきものであった。というのも,これは対話による治療 (トークセラピー)が薬物治療に匹敵しうることを示した最初の研究だった からである。その2年後,ベックとラッシュらは他の共同研究者とともに, 認知療法の初の治療マニュアルを出版した。

うつ病に対する認知行動療法の重要な構成要素はすべて,患者の問題解決 を手助けすることに焦点を当てている。すなわち,行動を活性化したり、抑 うつ的な思考,とりわけ自分自身や自分を取り巻く世界や将来に対するネガ ティブな思考を同定し評価したり,それらの思考に対応したりできるように なるよう、患者を手助けする。1970年代の後半には、ベック博士とペンシ ルヴァニア大学の共同研究者たちは不安障害に関する研究を開始し,うつ病 とはまた別の視点が必要になることに気づいていった。不安を訴える患者にとって必要なのは、患者が恐れている状況の危険度を正しく評価し,自らの 内的なリソースや自分を取り巻く外的なリソースを正しく認識すること,そ してそれらのリソースを増やしていくことである。不安障害患者はまた,回 避行動を減らし、恐怖の対象となる状況に直面することを通じて、自分の否

定的な予言が正しいかどうかを行動的に検証する必要がある。不安障 様々なタイプがあるが,その後の研究によって,個々の不安障害 知モデルが個別に構築され,それらのモデルの妥当性は認知心理学に 確認された。そして多くの効果研究によって、不安障害の認知行動療法 果が示されることになった。
その後の数十年についてはざっと述べるにとどめる。その後もベック と彼の共同研究者,そして世界中の多くの研究者が,認知行動療法の研グ 続け,理論化を行い,現場で実践し,治療効果を検証することを続けた。初 知行動療法が対象とする症状や問題のリストはいまだに増え続けている
知行動療法は今や、米国や他の多くの国々の大学院教育において必須のカリ キュラムとして教えられている。

5.認知行動療法の基本原則

認知行動療法は個々の患者に合わせて調整されるにせよ、すべてのケース に共通する基本的な原則がある。本書ではサリーといううつ病患者の例を用 いて、それらの原則について具体的に示す。そしてさらにサリーの例を通じ て、認知行動療法では患者の抱える問題をどのように理解し,その理解を治 療の計画や実践にどのように生かすことができるかについて具体的に解説する。認知行動療法の進め方をわかりやすく示すという点で、サリーの事例は ある意味理想的な患者である。私は別のところで,サリーのようには治療に うまく反応してくれない患者に対しどのように治療を工夫できるか述べたことがある。うつ病以外の診断や何らかの意味で治療が困難な患者に対して, どのように患者の問題を概念化し,治療の戦略を立て、技法を適用したらよ いかについては,それらの文献を参照していただきたい(たとえば,文献 18,54,71)。
サリー”は18歳の女性で、現在大学2年生である。彼女はこの4カ月 間,非常に抑うつ的で不安感が強く、日々の活動がままならなくなっていた。彼女は DSM-IV-TR2 の大うつ病性障害の診断基準を満たし,重症度 は中等症である。サリーについての諸情報は付録 A に記載したので,そちらを参照されたい。
以下に認知行動療法の基本原則を挙げる。

原則1:認知行動療法では,認知的視点に基づき,患者の抱える問題を絶え 間なく定式化 (formulation)し,個々の患者の概念化(conceptualization) を行う

私はサリーの治療者として,彼女の抱える問題を3つの時間的枠組みから 概念化した。第一に私は, サリーの悲哀感を持続させている現在の考え(「私 はダメな人間だ」「私は何ひとつちゃんとできない」「私は決して幸せになれ ない」)と,現在の問題行動(引きこもる。ほとんどの時間を部屋で何もしないで過ごす、誰かに助けを求めることを回避する)を同定した。思考に影 響を受けたこれらの問題行動が,今度はサリーの非機能的な思考をさらに強化することになる。第二に私は、数カ月前に抑うつ症状が生じる直前に,サ リーの物事の感じ方に影響を与えたと思われる誘発要因を同定した(例:実 家から離れての生活が初めてだったことと,大学の勉強に苦心したことが, サリーの「自分はちゃんとしていない」という信念の一因となっていた)。 第三に私は、サリーが発達過程において体験した出来事と,それらの出来事 をサリーが解釈する際の固定化されたパターンが,彼女の抑うつ傾向の要因 であると仮定した(例:サリーは自分の長所や成し遂げたことを、必ずと 言っていいほど《単なる幸運〉に帰属し,一方で,自分の短所を〈本当の》 自分の現れであるとみなしていた)。

私は、サリーがインテークセッションで語ったこと(すなわちデータ)と 抑うつの認知的定式化の両方に基づいてサリーについての概念化を行った。それ以降のセッションで新たなデータが加わると,概念化はその都度改訂された。治療的戦略として、私は概念化をサリーと共有し,それが彼女に とって「ぴたりとくる」かどうかを確認し続けた。さらに私は、サリーが認知モデルを用いて自らの体験を理解できるように,治療を通) た。たとえば彼女は、自分のつらい感情と関連する思考を把握 たりし、そのような思考に対するより適応的な対応を再定式化する、 んだ。そのような作業を通じてサリーの気分は回復し,彼女はより機 行動できるようになった。

原則2:認知行動療法は,確固たる治療同盟を重視する

サリーは、それほど複雑化されていない抑うつや不安を訴える他の患者 同様に,比較的すんなりと治療者である私を信頼し,治療者との協同作業。 取り組むことができた。私はカウンセリングにおいて不可欠な基本的要件 (すなわち、あたたかさ、共感性,思いやり、純粋な関心,治療者としての 力量)を、努めてサリーに対して示そうとした。サリーへの関心を示すため に、私はきめこまかく注意しながらサリーの話を傾聴し,共感的に対応し 彼女の考えや気持ちを正確に要約してみせた。私は現実的でありながらも楽 観的に、そして快活に振る舞うように努め、さらにサリーの示した様々な小さな成功を指摘し続けた。私はまた、サリーが「理解された」「わかっても らえた」と感じられるよう、そして治療を肯定的に受け止められるよう, セッションの終了時には必ずセッションに対する感想をサリーに話してもらうようにした。認知行動療法の治療関係については、第2章でさらに詳しく 解説する。

原則3:認知行動療法は,協同作業と治療への積極的関与を重視する

私はサリーに対し,治療とはチームワークによるものであることを伝え, 励ました。セッション中に取り組む課題も,セッションの頻度も,次回まで に取り組むホームワークの課題もすべて、私たちが一緒に決めるのである。 最初のうちは、治療者である私の方がより積極的にセッションで行う。 を提案したり、セッション中に話し合ったことを要約したりする。サ 治療そのものに慣れ、抑うつ症状が軽減した時点で、彼女自身が話し合うべきテーマを決定し、自らの思考の偏りを同定し、重要なポイントをまとめホームワークの課題を設定するよう,つまり治療においてより積極的な役割 を取るよう,私は彼女を励ました。

原則4:認知行動療法は,問題に焦点を当て、目標志向的である。

初回セッションで私はサリーに対し,自分の抱える問題を挙げ,それらに 対する目標を設定するよう求めた。それによって私たちは、今後の治療でどのようなことに取り組んでいくのかを共有することができる。たとえばサ リーはインテークセッションにおいて孤独感を訴えたが,私の手助けによって、それを行動的な目標として表現しなおした(例:新たに友人を作る。今の友人と会う機会を増やす)。その後,私たちはサリーの日々の活動の改善 について話し合ったが、その際私は、目標(活動の改善)の妨げとなる思考 (例:「私といても退屈だから、友達は私と一緒に出かけたくなんかないだろ う)を評価し,それらに対応するようサリーを手助けした。具体的にはま ず,思考の根拠を検討することを通じてその思考の妥当性を検証するようサ リーを導いた。次にサリーは、行動実験によって思考をより直接的に検証するという作業を積極的に行った。サリーは行動実験において、友人とともに 過ごすいくつかの計画を立て、実践した。自らの思考の偏りに気づき,それ を修正することができるようになると,サリーはその後,孤独感を減少させ るため、より直接的な問題解決を試みるようになり,実際に孤独感は減少した。

原則5:認知行動療法は、まず「今・ここ」を強調する。

ほとんどの治療ではまず,患者が今,現実に抱えている問題と、患者を悩ませている具体的な状況に焦点を当てる。サリーの場合も,自らの否定的な 思考に対応したり、生活改善に着手したりできるようになると、気分も改善 され始めた。診断に関わらず,治療ではまず〈今・ここの問題(here-andnow problems)〉に焦点を当て、検討する。ただし次の2つの場合は、患者 の過去に目を向けることもある。ひとつは、患者が治療において過去に焦点 を当てたいと強く希望し,そうしなければ治療同盟が危機に陥ると思われる場合,もうひとつは、患者が非機能的な思考にどっぷりとはまって、 おり,そのような固定された思考を修正するためには,幼少期において の信念がどのように形成されたのかを理解することが役立ちそうだと思われる場合である(例:「あなたが今もなお自分のことを無能だと信じては、無理もないかもしれませんね。あなたと同じような幼少期を過ごした どもであれば誰でも,その信念が合っているかどうかに関わらず,そして2 の信今が完全には正しくなくても,自分のことを無能だと信じるようになってしまうでしょう」)。

私はサリーとの治療の中盤で、幼少期に形成された信念を同定するよう サリーを手助けしたことがある。それはたとえば「完璧な結果を出せば、私 は価値がある人間だということだ」「完璧な結果を出さなければ,私は失防 者だということだ」といった信念である。次に私は,過去と現在の両面において、サリーがこれらの信念の妥当性を検討するよう手助けした。これらの 作業を通じて、サリーの中には多少とも機能的で合理的な信念が形成され た。もしサリーがパーソナリティ障害を併せ持っていたら、私もそれに対応 して、サリーの生育歴について、そして幼少期に形成された信念と対処行動 について、より時間をかけて話し合うことにしただろう。

原則6:認知療法は心理教育的であり,患者が自分自身の治療者となること を目指す。そして再発予防を重視する

私はサリーとの治療の初回セッションで、彼女の障害の特徴や経過について説明し、さらに認知行動療法のプロセスと認知モデル(思考がどのように 感情と行動に影響を与えるか)について心理教育を行った。私は、サリーが 目標を設定したり、思考や信念を同定しそれらを評価したり,新たな行動を 計画したりするのを援助するだけでなく、そのやり方についても彼女に教え た。私はまた、サリーに「治療ノート」を用意してもらい、セッションで学んだ重要ポイントを記入してもらうことにした。そのようなノートがあれば、セッションとセッションの間に、そして治療が終結した後も,サ 治療で学んだことを自分のために活用することができるからである。

原則7:認知行動療法は,治療の回数や期間を制約のあるものとして考える

抑うつや不安を主訴とし,症状がそれほど複雑でない患者の治療は, 6~ 14 回のセッションで終結となるのがほとんどである。終結に至るまでの治 療者にとってのゴールは,症状を軽減し,障害の寛解を促進し,切迫した問 題の解決を手助けし,再発防止のためのスキルを教えることである。サリー の場合,治療の初期段階では週に1度の頻度でセッションを行った(サリー の抑うつ症状がさらに深刻だったり,彼女が自殺念慮を抱いたりしていた ら,初期のセッションはもっと頻繁に行われただろう)。治療開始2ヵ月 後、サリーと私は話し合ってセッションの頻度を隔週ベースに落とし,様子 を見ることにした。その後さらに頻度を落として、月に1度のセッションと した。終結後も私たちは「ブースターセッション(追加のセッション)」を 定期的に行うことにし、3カ月に1度のセッションを1年間続けた。
しかしすべての患者が、ほんの数カ月の治療で十分に回復できるわけでは ない。患者によっては、強固な非機能的信念や行動パターンを修正し,慢性 化した苦痛を緩和するために、1~2年(あるいはもっと長い期間)を必要 とする場合もある。また非常に深刻な精神病理を抱える患者の場合は,かなり長期間にわたって定期的にセッションを実施し,安定した状態を維持し続 ける必要があるだろう。

原則8:認知行動療法ではセッションを構造化する

どんな診断であれ、また治療がどの段階にあろうとも,各セッションを構 造化することが,治療の効率と効果を最大化する。セッションの構造は,導 入部分(気分チェック,1週間の簡単な振り返り、セッションにおけるア ジェンダを協力して決める),中間部分(ホームワークの振り返り,各ア ジェンダについての話し合い、新たなホームワークを設定する, セッション の振り返り)、そして終わりの部分(フィードバックを引き出す)から成 る。このような構造に沿ってセッションを進めることによって、患者は治療 の進行を理解しやすくなり,終結後に患者が認知行動療法を使って自己治療 できるようになる可能性が高まる。

原則9:認知行動療法は,患者が自らの非機能的な思考や信今 したり,それらの思考や信念に対応したりできるようになるよう手助けする

患者は日々,何ダースもの、いや何百もの自動思考を経験し, 考が患者の気分,行動,身体反応(身体反応については不安においある)に影響を与える。治療者は患者が鍵となる認知に気づき,より。 で適応的なものの見方ができるように手助けする。より現実的で適応的な 知によって、気分は改善され、行動がより機能的になり,身体反応も緩和されては不安において顕著だろう。治療者はこれらの作業を,「誘導的発見(guided discovery)」 と質問法(認知行動療法で使われる質問法はしばしば「ソクラテス式管用 法」と呼ばれるが、これについては誤解も少なくない)を通じて行う。治療 者はまた、「行動実験 (behavioral experiment)」という技法を用いて患者 に新たな体験をさせ,患者が自らの思考(たとえば「もし一瞬でも蜘蛛が 写っている写真を見てしまったら、私は不安でたまらなくなり,何も考えられなくなってしまうだろう」)を直接的に検証することを手助けすることも、 できる。これらの作業をする際に,拠りどころになるのが「協同的実証主義 (collaborative empiricism)」という理念である。治療者は,患者の自動思考 がどの程度妥当なのか,あるいは妥当でないのかを予め知っているわけではない。治療者と患者は一緒に協力しながら患者の思考を検証し,患者にとってより安当で助けになる思考を見つけていく。

サリーの抑うつ症状が重症だったとき、彼女には毎日多くの自動思考が 生じていた。それらの自動思考の中には、サリー自身が自発的に同定できた ものもあれば、治療者である私が引き出したものもある(「気が動転した り、不適切に振る舞ってしまったりしたとき、どんなことがあなたの頭をよぎりましたか」といった質問による)。我々はしばしば、サリーの抱える特定の問題について話し合っているとき、彼女にとって重要な自動思考を けることができた。我々は次に、それらの自動思考の妥当性や有用性を一 に検討した。私は新たに得た思考を改めてまとめるようサリーに求め、 らの思考を書き留めることにした。そうすれば次のセッションまでのいたような自動思考が生じたときに、書き留めた新たな思考によって適切に対応することができるだろう。一方,私は彼女に対して次のような働きかけは しなかった。それはたとえば,無批判にポジティブな見方を取り入れても らったり,彼女の自動思考の妥当性に疑いの目を向けたり,彼女の思考が非 現実的なまでに悲観的であることを知らしめたり、といったことである。 我々はそのようなことをする代わりに,協同作業を通じて,彼女の思考に対 する証拠(エビデンス)を一緒に探索したのである。

原則 10:認知行動療法は,思考,気分,行動に変化を起こすために多様な 技法を活用する。

認知行動療法ではソクラテス式質問法や誘導的発見などの認知的技法を用 いるが,同時に行動的・問題解決的な技法も用いるし,認知的枠組みの中で あれば認知行動療法以外の流派の技法を用いることもある。たとえば私はゲ シュタルト療法からヒントを得た技法を使って、家族との関わりが「自分は できそこないだ」という信念にいかにつながったのかを,サリー自身が理解 するのを手助けしたことがある。私はまた,精神力動的なアプローチを, パーソナリティ障害を持つ患者に適用し,患者の偏った人間観が治療関係に 投影されていることについて検討したこともある。各技法は,患者をどのように概念化したか,どのような問題に焦点を当てるのか,そしてセッション の目的は何か,といった視点から選択される。

これらの基本原則はすべての患者に適用される。しかし治療というのは, 個別の患者に応じてかなり柔軟に行われる必要がある。個々の患者の抱える 困難,人生のステージ,発達や知能のレベル, ジェンダー,文化的背景は 様々だからである。また,患者の目標,強力な治療関係を形成できるかどう か、変化への動機づけ、これまでの治療経験,治療に対する好みなど、他に も多くの要因が個々の治療に影響を及ぼす。
治療の重点はまた、患者の抱える障害によっても異なる。たとえばパニッ ク障害を持つ患者への認知行動療法であれば、心身の感覚に対する破局的で 誤った解釈(たいていは、生命や正気が脅かされているという誤った予期的認知)に焦点を当てるだろう。拒食症の患者であれば、個人 コントロールに関わる信念を修正することが必要となるだろう 用の治療であれば、自己についての否定的な信念と,物質使用を促 許容したりする信念に焦点を当てる必要があるだろう。

6. 認知行動療法における治療セッション

認知行動療法の介入は個々の患者に合わせて大幅にカスタマイズされる が、認知行動療法の治療セッションの構造自体は、対象がどのような障害で あれ共通して適用される(認知療法アカデミー(the Academy of Cognitive Therapy)のウェブサイト(www.academyofct.org)に,認知的フォーミュ レーション、主な強調点,治療的戦略,様々な診断・障害に対する諸技法に ついて記載された書籍リストが紹介されている)。以下に示すのは,主にうつ病を対象とする場合の,認知行動療法における一般的な治療セッションの あり様と、一般的な治療の進め方である。

セッションの冒頭では、治療者は治療同盟を再確立し、患者の気分や症状 をチェックする。そして一週間の日々の体験も併せてチェックする。次にどのような問題にも手助けが必要か患者に尋ね、その問題に名前をつけても らう。これらの問題は、患者の日常生活の中ですでに生じているものもあれ ば、今後出くわすであろうと患者が予測している困難もある。治療者はまた。これまでのセッションで、患者にとっての課題として共有されたセルフ ヘルプのための諸活動(「ホームワーク」とか「アクションプラン」などと 呼ばれる)についても確認する。特定の問題について話し合いをするという流れの中で、アジェンダを設定し、問題に関わるデータを収集し、その問題 についての認知的概念化を行い(問題に関わる特定の思考、感情,行動 き出す)治療者と患者は協力してその問題に対する戦略を練る。戦 として直接的な問題解決の場合もあれば、問題に関わる不定的な思考をする場合もあるし、行動的な変化を計画する場合もある。 たとえばサリーは大学生であったが、学業に問題を抱えていた。ただしサリーの場合,学業に十分に取り組めるようになるための問題解決を行う前 に、学業に対する彼女の思考(「勉強なんて,それが一体何になるのだろ う? どっちみち私は落第するに決まっているのだから」)を検討し,そのような思考に対応できるようサリーを手助けする必要があった。私は,サ リーが状況に対してより正確で適応的な見方ができるようになったのを確認 した後,次の週にサリーが取り組むべき解決策を設定した(例:比較的簡単な課題に手を付ける,教科書を1~2ページ読んだらいったん頭の中で要約 する,休憩時間に散歩に出かける,教育助手 (teaching assistant)に手助けを求める)。各セッションは、次の週に向けてサリーの思考や行動が良い 方向に変化するようにお膳立てされており,ひいてはそれらの変化が彼女の 気分や機能を改善するように見込まれていた。

ある問題についての話し合いとホームワークの設定を終えたら、サリーと 私は次の問題,すなわちサリーがアジェンダに加えたり,繰り返し取り組む 必要があったりする問題に取りかかった。セッションの最後には,その回の 重要なポイントについて改めておさらいをし,ホームワークの課題に取り組 むようサリーを励ました。そしてセッションに対する感想をサリーに話して もらった。

7.認知行動療法の治療者としての成長

認知行動療法は、訓練を受けていない者が観察すると、驚くほどシンプル に見えることがある。思考が感情と行動に影響を与えるという認知モデルの 定理は、非常にわかりやすい。しかし,経験をつんだ認知行動療法家は、多 くの課題(事例の概念化,ラポールの形成, ソーシャライゼーションと心理 教育の実施(socializing and educating),問題の同定,情報の収集,仮説の 検証,まとめの作業)を同時並行的に実施する。反対に,認知行動療法の初 心者にふつう必要とされるのは、少ない構成要素だけに集中し、それに慎重 に取り組むことである。諸要素を統合し,それを統合されたまま効果的かつ 効率的に治療を実践できるようになるのが最終目標ではあるが,初心者はまず,治療関係の作り方を覚え,概念化のスキルを身につけ、その 的に認知行動療法の諸技法を少しずつ習得することをお勧めする 認知行動療法の治療者としての専門的能力を伸ばすには、以下)つの段階を踏む必要がある(ここでの議論は,治療者がすでに基本的 ンセリングのスキルを習得済みであるということが前提である。

には、以下に挙げる3 療者がすでに基本的なカウンセリングのスキルとはたとえば,傾聴,共感,気遣い,ポジティブな性のことを言う。また患者の発言を正しく理解したり、上手に的確に要約したりするスキルも含まれる。これらのスキルを有して、 療者は,患者から否定的な反応を示されることが多くなる)。まず第一の治療者は、インテークセッションの情報とセッションで集められたデータ に基づいて、ケースを概念化するための基本的なスキルを学ぶ。それと同時 に、セッションの構造化のやり方,患者の概念化と常識を用いて治療計画を 立てるやり方、そして問題を解決したり異なる視点から自らの非機能的な思 考を見直したりできるよう患者を手助けするためのやり方を身につけていく。治療者はさらに、基本的な認知的そして行動的な諸技法を習得する。

第二段階で治療者は、患者の概念化と諸技法についての知識を上手に統合 できるようになり、治療の流れを理解する能力が増す。そして重要な治療目 標を容易に同定できるようになり,患者を概念化するスキルが向上する。また治療が進む中でその概念化を精緻化できるようになり、介入について検討 する際に概念化を活用できるようになる。技法のレパートリーが広がり,適 切な時機に適切な技法を選択,実行することにも長けてくる。
第三段階まで進むと、治療者は新たな情報をたやすく概念化に統合できる ようになる。仮説を生成する能力に磨きがかかり、その仮説を個々の患者に 適用して仮説を支持したり修正したりできるようになる。基本的な認知行動 療法の構造や技法を柔軟にかつ適切に使えるようになり、特にパーソナリティ障害および他の難しい障害や問題にも対応できるようになる。 すでに別のアプローチの心理療法をして北の担

ビーナの心理療法を実践している治療者の場合,認知行動 療法を導入するかどうかは患者と話し合って意思決定を行うことが る。その際,治療者がどうして認知行動療法を導入しようと思か、その理論的根拠を含めてきちんと説明をする必要がある。認知行動療法 が肯定的に説明され,それが患者の利益につながることが示されれば、ほとんどの患者は治療アプローチを変えることに同意するだろう。患者がためらうようであれば、治療者は変化について話し合うことを提案し(アジェンダ に入れるとよい),患者を動機づけるために,認知行動療法を始めるよう説 得するのではなく、「実験」として試してみるのはどうかと提案することが できる。

治療者:マイク,私は、実は先日、より効果的な治療について書いてある,とても重要な本を読みました。それで,あなたのことを思い出したのです。
患者:そうなんですか?
治療者:ええ。そしてあなたの回復を早めるために私たちができそうなことを、いくつか考えてみたのです。[協同的であろうとする」このことについてもう少し話してもいいですか?
患者:わかりました。
治療者:まず私が学んだのは、「アジェンダを設定する」ということです。

どういうことかと言うと、これはセッションが始まるときに、あな たが日常生活で困っていて、私の手助けを必要としている問題について、それに名前を付けて挙げてもらうのです。たとえば、あなた が職場で上司との関係で問題を抱えているとか、休日にベッドから なかなか起き上がれないとか、あるいは経済的に大きな不安を感じているとか、そういったことです。(一呼吸おいて)私たちが取り組む問題に名前をつけてもらうことによって,私たちはセッションの 時間を今よりももっと有効に使えるようになると思います。(一呼 吸おいて「フィードバックを引き出す]今のお話についてどう思われますか?

8. 本書の活用法

本書は,認知行動療法の経験やスキルにおいてどのような成長型 うと,認知的な概念化と治療の基本的構成要素の習得を望むすべての 向けて書かれたものである。標準的な認知行動療法の手続きを、個々の患者に適用すべきかを理解するためには,認知行動療法の北 構成要素をしっかりと身につけることが不可欠である。
本書で紹介するツールを自分のために使ってみることは,認知行動療法院 としての成長に役立つ。したがって読者の方々には、ご自分の思考と信今の 概念化をまず行っていただきたい。その際まずはご自身の感情の変化に注音 を向けることから始めるとよいだろう。あなたの感情がネガティブな方向に 変化したり増大したりしたら(または非機能的な行動が増えたら,あるいは ネガティブな感情とともに何らかの身体的感覚を感じたら)、その時の心的 体験がどのようなものであるか、自問してみよう。その際用いる問いは,認 知行動療法でも特に重要なものである。
たった今、どんなことが私の頭に浮かんだのだろうか? 注1)
(What was just going through my mind?)
このように、あなたはまず,自分自身の思考,とりわけあなたの「自動思考(automatic thought)」を把握することを身につける。あなた自身が当事 者として認知行動療法の基本的なスキルを自習することで、同じスキルを思 者に教示する際に必要な能力を伸ばすことができる。
あなたが本書を読む際に生じる自動思考や、あなたが患者に技法を試す時 に生じる自動思考を把握することは、とりわけ役に立つだろう。たとえば,自分が少々落ち込んでいるのに気づいたら、「どんなことが私の頭に浮かん だのだろうか?」と自問してみよう。あなたはたとえば次のような自動思考 に気づくかもしれない。

・「認知行動療法は難しすぎる」
・「認知行動療法を習得するのは、自分には無理だろう」
・「自分にとって認知行動療法は、あまり良いものとは思えない」
・「認知行動療法を試して,もし役に立たなかったら?」

あなたが,認知行動療法とは別のアプローチに基づく治療法をすでに習得 しているベテランの治療者であれば、次のような自動思考に気づくかもしれ ない。

・「認知行動療法は、大して役に立たないだろう」
・「私の患者は,認知行動療法を好きにならないだろう」
・「認知行動療法はあまりにも表面的すぎる/構造化されすぎている/共感的でない/単純すぎる」

このように自分自身の自動思考を明らかにしたところで、あなたはそれを 書き留めておいて本書を読み進めることもできるし、自動思考の評価法と対 処法が書かれてある第11, 12章を先に参照することもできる。自分自身の 思考に光を当てることにより、あなたは認知行動療法のスキルを向上させられるだけでなく、非機能的な思考を修正して自分の気分(と行動)に肯定的 な影響を与えたり、認知行動療法を学ぶことに対してより受容的になったり する機会を得ることができる。
患者に対してよく用いられる次の喩えは,初心の認知行動療法家にもよく 当てはまる。認知療法のスキルを身につけることは,他のスキルの習得とよく似ている。車の運転やコンピュータのキーボード操作を習い始めた頃のことを,思い出してほしい。初めはぎこちなく感じていたのではないだろうか? 今では円滑に,ほとんど無意識的にできるようになった も,初めはかなりの注意を払って行っていたのではないだろうかりするようなことも,あったのではないだろうか? 上達するにし 連の操作はより理解しやすいものとなり,あなたはだんだんと気楽 ようになっていったのではないだろうか? そしてついに,適度に して自信をもって行えるほどに,あなたは様々な操作を習得したのではないあるスキルを学ぶ際,このような体験をする。 このような学びのプロセスは,認知行動療法の初心者にとっても同様で、 る。患者に対して認知療法を適用するそのやり方を学ぶ際には、現実的で 明確で、小さな目標を掲げるようにしてほしい。小さな進歩も,あなた自身 の進歩として認めよう。自分の能力が進歩したことを,本書を読み始めかし きや、初めて認知行動療法を学んだ頃と比較することによって、実感していただきたい。不適切にもベテランの認知行動療法家と自分を比べてしまったり、今の自分の技術レベルを最終目標と照合して自信を失いそうになってし まったりしたら、そのような否定的な思考に対処する機会を得たことに気づいてほしい。

もしあなたが,患者に対して実際に認知行動療法を適用することに不安を 覚えたら、あなた自身のために「コーピングカード」を作り、活用してみよ う。コーピングカードとは、覚えておくと役に立つ数々の言葉を書き留めて おくためのカードである。私の指導する精神科の研修医が,外来患者に初め て認知行動療法を実施しようとする際,自分にとって助けにならない思考が 次々と浮かんでくるという例は決して少なくない。そこで私は、それらの思 考に焦点を当てたコーピングカードを作るよう彼らにアドバイスする。コーピングカードは個別に作られるものだが、たとえばこういった文言が記載されることが多い。
このようなコーピングカードを読むことが不安の軽減に役立ち、彼らは治療を効果的に行うことに目を向け、目の前の患者に集中することができるだろう。

最後に本書の構成について述べる。本書は基本的には章立ての順に読み進められるように構成されている。導入部分を読み飛ばし,技法が記載されて いる箇所に飛びつきたいと思う読者もいるかもしれない。しかし認知的技法 や行動的技法を行うだけであれば,それは「認知行動療法」と呼ぶことはで きない。認知行動療法は多くの構成要素によって成っており、多種多様な技 法を上手に選択したり効果的に活用したりすることが不可欠である。そして それは個々の患者の概念化ができて初めて可能になる。次章では認知行動療 法の全体の流れを概観する。その次の第3章から概念化について解説することになる。第4章ではインテークセッションのプロセスについて紹介し,第 5章から第8章までは治療セッションをどのように構造化し,各セッション で何をするべきか、解説する。第9章から第14章までは,認知行動療法の 基礎となる作業,すなわち認知と感情を同定したり,自動思考や信念に適切 に対応したりするためのやり方について説明する。さらなる認知的技法と行 動的技法については第15章で,イメージを使うやり方については第 16 章で 紹介する。第17章ではホームワークについて触れる。第18章では,終結と再発予防について解説する。以上の章はすべて,治療計画の作 諸問題について論じる第19章,第20章の基礎となるものである 21 章では、読者の皆さんが認知行動療法家としてさらに成長して の指針を提供する。
そしてさらに成長していくための集計を提供する。

ジュディス・S・ベック (著), 伊藤 絵美 (翻訳), 神村 栄一 (翻訳), 藤澤 大介 (翻訳)
星和書店; 第2版 (2015/7/25)、出典:出版社HP

自分でできる認知行動療法 うつ・パニック症・強迫症のやさしい治し方 ココロの健康シリーズ

自分にぴったりな方法が見つかる!

本書では、うつ病、パニック症、強迫症の3つにスポットを当てて、それぞれに対する認知行動療法やセルフカウンセリングの方法を解説しています。それぞれの症状の簡易チェック表も載っているので、自分にあった方法を学ぶことができます。

はじめに

「認知行動療法という言葉を聞いたことがありますか?」2017年6月に、私ども千葉大学で20歳代から60歳代の人にWEBアンケート調査を行ったところ、一般の方の22%は認知行動療法という言葉を聞いたことがあるだけでなく、うつ病や不安症などの心の病気の治療に使われるものだと知っていたと答え、23%は認知行動療法という言葉を聞いたことがあるが、うつ病や不安症などの心の病気に使われるものだと知らなかったと答え、55%は認知行動療法という言葉を聞いたことがないという結果 でした。まだ、半数の人に知っていただいていないことは誠に残念です。

2010年度、医師による、うつ病の認知療法・認知行動療法が、公的医療保険で承認されました。ま た、2016年度から、パニック症、強迫症、社交不安症、心的外傷後ストレス障害 (PTSD)の4つの 不安障害も、承認されました。将来の改定に向けて、臨床心理士(公認心理師)が行った場合でも、 公的医療保険でカバーされるように、あるいは、不眠症、摂食障害、慢性疼痛など他の疾患にも、公 的医療保険の適用が拡大されるように、関係する学術団体が、厚生労働省に要望をしているところで
す。

もっと多くの人に、認知行動療法を知ってもらいたいと私は思っており、そのために、本書は最適 だと思っております。ぜひとも、楽しんで認知行動療法を体験してみてください。

2017年7月
千葉大学医学部附属病院
認知行動療法センター長
清水栄司

CONTENTS

はじめに
本書を読む前に

PART 1 あなたのココロの病はどんなもの?
1あなたのココロの病はどのタイプ?
①うつ病のPさんのケース
②パニック症のTさんのケース
③強迫症のFさんのケース
2あなたのつらさの程度は?
うつ病の簡易チェック表
パニック症の簡易チェック表
強迫症の簡易チェック表
3認知行動療法はココロの病にどのくらい効果があるの?
COLUMN1 メタファーの広場 認知行動療法と「たとえ話」

PART 2 そもそも認知行動療法って何?
1 認知行動療法ってどういうもの?
2 認知行動療法は精神分析とどこが違うの?
3 認知行動療法の医学的な根拠は?
4 認知行動療法を受けるには?
5 認知行動療法を優先させたほうがいい?
6 認知行動療法は自分でもできるの?
7 認知行動療法を知るための重要なキーワード
8 認知行動療法でよく使われる手法
COLUMN2 メタファーの広場 うつ病のセッションでよく使われる「裁判所のメタファー」

PART 3 3つのココロの病に対する標準的な認知行動療法の流れを知ろう
PART3を読む前に
1 うつ病に対する認知行動療法の標準的な流れ
治療(セッション1~16)の全体像
【第1段階】セッション1・2の概要
【第2段階】セッション3・4の概要
【第3段階】 セッション5・6の概要
【第4段階】セッション7~12の概要
~セッション7~12で行われる 認知と行動を同時に変えるための練習
【第5段階】セッション13・14の概要
【第6段階】セッション15・16の概要
2 パニック症に対する認知行動療法の標準的な流れ 治
療(セッション1~16)の全体像
【第1段階】 セッション1・2の概要
【第2段階】セッション3の概要
【第3段階】 セッション4~6の概要
【第4段階】セッション7~10の概要
~セッション7~10で行われる 行動実験
【第5段階】セッション11~14の概要
~セッション11~14で行われる トラウマ記憶の書換え
【第6段階】セッション15・16の概要
3 強迫症に対する認知行動療法の標準的な流れ
治療(セッション1~16)の全体像
【第1段階】セッション1の概要
【第2段階】セッション2の概要
【第3段階】セッション3・4の概要
【第4段階】セッション5の概要
【第5段階】 セッション6~14の概要
~セッション6~14のなかで行われる 曝露反応妨害法
【第6段階】セッション15・16の概要
COLUMN3 メタファーの広場 パニック症の安全行動の説明でよく使われる「自転車の補助輪のメタファー」

PART 4 セルフカウンセリングのすすめ
0 セルフカウンセリングを始める前に、ココロを落ちつかせましょう
1 うつ病のセルフカウンセリング
【Step1】 何がつらいのかを落ちついて考えてみましょう
【Step2】 どうして「ダメな自分」が頭から離れないのか考えてみましょう
【Step3】 悪循環を起こしている根本原因を探っていきましょう
【Step4】あなたの悪循環を図にしてみましょう
【Step5】 とっさに浮かぶ考えや行動を少しずつ変えていきましょう
【Step6】 ココロのエクササイズ「ココ練」
【Step7】 ココロのポジティブエクササイズ 「ポジ練」
【まとめ】 うつ病のセルフカウンセリングの取組み方
2 パニック症のセルフカウンセリング
【Step1】 最初の発作のことを思い出してみましょう
【Step2】 何が怖いのかを考えてみましょう
【Step3】 パニック発作を繰り返す理由を考えてみましょう
【Step4】 症状が改善しない理由を考えてみましょう
【Step 5】 身体症状への過剰反応を減らしていきましょう
【Step6】 怖いと思うところに行ってみましょう
【Step7】 ココロのエクササイズ「ゆっくり呼吸法』
【まとめ】 パニック症のセルフカウンセリングの取組み方
3 強迫症のセルフカウンセリング
【Step1】 何が怖いのかを立ち止まって考えてみましょう
【Step2】どうしてこうなったのかを考えてみましょう
【Step3】 やめられない原因を考えてみましょう
【Step4】 あなたの悪循環を図にしてみましょう
【Step5】 不安に立ち向かい強迫行為をガマンする習慣をつけましょう
【Step6】 ココロのエクササイズ「バク練」
【まとめ】強迫症のセルフカウンセリングの取組み方
COLUMN4 メタファーの広場強迫症のセッションでよく使われる「いじめっ子のメタファー」

ふろく:認知行動療法のためのワークシート

本書を読む前に

本書は、認知行動療法をベースにしたセルフカウンセリングを紹介する本です。認知行動療法に関心が ある人、自分でできるのなら試してみたいと思っている人などに、ぜひ読んでいただきたいと考えています。

セルフカウンセリングの土台となっている認知行動療法については、標準的な治療の流れをPART3で説明しています。認知行動療法のポイントが何なのか、認知行動療法の専門家が実際にどのように患者さん に接し、どのような治療を行なっているのかを知ることで、セルフカウンセリングが一層効果を発揮する はずです。
でも、PART3はむずかしそうで読みたくないと感じたら、読み飛ばしても大丈夫です。PART4のセル フカウンセリングは、認知行動療法の知識がなくてもできるようになっているからです。セルフカウンセリングで心が軽くなったら、認知行動療法自体に興味が湧くかもしれません。そのときは、PART3に戻って読んでみてください。
本書は、元気になるための本ですから、気が向かないときには無理をして読み進む必要はありません。 肩の力を抜いて、マイペースで読んでいただければと思います。