【最新】コーチングについて学ぶためのおすすめ本 – 基本から実践・応用まで

コーチングとは?どのように実践する?

「ティーチング」が、上司や教師が部下・生徒に答えを「与える」ことであるのに対し、「コーチング」とは、答えを「自ら見つけ出す」サポートをすることをいいます。近年、ビジネスの世界でコーチングが重要視されています。部下を指導する立場にある人はもちろん、仕事をする人なら誰でもコーチングのスキルを仕事に活かすことができます。また、普段の生活に活かしたり、親が子育てに活かすこともできます。ここでは、このように多くの場面で活用できるコーチングについて、基本から実践まで学ぶことのできる本をご紹介します。

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出典:出版社HP

この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本

コーチングの実践入門書

内容はコミュニケーションや目標達成のために大切なことが書かれています。ビジネスとしてどうやって組織にコーチングを文化にするかなども書かれており、事例が非常に多く面白い本です。

コーチ・エィ  (著), 鈴木 義幸 (監修)
出版社 : 日本実業出版社; 新版;最新2 (2019/1/12)、出典:出版社HP

はじめに

『コーチングの基本』の初版発行から10年が経とうとしています。この間、コーチングを巡る環境は大きく変化してきました。
コーチングとは、「1対1の対話によって、クライアント(コーチを受ける人)が目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することをサポートする」プロセスです。
初版発行時の2010年前後は「人材開発」の領域でコーチングを活用する企業が増え、大手企業を中心に、リーダー育成やコミュニケーションスキル向上などを目的としたコーチング研修が盛んに行なわれていました。関係書籍も多く出版され、本書もその中で発行されたものです。
この10年、ビジネス環境が変化するのに伴い、コーチングの領域にも変化がありました。主だったものは、次のような傾向です。

1 エグゼクティブコーチをつける経営者の増加
VUCA(Volatility:不安定、Uncertainty:不確実、Complexity:複雑、Ambiguity:曖昧)の時代となり、一部上場の大企業の経営者から中小企業の経営者まで、エグゼクティブコーチをつける経営者が増えています。コーポレートガバナンス強化の必要性の高まりからも、経営メンバー全員にエグゼクティブコーチをつけ、経営チームの一枚岩化を目指す流れが出てきました。

2 「組織開発の手段」としてコーチングを全社導入する
組織の増加イノベーションの創出、グローバル化の促進、ダイバーシティーの推進、働き方改革の実現などに向け、「組織内コミュニケーション」のあり方が見直されています。リーダー開発やマネジメント手法といった「人材の能力開発」としてだけでなく、「組織開発」の手段としてもコーチングが注目されています。

3 エビデンスに基づいたコーチングへのシフト
「組織開発の手段」としてのコーチング導入により、プロジェクトが大型化する傾向があります。AI化の促進などに伴い、組織診断やリーダーシップアセスメントなど、リサーチやデータ分析が併用されるようになりました。効果測定を前提としたコーチングへの信頼性が高まっています。

4 マネジメントの基本が「1対1の面談」にシフト
スピードが求められるなか、マネジメントの軸を評価面談から定期的な「1対1」の面談にシフトする企業が増えています。コミュニケーション不足による認識の相違や長時間労働の軽減、業務の効率化、離職率の低下に向けて、上司がコーチング型マネジメントを学び、部下と定期的に対話することでPDCAの高速化などを実現しています。
5ビジネスからスポーツ、医療、行政、教育への広がり
製造業を中心に、金融、IT、新興ビジネス、さらにはスポーツ界、医療、行政、教育の分野でも組織変革型のコーチング導入が広がっています。組織でハブとなるリーダー層に1対1のコーチがつき、コーチング型マネジメントの手法を駆使しながら「対話文化の醸成」「風土の活性化」「理念の浸透」など組織全体の業績向上やパフォーマンスの向上に取り組む例が増加しています。

■本書の構成

こうした流れを受け、新版では「効果的なコーチング」を学ぶ入門書としての位置づけを維持しつつ、「組織開発の手段」としてコーチングを導入する企業の例にも触れています。まず、第1章でコーチングの定義と全体像を説明し、「コーチングとは何か」を解説します。
第2章と第3章では、コーチがもつべき視点と、コーチングに不可欠な原則をまとめました。「コーチングの基本」をこれほど丁寧に解説した書籍は、今なお類を見ないのではないでしょうか。
第4章からは実践編です。実際のコーチングの流れを各ステップで紹介しています。「コーチング型マネジメント」の参考にしていただくことが可能です。
第5章では、コーチングの基本スキルを簡潔にまとめたうえで、ある企業の経営者をコーチングする具体的な対話例を掲載しました。コーチングのイメージが伝わるよう、あえて「個の開発」としてのエグゼクティブ・コーチングの事例を紹介しています。
第6章では、2010年以降に進んでいる「組織開発」を目的にコーチングを多層的に導入する企業の事例を紹介しています。
一般のビジネスパーソンの方を対象とした基本書でありながら、プロのコーチとして活躍する方も読み続けていただける本書の新版の完成を嬉しく思います。
本書が、「人や組織の可能性を開く」ことに取り組んでおられる皆さんに、少しでもお役に立てればこんなに嬉しいことはありません。

2018年12月
コーチ・エイ代表取締役社長
鈴木義幸

コーチ・エィ  (著), 鈴木 義幸 (監修)
出版社 : 日本実業出版社; 新版;最新2 (2019/1/12)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 コーチングとは何か
1-1 コーチングとは
コーチングは目標達成を目指すもの
コーチングの定義
コーチの役割
コーチングは単なる「技術」ではない
コーチングの機能と特徴・投資効果の高いコーチング
1-2 コーチは目標達成を支援する
コーチングには「目標」が不可欠
「傾聴」や「質問」は手段にすぎない
目標が明確ではないとき、コーチングはできないのか?
1-3 コーチングにおける「目標」と「目的」
「目標」は「目的」へのマイルストーン
目標と目的はなぜ必要なのか?
目標と現状の間に成長テーマを発見する
クライアントが成長テーマに直面することを支援する
1-4 マネジメントとコーチング
コーチングは管理職の選択肢を増やす
管理職にコーチングスキルは本当に必要なのか?
コーチングはマネジメントの柔軟性を高める
1-5 コーチングが機能する条件
クライアントや部下の状態を見極める
誰がコーチングを必要としているのか?
まずは、相手の精神状態を気にかける
相手の成長段階を見極める
意欲は高いが、業務適応能力が低い場合
業務適応能力は徐々に向上しているが、意欲が低下している場合
コーチングは緊急事態には不向き
成長の過大評価は禁物
コーチングは使うタイミングがポイント
1-6 コーチングは可能性を探求する
コーチはクライアントの「変化」と「可能性」に着目する
クライアントの可能性に着目し続ける
何を見ようとしているかで何が見えるかが決まる
可能性への指摘が成長の資産となる
優れたコーチは変化を指摘し、成長を実感させる
1-7 コーチングは成長を探求する
コーチングのゴールは、クライアントの中に「成長のエンジン」をつくること
目標達成だけでは十分ではない
コーチはクライアントの習慣に挑戦する
クライアントの中に成長のエンジンを築く
1-8 コーチングの実際
①セットアップ→②実践→③振り返り、という流れで行なわれる
コーチングの開始
コーチングをプランニングする
対話を通じてテーマを整理する
調査をし、確かめる。
目的地にたどり着くストーリーを描く
目標を達成するための成長課題を明確にする
対話を通して軌道修正、フィードバックを繰り返す
目標達成→成長実感→自己効力感というプロセスでもある

第2章 コーチのもつべき視点
2-1 コーチがもつべき3つの視点
クライアントの成長を促進するための「PBPの視点」
Possession,Behavior,Presenceという3つの視点
コーチはPBPのうち何がいま必要なのか見極める
2-2 Possessionとは
Possessionとはクライアントが「身につけるべきもの」
必要なものを明確にする
身につけるPossessionをコーチングで特定する
2-3 Behaviorとは
Behaviorとは「行動を起こすこと」
行動を起こすためのコーチの役割
行動が起きるまでに存在する4つの壁
Possessionを現状に適用させる
使っていないPossessionを見つける
宣言することで「現状維持のバイアス」を乗り越える
行動をして振り返る
2-4 Presenceとは
Presenceとは「人としてのあり方」
Presenceが行動を決定する
Presenceは体験によってつくられる
Presenceを自覚するのは難しい
3つの要素はそれぞれ影響し合っている

第3章 コーチングの3原則
3-1 コーチングの3原則とは
コーチに欠かせない3つの要素
プロのコーチが備えるべき「心」
双方向、継続性、個別対応という3つのマインド
3-2 双方向
双方向の対話で、クライアントの無意識を顕在化させる
双方向のつもりの会話と、双方向の会話の違い
クライアントの自走状態をつくることがコーチの役割
双方向の会話で「無意識を顕在化」させる
たくさんアウトプットをさせることが重要
オートクラインとパラクライン
オートクラインを起こすための対話
質問でオートクラインを起こす
双方向が効果的な質問を生み出す
オートクラインを起こすために必要な信頼関係
信頼関係のつくり方
率直に要望して信頼関係を強める
3-3 継続性
継続的に関わることで、クライアントを着実に目標に近づける
継続して関わることでビジネス環境の変化に対応する
クライアントを目標に集中させる
コーチの役割は「意欲の向上」と「ズレの修正」
クライアントの意欲を維持向上させるための工夫
「所属の欲求」を満たすアクノレッジメント
言葉以外でもアクノレッジメントできる
「所属の欲求」からのアピールを見逃さない
「自我の欲求」を高める方法
ほめるための3種類のメッセージ
プロセスの中で、わずかでも成長を伝える
軌道修正の一例
コーチは「フィードバック」で気づかせる
さらに着実に近づけるための「リクエスト」
クライアントのことをどれだけ知っているかが重要
3-4 個別対応
クライアント一人ひとりに合ったコーチングを行なう
個別対応を実行した小出義雄監督
個別対応の難しさ
個別対応はテクニックを使う前提になる
テーラーメイド医療のようなコーチングを
「タイプ分け」が個別対応するための切り口になる
コーチは、一度貼ったレッテルを貼り替え続ける
コーチングの3原則は同時に実行されるもの

第4章 コーチング・プロセス
4-1 コーチング・プロセスとは
コーチング・プロセスは目標達成までのコーチングの流れ
6つの基本ステップ
中でも重要な3つのステップ
4-2 「目標の明確化」のポイント
真に達成したいWantto型の目標を見つけ出す
コーチングにおける目標の重要性
目標設定の難しさ
本当に達成したい目標は簡単にはわからない
憧れの目標(Hopetoの目標)は熱しやすく冷めやすい
本気かどうかを確かめる方法
Havetoの目標とWanttoの目標の違い
Havetoの目標をWanttoの目標に引き寄せるには
何のために仕事をするのか?
目的の視点から目標を意味づけする
Wanttoは探し続けなくてはいけない
目標はいつまでに決めなくてはならないか
Wantto目標の手がかりは過去にある
業績目標だけではなく成長目標を設定する
他者の行動・変化・成長を目標に設定しない
目標は継続的にリマインドする
クライアントのための「目標」についてコーチする
4-3 「現状の明確化」のポイント
4つの視点を使い分ける。
思い込みで現状を明確化するとどうなるか
なぜ、現状は思い込みで分析されてしまうのか?
映像や音声を活用して自己を客観視させる
ステークホルダーからのフィードバックで自己を客観視させる
クライアントを現実の自分と直面させる
コーチのフィードパックによって自己を客観視させる
クライアント自身に自己を客観視させる
4-4 「ギャップの原因分析」のポイント
クライアントを「自責」の状態に導く
「他責」という落とし穴
すべての責任を自分に引き寄せて考える「自責」
クライアントに「自責」の状態を選ばせる方法

第5章 コーチングのスキルと実践例
5-1 コーチングの代表的なスキル
多用される7つのコミュニケーション技術を整理する
「聞く(傾聴)」スキル
「ペーシング」のスキル
「質問」のスキル
「承認(アクレッジメント)」のスキル
「フィードバック」のスキル
「提案」のスキル
「要望(リクエスト)」のスキル
5-2 自動車メーカーのマネージャーのケース
本当の目標を見つけ、コミュニケーションカに優れた管理職に成長
ケースの概要
セッションの事前準備
クライアントとの出会い
理想の状態を描く。
エバリュエーションプランの設定から現状認識へ
理想と現実のギャップを捉え、行動の方向性を探る
行動計画をつくる
行動を開始させて、続けさせる
成果と成長を確認し、再現性と応用力をつけさせる
5-3 IT関連機器会社の社長のケース
ビジョンの策定
浸透を通して、リーダーシップが大幅にアップ
プレコーチング
ビジョンの設定
行動の実践
コーチングの急展開
エンディング

第6章 組織へのコーチング
6-1 組織全体に働きかける「システミック・コーチング」
組織開発型のコーチングにおける「リサーチ」と「効果測定」
目的にあわせた導入方法が必要
コミュニケーションを可視化して経営チームの一体化に取り組んだケース
部門間のつながりが向上し、業績がポジティブに変化
コーチング導入の背景
プロジェクト設計
取り組み内容
1年後の成果
経営チームの強化につながるエグゼクティブ・コーチングとは?
エグゼクティブ・コーチングの次の取り組み
6-2 新社長へのエグゼクティブ・コーチングで組織の受け身な体質からの脱却と黒字回復を
達成したケース
ITベンチャーのトランジション・コーチングコーチング導入の背景
プロジェクト設計
取り組み内容
コーチングによる変化
エグゼクティブ・コーチングによる成果
お客様から届いた感謝状
6-3 管理職が現場でコミュニケーション変革に活用したケース
現場リーダーのコーチングで業務改善、技術力向上、残業時間削減を実現
コーチング導入の背景
プロジェクトの概要
事業部門長への報告に使われた組織調査の概要
プロジェクト1年目~2年目の成果
プロジェクトの成功要因
6-4 組織開発に向けてコーチングを全社導入したケース
部門を越えた対話の醸成によりイノペーションの創出へ
コーチング導入の背景
社内コーチングプロジェクトの効果を高めた基本方針
社内コーチングの実践に向けた支援体制
コーチングの成果と社内コーチングの継続

参考文献

著者一覧

表紙デザイン/志岐デザイン事務所秋元真菜美

コーチ・エィ  (著), 鈴木 義幸 (監修)
出版社 : 日本実業出版社; 新版;最新2 (2019/1/12)、出典:出版社HP

マンガでやさしくわかるコーチング

コーチングスキルを楽しく学ぶ

漫画のストーリーと連動して理解していくので、とても分かりやすいです。また、説明の口調が柔らかく、たとえが多いのも非常にわかりやすいポイントです。入門書にぴったりですので、初心者の方におすすめしたい一冊です。

CTIジャパン (著), 重松 延寿 (その他)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2014/3/22)、出典:出版社HP

はじめに

「人が変化する」とはどういうことでしょう?
この3年にわたってコーチングが世界的に普及しています。私達は、そこには人種や国籍を超えて人の中に存在する「変化をしたい」という気持ちがあるのではないかと考えています。
そもそも「変化」というものは特別なことではありません。人がもともと成長する自然な過程であり、人は常に変化し続けているものです。コーチングはその変化を支援する手法として広がっていき、またコーチング自体も変化し続けてきました。
日本におけるコーチングは、ここ1年ぐらいでビジネスにおける管理職の必須のスキルとして広がり、多くの人の成長や変化に大きく貢献してきました。
そして、相手が答えを持っていることを信じて関わるコーチングの手法は、今までのビジネスにおける教育や指導に、革命的な進歩を起こしてきました。これは本当に素晴らしいことです。
ただ、コーチングが本来持っている可能性は、ビジネス上のスキルを超えて、人がよりよく生きるために、あらゆる場面で使えるものでもあります。

今回取り上げるコーチングは、数あるコーチングの手法の中でも「コーアクティブ・コーチング」と呼ばれるユニークなもので、その核心は、本質的な変化を呼び起こすことにあります。本質的な変化とはすなわち、意識の変化です。意識が変化することで、行動が変わり、その人の人生も大きく変化します。
本書では、意識の変化に関わるコーチングの核心をマンガという形で表現する実験的な試みをしています。主人公は飲料会社の営業マネジャーの山吹響子。新しくマネジャーに着任した彼女がコーチングを受け、そしてコーチングを学びながら、部下や家族との関わりを通して、成長していく姿を描いています。
本書はコーチングを受けることにより成長していく主人公の変化を通じて、コーチングの基本がわかると同時に、本質的な変化を呼び起こすコーアクティブ・コーチングの本質がつかめるようになっています。
自分自身の生き方、人間関係の悩みを抱えるビジネスパーソンの方にとってのヒントになれば幸いです。解説では、実際のコーチング事例やコーチング体験談も盛り込んでいますので、コーチングを受けてみたいと興味を持たれた方にも参考になるのではないかと思います。

また、本書で取り上げるコーチングスキルは、プロのコーチだけが使用する特別なスキルではなく、読者の皆さん自身が普段の生活や仕事においても使うことができるものです。ぜひ、ビジネスやプライベートの場面で必要だと思われるところで試してみてください。
きっと、今までとは違う相手の反応や会話の展開に驚きを感じることと思います。
コーチングに関心がある方、そして人の変化に関心があるすべての方に読んでいただきたいと考えています。そして自分が一番大切なことを大事に生きることの素晴らしさを多くの方に知ってもらえることを願っています。

2014年3月
CTIジャパン

CTIジャパン (著), 重松 延寿 (その他)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2014/3/22)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに

Part1 コーチングって?
Story1 変わらなければいけないのはいったい誰?
01 コーチングって何だろう?
02 コーチングの手順
03 コーアクティブ・コーチングとは
04 意図的な協働関係とは
05 行動と学習

Part2 相手と向き合うスタンス・NCRWとは
Story2 部下を信じるって難しい
01 人の可能性を信じる
02 今この瞬間から割る
03 その人すべてに焦点をあてる
04 本質的な変化を呼び起こす
05 できているところに意識を向ける(認知

Part3 傾聴とは
Stary3 「聴く」ことで何が変わるの?
01 傾聴とは
02 レベル1内的傾聴
03 レベル2集中的傾聴
04 レベル3全方位的傾聴
05 反映のスキル
06 自己管理

Part4 人に焦点をあてる
Story4 屋上で聞いた本当の気持ち
01 人に焦点をあてるとは
02 好奇心の価値とは
03 拡大質問(オープン/パワフル・クエスチョンド)

Part5 コーチを付けるということ
Story5 新しい一歩はどっちに踏み出すの?
01 コーチという存在
02 コーチ選定の流れ

Part6 フルウィルメント~自分の人生を生きる~
Story6 成長の先に続く道
01 フルフィルメントとは
02 価値観とは
03 価値観の見つけ方
04 サボタージュ
05 人生の目的

CTIジャパン (著), 重松 延寿 (その他)
出版社 : 日本能率協会マネジメントセンター (2014/3/22)、出典:出版社HP

新 コーチングが人を活かす

日本のコーチングの入門書

悩みを抱えている人へ、自身の持っている答えを伝えるのではなく、問いを立て一緒に探し、その中で相手の発見を促す=コーチングと説かれ、62の具体的な手法が紹介されています。チカラになりたい職場の後輩や、自身の子どもがいる方におすすめの1冊です。

鈴木 義幸 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2020/6/26)、出典:出版社HP

はじめに――刊行8年の大幅改訂にあたって

初めてコーチングに出会ったのは1996年秋でした。
弊社コーチ・エィ創業者の伊藤が、アメリカ人のコーチを日本に招聘して催したコーチングのトレーニングに私も加わりました。
これこそ、自分の人生を賭けるに値するもの―そう感じ、とても興奮しました。
それから、4年が経った2000年。4年間で自分の中に溜めた知識、スキル、経験、情熱を多くの人にシェアしたい。
そして、人の主体性に働きかける”コーチング”というものがあることを、世の中に伝えたい。
そんな思いで『コーチングが人を活かす』の執筆にとりかかりました。
初めての本の執筆でしたが、パソコンのキーボードに置かれた指先は、やむことなく動き続けました。とにかく書きたいことがたくさんありました。
そして、2000年5月『コーチングが人を活かす』を無事上梓することができました。
とてもうれしいことに、多くの方が、3年間にわたってこの本を手にとってくださいました。そして、たくさんの感想を寄せてくださいました。
いくつかをご紹介させてください。

「性格や才能は人それぞれ。指導方法もひとつではないと感じていました。そんな悩みを、ほぐしてくれたのがこの1冊」
「コンパクトで、さらっと読めるけれど、そのときそのときで抱えている課題のヒントが見つかる。定期的に読み返しています」
「人の自発性を引き出す対人関係のスキルとして、友人関係、夫婦関係など幅広い人間関係をよりよくするために効果がある」
「日本の企業で働く人材が、その可能性を最大限発揮するために、できる限り多くの人に読んでもらいたい」
「世の中が多様化する現在、新たな付加価値を次々と生み出さなければ組織は存続できない。人それぞれの個性を認め、それを伸ばす、そんな対話のあり方をコーチングは教えてくれる」

21世紀にコーチングが必要とされる3つの理由

2000年当時、これから企業でコーチングが必要とされるであろうと思っていました。その理由は3つありました。
1つ目は、”何が正解かが簡単には見つけられなくなってきている”こと。経験豊富な上司や先輩が、部下や後輩に「こうするんだ」と指示をするだけでは、もはやさまざまな事態に対処できない。
前例のない課題に対して解を見出すためには、部下や後輩に問いかけ、彼らと一緒にそれを探り出していくようなアプローチが必要であり、コーチングはそれに応えるものである。

2つ目は、”組織における多様性の拡大”です。
どの世代も同じ価値観を抱く時代ではなく、それは世代によって大きく変わろうとしている。
外国人の部下も増えている。女性活用も声高に叫ばれている(繰り返しますが、これは昨今の話ではありません。2000年当時の話です)。
そのような労働環境の変化の中で、コーチングは、価値観を異にする人と方向性を合わせ、共に未来を描いていくことに寄与しうる。

3つ目は、”イノベーションを求める声の高まり”です。
当時は”失われた10年”とよく言われました。
日本企業が反転攻勢に出るためには、イノベーションが必要である。
イノベーションを起こすには失敗を恐れず挑戦する気構えが求められる。
それには、上司が部下の挑戦をうながさなければいけない。
挑戦をうながすためには「挑戦しろ!」と鼓舞するだけでは不十分で、部下に問いかけ、彼ら彼女らの視座を上げ、視野を広げ、視点を変えるコーチングが機能する。

本書を読んでくださった方のコメントや感想は、コーチングがこの3つのことに貢献しうるということを示してくれるものでした。
・簡単に正解を見つけることのできない課題の増加
・多様性の拡大
・イノベーションの必要性

この3つは、3年経った現在の日本でも、変わらず企業の中にテーマとして横たわっています。そして、その強度は明らかに3年前より増しています。

コーチングの貢献領域は大きく広がった

この20年間でコーチングが求められる領域も、当時の想像以上に大きく広がりました。
たとえば、スポーツの世界”。
競争はより一層熾烈になり、トレーニングの仕方を含め、コーチや監督といえども、簡単に解を見出し選手にアドバイスすることは難しい。
選手との世代格差が存在し、チームスポーツであれば多様な国の人をマネジメントしなければいけない。
新しい発想と戦略がなければ、もはや勝利を手にすることはできない。ここでも3つのテーマは同じようにあり、多くのスポーツコーチによってコーチングの考え方やスキルがとり入れられてきています。
また、医療の世界。
医療の世界では、昨今。チーム医療の必要性が叫ばれています。
医師、看護師、薬剤師らがチームとなって、どんな治療が患者さんにとって最適かを見出していく。「この処置で大丈夫」と単純に医師が決められることばかりではない。職種によって各人各様の立場、考え方がある。時に大胆な病院運営に関する発想の転換も求められる。やはり3つのテーマは存在しています。
医療業界では、日本医療マネジメント学会が開催されるたびに、病院へのコーチング導入の事例報告がなされるほどです。
そして学校や家庭。
先生だからといって、親だからといって、学校生活について子どもにアドバイスすることは簡単ではありません。
それこそデジタルネイティブの子ども世代との間には大きな価値観のギャップがある。
もちろん、子どもが大きく未来に向けて羽ばたけるように、視野を広げ、視座を上げてやりたい。
ここにも3つのチャレンジが横たわっています。
コーチングを学校や家庭で試し「子どもとの関係性が大きく変わった」とおっしゃってくださる先生、親御さんは本当に多い。
企業、スポーツ、医療、学校、そして家庭―さまざまなエリアでコーチングが活用されていることは、米国から初めて日本にコーチングを持ち込んだ会社の代表として、本当にうれしいことです。

改訂版執筆を決めた3つの理由

さて、本書の旧版を上梓して20年が経ちます。今回、ディスカヴァー・トゥエンティワンからのお声がけもあって、旧版に大きく改訂を施すことにしました。
声をかけていただいたのがきっかけではありますが「今すぐ筆をとらねば!」と思った理由は大きく3つあります。
まず1つ目は、一部でコーチングが誤解して使われていることに対する懸念”です。コーチングでは、相手に質問をしていくわけですが、学校の問題を解かせるように、質問してしまう方が一定数いると感じています。「君、これはどう思う?」角度としては多少”上”から。すでに問いかけている自分の中に答えがあり、それを相手に考えさせようとする。

これは、コーチングではありません。コーチングはあくまでも、問いを2人の間に置き、一緒に探索しながら、相手の発見をうながしていくというアプローチをとります。
本書を2000年に執筆したときは、この相手の発見をうながす。というところにとても強いフォーカスを当てました。
そのために、本文中では、引き出す。という言葉を多用しました。当時は『引き出す」という言葉で、こちらから言うのではなく相手の中にある可能性を顕在化させるのだ。ということを強調したかったのです。
ですが、聞きようによっては引き出す。という言葉は、別の意味を持ちかねません。こちらは経験がある人、わかっている人、スキルを持っている人。さあ、あなたはまな板の上に乗ってください。私が引き出して見せますから……。そうもとられかねません。このことはずっと気になっていました。今回、思い切って引き出す。という表現を削除し、別の表現に変えています。単に言葉を変えただけでなく、コーチングとは、問いを2人の間に置き、一緒に探索し、その中で相手の発見をうながすものだということを、本書を貫く哲学としてど真ん中に置いています。
2つ目の理由はコーチングというスキルをベースに、いかにチームや組織の中での対話を起こすのかを書きたかった。ということがあります。コーチングは、基本的に1対1で行うものです。ですが「会議やミーティング、そもそもチーム、組織を活性化させるために、どうコーチングを活かせますか?」という質問を、日常的に受けます。
チームや組織での対話を活性化させたい。というニーズに応えるもの、それを本書の中に盛り込んでみたいと思いました。
3つ目の理由は、この20年間で、弊社コーチ・エィの仲間と共に、お客様との体験を通して培った、新たなコーチングのスキルや知識をお伝えしたい。ということです。

コーチングは、最初から完全に完成したものではなく、日々世界中のさまざまなところで研鑽され、新しいものへと進化を続けています。この間、新しく手にしたもの、見つけたものを、みなさんと共有したいと思いました。
このように、本書では、いくつかの新しい切り口でコーチングについて語っていますが、コーチングの本質が変わるわけではありません。コーチングの本質は未来を創り出す主体的な人材を創る』ことにあります。
今、目の前にいる人の主体性に働きかけ、その人が、未来に向けて飛躍するように、いかに自分のコミュニケーションを使うことができるのか――それがコーチングが目指すところであることは、おそらく普遍的であると思います。
本書を手にされたあなたが、今まで以上に、仕事で、プライベートで、そして家庭で、周りの人にコーチングをベースとしたコミュニケーションをもって働きかけ、未来を創り出す主体的な人の創造に関わっていただけたら、著者としてこれほどうれしいことはありません。本書を手にとってくださり、本当にありがとうございます。

鈴木義幸

鈴木 義幸 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2020/6/26)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに――刊行3年の大幅改訂にあたって

LESSON 01 相手と自分の発見をうながす
心のシャッターを上げる
答えを一緒に探す
チャンク・ダウンかたまりをほぐす
すぐに答えられる小さな質問をする
なぜのかわりになにを使う
沈黙を効果的に活用する
きっと見つける。と相手を信頼する
答えを見つける旅に出す
不満を提案に変える
相手についての質問を自分に問いかける
究極の質問”をつくってみる
チャンク・アップかたまりにする

LESSON 02 相手と信頼関係を築く
出会いの一言に新しさをこめる
オウム返し同じ言葉を繰り返す
あいづちを意識して磨く
正直に自分の気持ちを話す
相手のタイプを見極める
4つのタイプ”を知る
相手の強みを活かす
アクレッジメント”の立場でほめる
リクエスト相手の望みをきく

LESSON 03 目標達成に目を向ける
目標についてとことん話す
いやなことを30分話す
視点を変える質問で夢に気づかせる
価値に合う行動を見つける
魅力的な未来に目を向ける
過去を振り返り未来への素材を集める
行動の結果をイメージする
苦手な対象について30分話す
10点満点で今の状態を採点する
チェックリストを独自につくってみる

LESSON 04 視点・切り口を変える
ストーリーで語る
まくらことば
枕詞で緊張を緩和する
妥協・未完了・境界線新しい切り口を与える
広く多くのことをきく
“なぜ”を説明する
完全に判断をゆだねる提案の力を磨く
とんでもないリクエストをする
クライアントにコーチになってもらう

LESSON 05 主体的な行動をうながす
相手をフォローしサポートし続ける
失敗する権利を与える
クローズド・クエスチョン閉じた質問を使う
ファイアー心に火をつける
承認し続ける
心の中の絵を差し替える
相手のエネルギーに意識を向ける

LESSON 06 コーチングの達人に向けて
自分自身が日々小さな目標を達成する
理想のコーチになりきる
心の中に埋もれる宝物を掘り起こす
コミュニケーションを上から観察する
“落としどころ”を用意しない
エネルギーを高く保つ
相手の上や下に立とうとしない
相手を別のフレームに入れてみる
個別対応で才能を開花させる

LESSON 07 チーム・組織に対話を引き起こす
異論反論を大切にあつかう
チームの状態を観察し話題にする
チームで問い”を共有する
キーパーソンと徹底的に対話する
横の対話に一歩踏み出す
対話を起こす環境をデザインする
おたがいの違いを愛する

こんな場合はこのスキル 本書活用のガイド

鈴木 義幸 (著)
出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2020/6/26)、出典:出版社HP

コーチング・バイブル(第4版)- 人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション (BEST SOLUTION)

人との対話を通したコーチング

コーチとクライアントが積極的に対話することを通して、クライアントの本質的な変化を促す「co-active coaching」は近年、様々な分野で注目されています。具体的な対話例も紹介されているので、対話に着目したコーチングの手法をわかりやすく学ぶことができます。

Henry Kimsey‐House (原著), Karen Kimsey‐House (原著), Phillip Sandahl (原著), Laura Whitworth (原著), ヘンリー キムジーハウス (著), キャレン キムジーハウス (著), フィル サンダール (著), ローラ ウィットワース (著), CTIジャパン (翻訳)
東洋経済新報社; 第4版 (2020/6/26)、出典:出版社HP

目次

第Ⅰ部 コーアクティブの基礎
第1章 コーアクティブ・モデル
第2章 コーアクティブ・コーチングの関係

第Ⅱ部 コーアクティブの資質
第3章 傾聴
第4章 直感
第5章 好奇心
第6章 行動と学習
第7章 自己管理

第Ⅲ部 コーアクティブの指針
第8章 フルフィルメント
第9章 バランス
第10章 プロセス

第Ⅳ部 統合とビジョン
第11章 すべてを統合する
第12章 コーチングが世界にもたらすもの

ツールキット
○コーチング・フォーマット/チェックリスト
○コーチング・リソース
○行動計画ツール
○組織内クライアント向けのツール

Henry Kimsey‐House (原著), Karen Kimsey‐House (原著), Phillip Sandahl (原著), Laura Whitworth (原著), ヘンリー キムジーハウス (著), キャレン キムジーハウス (著), フィル サンダール (著), ローラ ウィットワース (著), CTIジャパン (翻訳)
東洋経済新報社; 第4版 (2020/6/26)、出典:出版社HP

できる上司は会話が9割- 「困った部下」が戦力に変わる、コーチングのスゴ技 (単行本)

上司の言葉が部下のパフォーマンスを左右する

チームとして働く中で必要な上司と部下の会話例が多数収録されているため、学んだことを現場ですぐに生かすことができます。「困った部下」を持つ上司の方におすすめの一冊となっています。

商品説明

◎リーダーの「会話」が、メンバーの「能力」を決める!

*部下がいつも受け身で、自分で考えて動かない
*きちんと指示したのに、部下がその通りにしない
*陰で上司の悪口を言っていて、チームがまとまらない

そんな「困った部下」が戦力に変わる、
コーチングの「すごい会話」が身につく!

上司と部下の対話例や、
セリフ調の言葉も豊富に収録しており、
現場ですぐ使えて、効果も抜群!

・「指示して終わり」ではなく、必ず確認と合意を入れる
・「ほめる」よりも、「承認」を活用する
・部下の隠れたモチベーションを探りあてる会話のコツ
・部下に「なぜ、それをするのか」の理由をしっかり伝える
・ベテラン部下をさらに成長させる問いかけ

大手国内企業、外資系企業で成功事例、続々!
部下が成長し、チーム全体の成果も上がる!

目からウロコのコーチングなぜ、あの人には部下がついてくるのか?

コーチングの概要から応用まで学べる

管理職と部下の会話を軸に話が展開されるため大変読みやすくなっており、あらゆる人間関係で普遍的に生かせるコーチングのスキルを学ぶことができます。他者との人間関係、特にコミュニケーションでお悩みの方は読んでおきたい一冊です。

はじめに

今、船が、沖合いの島に向かい出航するときを待って、港に停泊しています。
動力は船のエンジン、追い風も拍車をかけます。この二つが推進力です。位置確認や天候予測などのためのいろいろな機器も備わっています。
ところが、いくら出航の環境が整っても、出航を妨げるものがあります。錨です。錨を上げなければいつまでたっても船は出航できません。
ここで、船は「あなた」だと仮定してください。島はあなたの「目標」です。エンジンや機器はあなたの「能力、行動力」です。追い風は、「周囲のサポート」。時化や逆風、嵐は「目標を阻む障害」です。そして錨はあなたの中にある「恐れ」なのです。
私たちは錨を上げることを、自分で決断しなければなりません。そのタイミングを慎重に判断する必要はあるのですが、恐れとつき合い、停泊したままでいては、いつまでたっても目的の島まで到達できないどころか、近づくことさえできないのです。
錨をいつ上げるのか決断をすべきとき、日頃あなたはどうしていますか?
私たちは、信頼する誰かに話をするということが、不安を軽くしていくうえで非常に効果的だということを知っています。ひとに話を聴いてもらい、受け入れられたときに、私たちの中には安心が生まれます。さらに、そのひとに見守られていると、目標達成までの行動に勇気がもてます。
あなたという船が置かれている現状をあなた自身が認識し、不安を軽減し、目的の島まで航海することをサポートするのが、「コーチ」です。

では次に、あなたの部下が船であると考えてみてください。管理職であるあなたは、部下という船がいよいよ船出をし、目的の島に向かって行こうというときに、「恐れ」という錨を上げる決断の助けとなっているでしょうか。話を聴き、部下の心に勇気と安心を生み、「君は孤独じゃないよ」というメッセージを発信し、目的の島に向かうサポートをしているでしょうか?
安心どころか、ロクに話も聴かずに、脅しをかけ、不安を増大させている管理職がいます。「しっかりやらないと、大変なことになるぞ」「島にたどり着けなかったら、君への評価は下がるぞ」。
そんな言葉は、部下の中にある錨をもち上げる助けになるどころか、さらに深く重いものにしているのです。推進力ではなく、マイナスの負荷といえます。
あるいは、出航のタイミングから航路のとり方、障害の乗り越え方まで、逐一命令している管理職もいます。それは無意識のうちに「君は自力で島にたどり着けるはずがない」というメッセージを発信していることになり、部下は強風のたびに港にもどり、あなたの次の命令を待って停泊することになってしまいます。
コーチングとは、「部下」という船がエンジン全開で、目的の島に最短の期間で向かうために、管理職であるあなたがどうサポートすれば効果的か、そのコミュニケーション方法を明らかにしたスキルです。

さて、高級クラブといわれるところに、あなたが出入りしているかどうかはわかりませんが、そこで働く女性たちは想像がつくと思います。東京なら銀座、札幌ならすすきの、福岡なら中洲、大阪なら北新地あたりを夕方歩いていれば、すれちがうくらいのことはできます。
こういった夜の社交場のメッカといえる地域にある高級クラブには、中規模のところでも数十人のホステスさんがいます。その中の「ナンバーワンホステスさん」というと、とびきりの美人と誰もが想像するでしょうが、必ずしもそうではありません。
実は容貌的には(私の判断ですが)その店での「中の中」程度の方が多いのです。中の中の方は、自分が中の中であることを知っています。ですから、別の能力をもとうとするのです。「じゃあ、フェロモンの勝負か……」と返ってきそうですが、彼女たちの実績を分けているのは、実はコミュニケーション能力なのです。「コミュニケーション能力」というと、「おしゃべりの面白さ」と誤解されるかもしれませんが、そうではありません。彼女たちのコミュニケーション能力の高さのことを、通ってくる男性たちは、「真心がある」とか「心根がいい」と評価していますが、ナンバーワンホステスさんの接客には、たくさんの学ぶべきコミュニケーションスキルが活かされています。その中にはコーチングスキルと非常に近いものも多くあります。「おしゃべりの能力」とは違う「コミュニケーション能力」とはどういうものなのか、これから一五の項で順にみていきます。
男性たちが「話を聴いてもらいたい」と、高いお金を支払って通う高級クラブのコーチングスキルとはどのようなものかを考察することによって、管理職には、より身近にコーチングスキルとその成果をご理解いただけると考えます。
コミュニケーションのお手本とさせていただいたのは、銀座の某クラブのナンバーワンホステス、Mさん(三〇歳)です。管理職にとって苦手な部下がいるように、Mさんにもお客の好き嫌いはあるそうです。「売上に貢献してくれるのが必ずしも好きなお客ではない」というのは上司にとっての部下と近いものがあります。しかし、Mさんは嫌いなお客だからといって、接客の質を下げたりはしません。成績がいいお客も、そこそこのお客も、「いい気持ちで呑める」環境を、いつも同レベルで提供しているのです。
Mさんが「好き嫌い」で仕事をしないのは、みんなお金を落としてくれる「お客さん」だからです。
上司にとっての部下もみんなお金をもってきてくれるお客です。部下は、まぎれもない「社内顧客」なのです。どのくらいのお金をもたらしてくれるかは、上司の手腕にかかっています。それもMさんと同じです。部下を「いい気持ち」にさせれば、顧客以上に確実にお金を運んでくれるのです。
そして、Mさんは嫌いなお客でも嫌いであることを相手に悟られるようなヘマは、決してしません。では、管理職はどうでしょう。期待していない部下は、部下自身もあなたに「期待されていない」ことをとっくに知っています。「わからせたほうがいい」「部下はそのほうがやる気が出る」という管理職は多いのですが、それは間違いです。あなたはそれで奮起するタイプだったかもしれませんが、すべての部下がそうではありません。そこで切り捨ててしまっては、部下という財産をそのまま「宝のもち腐れ」にしてしまう可能性が高いのです。
コーチングを使う効果の一つを直截にいうと、「相手にとって「話を聴いてもらいたいひとになれる」ということ」です。管理職であるあなたが、部下にとって「話を聴いてもらいたいひと」となったら、部下にどんな変化が訪れるでしょう。「船」のたとえでいうと、「島」に向かって船出する彼らのエンジンや錨は、どうなるでしょう。
管理職がやるべきことは、部下に錨を上げさせることです。そして、広い海原で、たとえ時化でも逆風でも自分で判断できる能力を備えさせることです。
もし今、「部下は脅せばやる」と思っていたら、「脅す」というツールに加えて、「コーチング」という別のツールも携帯してみてください。頻繁に使っていくうちに、きっと「コーチングのほうが使い勝手がいい道具だ」と実感してもらえると思います。
そして、Mさんに学んでください。部下が発揮できる能力は、「いい気持ちで働けるサポートをできるかどうか」というあなたの管理職としての能力にかかっています。
さて、私がコーチングを学びはじめたときには、プロコーチのほとんどがプライベートコーチングの業務だけを視野に入れていました。プライベートコーチングとは、プロコーチとクライアントがマンツーマンでセッションを行なうものです。私の会社であるフレックスコミュニケーションでも、開業当初は個人を対象にしたプライベートコーチングと、企業の経営者・管理職を対象としたエグゼクティブコーチングの需要がほとんどでした。
プライベートコーチングでは、さまざまな職種の幅広い年齢層のひとがクライアントとなります。コーチは、スポーツ界のイメージから、その道に熟達したひとが後進の指導にあたるととらえているひとが多く、「そんなにいろいろな仕事のひとのコーチになれるんですか?」という質問をたびたび受けました。
しかし、船のたとえを思い出してください。船のナビゲーションは、航海の専門家でなくてはできませんが、錨をもち上げるための安心を生み出すことは、コーチングカンパセーションによって誰でも行なうことができるのです。
そこに航海に関する専門知識は必要ありません。コーチングカンバセーションとは、船の「能力、力」を確認し、起こりうる可能性のある「障害」を明確にすることなどで、相手の心に勇気と安心を生み、目標の「島」に近づくようにサポートするものなのです。このとき必要なのは業務の専門知識ではなく、「コーチングスキル」なのです。
プライベートコーチングや管理職を対象としたエグゼクティブコーチングのクライアントは、「資格をとりたい」「売上を上げたい」「起業したい」「自社ビルを建てたい」などという「目標達成派」と、上司・配偶者・子ども・友人・家族・お客などとの「人間関係を豊かにしたい」という「コミュニケーション改善派」の二つに大きく分けられます。コーチングスキルはこのどちらのタイプに関してもとても有効です。

そこで、会社組織もいち早くこの「コーチングの有用性」に注目し、今、コーチングスキルそのものを人材育成や接客に活かそうとしています。管理職がコーチングスキルを習得することで、業務においてプロコーチが行なうコーチングと同等の成果を得ることができます。
プロが行なうプライベートコーチングのセッションは、定期的に時刻を定めて電話・面談・メールなどで行なわれますが、組織の中では面談形式のセッション以外に、部下との日常のコミュニケーションの中でスキルを使い、成果をあげることが可能になるのです。
しかし、組織でコーチングを行なおうとする場合、管理職が「コーチングスキル」だけを学んでいても、成功するものではありません。スキルと同時に自分のインターナル環境(コーチの内面的環境)に関してのトレーニング、つまり意識改革に本気で取り組む必要があるのです。上辺だけのコーチングスキルが独り歩きした結果、部下を操作するテクニックとなってしまい、結局、長期的な成果を出せないケースは枚挙にいとまがありません。
そこで、コーチングの両輪である「コーチングする側がどのようにスキルの研鑽を行なうのか」ということと、「コーチはどのようにインターナル環境を整えるのか」ということの二つを紹介するのが、私がこの本を執筆した目的です。
コーチングらしきものを使って、コーチングらしきことをして、「部下を思いどおりに操りたい」と思っているなら、この本は有効ではありません。コーチングはひとを操作したり、自分にとって都合のいい存在に変えるための理論ではつくられていないのです。
ですから、この本では、コーチングの「理論」「スキル」「実践」を別々の項にあえて分けていません。コーチングのスキルとインターナル環境は切っても切り離せないもので、この二つを切り分けて伝えるのは、ひとを心と身体に分けろというようなもので、所詮無理なのです。
第1項「コーチングとは何か」、第2項「部下を伸ばすコーチング」では、概括的にコーチングを説明し、第3項以降の一三項目は、主となるスキルを中心に、それを行なうためのインターナル環境、事例について一項目の中でまとめて述べています。また、それぞれの項で、コーチングの実践の場面でつまずきがちな要因と、それを解決する方法をプロコーチの視点で詳しく解説しています。
ペーシックなスキルから順に紹介していますが、各項目は独立した短編として読んでいただけます。コーチングを核として、そこから発展した人間関係やコミュニケーション全般の話を一五のオムニバスで紹介していると考えてください。
この本では主に「管理職とその部下」「ナンバーワンホステスのMさんとそのお客」の会話を軸に話が進んでいますが、コーチングはすべての人間関係で普遍的に使えるものです。管理職を親や先生に、部下を子どもや生徒に、あるいは自分をMさんに、妻や夫・部下をお客に置き換えていただけば、きっとどの関係においても役に立つと思います。特に思春期の子どもとのコミュニケーションで悩んでいるお父さん・お母さんや、パートナーとの関係を改善したいというひとには参考にしていただきたいものです。
この本をコーチングスキル学習のためだけではなく、あなたのリレーションシップ構築の一助にしていただければ幸いです。
二〇〇四年五月
播摩早苗

目からウロコのコーチング 目次

はじめに
1◇コーチングとは何か〈注目される背景〉
◆なぜ、コーチングが必要とされるのか
◆コーチングとは何か
◆命令から生まれる心理的抵抗
◆自発的な行動は100%の解に勝る
◆銀座のホステスMさんにみる、コミュニケーションの極意
◆答にたどり着くサポート
◆コーチングに期待されること
◆コーチングは土壌づくり
◆消費者は自立している
◆企業はEQの高い人材を求めている

2◇部下を伸ばすコーチング
◆コーチングが機能するメカニズム
◆部下の「答」はどこにある?
◆目標を宣言することで得られること
◆活気ある組織は温かな人間関係から
◆コーチングによるサポートと指示・命令の違い
◆一緒にいたいひとになる

3◇聴くことと受け入れること
◆私たちは聴いていない
◆同じものを同じ立場から眺める
◆コミュニケーションを完結させる
◆お客が納得するまで聴く

4◇承認〈褒めることと叱ること〉
◆部下はいつも認めてほしい
◆承認するチャンスをみつけられない管理職
◆客も存在を認めてほしい
◆褒める危険
◆デキる上司はクリエイティブに叱る
◆部下の短所を受け入れてみる

5◇Iメッセージの力
◆変えようとしている間は部下は変わらない
◆クリエイティブなIメッセージを発信するために

6◇聴くことと信じる能力
◆100%理解しようと聴く
◆ただ聴いてほしい
◆相手のために聴く
◆安心と潜在能力の扉
◆信じる能力
◆全部聴く
◆促すことと信じる能力
◆お客は評価されることが大嫌い

7◇コミュニケーションから生まれるエネルギー
◆インスパイアレベルはーメッセージから
◆コーチングでは上手く話す必要はない

8◇ペーシングはコミュニケーションの入り口
◆なぜコミュニケーションでしくじるのか
◆部下はあなたを異質とみている
◆ペーシングできないのは心が伴わない証拠

9◇コーチングを妨げているもの
◆部下のやる気を下げている上司
◆個として扱ってほしい!
◆ちゃんと話を聴いて!
◆迷える管理職たち。
◆やる気レベルを上げる鍵は、受けとる側の心の状態
◆嵌っている日本の組織
◆コーチングのための体質改善
◆強い「管理職」という幻想
◆コーチングは忙しさを緩和する

10◇達成目標のビジュアライズ
◆目標を設定するために
◆目標の確認を怠るな
◆真の目標がみえるまで仮面を剥ぎ続ける
◆目標のビジュアライズはシナリオのように
◆コーチが目標を設定することがないようにする

11◇質問をクリエイトする
◆プロジェクトリーダーがクリエイトした質問
◆相手に柔軟に合わせて質問する
◆コーチは不安でも誘導しない
◆コーチの直感は大切な味方
◆にせものの質問がいっぱい
◆講点な答え方はコーチへの警告
◆どうしても口をはさみたくなってしまったら

12◇コーチングにおけるアドバイス
◆耳に届くアドバイスはスピード感が勝負
◆客の答を最大限尊重したアドバイスだけが受け入れられる

13◇エネルギーロスを自覚する
◆エネルギーロスは成功を妨げる大きな原因
◆あなたが落ち込んだとき、あなたはどうなる?
◆エネルギーロスでは何も手につかない
◆過去の未完了は人生までも翻弄する
◆未完了をもち続けることで得られていることと失っていること
◆未完了を意識することでエネルギーロスをなくす
◆「妥協」に気づきエネルギーロスをなくす

14◇コーチングのストラクチャー(構造)
◆効果的なコーチングの手順
◆「目標」についてみてみよう
◆ときには卑近な目標から
◆コーチングのテーマを明確にする
◆「現状」についてみてみよう
◆「原因(背景)」についてみてみよう
◆「行動」についてみてみよう
◆過去の経験を味方にする
◆「フォロー」についてみてみよう

15◇相手を人生の主人公にする
◆相手を人生の主人公にする
◆コーチングとティーチング

おわりに
◎参考・引用文献

本文イラスト――坂崎正治
装丁――一瀬錠二(Art of NOISE)
制作協カ――株式会社PHPエディターズ・グループ