先生は教えてくれない就活のトリセツ – ESで2社落ちたら何か問題があるはず?

本書は、社会学、ライフキャリア論を専攻している田中研之輔氏によって著されたもので、ES提出の書類選考から次の段階の選考に進めないという壁にぶつかっている全ての就活生を対象としています。

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人事担当者にとっては、選考に落ちる理由も選考を通過する理由も、明確な根拠を示して答えることができるとのことです。つまり、逆に言えば、人事担当者の採用基準をひとつひとつ越えていけば、選考は着実に通過していきます。本書はそのようなプロローグから始まり、就活生は単線的な準備をするのではなく、就活の全体構造を把握し、苦手箇所から対策して、就活で問われる資質や経験をそれぞれの状況に応じて何度も繰り返しながらレベルアップをはかる対策をする方が結果を出しやすいとも述べられています。

第1章は「入社後に後悔しない企業の選び方」と題され、まず自己分析よりも多岐にわたる業界分析を詳しく行うことが大切であり、関心のある業界については夢や憧れからいったん距離を置き、客観的に自身の関心を捉えることが必要と述べられています。また、興味のない業界について調べることも社会の広がりを実感するためには重要であり、その分析作業が就活力の向上にも繋がります。企業選びにおいては、「産業・市場分析」の視点によって変化に柔軟に対応できる企業であるかどうか、「職場・組織特性」の視点によって自信が働きやすい企業であるかどうか、「人柄」の視点によって自身に合った企業であるかどうか、を判断して候補を絞るのが良いとのことです。

第2章は「100%突破するエントリーシートの書き方」と題され、自己紹介をする際にはエピソードを交えて具体的にどんな人間であるのかを述べること、ありきたりなものではなく相手の関心を引きつける内容であること、短所と長所の述べる際には相手の立場に立ち、相手がどう感じるかを考えて書くことが重要であると述べられている。どのような設問にせよ、ESでは人事の心を掴むために、個性的でありながら、かつ相手に届けるという視点を持って表現することが大切であると言えます。

第3章は、「一番役に立つインターンの活かし方」に関して述べられています。インターンは自身が企業で働くというプレ体験であり、職種や業種を絞り込む大きな判断材料となります。インターン参加によって望める変化は、大学から職場への環境、大学の友人から職場の同僚へのネットワークの変化などがあり、またグループワーク、論理的思考、時間管理能力の大切さを学べるという変化もあるとのことです。また、インターンに参加したことで前まで抱いていたその仕事へのイメージと実際の内容に失望したというネガティブな経験ができることも大きな意義であると言えます。インターンは考えるよりも一歩踏み出して行動に移して見ることが大切であるということがこの章では最後にも述べられています。

第4章は「しくじらない面接の受け方」と題され、まず表情の身だしなみを整えること、具体的には、同僚として一緒に働きたいと思えるようなポジティブな印象の表情づくりが大切であると述べられ、また、心地の良い声の大きさや会話のリズムを持っているかどうかも大切であると述べられています。次にグループワークに関しては、自身の意見だけを主張するのではなくグループ全体の議論を活発にさせる話題提供ができることや、議論のまとめも他メンバーに振りつつ協力してできるような学生は目に留まりやすいという。個人面接においては、恐れを抱くのではなく、自然体であることで、人事がいかに一緒に働きたいと思わせることができるかが大切です。

第5章では「就活を超える学び方」と題され、学生時代には早めに自分の将来について自分が決めるという意識を作ることが大切であると述べられています。また、社会人と交流する機会を増やすこと、相手に関心を抱いてもらいやすい話の伝え方を練習すること、ディスカッション力や企画力を日頃から磨くことは、就活を越えて自身の役に立つものであると言えなす。

本書は、内定をゴールにした就活ではなく、働きだした先を見据えるきっかけづくりの就活にしてほしいということを伝えるためのものであると、「就活で人生は決まらない」と題されたエピローグでは述べられています。最終的には就活を通じて自己成長をはかり、その後の人生を自身の能力で上手く生き抜くことが何より大切であるということが、本書を読むと分かりしてそのために必要な、学生にはなかなか見えづらい就活における留意点も見えてきます。

田中研之輔 (著)
出版社: 筑摩書房 (2018/7/10)、出典:amazon.co.jp