ビジネスパーソンのための人工知能入門

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人工知能を大ざっぱに知る

本書は、ビジネスマン向けの人工知能について解説した本です。人工知能とは何か、何のために人工知能をつくるのか、という素朴な疑問から始め、人工知能の種類や知能を得るための手法に関する解説、機械学習の概要と大まかな流れといった、人工知能の基本的な内容をまとめています。

巣籠 悠輔 (著)
出版社 : マイナビ出版 (2018/5/24)、出典:出版社HP

イントロダクション

「ちょっとさ、人工知能を使ってなんかプロジェクトやってみてよ。」
こんな一声が、目の前に座っている上司からあなたに投げかけられたとしましょう。毎日のように人工知能(AI)に関する話題がニュースで取り上げられていますし、社内でこうした発言が出てくるのは、ごく自然な流れと言えます。では、いざこの言葉を目の前にしたとき、あなたならどういった反応をするでしょうか?
もしかすると、これは大きなチャンスだ、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、おそらくこの文章を目にしている多くの方が、こう思うのではないでしょうか。
「これは大ピンチだぞ」と。
あなたは素晴らしいビジネスマンでしょうから、そんな内心の焦りは露ほども表面には出さず、「任せてください」と返事をするでしょう。でも、ここからが大変です。この局面を打開するには、いったいどうすればいいでしょうか。
この本の目的は、こうした、ビジネスの現場で起こり得るであろうピンチな状況を、チャンスに変えることです(あるいは、もしあなたが上司の立場だったら、知らず知らずのうちにピンチな状況をつくり出してしまわないようにすることです)。世の中で氾濫してしまっている「人工知能」という言葉に惑わされないようにするためには、人工知能についての正しい知識を身につけ、理解することが必要です。
では、そもそも人工知能とは何でしょうか? そのまま文字通りに見れば「人工的な知能」あるいは「人工的につくられた知能」と読むことができます。一方で、世の中を見渡すと、何か「人間を超える知能をもった存在」がイメージされている場合が多いようにも思えます(そうすると、今度は「知能とは何か」あるいはもっと突き進むと「人間とは何か」と言った、哲学的な問いについつい頭が向いてしまいますが、それは脇に置いておきましょう)。
本書では、人類を滅ぼしてしまうような恐ろしいロボットも、あるいは、「助けて!」と叫ぶと、未来の道具で何でも願いを叶えてくれる青いロボットも出てきません。もっと、きちんと地に足の着いた人工知能の話をしていきます。人工知能は、1950年代から現在にいたるまで最も盛んに研究されてきた分野のひとつであり、学問としても非常に体系的にまとまっています。今世の中を賑わせているのは、その研究の成果と言えるでしょう。
一方、「人間を超える知能をもった存在」がすでにできているかと言うと、ご存じのとおりそれにはまだまだいたっていない、というのが現状です。しかし、それを実現すべく、たくさんの研究がなされ、たくさんの技術が確立されてきました。この確立されてきた技術が、今の人工知能ということになります。
その中でも、特に大きく人工知能分野の発展に貢献したのが、機械学習そして深層学習(あるいはディープラーニング)と呼ばれる技術になります。名前だけは聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。ですので、「人工知能でなんかプロジェクト」と言われたときには「機械学習・深層学習でどうビジネス課題を解決すればよいか」と置き換えて考えればよいケースがほとんどです。
では、これらの人工知能技術の中身は何かと言うと、その大部分は数学によって支えられています。数式によって人間の知能は記述され、機械に組み込まれている、すなわちプログラミングされているわけです。
さて、数学、と聞いてこの本を閉じたくなった方もいるかもしれませんが、安心してください。本書はあくまでもビジネスで人工知能を活用するために知っておくべきことをまとめたものですから、難しい数式は一切出てきません(もちろん、プログラミングも)。それよりも、機械学習・深層学習がどういった考えに基づいてできた技術なのか、そしてどういったシーンでその技術が活かされるのかについて、多くのページを使って説明していきます。
機械学習・深層学習という言葉は聞いたことはあるけれど、実際にそれがどういったものなのかよく分からない、どういう風にビジネスに適用できるのかよく分からない、どういう風に評価すればよいのかよく分からないといった方にとって、本書は役に立つはずです。
ここで、あらかじめお断りをしておきます。この本はあくまでもビジネスマンの方に向けたものですので、厳密さを追求するというよりかは、ビジネスを進めるうえで知っておくべきことをまとめたものになります。ですので、人工知能の研究をしている方、あるいは技術者の方にとっては、もしかすると「ここは説明が足りないのでは」と思われる箇所があるかもしれません。そういった方は、一歩引いて、「でも確かにこの本の内容くらいの理解がある人とだと、一緒に仕事がしやすくなりそうだ」くらいに思ってもらえれば幸いです。それが、この本の目的でもあります。
人工知能は万能ではありません。ビジネス上における課題は千差万別ですが、人工知能に向いているもの、向いていないものは当然あります。本書が目指すのは、そうした課題が目の前にやってきたときに、それがそもそも人工知能で解決できるものなのかを判断できること、そしてもし解決できるならば、人工知能のどの技術を使えばよいのかまで分かるようになることです。
私は職業柄、人工知能を使ってこういうことがしたい、こんなことはできるのか、といった相談をいただくことがよくあります。その内容は抽象的なものから具体的なものまでさまざまですが、そこからたくさん会話を重ねるうちに、実は意外と多くの方が、同じような箇所で悩みや疑問を抱えているということを知りました。本書は、そうした共通の疑問になるべく多くお答えできるような内容にまとめたつもりです。

「ちょっとさ、人工知能を使ってなんかプロジェクトやってみてよ。」
こんな一声がやってきたときに、内心ニヤリとしながら、そんなことは露ほども表面には出さず、
「これは大チャンスだぞ」
と思えるようになる。そして、実際にチャンスをものにする。これが、私の心からの願いです。

2018年4月
巣籠悠輔

巣籠 悠輔 (著)
出版社 : マイナビ出版 (2018/5/24)、出典:出版社HP

Contents

イントロダクション

1 知識編 人工知能とは
1.1 そもそも人工知能をつくる目的は?
「面倒くさい」が技術を進歩させる
ビジネスも「効率化」するのではなく「楽」をする
1.2 その人工知能「どの」人工知能?
強い人工知能と弱い人工知能
「弱さ」にも種類がある
1.3 知能を得るには知識が必要
思考が早い人工知能―第1次ブーム
何を思考すればいい?
博識な人工知能―第2次ブーム
あいまいな知識は人間だけのもの
知識だけで知能はできない
1.4 人間が頑張るから機械が学習するへ
学習とは、パターンに分けること
パターンに分けるとは、知識を身につけること
学習する人工知能―第3次ブーム

2 実用編 機械学習:問題を整理し解決する
2.1 問題を整理する
課題のパターンを整理する
課題設定を整理する
2.2 問題へのアプローチ
人間も機械も、知らないものは知らない
アプローチのときは、三角関係を意識する
2.3 学習を評価する
評価のために未知をつくりだす
評価の落とし穴に注意
数値が悪くても「いい」場合がある
評価のインパクトは%になる
2.4 推薦問題を考える

3 発展編 深層学習というブレイクスルー
3.1 深層学習は「どこが」すごいのか?
特徴を捉えないと予測はできない
脳みそをモデル化する
テクノロジーの進化は単独では成し得ない
3.2 深層学習は「どこで」すごいのか?

4 実践編 ビジネスでAIを展開する
4.1 中を育てるのか外に頼むのか
データサイエンティストなのか 機械学習エンジニアなのか
ブーム最大の貢献は環境が整ったこと
4.2 機械学習に必要なものを知る
(再び)ブーム最大の貢献は環境が整ったこと
4.3 機械学習なのか統計なのか

エピローグ
索引

巣籠 悠輔 (著)
出版社 : マイナビ出版 (2018/5/24)、出典:出版社HP