博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本 (大和出版)

【最新 – 伝え方・話し方を学ぶためのおすすめ本 – 考えの適切な伝え方の入門を学ぶ】も確認する

思いを言葉にするための25のメソッド

博報堂スピーチライターが紹介する25のメソッドを実践することで、“思いを言葉にする力”をたったの5日間で身につけることができます。「①頭の中にあるものを知る」「②考える習慣をつける」「③論理的に発想する力をつける」「④真に伝わる表現力を磨く」「⑤言葉に説得力を持たせる」という5つの段階を踏んだ内容となっています。

はじめに 「思いを言葉にする力」、持っていますか?

見えない、聞こえない、話せない、三重苦に見舞われたヘレンケラー。
サリヴァン先生は、彼女の手に井戸水を注いでは、「w-a-t-e-r」と指文字で書きました。はじめは何をされているのか、なんのことだかわかりません。
しかし、ヘレンケラーは、サリヴァン先生の粘り強い行動によって、気づきます。
「もしかして、この物体が、『w-a-t-e-r』なの?」
“もの”にはすべて、名前がある。そうわかったヘレンケラーは、その日の夕方までに30もの単語を覚えました。

人間が1歳から2歳までに覚える言葉の数が、200語程度。それが5歳になると、5000語から1万語も習得できるようになるといいます。
しかし、誰もが努力なしに語彙が増えるわけではありません。「あれは、なんて言うんだろう」「この気持ちを、どんな言葉で言えばいいんだろう」「自分の考えは、なんと言えば伝わるんだろう」と考え、試すうちに言葉は身につくのです。
何もしなければ、「かわいい」「やばい」「すごい」「アレ持ってきて」「びみょう」などといった言葉で答えるしかない。
本も読まずに、「やばい」で会話が成り立つような同世代の友だちとばかり話していたら、自分の考えをまとめる力も、人に伝える力もつくはずがありません。
社会人になると、自分とはひと回りもふた回りも歳の離れた人たちと、同じ土俵で仕事をしなければなりません。
会議、商談、プレゼン、レポート、企画書、報告・連絡・相談……など、さまざまな場面において、何よりも大切なのが「思いを言葉にする力」です。ビジネスの現場では、考えていることをアウトプットできなければ評価されることはありません。

この本は、そんな学生時代の語彙力不足や、表現力不足から抜け出せずに困っているあなたに向けて書きました。
大丈夫です。あなたのような人は世の中にたくさんいます。否、むしろ大半の人が的確な言葉を思いつけず、考えをまとめられず、伝え方を知りません。
ですから、これからこの本で一緒に学んでいきましょう。まだ十分間に合います。

さて、ここで自己紹介をしておきましょう。
私は、博報堂という広告会社に35年間勤めています。
これまでずっとコピーやCMを作る仕事をやってきました。最近は、スピーチライターといって、会社の社長さんや政治家のスピーチを書く仕事をしています。
一貫して、その商品やサービス、テーマに興味関心がない人をも巻き込む言葉を作ってきました。また、小学生から国の行政に関わる人たちまで、どんな世代の人たちにも伝わるような「短く、わかりやすく伝えるコツ」を日本中で教えてきました。

今回は、私のいままでの経験から、話すこと、書くことに劣等感を感じている人たちを救った珠玉の幻のメソッドを集めました。
その上、この本では、25のメソッドを5日間で学べるように構成しています。
土日を除いた1週間で、言葉を「思いつく」「まとめる」「伝える」方法を集中的に学ぶイメージです。
そうは言っても、たった5日間で「言葉の力」が高められるなど、イメージが湧かないですよね。では、この5日間のうちに、どのようなことを学んでいくのか具体的に見ていきましょう。

まず1日目は、「頭の中にあるものを知る」です。
ここでは、「語彙力が不足している」「頭が真っ白になってすぐに言葉が出てこない」という人に向けたトレーニング法が5つ紹介されています。体の中で、もっとも怠け者と言われる脳を目覚めさせ、テキパキと働くようにする、フィジカルなトレーニングメニューを並べました。

2日目は、「考える習慣をつける」です。
ついぼんやりと過ごしてしまいがちな日常生活の中に、「考える」ためのトレーニングを導入します。「なんでこうしたのか」と、自分の言葉や行動を振り返り、意味づけし、仮説を立てたりする。日々の生活に「考える機会」を増やしていきます。

3日目は、「論理的に発想する力をつける」です。
論理とは「筋道」のこと。一度頭の中を整理し、順番をつけたり、鳥の目で広く眺めてみたり、人に例えたりすることで、深く考えられるようになります。ここでは、そのための「考える型」を紹介します。

4日目は、「真に伝わる表現力を磨く」です。
ここでは、わかりやすいばかりでなく、人を共感させ、動かすためのテクニックを紹介します。言葉は、ただ相手に伝わるだけでは足りません。人が「あぁ、私のことだ」と“自分ごと化”し、「私から動こう」と行動に移させてはじめて、本当の意味で「伝わった」と言えるのです。そのための言い回しや、表現方法を伝授します。

5日目は、「言葉に説得力を持たせる」です。
4日目のメソッドを発展させて、「信憑性を持たせる数字の使い方」「話にリアリティを持たせる方法」など、より説得力が増す伝え方について言及します。また、その上で、「君は信頼できる」「あなたに会えてよかったよ」と相手に信用してもらい、よりよい関係を作るためにはどうしたらいいかまで、そのコツを5つ教えましょう。

以上の5日間を通して、頭の中にパッと適切な言葉が浮かび、自分の考えをまとめ、相手に伝わる表現ができるようになれば、公私に渡り、人から信頼と好感を寄せられるようになるでしょう。
「思いを言葉にする力」を身につければ、仕事に限らず、あらゆる場面で自信を持って表現することができ、本当に自分の納得する人生を送れるようになるのです。

この本では、皆さんと同様「言葉にできないコンプレックス」に悩む山崎大を主人公に、広告会社に勤める和田先生とのメールでのやりとりで、ストーリーが展開していきます。私の職業柄、「広告」に関する話が多く出てきますが、このメソッドは「広告」を仕事にする方のみならず、日常のさまざまな場面で活用できるものです。
それをご理解いただいた上で、われらが山崎大を紹介しましょう。
では、さっそく本文へとお進みください!

ひきたよしあき

目次

はじめに 「思いを言葉にする力」、持っていますか?

| story | 1 山崎大が「言葉の力」を身につける前夜
主な登場人物

| Day 1 | 頭の中にあるものを知る
| question. 1 | 思ったことがパッと言葉になりません
| method. 1 | 30秒で、ものの名前を10個言ってみよう
| question. 2 | なんでも「やばい」「すごい」「おもしろい」で片づけてしまいます
| method. 2| 形容詞をいったん自分の中から消そう
| question. 3 | 単語(点)は浮かぶけど、文章(線)にならないのですが……
| method. 3 | 電車の外の風景を、そのまま実況中継しよう
Day1 著者の解説
| question. 4 | そもそもボキャブラリーが、圧倒的に少ないんです
| method. 4 | 覚えた言葉を、「鏡の中の自分」に語りかけよう
| question. 5 | 必要なことだけを、効率的に覚える方法ってありますか?
| method. 5 | なにかを得たら、3つ以外は捨ててしまおう
Day 2 著者の解説1

| Day 2 |考える習慣をつける
| question. 6 | 「それは、ひとりよがりの考え方だ」ってよく言われます
| method. 6 | 「人の頭で考える」クセをつけよう
| question. 7 | 「なぜ?」と聞かれると、思わず戸惑ってしまいます……
| method. 7 | 日頃のなにげない行動ひとつにも、理由づけをしてみよう
| question. 8 | 話していると、自分でも何を伝えたいのかわからなくなりがちです
| method. 8 | 「○○しばり」で要点を明確にして、頭の中を整理しよう
Day 2 著者の解説2
| question. 9 | 「君の発言は、オリジナリティがない」と言われました……
| method. 9 | 「○○という考え方」で仮説を立ててみよう
| question. 10 | 考えているつもりなのに、アイデアが浮かばないんです
| method. 0 | 「ひとりブレスト」で脳みそに嵐を巻き起こそう
Day 2 著者の解説 1
| story2 | 「おい、山崎、新作ヨーグルトの社長原稿を書け!」

|Day 3 | 論理的に発想する力をつける
| question. 11 | 自分の発言に説得力を持たせるにはどうしたらいいですか?
| method. 11 | 物事の真意を知るために、「なぜ」を5回投げかけよう
| question. 12 | 思わぬ意見が出ると、すぐに頭が真っ白になってしまいます
| method. 12 | 哲学者ヘーゲルの「弁証法」で、ピンチをチャンスに変えよう
Day 3 著者の解説1
| question. 13 | 聞き手・読み手が何を求めているかわかりません
| method. 13 | 伝える1人を決め、その人をすみずみまでイメージしよう
column 版田ちひろとバーに行く
| question. 14 | もっと相手にわかりやすく説明する方法はありますか?
| method. 14 | 擬人化することで、相手と共通のイメージを持つ工夫をしよう
| question. 15 | なぜオチから考える必要があるんですか?
| method. 15 | ゴールから考えて、見えていないところを明らかにしよう
Day 3 著者の解説2
column 出井洋一郎 雑談の秘密

| Day 4 | 真に伝わる表現力を磨く
| question. 16 | 相手にとってわかりやすい、覚えやすい伝え方を教えてください!
| method. 16 | 書くときも話すときも、40文字を意識しよう
| question. 17 | 人に動いてもらうには、どんなふうに伝えればいいでしょうか?
| method. 17」「動かしたい動き」を具体的にたくさん入れてみよう
| question. 18 | ありきたりな表現になってメリハリがありません……
| method. 18 | 学校で習ってきた“常識”をいったん捨てよう
Day 4 著者の解説1
| question. 19| 「君の話はあいまいで具体性に欠ける」と言われてしまいます
| method. 19 | 望遠レンズでズームするように「伝えたいこと」に迫ってみよう
| question. 20 | 一体感を生み出すには、どうすればいいですか?
| method. 20| 主語を「私たち」にして、相手の気持ちを引き込もう
Day 4 著者の解説2
column 版田ちひろの褒め方

| Day 5 | 言葉に説得力を持たせる
| question. 21 | 聞き手・読み手を惹きつけるコツってありますか?
| method. 21 | 苦労や失敗談のネタを10個持とう
| question. 22 | 信憑性を高める「数字の使い方」を教えてください!
| method. 22」「あいまいな形容詞に変わる数字」、「『へえ~』という声が出る数字」だけを使おう
| question. 23 | どうすれば話にリアリティを持たせることができますか?
| method. 23 | メモ帳を持って街へ行こう
Day 5 著者の解説
| question. 24 | 「話しはじめ」でグッと人の心をつかみたいです
| method. 24 | 朝、その日の話題を仕込みまくろう
| question. 25 | 後味のよい終わり方にするには、どうすればいいですか?
| method. 25| 「ありがとう」をいまの5倍使うようにしよう
Day5 著者の解説2
| story 3 | 走れ、山崎大!
column 和田重信先生への最後のメール

おわりに SNS時代だからこそ、忘れてはいけないこと

本文デザイン/原田恵都子 (Harada + Harada)齋藤知恵子(sacco)
装幀者/原田恵都子(Harada + Harada)
イラスト/ヤギワタル