坂本真樹先生が教える 人工知能がほぼほぼわかる本

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人工知能について楽しくわかりやすく

本書は、人工知能を全く知らなくても楽しく読めることを目標としている本です。著者は、人工知能の専門家であり,一般の方にもわかりやすく楽しい内容にまとめています。人工知能の基本的な内容や人工知能をつくるためのディープラーニングの解説、人工知能の実用例などが学べます。

坂本 真樹 (著)
出版社 : オーム社 (2017/4/26)、出典:出版社HP

はじめに

ここ数年、人工知能関連の本がたくさん出版されています。売り上げも上々なようで、かなり世の中に普及しているようです。なので、いまさら人工知能の本を書いても遅いのではないかと思い、自分から積極的に人工知能についての一般書を書こうとは考えていませんでした。そんな折、別の企画で本を書かせていただいたオーム社さんから、「人工知能学会の学会誌の編集委員をしているなら、坂本先生ならではの人工知能の本を書いてみては?」というご提案をいただきました。頼まれると嫌と言えない性格で(もちろん物理的に不可能な時などはお断りしますが、きっと神様がくださったチャンスなのだと思い込む癖もあり、有り難くお引き受けしました。

「私ならではの人工知能の本」と言うことで、最初に思いついたのは2014年度人工知能学会論文賞をいただいた「オノマトペごとの微細な印象を推定するシステム」(人工知能学会論文誌29巻1号)や「ユーザの感性的印象に適合したオノマトペを生成するシステム」(人工知能学会論文誌30巻1号)を基にした本でしたが、マニアックすぎるということで、マニアック路線から入門書路線へ方向転換をしてみました。

人工知能の専門書は読んでいたのですが、この機会に、世の中にどんな入門書が出ているのか調査し、入門書を勉強してみました。その結果、「わかりやすいはずの入門書は、一般の人が読むには結構難しいのではないか」という印象を持ちました。実際、一般の人は、人工知能について「難しい」という印象を持っているようで、わかろうとする気持ちにもならない、といった声を耳にしてきました。そこで、とにかく楽しくわかりやすい本を、という思いで、本書を書きました。

本書は、人工知能を全く知らない方でも楽しく読めることを目指した内容です。高校生などこれから進路を考えている人、文系に進んだけど人工知能のことが気になる人、理工系の大学でこれから情報系の研究を始める人、人工知能の存在を無視できない企業の人、人工知能社会を生きていく子供の将来が気になる人、生涯現役でいたい高齢の人、老若男女のみなさんに読んでいただきたいです。

わかりやすく楽しい人工知能の本を目指して書き始めたのですが、やはりディープラーニングの話などの技術的な話を避けられず、3章がどうしても難しくなってしまいました。この部分は、どの入門書でも最も難しくなってしまう部分で、入門書の著者泣かせなところです。泣く泣くオーム社さんに原稿をお送りしたところ、わかりやすいイラストのおかげで、とても楽しい印象になって戻ってきました。とてもありがたかったです。

校正の段階で、今年度、研究室でディープラーニングを使った卒業研究を担当した川嶋卓也君に読んでいただき、わかりにくいところや疑問点など、気づいたところについて意見をもらいました。卒業論文も終わり、卒業間際でどこかに飛んでいきたいような時期に、丁寧に読んでくれて本当に感謝しています。
最後に、短時間で企画を推進してくださったオーム社書籍編集局の皆様、素敵なイラスト描いてくださったオフィスsawaの澤田様には大変お世話になり、ありがとうございました。

本書を通して、人工知能に関心をもってくださる方が一人でも増えるよう祈りつつ。

2017年3月
坂本 真樹

坂本 真樹 (著)
出版社 : オーム社 (2017/4/26)、出典:出版社HP

目次

Chapter 1 人工知能ってなに?
1.1 人工知能っていつ生まれたの?
●人の知能? 人工知能?
●どっちが人間? チューリングテスト
●寂しそうな、人工知能!?
●人と人工知能の違い
●コンピュータの性能とともに
●AIの歴史<ダートマス会議>
●AIの歴史<第1次AIブーム>
●AIの歴史<第2次AIブーム>
●そして現在、第3次AIブーム!
1.2 これって人工知能?
●人工知能とロボットの違い
●ロボット研究? 人工知能研究?
●人工知能に身体は必要?不必要?
●レベル1の人工知能
●レベル2の人工知能
●レベル3の人工知能
●レベル4の人工知能、特化型人工知能
●レベル5の人工知能、汎用人工知能
1.3 人工知能は人を超えるの?
●シンギュラリティとは?
●怖い? 怖くない? シンギュラリティ
●汎用人工知能を作るには?
●AIによる、人類滅亡の可能性は…..?
●AIで私たちの未来はどう変わるのか?
●将来、なくなってしまう仕事!?
●将来、残っている仕事!?

Chapter 2 人工知能に入れやすいものと入れにくいもの
2.1 人工知能に入れやすいもの
●Webにある情報は、何でも入れられる
●0と1のデジタルデータ
●色々なデータ(言語、動画像、音声)
●視覚情報をコンピュータに入れる
●デジタルカメラの進化
●画素数が上がって、人間を超える!?
●世界中で使われる同じデータ
●画像認識のコンペ、ILSVRC
●聴覚情報をコンピュータに入れる
●2つのマイクを使った音声認識
●複数のマイク「マルチマイク」
●音声を文字に変換するには?
●音響モデル、言語モデル
2.2 人工知能に入れにくいもの
●意味を理解するのは難しい…..
●意味ネットワークとは?
●意味を理解しなくても、答えられる!?
●潜在的意味解析とは?
●東ロボ君があきらめた理由
●賢くなるには、五感すべてが必要!?
●人工知能の味覚とは?
●人工知能の嗅覚とは?
●匂いはこれからどうなるのか?
●人工知能の触覚とは?
●触覚を実現するのは大変!

Chapter 3 人工知能は情報からどのようにして学ぶの?
3.1 機械学習って何だろう?
●機械(コンピュータ)に学習させたい!
●教師あり学習とは?
●分類問題<スパムメールを判断する>
●回帰問題<数値を予測する>
●びったりの線(関数)を見つけよう!
●過学習に注意しましょう!
●教師なし学習とは?
●グループ分けをしてみよう!
●k-meansという分類方法
●強化学習は、アメとムチ
3.2 ニューラルネットワークってどんなもの?
●脳はニューロンでできている
●人工ニューロンのしくみ
●重みは、重要度や信頼度
●ヘップの学習則
●パーセプトロンとは?
●1本の線(線形)では、分けられない!
●バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)
●誤差が小さくなるように、重みで調整!
●層を増やすと…届かない!?
●サポートペクターマシンの長所とは
●過学習と汎化は、トレードオフ
3.3 ディープラーニングは何がすごいの?
●ディープラーニングが有名になった日
●自分で特徴量を抽出するのがすごい!
●ディープラーニングは4層以上
●自己符号化器は、入力と出力が同じ!?
●入力と出力を同じものにする意味
●人間に近い、かもしれない…?
●ディープラーニングの手法
3.4 AI御三家「遺伝的アルゴニズム」って何?
●AI御三家の面々
●ダーウィンの進化論をもとに
●遺伝的アルゴリズムの使い方

Chapter 4 人工知能ってなに?
4.1 人工知能の進化がわかる「ゲーム」での実用例
●ゲームAIの進化の歴史
●人間 vs Al ~チェス編~
●人間 vs AI ~将棋編~
●人間 vs AI ~囲基編~
4.2 第3次AIブームの火付け役「画像」での実用例
●Googleの猫
●画像認識の進化
●医療への応用(庄野研究室)
●医療への応用(メラノーマの判別)
●医療への応用(がんの検出)
●診断の精度向上のために
4.3 何かと話題の「自動運転AI」の実用
●どこまで自動に?
●自動運転を実現するためには
●自動運転の訓練の手順
●位置や状況の把握のために
●事故の場合、原因究明は…?
4.4 「会話AI」の実用例
●コンピュータと対話するためには
●「知識がある」会話AI
●「知識がない」会話AI
●会話を作る、3種類の技術
●自然な会話をするためには
4.5 遺伝的アルゴリズムの「オノマトペ」への実用例
●人の心に寄り添うオノマトペ
●オノマトペを生むシステム
●オノマトペを生成する手順
●最適化の過程で行われること
●オノマトペ生成システムのしくみ
●できあがったオノマトペ
4.6 AIの「芸術」での実践例
●AIの芸術への挑戦 ~小説編~
●AI小説のプロジェクト
●AIの芸術への挑戦 ~絵画編~
●AIの芸術への挑戦 ~作曲編~

おわりに
参考文献
索引

坂本 真樹 (著)
出版社 : オーム社 (2017/4/26)、出典:出版社HP