『どこでも誰とでも働ける』− 働きやすくなる考え方

どこでも誰とでも働ける−そんな幸せなことがあるのでしょうか。著者はNTTドコモのiモード事業立ち上げ支援を行ったり、Googleやリクルート、楽天といった有名企業の事業企画、投資、新規事業などの要職を歴任していた尾原和啓氏。

そして本書のタイトルの『どこでも誰とでも働ける』とは

①どんな職場で働いたとしても、周囲から評価される人間になるということと
②世界中のどこでも、好きな場所にいながら、気の合う人と巡り合って働けるということ

であると言います。

著者は12回の転職をしており、そんな著者だからこその内容となっており、3章構成で、小見出しによってすっきりと整理された内容である。非常に読みやすくなっています。

ギブギブギブギブギブ&ギブの精神

「ギブ&テイク」とよく聞きます。だがそれではなく、「ギブギブギブギブギブ&ギブ」でちょうどいいと言います。職場に馴染めないといった「壁」もひたすら相手のためになることをギブし続けることで簡単に壊すことができ、ギブし続けることは新しい経験を手に入れることに繋がると言います。相手を信頼し自分の知識・スキルをオープンにして、どんどんギブしていく。そうした経験を積むうちに大きな仕事にも繋がってくるために、直接的な見返りを求めないこともうまくいくコツです。

PDCAよりもこれからはDCPA

少し前までは、プラン(計画)を立ててドゥ(実行)し、結果をチェック(検証)して次のアクション(改善)に結びつける「PCDA」サイクルを何度も回せば最適な答えが見つかるといわれていました。しかし、すでにこのアプローチは周回遅れになりつつあります。プランづくりに時間がかかりすぎるという致命的な問題があるからです。

トライ&エラーでドゥとチェックを繰り返す中で、答えを見つけることがインターネット化の現代には向いています。あらゆる場面でドゥのコストが昔に比べて下がっていて、3Dプリンタの登場によりプロトタイプを作ってみることも簡単になった。最初にプランを緻密に作り込んではいないだろうか。学校でも「最初に計画」と学んできたが、何事もまずはやってみてから考えることの方が実は効率の良い時代になってきているのである。

人生をゲーム化して考える

そんな楽天的にできたら苦労しない、と思ってしまう。だが、これを読んでみてほしい。「ゲーム化する」というのは客観的に物事を考えることにも繋がるのではないだろうか。生きていくといろいろな嫌な場面に遭遇するが、そのことについて毎回真正面からぶつかっているのではないだろうか。「ゲーム化する」ことであたかも画面を見ているかのように物事を客観視できるようになる。そう考えると「ゲーム化する」ことは非常に有用なのかもしれません。

自分の価値を常に確認して「いつでも辞められる」

大事なのは、会社という枠から一歩外に出たところで、自分にもこんな価値があるのだという実感をすることです。それに気づくと、会社に対する依存心がなくなります。「いまの会社を辞めたら仕事ができない」という思いこみもなくなるし、会社といい距離感で対等につきあうことができるのです。「いつでも辞められる」と思えば、会社でも、周囲の顔色ばかりをうかがうのではなく、自分の思ったことを大胆に主張できるようになります。

たしかに、今いる場所に縛られてしまい思うように動けなくなることもあります。「自分の価値」が本当にあるのかとネガティブに考えてしまうこともあります。「自分の価値」は自分のスキルを細分化して考え、“見やすいグラフが作れる”、“キャッチコピーが作れる”といったものでいい。こうしたスキルを副業やボランティアで通用することを確かめると、自分にも自信がついてくるのではないでしょうか。

頭に残りやすいインパクトのある表現が多々あり非常にわかりやすく、読んだ後にはどこかすっきりとした気持ちになります。アップデートされていく社会。著者の経験によって確立された新たな考え方。古い考えは捨てて、インターネット化している現代において、仕事をする上で大切なこととは何なのかを考えるには必要な一冊です。