ゲノム編集からはじまる新世界 – 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える

中学生にもわかる生命科学最前線!!がん、糖尿病、心臓病にかからない「新人類」の誕生!?

ゲノム編集は今、世界で最も注目されている超先端バイオ技術です。この技術を用いればあらゆる生き物のDNAを自在に改変することが可能です。それが私たちの暮らしにどれほどの衝撃を与えるのでしょうか。今回紹介する『ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える』でゲノム編集の実態を探ってみたいと思います。

ゲノム編集がもたらす未来

生物のDNAには、その全遺伝子情報が記録されています。このような全遺伝子を含めたDNA情報のことを専門的には「ゲノム」と呼ばれます、わかりやすく言い換えると「生物の設計図」と言えるでしょう。つまりゲノム編集とは生物の設計図を書き換えるということを意味します。そんなゲノム編集がもたらす利益と懸念点について、朝日新聞出版から発行されている小林雅一氏の『ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える』では書かれています。

本書の著者である小林雅一氏のプロフィールを見ていきましょう。1963年生まれの群馬出身。東京大学理学部物理学科卒業。同大学院理学系研究科を修了後、東芝、日経BP
などを経てボストン大学に留学、マスコミ論を専攻しました。帰国後、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などを経て、現在は作家、ジャーナリスト、KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授として活躍されています。
本書以外にも『クラウドからAIへ』『AIの衝撃』『ゲノム編集とは何か』『AIが人間を殺す日』など多数の本を手がけています。

本書は全部で4つの章に分かれており、それぞれで「ゲノム編集クリスパーとは何か」「クリスパーを発明したのは誰なのか?」「ゲノム編集は私達の『食』をどう変えるか」「ゲノム編集はこれからの医療をどう変えるか」について書かれています。本書は噛み砕いた解説をされているため専門知識がない方でも容易に読み進めることができます。また、学生時代「生物」の科目を専攻されていた方は、知識をより深めることができるでしょう。

今回は4つある章の中から最も関心が高いであろう「ゲノム編集はこれからの医療をどう変えるか」について紹介していきたいと思います。

ゲノム編集がもたらす利益の一つとして「医療への応用」を頭に浮かべた人が多くいらっしゃるのではないでしょうか。がんや糖尿病をはじめ現代人を苦しめる病気には、日頃の生活習慣などの環境要因はもちろん、何らかの遺伝的要因が大きく作用していることは周知の事実でし。そんな遺伝的要因が関わる病気の多くは外科的治療や薬剤による治療などが行われていますが、治療が必ずしも根本的な解決になるとは言えないのが現状です。さらには薬による副作用で苦しんでいる患者さんも多くいます。しかし、ゲノム編集による治療が行われることによって病気の原因となる根本を断つことができるのです。

ここでこれまでゲノム編集を用いた臨床研究の一例としてエイズ治療があります。
2010年サンガモ・セラピューティックスはエイズ患者の体内から取り出したT細胞のゲノム編集を行うことにより、患者の免疫力を大幅に回復させることに成功させました。

これまでの記述を読んだ方は、ゲノム編集は万能ですべての病気を治してくれると思うでしょう。しかしゲノム編集は技術面、倫理面で壁に直面しています。あなたはゲノム編集に賛成でしょうか、それとも反対と思うのでしょうか。ぜひこの本を読んで考えていただきたいと思います。私達の予想をはるかに上回るスピードで進むゲノム編集研究の実態を知り、これから訪れる新時代に備えるためにも、知っておきたい事実が今回の本『ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える』には詰まっています。