【最新】同一労働同一賃金について学ぶためのおすすめ本 – 法律の解説から実務の対応まで

同一労働同一賃金とは?企業はどのように対応すれば良い?

同一労働同一賃金は、正規雇用と非正規雇用との間の不合理な待遇差の解消を目指すもので、2018年に成立した働き方改革関連法のテーマの一つです。同一労働同一賃金に関するパートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法は2020年4月よりすでに施行されており(中小企業に関し一部2021年4月施行)、企業としては人事制度を見直すなどの対応が求められています。今回は、同一労働同一賃金に関して、実務上どのように対応すれば良いかを学べる本をご紹介します。

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出典:出版社HP

3時間でわかる 同一労働同一賃金入門

同一労働同一賃金への対応を解説

現在、企業にはパート・アルバイト、契約社員、定年再雇用者、派遣社員といった雇用形態で数多くの人が働いています。2018年に成立した働き方改革関連法で、正規・非正規雇用労働者の不合理な待遇差が禁止されました。これが「同一労働同一賃金」です。本書では、厚生労働省のガイドラインの解説に加えて、同一労働同一賃金の先進事例や関連判例、自社の対応方針が検討できるように解説しています。

山口 俊一 (著)
出版社 : 中央経済社 (2019/9/3) 、出典:出版社HP

まえがき

働き方改革関連法が,2018年6月に成立しました。今回の法改正では,次の3点が最大のポイントとなります。

①時間外労働の上限規制の導入
(大企業:2019年4月~,中小企業:2020年4月~)
②年次有給休暇の確実な取得
(大企業,中小企業とも,2019年4月~)
③正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止
(大企業:2020年4月~,中小企業:2021年4月~)

このうち,「③正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止」が,いわゆる「同一労働同一賃金」の内容です。非正規雇用労働者とは,パート・アルバイト,契約社員,定年再雇用者,派遣社員といった雇用形態で働く人たちのことです。

同一労働同一賃金については,2020年4月から,猶予期間が設けられている中小企業でも,2021年4月から適用となります。これまでも同一労働同一賃金のルールが皆無だったわけではありませんが,これからはより厳格に,正社員と非正規社員の間の不合理な賃金差や待遇差が問われることになります。

企業の経営者や人事・総務担当者にとっては,労働時間関連の対応を行ったあと,すぐに対応方針を検討しなければなりません。しかも,時間外労働や有給休暇の問題以上に複雑で,どこまで対応すればよいのかの判断が難解なテーマといえるでしょう。

企業の経営者や人事担当者は,法律の施行までに,非正規社員を中心とした人事処遇制度を見直す必要があります。厚生労働省はガイドラインを示していますが,不明確な点もあり,それだけを頼りに社内のルールづくりを考えていくことは難しいと思われます。本書では,ガイドラインの解説に加えて,同一労働同一賃金の先進事例や関連判例,各社の対応状況などを紹介しながら,自社の対応方針が検討できるように解説しています。

同一労働同一賃金の新しいルールに積極的に取り組んでいけば,この状況をチャンスに変えることもできます。社内に「攻めの人事制度」を構築すれば,非正規社員を中心に人材確保や定着につながり,社内を活性化させることができるからです。ただし,これには人件費の大幅な上昇をともないます。一方,現時点で必要不可欠な項目に絞れば,社内制度の改定を必要最小限にとどめることもできます。そうすれば,一定のコンプライアンスを維持しながら,人件費の上昇を抑制することも可能です。

このように,今回の「同一労働同一賃金」への対応については,会社によって大きく対応が異なるでしょう。本書が,法改正や他社の状況を正確に理解したうえで,自社の人事方針に沿った適切な対応をするための一助となれば幸いです。

2019年8月
山口俊一

山口 俊一 (著)
出版社 : 中央経済社 (2019/9/3) 、出典:出版社HP

もくじ

まえがき

第1章 同一労働同一賃金と働き方改革関連法の関係
1 大企業に先行導入,中小企業は1年の猶予がある
2 今回の改正前から同一労働同一賃金は存在していた
3 法改正の「考え方」を読み解く
4 中小企業の定義
5 均等待遇と均衡待遇
6 派遣労働者の均等・均衡待遇
7 非正規社員に対して待遇差を説明できなければならない
8 訴えやすくなる(訴えられやすくなる)
9 法律に「同一労働同一賃金」という言葉は出てこない
10 「同一労働同一賃金」で,よく聞く疑問

第2章 同一労働同一賃金に関して押さえておくべき前提
1 雇用形態別の実態と傾向
2 雇用形態別の賃金水準
3 関連する法律:改正労働契約法
4 関連する法律:高年齢者雇用安定法
5 「抜け穴」問題

第3章 注目の判例と企業の対応
1 「契約社員に扶養手当不支給」は合理的か
2 「アルバイトにも賞与を支給すべき」と全国初の判断
3 「退職金不支給」でも全国初の判断
4 「定年後の給与水準引き下げ」に対する判例

第4章 人事担当者に聞いた対応方法~企業の取り組みアンケート調査結果~
1 賛成と反対が拮抗
2 大手企業の取り組み状況

第5章 先進企業の事例紹介とポイントの解説
1 エフコープ生活協同組合
2 株式会社りそな銀行
3 コストコホールセールジャパン株式会社
4 アウトソーシングA社のコールセンター部門

第6章 賃金制度見直しの方向性
1 同一労働同一賃金に対応した人事と賃金の考え方
2 企業がとるべき選択肢

第7章 自社の基本給・賞与・手当などの改定方針を考える
1 基本給:ガイドラインの解説
(1) 基本給:正社員水準に合わせるケース
(2) 基本給:正社員も含めて再設計するケース
(3) 基本給:仕事区分を明確にし,現状の賃金を維持するケース
2 賞与:正社員に合わせるか,一定引き上げか,しばらく待機か
3 手当,福利厚生,教育訓練
(1) 手当:ガイドラインに例示されている手当の見直し方
(2) 福利厚生:ガイドラインに例示されている福利厚生の見直し方
(3) 教育訓練:ガイドラインに例示されている教育訓練の見直し方
(4) 手当,福利厚生,教育訓練を実務レベルで考えてみる
(5) 家族手当をどうするのか
(6) 住宅手当をどうするのか
4 人件費増加シミュレーションが重要!

第8章 定年再雇用制度の考え方,見直し方
1 定年後社員(定年再雇用者)の賃金水準実態
2 ガイドラインにおける定年再雇用者の賃金に関する記述
3 定年再雇用者の賃金に関する裁判所の判断
4 定年再雇用や高齢者雇用に関する最近の企業トピックス
5 定年再雇用者の賃金水準をどのように設計するか
6 賃金水準と勤務内容がポイント
7 コースや役割の仕組みをどのように設計するか
8 給与・賞与制度をどのように設計するか

第9章 まとめ「やることリスト」
(1) 企業が対応すべきこと
(2) 処遇改定方針書の作成
同一労働同一賃金に基づく処遇改定方針書の記入例

山口 俊一 (著)
出版社 : 中央経済社 (2019/9/3) 、出典:出版社HP

「同一労働同一賃金」はやわかり (日経文庫)

企業実務の対応策について解説

本書は同一労働同一賃金をめぐる立法・裁判例、そして2018年の通常国会において成立した新報や、最新の最高裁判例をもとに、企業に求められる対応策を解説しています。同一労働同一賃金の法的問題と企業の実務対応策などを理解することで、議論が進む「働き方改革」を、より正しく知ることができます。

北岡 大介 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/7/25) 、出典:出版社HP

はじめに

2017年から政府が進める一連の働き方改革の中で最も難問であるのが、「同一労働同一賃金」の実現です。「同一労働同一賃金」は、西遊記における「天竺」のごとく、理想郷的なイメージを感じさせる言葉ですが、論者によっては「同一価値労働同一賃金」の意で用いたり、あるいは「均等待遇」「均衡待遇」として論じられるなど、極めて多義的であり、まずはその意味するものを明らかにする作業が必要不可欠です。また「理想郷」の問題にとどまるだけであればいざ知らず、空前の求人難の中、パート・有期契約社員等から同一労働同一賃金絡みの処遇等に関する不平・不満も顕著に増えており、各職場において、同一労働同一賃金問題が「今そこにある危機」となりつつあります。

そのような中、2018年6月に同一労働同一賃金をめぐって重要な最高裁判決が登場するとともに、働き方改革関連法が可決成立し、同一労働同一賃金関連法制の一層の整備が進められました。同法の施行は大企業については2020年4月、中小企業は2021年4月であり、急ピッチで法施策が進められる中、企業としても同法対応に向けた対策が急務といえます。しかし、「同一労働同一賃金」という理想郷に向かう道のりは遠く険しいものとなっています。

本書ではまず第1~3章において、多義的で判然としない「同一労働同一賃金」の「見える化」を目指していきます。第1章はいわゆる「同一価値労働同一賃金」と日本型雇用との相違性を明らかにした上で、日本型同一労働同一賃金の一つで、「等しき者は等しく」を定める「均等待遇」規定を取り上げ、解説します。次に第2章では革新的な日本型同一労働同一賃金法制と位置づけられる「均衡待遇」規定(異なる者にも処遇ごとのバランスを求めるもの)につき、最新の最高裁判決等を挙げながら、企業実務へのインパクトと法解釈内容等を解説します。さらに第3章では、2018年6月末に国会で可決成立した働き方改革関連法における同一労働同一賃金関連法の改正内容を、特に「均衡待遇規定の行政法化」の視点から解説します。

その上で、実務家にとって最も関心が高い企業実務の対応策につき、本書では第4章で近々に対応すべき法的課題と対応策を、そして第5章において、腰を据えて取り組むべき中長期的な法的課題と企業対応上の留意点を解説しています。

本書が労使双方の実務家にとって、同一労働同一賃金の実現という「天竺」までの良き道しるべとなれば幸いです。

2018年7月
北岡 大介

北岡 大介 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/7/25) 、出典:出版社HP

「同一労働同一賃金」はやわかり 目次

はじめに

第1章 同一労働同一賃金が求められる背景
1 同一価値労働同一賃金と日本型同一労働同一賃金
2 日本型同一労働同一賃金の萌芽――丸子警報器事件判決
3 均等待遇規定の展開
4 同一労働同一賃金強化の背景とは――非正規雇用の変容
5 今そこにある危機

第2章 均衡待遇規定の解釈と法的課題
1 労働契約法20条における均衡待遇規定とは
2 労働契約法20条の法解釈と最高裁判決

第3章 さらに「均衡」のとれた職場を求めて
1 働き方改革と同一労働同一賃金法制との関わり
2 改正パート・有期雇用法について
3 包括的な均衡待遇規定の見直し
4 説明責任の強化と行政ADR
5 同一労働同一賃金ガイドライン案とは

第4章 「今そこにある危機」への企業対応
1 第1歩としての「見える化」――誰がどの仕事をやっているのかを洗い出す
2 各種給付ごとの均衡待遇について
3 説明責任への対応
4 会社の相談体制・苦情処理機関整備の必要性

第5章 中長期的な対応
1 基本給・昇給・退職金などの均衡待遇に向けた対応
2 非正規社員の基本給・手当の見直しと助成金
3 限定正社員、正社員転換推進と無期転換請求
4 正社員の人事評価制度と運用の見直し
5 正社員の各種手当削減・本給見直しの動き
6 労使コミュニケーションの新たな姿

北岡 大介 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/7/25) 、出典:出版社HP

同一労働同一賃金の法律と実務(第2版)

同一労働同一賃金のイメージをつかみ理解する

本書は、働き方改革関連法のうち、パートタイム・有期雇用労働法、労働契約法、労働者派遣法を中心に、同一労働同一賃金に関わる法律を解説します。また、正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇格差解消をどこから準備し実際にどう図るのか、さらに、従業員への説明の仕方など、例示とともにわかりやすく解説しています。

服部 弘 (著, 編集), 佐藤 純 (著, 編集)
出版社 : 中央経済社 (2020/4/8) 、出典:出版社HP

第2版 はじめに

私たち本書の執筆者である弁護士4名と社会保険労務士5名は,それぞれの実務での経験を踏まえて意見を交換しながら労働法の知識を深め合う労働法の研究会を2年間にわたり行ってきました。

そのような中,平成30年6月29日に,正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇差解消をめざす,「同一労働同一賃金」もその柱の1つとした働き方改革法が成立しました。そしてこれも法改正と時期を同じくして,正規労働者と非正規労働者の待遇格差が争点となったハマキョウレックス・長澤運輸事件についての最高裁判所判決が平成30年6月1日に出されました。

正規労働者と非正規労働者の不合理な格差是正をめぐっては,その改正法施行と同時に行政からガイドラインが提示されることとなっていますが,これについてはすでに平成28年12月20日にはガイドライン案が公表され,その後,平成30年12月28日に厚生労働省告示第430号として「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(以下「ガイドライン」といいます)が公示されました。

ハマキョウレックス・長澤運輸事件最高裁判決,同一労働同一賃金をめぐっての改正法の成立,ガイドラインの公表と,正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇格差解消をめざした立法及びその法律解釈の基礎は出来上がりましたが,なお,上記最高裁判決,ガイドラインでも言及されていない部分があること,またそれにも増して働き方改革の中での1つの標語として使われてきた「同一労働同一賃金」という言葉ばかりが独り歩きして,今回の法改正の内容が一体どういうものなのかということが,世上,理解されていないこともあり,働き方改革法の成立前後から,クライアントから数多くの質問が私たちに寄せられるようになっていました。

私たち執筆者のメンバーは,こういった質問に答えるべく,議論を重ねてまいりましたが,このほど,その議論の結果をQ&Aの形で,そしてその議論の前提となる同一労働同一賃金についてのパートタイム・有期雇用労働法等の解説・上記最高裁判決の解説を法律編という形で,中央経済社の賛同を得て出版物として出すことになりました。

「同一労働同一賃金」との掛け声の下,正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇格差解消をめざしてパートタイム・有期雇用労働法の改正がなされましたが,読者の方々の関心は,ガイドラインに言及されていない待遇格差についてどう対応したらよいかという,まさに直截的に結論を知りたいというものから,最高裁判決を踏まえたパートタイム・有期雇用労働法の体系的な解説書が出ていない中,同法の解釈を一から知りたいというものまで千差万別と思われます。

本書では,通例の法律解釈文献とは異なり,最初に今回の法改正の概要を示し,その後に「Q&A」編を設け,最後に「法律解説」編を設けるという構成をとっています。このようにした理由は次のとおりです。すなわち,「同一労働同一賃金」との掛け声の中で,実際は法律では正規労働者と非正規労働者の待遇の均等・均衡をもって「同一労働同一賃金」であるとしているのですが,この間にはややギャップがあり,「均等・均衡」待遇とは一体どういうことなのかはなかなかわかりづらい点もあろうかと思います。しかし,幸いにしてパートタイム・有期雇用労働法の施行に当たっては,通常の法律の場合とは異なりかなり詳しい解釈のガイドラインが示されており,関係する最高裁判決も出されていて,この中で「均等・均衡」待遇の実際が言及されています。

そこでまず,ガイドライン・最高裁判例等に基づき,正規労働者と非正規労働者の均等・均衡待遇の実例を紹介した「Q&A」編を読んでいただき,「均等・均衡」待遇,そしてこの法律でいう「同一労働同一賃金」とはどういうことなのかのイメージをつかんでいただき,その上で法律解説編を読んでいただくと法律の理解が深まるのではないかと考えて,このような章立てにしてみました。さらにQ&A編のいくつかを読んで,「均等・均衡」「同一労働同一賃金」のイメージがつかめたら,いったん,法律解説編を読んでいただき,またQ&A編に戻って読んでいただくといった使い方もあろうかと思います。

どのような使い方であれ,本書がパートタイム・有期雇用労働法の同一労働同一賃金についての法律改正の理解の一助になってもらえれば幸いです。

2020年3月
著者一同

はじめに

私たち本書の執筆者である弁護士4名と社会保険労務士5名は,それぞれの実務での経験を踏まえて意見を交換しながら労働法の知識を深め合う労働法の研究会を2年間にわたり行ってきました。

そのような中,平成30年6月29日に,正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇差解消をめざす,「同一労働同一賃金」もその柱の1つとした働き方改革法が成立しました。そしてこれも法改正と時期を同じくして,正規労働者と非正規労働者の待遇格差が争点となったハマキョウレックス・長澤運輸事件についての最高裁判所判決が平成30年6月1日に出されました。

正規労働者と非正規労働者の不合理な格差是正をめぐっては,その改正法施行と同時に行政からガイドラインが提示されることとなっていますが,これについてはすでに平成28年12月20日にはガイドライン案が公表され,その後,平成30年12月28日に厚生労働省告示第430号として「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(以下「ガイドライン」といいます)が公示されました。

ハマキョウレックス・長澤運輸事件最高裁判決,同一労働同一賃金をめぐっての改正法の成立,ガイドラインの公表と,正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇格差解消をめざした立法及びその法律解釈の基礎は出来上がりましたが,なお,上記最高裁判決,ガイドラインでも言及されていない部分があること,またそれにも増して働き方改革の中での1つの標語として使われてきた「同一労働同一賃金」という言葉ばかりが独り歩きして,今回の法改正の内容が一体どういうものなのかということが,世上,理解されていないこともあり,働き方改革法の成立前後から,クライアントから数多くの質問が私たちに寄せられるようになっていました。

私たち執筆者のメンバーは,こういった質問に答えるべく,議論を重ねてまいりましたが,このほど,その議論の結果をQ&Aの形で,そしてその議論の前提となる同一労働同一賃金についてのパートタイム・有期雇用労働法等の解説・上記最高裁判決の解説を法律編という形で,中央経済社の賛同を得て出版物として出すことになりました。

「同一労働同一賃金」との掛け声の下,正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇格差解消をめざしてパートタイム・有期雇用労働法の改正がなされましたが,読者の方々の関心は,ガイドラインに言及されていない待遇格差についてどう対応したらよいかという,まさに直截的に結論を知りたいというものから,最高裁判決を踏まえたパートタイム・有期雇用労働法の体系的な解説書が出ていない中,同法の解釈を一から知りたいというものまで千差万別と思われます。

本書では,通例の法律解釈文献とは異なり,最初に今回の法改正の概要を示し,その後に「Q&A」編を設け,最後に「法律解説」編を設けるという構成をとっています。このようにした理由は次のとおりです。すなわち,「同一労働同一賃金」との掛け声の中で,実際は法律では正規労働者と非正規労働者の待遇の均等・均衡をもって「同一労働同一賃金」であるとしているのですが,この間にはややギャップがあり,「均等・均衡」待遇とは一体どういうことなのかはなかなかわかりづらい点もあろうかと思います。しかし,幸いにしてパートタイム・有期雇用労働法の施行に当たっては,通常の法律の場合とは異なりかなり詳しい解釈のガイドラインが示されており,関係する最高裁判決も出されていて,この中で「均等・均衡」待遇の実際が言及されています。

そこでまず,ガイドライン・最高裁判例等に基づき,正規労働者と非正規労働者の均等・均衡待遇の実例を紹介した「Q&A」編を読んでいただき,「均等・均衡」待遇,そしてこの法律でいう「同一労働同一賃金」とはどういうことなのかのイメージをつかんでいただき,その上で法律解説編を読んでいただくと法律の理解が深まるのではないかと考えて,このような章立てにしてみました。さらにQ&A編のいくつかを読んで,「均等・均衡」「同一労働同一賃金」のイメージがつかめたら,いったん,法律解説編を読んでいただき,またQ&A編に戻って読んでいただくといった使い方もあろうかと思います。

どのような使い方であれ,本書がパートタイム・有期雇用労働法の同一労働同一賃金についての法律改正の理解の一助になってもらえれば幸いです。

2019年1月
著者一同

服部 弘 (著, 編集), 佐藤 純 (著, 編集)
出版社 : 中央経済社 (2020/4/8) 、出典:出版社HP

目次

第2版・第1版はじめに

第1部 概論
Ⅰ. 改正法の目指すもの
Ⅱ. 非正規社員の平均年収は179万円
Ⅲ. 均衡と均等について
1. 2つのキーワード
2. 均衡待遇
3. 均等待遇
Ⅳ. 改正法による統合
Ⅴ. 改正のポイント
1. 概要
2. 同一事業主内
3. 個々の待遇ごとの判断
4. ガイドラインの策定
Ⅵ. 均衡待遇と均等待遇の規定
1. 均衡待遇の規定(新パートタイム・有期雇用労働法第8条)
2. 均等待遇の規定(新パートタイム・有期雇用労働法第9条)
Ⅶ. 派遣社員に関する均衡待遇と均等待遇
Ⅷ. 待遇に関する説明義務(新パートタイム・有期雇用労働法第14条)
Ⅸ. 施行期日

第2部 Q&A編
1. なぜ同一労働同一賃金の改正が行われるのか
2. 同じ仕事をしているキャリア職とパートタイマーの均等・均衡の判断
3. 「同一性」をどのように判断するか
4. 同一労働同一賃金に職能給で対応できるか
5. どこから準備を進めたらよいか
6. 異なる賃金制度の均等・均衡待遇の判断方法
7. 他社での職務経験をどのように扱うか
8. 成果・業績給を導入する場合の注意点
9. 勤続給に違いがあっても問題はないか
10. 昇給をどのようにすればよいか
11. 役職手当をどうするか
12. 家族手当をどうするか
13. 住宅手当をどうするか
14. 地域手当の設定の注意点とは
15. 特殊勤務手当について
16. 単身赴任手当について
17. 資格手当について
18. 食事手当をどうするか
19. 割増賃金の率に差があってもよいか
20. 通勤手当に差をつけられるか
21. 賞与に格差をつけられるか
22. 退職金制度への対応方法について
23. 定年後再雇用者の賃金設定の注意点について
24. 慶弔休暇をどうするか
25. 休職の設定の注意点とは
26. 健康診断の取扱いの注意点について
27. 会社が確保した駐車場の利用について
28. 研修に違いをつけられるか
29. パートタイム・有期雇用労働法の建付けについて
30. 自ら不合理な待遇を認めるのは有効か
31. 裁判における不合理性の主張立証責任は誰にあるか
32. 最新の高等裁判所判決にはどのようなものがあるか
33. 待遇差の説明義務とは
34. 客観的・具体的な実態に基づく判断方法とは
35. その他の事情とは
36. 正社員の待遇を引き下げて対応できるか

第3部 法律解説編
第1章 わが国における同一労働同一賃金法制
Ⅰ 働き方改革関連法の成立
Ⅱ 非正規雇用労働者(短時間労働者,有期雇用労働者,派遣労働者)の待遇に関する改正法の概要
Ⅲ 非正規雇用労働者の待遇に関する現行法上の制度
1. 同一労働同一賃金原則
2. 労基法(第3条)
3. パートタイム労働法
(1) 2007(平成19)年改正パートタイム労働法
(2) 現行(2014(平成26)年改正)パートタイム労働法第8条,第9条
4. 労契法(2012年改正労契法第20条)
(1) 改正の趣旨・概要
(2) 要件
(3) 効果
Ⅳ パートタイム労働法,労契法改正(2014(平成26)年)前の「同一労働同一賃金」についての裁判例の状況
1. 丸子警報器事件(長野地裁上田支部平成8年3月15日判決 労判690号32頁)
2. 日本郵便逓送事件(大阪地裁平成14年5月22日判決 労判830号22頁)
3. 京都女性協会事件(大阪高裁平成21年7月16日判決 労判1001号77頁)

第2章 パートタイム・有期雇用労働法-
Ⅰ パートタイム・有期雇用労働法の成立
Ⅱ パートタイム・有期雇用労働法の建付け
Ⅲ 短時間労働者,有期雇用労働者の定義(パートタイム・有期雇用労働法第2条)
Ⅳ 不合理な待遇の禁止(パートタイム・有期雇用労働法第8条)
1. はじめに
2. 本条の要件
(1) 「待遇」
(2) 「通常の労働者の待遇」
3. 不合理性の具体的判断
(1) 基本給
(2) 賞与
(3) 手当
(4) 福利厚生
(5) その他
4. 本条の効果
(1) 強行法規性
(2) 無効となったときの救済方法
Ⅴ 差別的取扱いの禁止(パートタイム・有期雇用労働法第9条)
1. はじめに
2. 条項の分説
(1) 「待遇」
(2) 「差別的取扱い」
(3) 「短時間・有期雇用労働者であることを理由として」
(4) 「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」
3. 効果
Ⅵ その他の改正点
1. 福利厚生施設(パートタイム・有期雇用労働法第12条)
2. 説明義務(パートタイム・有期雇用労働法第14条)
3. 指針(パートタイム・有期雇用労働法第15条)
4. 紛争の解決
Ⅶ 施行期日・経過措置等
1. 施行期日
2. 中小事業主に対する適用猶予

第3章 定年後再雇用者の賃金
Ⅰ 高年齢者の雇用促進対策
1. 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の成立
2. 高年法の展開
Ⅱ 定年制の有効性
Ⅲ 定年後再雇用者の待遇
1. 概説
2. 裁判例
(1) トヨタ自動車ほか事件(名古屋高裁平成28年9月28日判決 労判1146号22頁)
(2) 九州惣菜事件(福岡高裁平成29年9月7日判決 労判1167号49頁)
(3) 学究社事件(東京地裁立川支部平成30年1月29日判決 労判1176号5頁)
(4) 長澤運輸事件(最高裁平成30年6月1日判決 労判1179号35頁)
(5) 長澤運輸事件最高裁判決後の下級審裁判例
Ⅳ 今後の対応

第4章 労働者派遣法
Ⅰ はじめに
Ⅱ 待遇に関する情報の提供等
1. 情報提供義務
2. 情報提供義務の実効性確保のための諸制度
3. 均等・均衡方式と労使協定方式
(1) 均等・均衡方式
(2) 労使協定方式
4. 具体的取扱い
(1) 基本給
(2) 賞与
(3) 手当
(4) 福利厚生
(5) その他
(6) 協定対象派遣労働者
5. その他の改正

第5章 労契法第20条に関連する2つの最高裁判決(ハマキョウレックス事件最高裁判決と長澤運輸事件最高裁判決)
Ⅰ はじめに
Ⅱ ハマキョウレックス事件
1. 事案
2. 労契法第20条の解釈及び適用に関する事項
(1) 労契法第20条の趣旨について
(2) 「期間の定めがあることにより」の解釈
(3) 「不合理と認められるものであってはならない」の解釈
(4) 「不合理と認められるものであってはならない」の主張立証責任
(5) 私法上の効力の有無について
(6) 補充的効力の有無について
(7) 無効とされた労働条件の就業規則の解釈による認定について
Ⅲ 長澤運輸事件
1. 事案
2. 労契法第20条の解釈及び適用に関する論点
(1) 労契法第20条の趣旨について
(2) 「期間の定めがあることにより」の解釈
(3) 「その他の事情」の解釈(「その他の事情」として考慮される事項)
(4) 「労働条件の相違」の判断方法
(5) 「不合理と認められるものであってはならない」の解釈
(6) 補充的効力の有無について
(7) 無効とされた労働条件の就業規則の解釈による認定について
Ⅳ まとめ
1. 2つの最高裁の判断
2. 今後の課題

服部 弘 (著, 編集), 佐藤 純 (著, 編集)
出版社 : 中央経済社 (2020/4/8) 、出典:出版社HP

わかりやすい「同一労働同一賃金」の導入手順

対話形式で賃金制度設計のポイントを解説

同一労働同一賃金の実現に向けた働き方改革関連の法改正などの動きを踏まえたうえで、企業がこれらに対応する人事・賃金制度の設計と運用を進めるための、制度見直しの基本的な考え方や具体的な手順を解説しています。対話形式で読みやすく記述されています。

二宮 孝 (著)
出版社 : 労働調査会 (2018/11/1) 、出典:出版社HP

はじめに

同一労働同一賃金に向けて、巷ではさまざまな意見がかまびすしく飛び交っています。ガイドライン案、関連法案をみたとき、「これは大変なことになりそうだ。改正の方向性は理解できるが、どのように見直せばよいのか検討もつかない」というのが、率直な印象でした。見直す範囲、手順や方法、社員への説明の仕方や実際の運用はどうあるべきか、いまだもって手探りという状況ではないでしょうか。

法案が提出される前段階のガイドライン案策定にあたって、西欧諸国の労働慣行及び法規を参照したとのことですが、日本とは歴史的にみても雇用環境が大きく異なっています。これは、どちらが正しいというものではありません。西欧の同一労働同一賃金論のベースは歴史的経緯からみて「男女平等」から来ているようですが、今回の法改正は、非正規社員と正規社員との格差解消ということが一番の名目に挙げられています。このことからも混乱が生じているようです。

今回の法改正は、包括的で抽象的なものにとどまり、判例を積み重ねることによって具体的な基準やルールを確かにしていくという趣旨のようです。「判例は法になり得る」とは学生のときに学んだことですが、考えてみれば、判例は個々の企業での実例に即したものである以上、それぞれが別個の案件であることには違いありません。最高裁判決までいけば新たな基準として位置づけられるのは当然ですが、なかにはきわめて特異な例もあったりして、果たしてこれが参考となるのかどうか、また新たな悩みの種となります。

私が長年営んできた人事コンサルタント業は、現場サイドに立ったきわめて現実的なものです。一歩間違うと、独りよがりの決めつけに陥る心配もありますが、抽象的な理想論を振りかざしても、すぐに「どうぞお引き取りを」の世界です。その企業にとってその時点で何が適策と言えるのか、「押してもだめなら引いてみな」流で日々悩みながら実践に臨んでいます。発生する問題に対し、1つひとつ解決しながら、試行錯誤のもとに“行きつ戻りつ”の世界にどっぷり浸っているのです。

あらためて中小企業において求められる人事制度は何かを考えてみます。いわゆる“ブラック企業”とレッテルを貼られるのは問題外ですが、かと言って完全にホワイト企業で突き進められるのかと言えば、経営困難に陥ってしまいかねない危うさを常に感じています。私はこれを人事のリスクマネジメントとして重視してきました。中小企業にとってやってはならないことは何か、すぐにやらなくてはならないことは何か、じっくり時間をかけて見直すべきことは何なのか、これらのことははっきりととらえていく必要に迫られています。あいまいなところを埋めていくのが我々の役目だと感じています。

企業はまずは存続し、さらに発展を期すことを前提とした存在です。ときに反目することもありますが、私は会社側も労働者側も同じ価値観のもとでの相互の関係であると信念を持って関わってきました。人事は、対象が今ここに生きている“ヒト”であるということを常に認識しつつ、情報を共有し、相互理解のもとに動機づけられ、切磋琢磨してヒトは成長し、企業は発展していく、これに尽きると信じています。やる気をなくしてうまくいく人事は何ひとつありません。法は、このことについて配慮してくれるものではありません。

本書は法の解説書ではありません。まさに企業経営は生き物であり、コンサルティングはその都度その都度の決断が求められる世界です。中長期的な視野に立って企業の将来を真摯に考えること、一方で現場サイドの目線で足元をしっかり見据えながら、ステップアップ方式で着実に改革を進めていくこと、これを前提に記述したものです。ときに関連法規及びガイドライン案の表面的な趣旨にそぐわないところに違和感を持たれるかも知れませんが、本書はあくまでも現場で日々現実に対応していくことを重視するものですので、この点ご容赦ください。

二宮 孝 (著)
出版社 : 労働調査会 (2018/11/1) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

第Ⅰ編 同一労働同一賃金に向けて
1 これまでの人事労務管理
2 雇用環境の変化を振り返る
3 社員の側からみる
4 ガイドライン案をみる
5 改革に向けての基本スタンス
6 これからどう変わるか?
7 労働時間管理の行方~時間で管理するマネジメントからの脱却
第Ⅱ編に向けて

第Ⅱ編 実際のトータル人事制度設計−−コンサルティング事例から
序章 トータル人事コンサル開始前の相談

第1章 キックオフから現状診断へ

第2章 コース設定
人事制度のフレームワーク
コース区分の明確化
職掌の区分
パート等の契約社員

第3章 等級制度
人事システム全体の位置づけ
等級制度の設計

第4章 役割・職務分析
役割分析の意義
管理職の複線化としての見方
簡易版の職務評価

第5章 昇格・昇進制度
昇格・昇進制度の見直しの方向性
昇格基準・昇格判断の方式

第6章 月例賃金制度
賃金体系全体から
複合型賃金体系としてとらえる
年収単位で賃金要素をとらえる
職掌別にとらえる
手当の設計
基本給の設計
管理専門職の複線型賃金制度

第7章 賞与・退職金制度
賞与制度の再設計
退職金制度

第8章 人事評価制度
評価制度の基本的な考え方
評価制度設計のステップ
評価の区分
評価制度への具体的落とし込み
評価の運用

第9章 パート社員等非正規社員
パート社員の人事制度の基本的な考え方
パート社員の賃金制度の設計
パート社員の人事評価
有期から無期契約への転換
参考:人事制度運用規程の例

第Ⅲ編 同一労働同一賃金化のポイント−−キーファクター
序 非正規社員の側からみた優先実行課題とスケジュール
1 現状分析を進めるポイント~将来を見据え、自社の現状を直視する
第Ⅱ編第1章
2 人事区分を再編成するポイント
第Ⅱ編第2章
3 人事フレーム構想を再設計するポイント
4 賃金を再設計するポイント
5 人事評価を再設計するポイント
第Ⅱ編第8章
6 非正規社員の人事賃金の再設計
第Ⅱ編第9章
7 関連して実行すべきポイント
あとがき

※本書において、「ガイドライン案」とは、「同一労働同一賃金ガイドライン案」(2016年12月20日公表)を指します。

二宮 孝 (著)
出版社 : 労働調査会 (2018/11/1) 、出典:出版社HP

「同一労働同一賃金」のすべて 新版

同一労働同一賃金の背景から改正まで全てを学ぶ

本書は、働き方改革関連法のうち、同一労働同一賃金に関して、改正の経緯や制度・条文の背景等について解説しています。改正の内容やガイドラインの補足等だけを把握したい方から、制度の内容、背景等まで学びたい方まで、幅広い方が読むことができます。

水町 勇一郎 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/9/30) 、出典:出版社HP

はしがき

2016(平成28)年9月に「働き方実現会議」が設置され,同年12月に「同一労働同一賃金ガイドライン」,2017(平成29)年3月には「働き方改革実行計画」が策定された。本書の初版は,その約1年後の2018(平成30)年2月に発行された。その時点ではまだ,パートタイム労働法,労働契約法,労働者派遣法の改正案を含む「働き方改革関連法案」は国会に提出されていなかった。初版では,同一労働同一賃金ガイドライン案,働き方改革実行計画および,働き方改革関連法案の作成過程等を通じて明らかになっていた点を中心に,日本の「同一労働同一賃金」改革の背景と具体的な内容を明らかにすることを心掛けた。

その後,2018(平成30)年4月に働き方改革関連法案が国会に提出され,同年6月29日に成立した。国会で同法案が審議されていた同年6月1日には,最高裁でハマキョウレックス事件と長澤運輸事件の二判決が出され,この改革の動きを加速させることとなった。同法案が国会で成立したことを受けて,同一労働同一賃金ガイドライン案を基本として同一労働同一賃金ガイドラインが作成され,同年12月28日,同法に基づく「指針」として正式に発出された(正式名称は「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」〔平成30・12・28厚生労働省告示430号〕)。これらの動きと並行して,有期雇用労働者と無期雇用労働者間の待遇格差の是正をめぐる裁判例の展開もみられている。

2020(令和2)年4月には,働き方改革関連法によって改正されたパートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法が施行される(中小事業主についてはパートタイム・有期雇用労働法は2021〔令和3〕年4月に施行)。今回の新版では,初版以降の新たな動き・展開を踏まえて内容をアップデートしつつ,全国各地から新たにいただいたさまざまな疑問や質問に答え,改正法の内容についてもQ&A方式をとってよりわかりやすく解説するという工夫を施した。

改正法の施行に向けて,実務に携わる多くの方々が本書を手にとり,より正確な最新情報を踏まえて準備を進めていっていただけたら,そして,改正法の施行準備を越えて,「働き方改革」の先を見据えた企業経営・人事労務管理改革の方向性を考えるヒントを本書からつかんでいただけたら,うれしい。

2019年8月 プールの水も温い盛暑のなかで
水町勇一郎

水町 勇一郎 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/9/30) 、出典:出版社HP

目次

はじめに
「同一労働同一賃金」の衝撃

第1章
法改正の経緯
「一億総活躍」「働き方改革」と「同一労働同一賃金」
1. 伏線
——2015年労働者派遣法改正と「同一労働同一賃金推進法」の制定
2. 一億総活躍国民会議

3. 「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」と「働き方改革実現会議」
(1) 「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」の設置と検討
(2) 「働き方改革実現会議」の設置
(3) 第4回実現会議
(4) 検討会「中間報告」
(5) 第5回実現会議——「ガイドライン案」の公表
(6) 第6回実現会議
(7) 検討会「報告書」
(8) 第8回・第9回実現会議
(9) 第10回実現会議——「働き方改革実行計画」の決定

4. 法案の作成
(1) 労働政策審議会「同一労働同一賃金部会」での審議と報告
(2) 法律案要綱の作成

5. 法案の成立
(1) 国会提出に至るまでの経緯
(2) 国会での審議状況と法案の成立

6. 法施行に向けての準備
——省令とガイドライン等の作成・発出
(1) 労働政策審誠会「同一労働同一賃金部会」での審議と答申
(2) 省令,ガイドライン等の発出と施行に向けた取組み

第2章
法改正の前史
「正規・非正規格差」とこれまでの法的対応
1. 臨時工問題からパートタイム労働問題へ

2. 1993年パートタイム労働法の制定へ
(1) 「パートタイム労働者保護法」「パートタイム労働者福祉法」の頓挫
(2) 「パートタイム労働法」の制定

3. 1993年パートタイム労働法の課題と2007年改正
(1) 1993年パートタイム労働法の性格と課題
(2) 改正に向けた検討・審議
(3) 2007年改正

4. 2012年労働契約法改正と2014年パートタイム労働法改正
(1) 2009年政権交代と新成長戦略
(2) 2012年労働契約法改正
(3) 2014年パートタイム労働法改正
(4) 小括——現行法の状況と課題

5. 法改正前の学説と裁判例の状況
(1) 学説の状況
(2) 裁判例の状況
(a) 公序違反性が争われた例
(b) 「差別的取扱いの禁止」規定違反性が争われた例
(c) 「不合理な労働条件[待遇]の禁止」規定違反性が争われた例

第3章
改正法の内容
改革の趣旨と改正法条文解説
1. 本改革の趣旨・目的

2. パートタイム・有期雇用労働法(パートタイム労働法,労働契約法改正)
【題名】
【定義】
【基本的理念】
【労働条件に関する文書の交付等】
【就業規則の作成の手続】
【不合理な待遇の禁止】
(1) 改正前の規定との関係と本条の趣旨
(2) 本条の射程と性格
(a) 「待遇」
(b) 比較対象となる「通常の労働者の待遇」
(c) 短時間労働者であることまたは期間の定めがあること「を理由とする」か?
(d) 「有利な」待遇も禁止されるか?
(e) 「不合理な」「相違」の意味——「均衡」か「均等・均衡」か?
(f) 本条と異なる労働者の希望等を考慮してよいか? 本条の強行法規性
(3) 「不合理」性の判断
(a) 判断枠組みと考慮要素
(b) 判断のポイント・留意点
(c) 具体的判断
(4) 立証責任と効果
【通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止】
(1) 本改正による適用対象者の拡大
(2) 本条の内容と射程
(3) 効果
【福利厚生施設】
【事業主が講ずる措置の内容等の説明】
【指針】
【紛争の解決等】
【施行期日・経過措置等】

3. 労働者派遣法改正
【契約の内容等】
【不合理な待遇の禁止等】
(1) 不合理な待遇の禁止——「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」
(2) 不利益取扱いの禁止
【職務の内容等を勘案した賃金の決定】
【就業規則の作成の手続】
【待遇に関する事項等の説明】
【派遣先への通知】
【派遣元管理台帳】
【適正な派遣就業の確保等】
【派遣先管理台帳】
【紛争の解決】
【公表等】
【施行期日・検討規定】

4. 留意点
(1) パートタイム・有期雇用・派遣労働者以外はどうなるか?
(2) 企業(事業主)を超えた企業間・産業間の待遇格差はどうなるか?
(3) 非正規労働者の待遇改善のために正規労働者の賃金等を引き下げてよいか?

第4章
法改正の基礎
外国法(フランス法,ドイツ法)の概要と日本との異同

1. 欧州の法制度の枠組み
(1) 「客観的理由のない不利益取扱いの禁止」原則
(2) 同原則の特徴

2. 格差を正当化する「客観的理由」
(1) 「客観的理由」の分類と内容
(2) 「客観的理由」の判断の方法

3. 日本の「同一労働同一賃金」改革
——欧州との共通性と日本の独自性
(1) 「同一労働同一賃金」改革の骨子
(2) 欧州との共通性
(3) 日本の独自性

4. 小括——今後の課題

むすび
「同一労働同一賃金」の実現に向けて

巻末資料
巻末資料1 一億総活躍国民会議 第5回 資料(水町勇一郎)
巻末資料2 「ニッポン一億総活躍プラン」
巻末資料3 「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会中間報告」
巻末資料4 「同一労働同一賃金ガイドライン案」
巻末資料5 「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会報告書」
巻末資料6 「働き方改革実行計画」
巻末資料7 労働政策審議会 同一労働同一賃金部会 「同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)」
巻末資料8 「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」
巻末資料9 働き方改革関連法に伴う省令・告示案
巻末資料10 「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(同一労働同一賃金ガイドライン)
巻末資料11 「労使協定方式(労働者派遣法第30条の4)『同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準』について」

あとがき

水町 勇一郎 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/9/30) 、出典:出版社HP

はじめに
「同一労働同一賃金」の衝撃

「本年取りまとめる『ニッポン一億総活躍プラン』では,同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えであります。」

2016(平成28)年1月22日,通常国会冒頭の施政方針演説において安倍晋三内閣総理大臣が述べたこの一言で,『同一労働同一賃金』の実現が急きょ政治スケジュールに上った。『一億総活躍国民会議』での議論を経て,同年6月2日に閣議決定された『ニッポン一億総活躍プラン』では,

①労働契約法,パートタイム労働法,労働者派遣法の的確な運用を図るため,どのような待遇差が合理的であるかまたは不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する(2016年度から2018年度までに策定・運用)

②欧州の制度も参考にしつつ,不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備,非正規雇用労働者と正規労働者との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め,労働契約法,パートタイム労働法,労働者派遣法の一括改正等を検討し,関連法案を国会に提出する(2018年度までに制度の検討,法案提出,2019年度以降に新制度の施行)

③これらにより,正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について,欧州諸国に遜色のない水準を目指すことが掲げられた。

2016年9月には,安倍総理を議長とし関係閣僚と民間有識者を議員とした「働き方改革実現会議」が設置された。そこでの議論を踏まえ,同年12月20日には,正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保することを目的とした「同一労働同一賃金ガイドライン案」が策定された。

2017(平成29)年3月28日には,働き方改革実現会議において「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。そのなかで,

①司法判断の根拠規定(均等・均衡待週)の整備
②労働者の待遇に関する使用者の説明の義務化
③行政による裁判外紛争解決手続の整備
④派遣労働者に関する法整備

を主な内容とする,パートタイム労働法,労働契約法,労働者派遣法の改正を図ることが謳われた。この「働き方改革実行計画」の決定を踏まえ,安倍総理は,

「働き方改革実行計画の決定は,日本の働き方を変える改革にとって,歴史的な一歩であると思います。戦後日本の労働法制史上の大改革であるとの評価もありました。……文化やライフスタイルとして長年染みついた労働慣行が本当に改革できるのかと半信半疑の方もおられると思います。…しかし後世において振り返れば,2017年が日本の働き方が変わった出発点として,間違いなく記憶されるだろうと私は確信をしております。」と述べている。

以上の政府方針をもとに,同年4月から,厚生労働省労働政策審議会の3つの分科会(労働条件分科会,職業安定分科会,雇用均等分科会)にまたがる同一労働同一賃金部会が設置された。同部会で「同一労働同一賃金に関する法整備について」の審議が重ねられ,同年6月には報告・建議,9月には法律案要綱の諸問・答申がなされた。

この答申に基づき作成されたパートタイム・有期雇用労働法案,労働者派遣法改正案等を含む「働き方改革関連法案」は,同年9月の衆議院解散,10月の総選挙を経て,2018(平成30)年4月6日,同年の通常国会に提出された。同国会冒頭の施政方針演説において,安倍総理は,

「長年議論だけが繰り返されてきた『同一労働同一賃金』。いよいよ実現の時が来ました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し,『非正規』という言葉を,この国から一掃してまいります。」と述べていた。

同法案をめぐる国会審議では,企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大に関する「不適切データ」問題を受けて裁量労働制に関する部分が法案(労基法改正案)から削除されるといった経緯を経て,法案が国会に提出された後,同年5月31日に衆議院本会議で可決,6月29日に参議院本会議で可決・成立した。この法律の「同一労働同一賃金」に関する部分(パートタイム・有期雇用労働法,改正労働者派遣法)は,2020(令和2)年4月1日に施行される(中小事業主についてはパートタイム・有期雇用労働法の施行は2021〔令和3〕年4月1日)。

2016年1月に政治的に打ち上げられ,2018年6月に国会で改正法が成立し,2020年4月から改正法が施行されることとなった「同一労働同一賃金」改革は,その議論の「スピード感」のみならず,その「内容」面でも日本の企業や労働組合などに衝撃1) を与えるものとなっている。正規労働者と非正規労働者問のすべての待遇について均等・均衡待遇の確保を図ろうとするこの改革は,旧来の「正規・非正規」格差を大きく狭めようとするだけでなく,正規労働者を中心とした日本の伝統的な人事労務管理制度に見直しを迫るものであるからである。また,その改革のスピードの速さと規模の大きさゆえ,改正法が成立し施行時期が近づいてきている現段階でも,その趣旨や具体的な内容について,法曹関係者や現場の労使等の間でなお誤解が残っている部分は少なくない。

本書は,「同一労働同一賃金」をめぐる今回の改革の背景と具体的な内容を明らかにすることによって,改革がその趣旨に沿って着実かつ円滑に進められるよう,当事者や関係者に本改革の正確な理解を促すことを目的としたものである。

水町 勇一郎 (著)
出版社 : 有斐閣 (2019/9/30) 、出典:出版社HP

同一労働同一賃金Q&A-ガイドライン・判例から読み解く

ガイドライン・判例を整理する

働き方改革関連法の施行に際し、知っておくべき実務上の留意点や判例等について解説しています。一問一答形式になっており、条文やガイドラインを読んだだけではわからないポイントについて解説しています。判例は、問題となった待遇ごとにまとめられており、今知りたい判例・裁判例を見つけやすくなっています。

高仲幸雄 (著)
出版社 : 経団連出版 (2019/5/22) 、出典:出版社HP

はしがき

働き方改革関連法によって、非正規社員の均衡待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)に関する法改正が行われました。今後、企業においては、判例・裁判例や「同一労働同一賃金ガイドライン」を踏まえて、非正規社員の待遇の見直しや待遇差に関する説明義務への準備等の対応が必要になります。もっとも、このような作業を行うにあたっては、改正法令の理解に加え、近時の裁判例も踏まえる必要があり、自力では相当の時間と労力を要します。

そこで、本書では、Q&Aの形式で必要な情報や実務上の留意点を説明するとともに、これまでの判例・裁判例を収集・整理しました。人事労務に携わる皆様に本書が少しでもお役に立てば幸いです。
本書の発行にあたっては、経団連労働法制本部の皆様から多大な支援をいただき、また経団連出版の皆様にも大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2019年3月
弁護士 高仲幸雄

高仲幸雄 (著)
出版社 : 経団連出版 (2019/5/22) 、出典:出版社HP

目次

はしがき
凡例

Ⅰ Q&A編

1 総論
Q1 働き方改革関連法の概要
働き方改革関連法の成立によって、非正規社員の均衡待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)について改正があったとのことですが、具体的には、どのような法律が改正されたのですか?

Q2 均衡待遇均等待遇(同一労働同一賃金)に関する法規制
非正規社員の均衡待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)は、正社員と同じ仕事をしていれば、賃金を同一にしなければならないという制度ですか? 賃金以外の待遇も問題になるのですか?

Q3 均衛待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)に関する改正概要
均衡待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)に関する法改正の概要を教えてください。

Q4 均衡待遇・均等待遇の内容
パート・有期法や改正派遣法でいう「均等待遇」や「均衡待遇」は、どのような規制ですか? 非正規社員の手当額等で、正社員よりも有利な労働条件(待遇)を設定することも法違反になるのですか?

Q5 施行時期
同一労働同一賃金に関する法改正は、いつから施行されるのですか? 経過措置は設けられていますか?

Q6 中小事業主の経過措置
パート・有期法の施行において、適用が1年猶予される中小事業主は、どのような企業ですか?

Q7 改正法の適用範囲
均衡待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)の規制が適用されるのは、どのような社員ですか? 定年後の再雇用社員や労働契約法18条による無期転換社員、勤務地や職務が限定された正社員(限定正社員)にも適用されますか?

Q8 待遇差に関する説明義務
法改正によって、待遇に関する説明義務が強化されたとのことですが、どのような点が改正されたのですか?

Q9 均衡待遇・均等待遇(同一労働同一賃金)の規制違反の効果
均衡待遇・均等待遇に関する法規制に違反した場合は、どうなりますか?

Q10 行政による履行確保・裁判外紛争解決手続(行政ADR)
今回の法改正で、行政による助言・指導等や行政ADRの規定が整備されたとのことですが、どのような内容ですか?

2 均衡待遇・均等待遇の規制(パート・有期法8条、9条)
Q11 均衡待遇の規制内容
パート・有期法8条の「均衡待遇」は、どのような規制ですか?同条で禁止される「不合理な待遇差」は、どのように判断されるのですか?

Q12 均等待遇の規制内容
パート・有期法9条の「均等待遇」は、どのような内容の規制ですか? 同条で禁止される「差別的取扱い」は、どのように判断されるのですか?

Q13 「職務の内容」の判断方法
パート・有期法8条や9条で規定されている「職務の内容」は、どのような内容ですか? また、その同一性は、どのように判断するのですか?

Q14 「職務の内容及び配置の変更の範囲」の判断方法
パート・有期法8条や9条で規定されている「職務の内容及び配置の変更の範囲」とはどのようなものですか? また、その同一性はどのように判断するのですか?

Q15 「その他の事情」の判断方法
パート・有期法8条の考慮要素としてあげられている「その他の事情」には、どのようなものが該当するのですか?

Q16 比較対象となる「通常の労働者」
パート・有期法8条や9条の均衡待遇・均等待遇の規制で、待遇差の比較対象となる「通常の労働者」は、どのような社員をいうのですか?

Q17 同一労働同一賃金ガイドライン
「同一労働同一賃金ガイドラインは、どのようなもので、いつから適用されるのですか? どのような社員や待遇が対象なのですか?

Q18 ガイドライン案との相違
同一労働同一賃金ガイドラインは、「同一労働同一賃金ガイドライン案」から修正された部分があると聞きました。どのような部分が修正されたのですか?

Q19 定年後再雇用①
定年退職後の再雇用社員でも均衡待遇や均等待遇の規制は適用されるのでしょうか?

Q20 定年後再雇用②
定年退職後の再雇用社員の労働条件については、均衡待遇・均等待遇の規制以外に留意すべき点はありますか?

3 待遇ごとの検討
Q21 問題となる待遇差
均衡待遇や均等待遇の規制では、どのような待遇差が問題となるのですか?

Q22 待遇差が問題となる社員
正社員間や労働契約法18条による無期転換社員や限定正社員との間にも均衡待遇や均等待遇の規制は適用されますか? 親会社やグループ会社間の待遇差は問題となりますか?

Q23 同一労働同一賃金ガイドラインや判例等の検討方法
同一労働同一賃金ガイドラインや、均衡待遇・均等待遇に関する判例・裁判例は、どうなっていますか?

Q24 基本給
基本給に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q25 昇給
昇給に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q26 賞与
賞与に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q27 退職金
退職金に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q28 業務・作業内容に関連する手当
特殊作業手当や営業手当等のように業務・作業内容に関連する手当に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q29 役職手当
役職手当に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q30 特殊勤務手当・精皆勤手当
特定の勤務時間・勤務日に支給される特殊勤務手当に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一賃金ガイドラインや判例・裁判例では、どうなっていますか?

Q31 割増賃金・年末年始手当
時間外・深夜・休日の割増賃金に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? また、年末年始手当や勤務時間外の呼出・待機手当等については、どうですか?

Q32 勤務地・通勤・住宅に関する手当
単身赴任手当や地域手当などの手当について待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? また、住宅手当や通勤手当については、どうですか?

Q33 家族手当
配偶者手当や扶養手当などの家族手当について待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例はどうなっていますか?

Q34 食事手当
食事手当のような食費補助について待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例はどうなっていますか?

Q35 休暇・健康診断
休暇や健康診断に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例はどうなっていますか?

Q36 休職
休職に関する待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例はどうなっていますか?

Q37 福利厚生・教育訓練等
福利厚生施設の利用や教育訓練等についての待遇差を検討する場合は、どのような点に注意すべきですか? 同一労働同一賃金ガイドラインや判例・裁判例はどうなっていますか?

4 待遇差の説明義務(パート・有期法14条2項)
Q38 比較対象となる通常の労働者
パート・有期法14条2項で規定された待遇差に関する説明義務において、比較対象となる「通常の労働者」とは、どのような社員ですか?

Q39 待遇の相違(待遇差)の内容
パート・有期法14条2項で説明する待遇の相違(待遇差)の内容・理由とは、具体的にはどのような内容ですか?

Q40 待遇の相違(待遇差)の説明方法
パート・有期法14条2項に基づき待遇の相違(待遇差)の内容・理由の説明が求められた場合、どのような方法で説明するのですか?

Q41 説明にあたっての注意点
パート・有期法14条2項に基づく比較対象者(通常の労働者)との待遇差に関する説明を求められた場合、どのような点に注意して対応すべきですか?

5 派遣労働者の待遇
Q42 「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」
派遣労働者の均等待遇・均衡待遇については、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」があると聞きましたが、どのような点が異なるのでしょうか?

Q43 派遣先による待遇情報の提供
改正派遣法では、派遣先から派遣元(派遣会社)に対して、どのような待遇情報の提供が必要になるのですか? 「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」では提供する情報は異なるのですか?

Q44 労使協定で定める事項(労使協定方式)
「労使協定方式」をとる場合、労使協定では、どのような事項を定める必要がありますか? 派遣元(派遣会社)が「労使協定方式」をとる場合に、どのような点に注意すべきですか?

Q45 派遣労働者の待遇差に関する説明義務
改正派遣法で新設された待遇に関する説明義務は、どのようなものですか? 「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」では説明内容は異なるのでしょうか?

Q46 派遣元における改正法対応の注意点
派遣元(派遣会社)は、派遣先との均等待遇・均衡待遇の規制(「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」)を検討するにあたって、どのような点に注意する必要がありますか?

Q47 派遣先における改正法対応の注意点
派遣先は、均等待遇・均衡待遇の規制(「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」)について、どのような点に注意する必要がありますか?

6 その他
Q48 行政による履行確保(助言・指導・勧告等)
今回の法改正で、行政による履行確保(助言・指導・勧告等)の精度は、どのような点が改正されたのですか?

Q49 紛争解決援助・調停
今回の法改正で、紛争解決援助や調停について、どのような点が改正されたのですか? Q50 改正法を踏まえた今後の検討
同一労働同一賃金に関する改正法(パート・有期法8条、9条等)に対応するための手順や注意点を教えてください。

Ⅱ 参考資料編

資料1 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)新旧対照条文
資料2 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)新旧対照条文
資料3 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(平成五年労働省令第三十四号)
資料4 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和六十一年労働省令第二十号)
資料5 短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号)
資料6 均衡待遇・均等待遇をめぐる判例・裁判例の概要

高仲幸雄 (著)
出版社 : 経団連出版 (2019/5/22) 、出典:出版社HP

同一労働同一賃金 対応の手引き

実務に役立つ同一労働同一賃金に関する解説

同一労働同一賃金に関する主要な裁判例を、基本給、手当、賞与・退職金等の項目別に詳細に分析した上で、ガイドライン、主要裁判例を踏まえた、実務的な対応について解説しています。Q&Aも掲載されており、実務上非常に役に立つ一冊となっています。

TMI総合法律事務所 働き方改革サポートデスク (著, 編集)
出版社 : 労務行政 (2019/7/24) 、出典:出版社HP

はしがき

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面し、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが重要な課題になっています。このような状況を受けて、働き方改革関連法が2018年6月29日に成立し、2019年4月1日には時間外労働の上限規制、5日間の年次有給休暇の時季指定義務、2020年4月1日には、同一労働同一賃金に関する規制が施行されることになっています。

同一労働同一賃金については、2018年6月1日に二つの重要な最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)が出されました。これらの判例は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した改正前の労働契約法20条の解釈について統一的な見解を示しており、2020年4月に施行される改正法の解釈にも重要な影響を与えるものとなります。以上のように、同一労働同一賃金に関する実務的な対応は待ったなしの状況であり、その実務的な対応について、様々な裁判例が出ているものの、未解決の分野も多く、また、企業にとっては人事制度の見直しに直結する問題でもあり、その対応には多くの労力が必要となります。

そこで、本書は、同一労働同一賃金に関する主要な裁判例を詳細に分析するとともに、実務的な対応も含めた全般的な解説をすることを目指したものです。本書は、弊所で労働法を専門に取り扱う弁護士約20名で組織した働き方改革サポートデスクのメンバーで執筆したものであり、働き方改革サポートデスクとしては今後も企業の皆様に様々なサービスを提供していきたいと考えております。

本書を担当していただいた労務行政研究所の井村憲一様には示唆に富んだご意見をいただきました。心より御礼申し上げます。本書が、企業の皆様や実務家の方にとって、同一労働同一賃金規制への実務対応の一助となれば幸いです。

2019年6月
執筆者を代表して
TMI総合法律事務所
弁護士 近藤圭介

TMI総合法律事務所 働き方改革サポートデスク (著, 編集)
出版社 : 労務行政 (2019/7/24) 、出典:出版社HP

目次

同一労働同一賃金への実務対応チャート

第1章 いわゆる同一労働同一賃金とは
1 政府の狙い

2 いわゆる同一労働同一賃金規制の中身
[1] 対象
[2] 規制内容
[3] 知っておくべきポイント
[4] 違反した場合に考えられる労働者からの法的請求
(1) 労働契約に基づく地位確認請求およびその地位に基づく賃金請求
(2) 不法行為に基づく損害賠償請求
(3) 会社法429条1項に基づく損害賠償請求

3 法改正の概要
[1] 概要
[2] 不合理な待遇の禁止(パート有期法8条)
[3] 差別的取り扱いの禁止(パート有期法9条)
[4] 福利厚生施設(パート有期法12条)
[5] 待遇の説明義務(パート有期法14条)
[6] 実行確保措置の整備(パート有期法18条)
[7] 紛争解決手段の整備(パート有期法23条~25条)

第2章 主な裁判例の動向
1 主な裁判例の一覧

2 ハマキョウレックス事件
[1] 正社員と契約社員の職務の内容、人材活用の仕組み、賃金体系等の比較
[2] 1審、2審、最高裁判決の結論の比較
[3] 最高裁判決の要旨
[4] 分析
(1) 本判決の不合理性の判断
(2) 法改正後の本判決の意義等

第3章 同一労働同一賃金ガイドライン
1 概要

2 総論部分のポイント
[1] 「第1 目的」
[2] 「第2 基本的な考え方」

3 本指針の性格

第4章 「不合理」と判断されないために(短時間・有期雇用労働者)
1 基本給
[1] 基本給とは
[2] ガイドラインの解説
(1) ガイドラインの基本的な考え方
(2) ガイドラインが示す具体的な例
[3] 参考裁判例の解説
[4] 実務上の検討

2 各種手当
[1] 役職手当・資格手当
[2] 特殊作業手当
[3] 特殊勤務手当
[4] 精皆勤手当
[5] 食事手当(給食手当)
[6] 家族手当
[7] 住宅手当・単身赴任手当
[8] 地域手当
[9] 通勤手当・出張旅費
[10] 時間外労働手当・深夜労働手当・休日労働手当

3 賞与
[1] 賞与とは
[2] ガイドラインの解説
(1) ガイドラインの基本的な考え方
(2) ガイドラインが示す具体的な例
[3] 参考裁判例の解説
[4] 実務上の検討
(1) 賞与の性質に応じた不合理性の判断
(2) 賞与の性質決定
(3) 実務上の対応

4 退職金
[1] 退職金とは
[2] ガイドラインの解説
[3] 参考裁判例の解説
[4] 実務上の検討
(2) 退職金の性質決定
(3) 実務上の対応

5 休職・休暇・福利厚生
[1] 休職
[2] 年次有給休暇
[3] その他の法定外休暇
[4] 福利厚生施設
[5] 社宅・社員寮

第5章 「不合理」と判断されないために(定年後再雇用)
1 長澤運輸事件の概要
2 正社員と再雇用社員の賃金等の比較
3 1審および控訴審の判断の比較
4 最高裁判決の概要

5 本判決の分析
[1] 労働契約法20条における不合理性の判断基準
[2] 本件における労働条件の相違の不合理性
(1) 再雇用社員の特殊性
(2) 能率給および職務給
(3) 精勤手当
[3] 今後の実務対応

6 その他裁判例

7 労働条件の提示自体が不法行為となる場合
[1] 事案の概要
[2] 判決内容の検討
[3] 本件が実務に与える影響

第6章 「不合理」と判断されないために(労働者派遣)
1 不合理な待遇の禁止
[1] 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇(派遣先均等・均衡方式)
[2] 派遣元における労使協定で定める以上の待遇(労使協定方式)
[3] 内容変更時の情報提供義務
[4] 追加情報の提供その他の協力配慮義務
[5] 派遣料金の交渉における配慮

2 派遣労働者に対する説明義務の強化
[1] 派遣先均等・均衡方式の場合
[2] 労使協定方式の場合

3 適正な就業の確保等
4 紛争解決
5 違反時の制裁
6 今後の対応

第7章 違法状態の是正
1 待遇差是正に向けた各社の動き

2 違法状態の是正
[1] 待遇(労働条件)の変更による違法状態の是正
(1) 非正規従業員の待遇改善
(2) 正規従業員の待遇の引き下げ(不利益変更)
(3) 非正規従業員の待遇改善(正規従業員化)
[2] 職務の内容等の見直し
[3] ガイドラインが示す不適切な是正方法
(1) 待遇水準の低い通常の労働者を設けること
(2) 不合理な待遇の相違等が残る形での職務内容等の分離

3 待遇差是正に向けて

第8章 同一労働同一賃金をめぐるQ&A
Q1:「同一労働同一賃金」規制の適用対象
Q2:法違反の制裁
Q3:ガイドライン違反の場合の制裁
Q4:「賃金」以外への適用の有無
Q5:退職金・企業年金制度の有期雇用者への適用
Q6:基本給の決定要素が複数ある場合の対応
Q7:人材獲得・定着を目的とした待遇差
Q8:ある手当の代わりに他の手当を支給する取り扱い
Q9:非正規雇用の処遇改善で利用できる助成金
Q10:異動による不合理な待遇差の解消
Q11:同一労働同一賃金の実現と年功型賃金制度

資料1 短時間労働者であるか否かの判定方法
資料2 同一労働同一賃金裁判例集

TMI総合法律事務所 働き方改革サポートデスク (著, 編集)
出版社 : 労務行政 (2019/7/24) 、出典:出版社HP