【最新 – 星野リゾートの経営を学ぶためのおすすめ本 – 参考となるビジネス理論からケーススタディまで】も確認する
星野経営の強み
星野リゾートは、他のホテルと何が違うのか。本書では、辛口で知られるホテル評論家である著者の3年間の徹底取材を通して、星野リゾートの強みと魅力に迫ります。旅好き、星野リゾートファン、そしてまだ泊ったことのない方にもお勧めの1冊です
星のや京都
平安貴族が別邸を構えた嵐山、渡月橋から専用の舟に乗り込み、約15分で到着。全25室がリバービュー。別荘のような心地よさと非日常感、モダニズムと伝統美が同居する空間
星のや東京
「進化した新しい日本旅館のカタチ。」を謳う。玄関で靴を脱ぎ、館内もほぼ畳でつながっているくつろぎの空間。夕食は日仏の料理が出合う「Nipponキュイジーヌ」を愉しみたい
星のや富士
国内初のグランピングリゾートとして開業。揺らめく炎の周りに集い、語らいの時間を過ごせる焚き火ラウンジは魅力的。ダッチオーブンでの調理を自身で行うこともできる
星のや竹富島
石垣島から高速フェリーで約10分。琉球諸島の南に位置する竹富島に誕生した“奇跡のホテル”。赤瓦の家並み、真っ白な味の砂、伝統建築を再現した集落
星のや軽井沢
星野リゾート誕生の地。日本の原風景を思わせる、川のせせらぎに包まれた隠れ家のような客室が建ち並ぶ。エリアには多様な施設が集まり、思いのままに過ごすことができる
界 津軽
四季の移ろいを感じる庭園を愛でつつ、樹齢2000年の古代の湯殿を楽しむことができる。伝統工芸の「津軽こぎん刺し」を現代風にアレンジして取り入れたご当地部屋も人気
界 日光
中禅寺湖の湖畔に面した一等地の宿で、3000坪に33室という贅沢な造りだ。男体山と湖面を眺めながら、ラウンジでゆったりとした時間を。ご当地部屋は「鹿沼組子の間」
界 鬼怒川
鬼怒川の渓流沿いに建つ温泉宿。2015年11月に新築開業した。とちぎ民藝のエッセンスが随所に感じられ、玄関前ホールでは益子焼の水琴窟の柔らかな音色を聞くことができる
界 川治
武家屋敷を思わせる長屋門、玄関へと続くアプローチには水車の軽快なリズム。館内に入ると里山の工房をイメージしたパブリックエリアが広がり、ほっこりステイが約束される
界 熱海
海原を一望できる空中湯上がり処を備えた日本旅館に加え、別館「ヴィラ・デル・ソル」が海辺のオーベルジュとしてファンに愛されている(2019年4月より改装のため休業)
界 伊東
2018年12月にリニューアルオープン。全館源泉掛け流しの温泉を楽しむことができる
界 箱根
渓流沿いに佇み、全室がリバービュー。風景に溶け込むような「半露天風呂」が自慢の宿。伝統工芸の寄木細工を施した特別室や、西洋の文化を取り入れた「明治の牛鍋」も名物だ
界 アンジン
2017年4月に新築開業。青い目のサムライ、三浦按針にちなみ、海や船旅に関する意匠が館内の至るところに。客室はオーシャンビュー、屋上には岩造りの絶景露天風呂を備える
界 遠州
全客室浜名湖を見下ろすロケーションが魅力。露天風呂付客室に加え、2つの大浴場がある。お茶の名産地ということもあって、檜の内湯では“茶葉入浴”も楽しむことができる
界 阿蘇
原生林に囲まれる大自然を体感しながらの滞在が魅力。阿蘇五岳を望むことができるテラスでは、カルデラ体操や朝食後のジャージー牛乳、コーヒーなど、楽しみ方もさまざまだ
界 松本
音楽の街とあってロビーではクラシックなどの演奏が行われる。ご当地部屋の「オーディオクラフトルーム」には手作りのスピーカーや楽器をイメージしたオブジェ、家具が置かれている
界 アルプス
2017年末に全て建て替えし、再開業。大町温泉郷に位置する「信州の贅沢な田舎を体感する温泉宿」。雪国のアーケード「雁木」に沿って両側に客室や温泉棟が並ぶ印象的な光景が広がる
界 加賀
建物は加賀地方の伝統的な建築様式が採り入れられた国の登録有形文化財。ロビーには希少な伝統工芸である加賀水引、客室には九谷焼や山中漆器があり、加賀文化を堪能できる
界 出雲
中庭を囲むように24の客室が配されており、プライベート感が高い。全客室に檜または信楽焼の露天風呂があり、さらに大浴場「神の湯」の露天風呂で月見酒を愉しめる
リゾナーレ八ヶ岳
メインストリート「ピーマン通り」では四季折々のイベントが行われ、にぎわう。屋内温水プール「イルマーレ」に噴水やスライダーを備えたキッズエリアも誕生し家族連れに最適
リゾナーレトマム
トマムの新名所となった雲海テラス。専用のゴンドラでアクセスし、絶景スポットで鑑賞する。雲形のハンモック「クラウドプール」ではまさに雲に浮かぶような体験ができる
リゾナーレ熱海
花火と海の青を基調にしたデザイン。入口にはクライミングウォール、最上階には「ソラノビーチ Books & Café」、外には「森の空中基地くすくす」と子どもが興味を持てるような工夫が
はじめに
星野リゾートは、いま日本で最も注目される宿泊施設の運営会社である。企業のスタンス、哲学はそうそう変わることはないが、観光が注目される昨今、星野リゾートの進取性や柔軟性は時に絶賛され、時に物議を醸し出す。
筆者は、星野リゾート創成期ともいえる時期に軽井沢に在住していた。日帰り温泉やレストランなどが開業し、住民として星野リゾートの恩恵にあずかるという貴重な体験をした。
当時はいまのような展開を想像することすらできなかった。私だけではない、往時を知る人々の誰がいまを想像できただろうか。
その後、私は経営コンサルタントからホテル評論家へ転身。利用者目線を中心に据えて、取材対象と「是々非々」の関係を貫いて情報発信をしている。ひとつのホテルでも、絶賛する場合もあれば、酷評する場合もある。
そのような視座で星野リゾートについてのメディア情報を見ていると、ポジティブなものは数多くあるものの、ニュートラルな立場で客観的、体系的な理解のためにまとめられた情報がほとんどないことに思い当たった。
ホテルジャーナルの世界では、施設の魅力を発信するメディア、ジャーナリスト、ライターは多い。一方、批判、ネガティブな情報の発信は、一般の方のSNSがその役割を大きく担うようになっている。
魅力を伝えるポジティブな情報の発信の重要性は認識しているが、ポジティブ情報は宣伝・PR情報と紙一重の性格を持つ。そのつもりはなくとも、結果として過度な表現により俗に言う提灯記事と見られることもある。ホテルから発信される情報を鵜呑みにせず、自分の目で見極め、評価を加えることが重要だ。だからこそ価値を咀嚼するフィルターは命である。
大衆を惹きつけるコンテンツには、三分の一の法則があると思う。周知性の高まりとともに「三分の一のファン層」「三分の一の無関心層」「三分の一のアンチ層」がそれぞれ極端な偏差となって現れ、過激な表現で評されるようになるのだ(実際の発信は“否”が多い)。これは自身の経験則でもある。
成長・拡大を続ける星野リゾートについても同じことが言える。多くのファンを生んでいる一方で、伝統的な日本旅館文化を重んじる人々や、環境・リゾート開発という観点からは批判的な声も根強い。
筆者は、一断面だけを捉えて評することをできる限り排し、ニュートラルな立場を貫くことに徹してきた。それゆえ、本書でも取材を進めるなかで、執筆の基本軸の修正を迫られる場面もあった。
何事にも良い面もあれば悪い面もある。感じたことは色眼鏡をかけずに素直に柔軟に書くこと、さまざまな立場の人に意見を求めることも本書では特に重視した。
星野リゾートとは何なのか?
これまで筆者は星野リゾート関連の多くの施設を体験してきたが、本書の執筆のため、未体験施設を含めて改めて訪れてみた。「巻末ガイド」では、全施設の網羅は叶わなかったが、星野リゾートの基幹3ブランド(「星のや」・「界」・「リゾナーレ」)を対象に、2017年末時点で開業している国内全施設(22施設)のガイドと、ホテル評論家視点での評価を記している。
施設ガイドの執筆というのはハードルが高い。見たまま・感じたままを書くことは、取材・執筆の基本であるが、変化の激しい宿泊業界において施設名が変わることも多い。取材時と執筆時、本の発売時で情報が変化することも当然といえる。感じたままを記した表現が事実と異なることも往々にしてある。
そのため、ガイド記事を作成する際には、執筆原稿を施設側にチェックしてもらうことは常識であり必須である。これは筆者に限った話ではない。事実、これまで書いた中で修正が1カ所もなかった原稿は皆無だった。
ただし、施設側のチェックは事実関係のみにとどめることが重要だ。過去、チェック時に事実と乖離するような過大なポジティブ表現への変更を求められたこともある。その時も含め、そういった要望には応じていない。
本書は星野リゾートの推奨本でも批判本でもない。企業研究本でもない。単なるガイド本でもない。
一貫した思いは、“星野リゾートを知ってほしい”ということ。“星野リゾートとは何なのか?”という大テーマを掲げ、「素晴らしい企業・宿泊施設だ」という情報のみにとどまらず、取材を経て感じた問題提起も含め、筆者の目線で書き綴ったつもりである。
ポジティブ情報、ネガティブ情報、ゲストの知り得ない情報など「星野リゾートってこういうものか」と理解して宿泊すれば、さらに興味深く体験できるかもしれないと考えた。“アンチ星野リゾート”にとっても、筆者のフィルターを通した星野リゾートを紹介することで、「やはりそういうところだったか」と納得するかもしれないし、もしかしたらファンになる可能性もあるかもしれない。
本書は、全6章のうち、第1章から第4章を通して星野リゾートの起源から経営手法、拡大と軋轢などについて触れている。
星野リゾートの歴史をまとめた第1章は、未体験者にも星野リゾートに興味を持ってもらえるだろう。ビジネスパーソンの視点でいえば、星野リゾートの独特の経営哲学に迫った第2章や第3章は必読だ。既に宿泊している読者にとっては、多様な意見を取材した第4章が今後の宿泊において大いに参考になるだろう。第5章では星野佳路代表に長時間にわたるインタビューを行い、星野リゾートへの疑問や批判などにも答えてもらった。
星野リゾートが躍進している秘密や課題を評論家の視点で取材し、分析をした。星野リゾートの大ファンの人にとどまらず、批判的な立場の人、そして内部への取材も敢行した。内容を理解しやすくするためにできる限り専門用語の使用は避けている。ホテル業界の関係者、専門家などには物足りない面もあるかもしれないが、実際に施設を利用しようとする多くのユーザーに役立つことが、ホテル評論家の最も大きな使命だという信念を持っている。
この本を読んで、何らかの認識の変化を喚起する機会になれば、筆者としてこの上ない喜びである。すでに体験された方の中には、本書を読んで「自分の印象と違う」「この表現は違う」という感想を持たれる方もいることだろう。こんな見方もあるのか、と広き心でお許しいただければ幸いである。
※本書の内容は、執筆当時、もしくは2019年3月末時点のものです。
目次
はじめに
第1章 星野リゾートと軽井沢
特別なリゾート「軽井沢」
西洋ホテル時代の幕開け
初代星野嘉助
初代から続く環境意識
偽・鈴木三重吉騒動
北原白秋、内村鑑三
星野佳路氏代表就任
リゾート運営の達人を宣言
旅館再生事業からブランディングへ
温泉旅館が世界へ
星野リゾートの目指すもの
第2章 データが示す「星野経営」の強さ
所有と運営
星野リゾート・リート投資法人
REIT(リート)とは
抜群の運営実績
利益率を高めること
旅館はリスキーか
第3章 星野流への反発
拡大する星野リゾート
ホテル・旅館業界からの評価
再生への評価
ご当地での評価