ブロックチェーン入門 (ベスト新書)

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ブロックチェーンの概要がよくわかる

多くの産業に影響を与えているブロックチェーンについて、一般の人でも手軽に理解できる内容になっています。技術背景やコンセプト、そして実用性など丁寧に解説されています。ブロックチェーンの基本的な技術が体系的にまとめられているため、入門書として最適の1冊です。

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : ベストセラーズ (2017/5/9)、出典:出版社HP

目次

序章 一躍注目されはじめたブロックチェーン
大きく変化したブロックチェーンを取り巻く世界
ブロックチェーンの持つ最大の魅力
あらゆる産業にイノベーションをもたらすブロックチェーン
今こそブロックチェーンを学ぶ絶好のチャンス

第1章 「信用」とは何か?
信用と信頼とは?
銀行に預けたお金は誰のもの?
中央管理者が富を独占する
中央集権管理の問題点
実は「シェアリングエコノミー」は、シェアしてはいない?

第2章 中央管理型から分散型へ
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンを支える3つの特徴
ブロックの生成とコンセンサスアルゴリズム
プルーフ・オブ・ワークとは?
マイナーは、どうしてマイニングを行うのか?
ブロックチェーンは、安全か?
複数のコンセンサスアルゴリズムが存在
正確性を担保する公開鍵暗号方式とは?
エスクロー取引を自動化する送金手段
パブリックチェーンとプライベートチェーン

第3章 発行主体のいない暗号通貨「ビットコイン」
通貨と貨幣
中央管理されてきた貨幣とその弊害
グローバルな決済手段VISA、Master、PayPalの登場
管理者のいない通貨、ビットコインの誕生へ
P2P送金により国際送金が今までよりも安く速い
取引内容は誰でも閲覧可能
取引がパンクする? ブロックサイズ問題とは?
通貨が分裂する? ハードフォーク問題とは?
取引所で暗号通貨を管理する際の注意点
ビットコイン以外の暗号通貨「アルトコイン」

第4章 スマートコントラクトで人の仕事はなくなる?
スマートコントラクトとは?
これまでの取引形態とスマートコントラクト
ブロックチェーンとスマートコントラクト
スマートコントラクトを拡張する「スマートオラクル」
イーサリアム以外のプラットフォームの登場

第5章 ブロックチェーンが巻き起こす産業改革
ブロックチェーンのもたらすパラダイム変化
ブロックチェーンのプロダクト活用のメリット
デジタル上の資産「スマートプロパティ」
ブロックチェーン普及の4つの波
プロダクト発展の4つのステップ
「国際送金」が変わる
「著作権の管理」が変わる
「制作業界」が変わる
「アート作品の管理」が変わる
「ヘルスケア」が変わる
「エネルギー産業」が変わる
「クラウドソーシング」が変わる
「土地登記」が変わる
「サプライチェーン」が変わる
「シェアリング・エコノミー2・0」

第6章 ブロックチェーンがつくる新たな経済圏とは?
新たな経済圏の可能性
経済圏の条件とは?
ブロックチェーンの生み出すボーダレスな経済
多種多様な経済圏が生まれる
ライターにとっての新たな経済圏「Steem」
クラウドセールという新しい資金創出のカタチ
ブロックチェーンにより、会社はなくなるか?
ブロックチェーンにより、政府はなくなる?

あとがき

◉イラスト/清水舞子

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : ベストセラーズ (2017/5/9)、出典:出版社HP

序章
一躍注目されはじめたブロックチェーン

大きく変化したブロックチェーンを取り巻く世界

ここ1年でブロックチェーン技術を取り巻く社会は大きく変化しました。連日、ニュースの見出しにブロックチェーンおよびビットコインという言葉が踊っています。こんなことは、1年前は想像ができませんでした。フィンテックの一部として語られることの多かったブロックチェーンも、最近はインターネットと同様のインパクトを持った技術革新とも言われています。
確かに、ブロックチェーン技術は破壊的なイノベーションを巻き起こす可能性があります。この本を手に取っている方の大半は5年、いやもっと早くて3年以内には、知らず知らずのうちに生活の一部として、ブロックチェーンに触れることになるでしょう。

その一方で、ブロックチェーンという言葉が独り歩きしていることも否めません。ブロックチェーンという言葉が出てきた時に、それがパブリックブロックチェーンのことを指しているのか、はたまたプライベートチェーンなのか、それともビットコインを指しているのか、分散型台帳のことなのかと、混乱することもしばしばです。本書では読者の方にできる限り誤解を与えないように、用語の使い分けをしていきたいと考えています。

本書では、「ブロックチェーン」と総称する際は、パブリックブロックチェーンのことを指します。
また、ここでブロックチェーンとビットコインについても本書の立場を明確にしておきたいと思います。ブロックチェーンとビットコインの関係性については、鶏が先か卵が先かといった議論が絶えませんが、本書ではあくまでもビットコインは、ブロックチェーンの最初の実用例という位置づけを取りたいと思います。
もちろん、ビットコインがなければブロックチェーンという仕組みが注目されるには、もっと時間がかかったかもしれません。これは、ビットコインの発展に寄与した多くの有志たちの成果でしょう。これまでのブロックチェーンの発展は彼らのものといっても過言ではないでしょう。
ですが、あえてブロックチェーンの今後の発展のため、読者の方々にビットコインのほかにもより多くの可能性や未来を見ていただくために、前述のように、「ブロックチェーンは、ビットコインのような偉大な発明も実現できる技術である」という立場を取りたいと思います。

ブロックチェーンの持つ最大の魅力

さて、ブロックチェーンの話に戻りましょう。ブロックチェーンが注目を浴びているというのは、皆さんもご存じのとおりですが、どうして注目されているのか、また注目に値するのかを、私個人の話を交えながら触れていきたいと思います。

私自身、中高生の頃からヤフーオークションや楽天オークションといったWebサービスをパソコンで利用して、個人同士が商品売買を行うということに慣れ親しんできました。そして、最近ではメルカリやフリルといった消費者C2Cのフリマアプリが登場し、スマホから商品の売買を行うことが可能となりました。C2Cとは、Consumer to Consumerの略で、「一般消費者と一般消費者の間の取引」を意味します。しかし、お金のやり取りだけは以前と同様で、銀行振り込みやクレジットカード決済、はたまたコンビニ支払いのままでした。お金の流れだけが、個人同士では行えないままだったのです。

前述したとおり、ブロックチェーン技術の代表的な実用例は、ビットコインです。ビットコインであれば、銀行などの仲介業者を介することなく、取引することが可能です。
私は、この仲介業者なしに利用者同士が直接取引できる、ピア・ツー・ピア(P2P)という性質に大きな魅力を感じました。これまで変わっていなかったお金の流れを、ついに個人同士にできる技術だとピンときたのです。

既存のビジネスの大半が、仲介業者がいるビジネスモデルであり、最近話題のシェアリングエコノミーですら、仲介業者がいます。現在はまだ、間に立つ仲介業者がお金やその他の富を独占する傾向にあります。
仲介業者も営利的に活動を行う以上、仲介先の双方が儲かるばかりでは、商売になりません。そのため、自ずと仲介業者が得をして、仲介先が多少なりとも搾取されるといった構図にならざるを得ません。
それがブロックチェーンにより、大きく変革する可能性があります。

ブロックチェーンの本質は、中央管理者のいないこと、つまり分散化です。分散化によって、より個人が何者かのルールに縛られることなく自由な選択肢を持つことができるだろうと私は考えています。そのため、ブロックチェーンとは、より個人をエンパワーメントするものと捉えています。
これは、インターネットにより誰もが自由に情報を発信できるようになったことで、個人をエンパワーメントしたことと同様です。
近頃の例で言うと、TwitterやInstagramの「インフルエンサー」と呼ばれるユーザー達や、動画配信サービスYoutubeの人気配信者「Youtuber」といった存在はインターネットによる個人のエンパワーメントの顕著な例でしょう。
ブロックチェーンの分散化という威力が、あらゆる産業にイノベーションをもたらす可能性があるのです。そのため、注目をされていますし、注目に値する技術であると考えています。

あらゆる産業にイノベーションをもたらすブロックチェーン

ブロックチェーンが関係する市場規模は、平成27年度に経産省が提出した「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」の内容によると67兆円と推定されています。
ブロックチェーンの大きな特徴としては、改ざんが非常に困難であること、中央管理者がおらず複数でネットワークを維持するため、実質的に障害が発生することでサービスおよびネットワーク自体が利用できなくなるといったリスクが、限りなくゼロに近いこと(ゼロ・ダウンタイム)があります。

実際に、ブロックチェーン技術を基盤とするビットコインは2009年に始動して以来、一度もダウンしていません。皆さんも、Webサイトにアクセスしようとした際に、そのページが表示されないといったことを経験したことがあるはずです。そのようなことが一度もなかったということです。
これはすごいことで、皆さんが信頼をおいて利用している銀行のシステムでさえ、障害が起きたりシステムダウンをさせないために日々メンテナンスを行っています。
また、ブロックチェーンの具体的な活用例としては、ビットコインとも比較しやすい電子マネーやポイント、地域通貨にはじまり、電子クーポンやEチケットから土地登記、電子カルテまでに及びます。
さらに、スマートコントラクトと呼ばれるブロックチェーン上で自動取引を可能にするコンセプトと組み合わせることで、あらゆる商取引を自動化することが可能です。
これまで仲介業者を必要としていた、業務プロセスのすべてが変わる可能性があるのです。これらは、もしかすると人工知能が人の仕事をなくすことよりも、現実的でよりインパクトがあるかもしれません。
具体的には、銀行が行ってきた送金業務はもちろんのこと、会計業務や国を横断した製品の流通管理まで、自動的に行われる未来が訪れます。
それに加えて、昨今注目を集めているシェアリングエコノミーのビジネスモデルも大きく変化する可能性があります。
シェアリングエコノミーは、企業がサービスを提供するのではなく、個人が直接結びつくことでサービスやモノを提供し、従来企業が管理することでかかっていたコストを削減し、消費者はより安価にサービスを受けれるようにします。
そしてサービス提供者はより多くの収入を上げ、消費者はより安価にサービスを受けることができる、まさにウィン-ウィンな関係を築くことで急速に発展してきました。しかし、それでもシェアリングエコノミーを成り立たせるために仲介に立つC2C企業が富を独占してしまう傾向が起きています。
実際にスマホアプリを使ったタクシー配車サービスのUber(ウーバー)においても急な報酬の減額によって一時期ドライバーたちによる抗議が行われました。
現在、C2C企業が行っている利用者同士のマッチングおよび仲介業者が一時的に代金を預かるエスクロー型の代金支払いですが、ブロックチェーンおよびスマートコントラクトで代用することで、コストを削減し利用者がより恩恵を受けることができるようになるでしょう。

ブロックチェーンは、モノのインターネットと呼ばれるIoTとも相性が良いとされています。むしろ、ブロックチェーンによって、IoTは真価を発揮するとも言われているくらいです。

これまで、IoTにおいて懸念されていた点としてセキュリティ問題が挙げられます。デバイスやセンサーに不正にデータが送信されたり、記録されているデータを改ざんされないかという問題です。ここに改ざんが困難であるブロックチェーンの特徴を活かすことで、解決を図ることができます。
さらに、スマートコントラクトとも関連させることで、デバイスやセンサーで特定のデータを受信した際に、自動的に一連の取引を実行するということも可能になるため、IoTの可能性をさらに拡大できるでしょう。
このようにブロックチェーンの持つ特徴は、様々な分野に応用することが可能です。もちろん、すぐにすべてが変わるというわけではありませんが、着実にブロックチェーンの波は多くの産業を包み込んでいくでしょう。

今こそブロックチェーンを学ぶ絶好のチャンス

さて、改めてになりますが、ビットコインが発明され運用されはじめたのは、2009年です。歴史的には、まだ10年の歴史もありませんが、現在では、ビットコインに勘定機能以外を持たせようとする技術も数々登場しています。これはまさに、インターネットにおけるTCP/IP上に「http, ftp, smtp」など用途別にアプリケーションレイヤーの技術が整備されていった時代と同時期にさしかかっています。
言うなれば、今は1990年代のインターネット黎明期そのものなのです。ここから、ブロックチェーンがあらゆる産業に影響を与え、新しいサービスを生み出していく時代に急速に突入していくでしょう。
その一方でブロックチェーンについて詳しい人間は多くありません。日本国内においてもブロックチェーンを扱えるエンジニアはごく少数です。
それは、ビジネスマンも同様で、ブロックチェーンについて正しく理解しビジネスへの活用までを考えられる人が不足しています。
ブロックチェーンは、これまでのビジネスモデルを変革する可能性を持っているものの、分散化というコンセプトからも理解しにく代物です。逆に言うと、理解しにくいため大半の人が二の足を踏んでいる今が最大のチャンスとも言えます。
実際、私のようにもともと技術畑の人間でなくとも、興味を持って学ぶことでブロックチェーンの知識を持っていると、このように筆をとる立場にもなることが可能です。

本書では、ブロックチェーンとその背景にあるコンセプトや仕組み、そしてビットコインなどの実用性について解説します。そして、できる限り皆さんに、分散化のもたらす可能性について触れていただければと思います。
いち早くみなさんがブロックチェーンの波に飛び込む契機となれば幸いです。

森川 夢佑斗 (著)
出版社 : ベストセラーズ (2017/5/9)、出典:出版社HP