起業の科学

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起業の教科書

経済学部でなくても誰でも100パーセント理解できるように記載されており、図解での説明もあり、注釈もすぐ余白に書かれています。起業しようと思っている人は絶対に読むべき一冊です。新規事業やプロジェクトを新しいメンバーで始める時には、全員の共通理解にも使えます。

田所 雅之 (著)
出版社 : 日経BP (2017/11/2) 、出典:出版社HP

起業家の一番大きな課題を解決するために、この本を書いた。
この本は、スタートアップの成功に必要な知識をまとめようと、作成してきたスライド集『スタートアップサイエンス2017』がベースになっている。1750ページに上るスライド集を作るために、5年間、約2500時間を費やし、1000人以上の起業家、投資家、スタートアップ関係者と対話をしてきた。
「なぜ、『スタートアップサイエンス』のスライドをまとめたのか?」とよく聞かれる。
私がスライド集、そしてこの本をまとめた理由は、起業家の一番大きな課題を解決するためである。
私自身、これまでに日本では4回、シリコンバレーで1回、スタートアップを立ち上げてきた。企業内で新規事業の立ち上げをするプロジェクトにも数多く加わってきた。また、スタートアップに対する投資家としても経験を積み、スタートアップの現状を多角的に見てきた。
その経験から分かるのは、スタートアップを始めた瞬間から、起業家には課題が次から次へと降りかかってくることだ。その中でも、一番大きな課題は、スタートアップが成長していく過程の様々なタイミングで、自分たちが何を実現すればよいのかを判断する基準がないことだ。そのため、起業家は目標に対して前進できているのかさえ分からないまま、迷いつつ歩みを進めるしかない。
スタートアップ以外の一般企業ならば、既存事業の売り上げやそこから上がる利益が行動の指標となる。しかし、スタートアップは、起業から最初の売り上げが立つまでには、長い道のりがある。その途中で、何を達成すれば目標に対して前進できているのか、スタートアップの創業メンバーは具体的な基準がないままに悩み続けている。
その不安な状況からスタートアップを救うべく、世の中には数多くの優れた書籍、ブログ、動画などが公開されている。個別にはそれぞれ重要な内容が盛り込まれており、それぞれはとても有用なものだ。
しかし、問題がある。情報の多くがコンテクストに沿ったものでなく、スタートアップのどの段階で有効なのか分からないことだ。
このため、読むタイミングによっては、スタートアップにとって間違った情報になってしまうことがある。アイデアを十分磨き込んでいないのにプロダクト開発に注力したり、プロダクトがカスタマーの心を捉えるものになっていないのに成長に向けて投資をしたりといった間違いを起こし、成功する前に資金が尽きて倒れてしまう。
また、成功のために必要な情報の多くは書籍やブログ、動画などそれぞれのパッケージの中に散らばっており、情報を探すにも読み込むにも膨大な時間が必要になる。起業家はスタートアップを立ち上げた瞬間から、あらゆることを自らやる必要があり、これらの情報を集めるには、圧倒的に時間が足りないのだ。
「いつ、何のために役立つ情報かというコンテクストが分からない」「情報が散在していて、忙しい起業家には把握しきれない」。こうした問題点を解決するために、起業家が成長のステージごとに何に取り組めばよいのかを、私の経験も踏まえて時系列で整理したのが、この『起業の科学スタートアップサイエンス』である。
本書では、カスタマーに熱烈に愛されるプロダクトを生み出し、成長できるようになるまでの考え方を「アイデア検証」から「スケール(事業拡大)」までの20のステップとして定義している。各ステップでどのようなアクションをすべきかを詳細に紹介しており、このステップに沿うことで、自分たちのスタートアップが適切な方向に進んでいるか、時期に合った拡大ができているかをチェックできる。
私はアマゾンやフェイスブックのような「大成功するスタートアップ」を作ることはアートだと思っている。ただし、この本で示した基本的な型を身につければ「失敗しないスタートアップ」は高い確率で実現できる。これを私はサイエンスだと信じている。その思いから、本書のタイトルを「起業の科学スタートアップサイエンス」と定めた。
読者のイメージとしては、スタートアップに関してまだ経験が浅く、玉石混交の情報に左右され、シリコンバレーでもがいていた2011年の自分自身を想定している。
スタートアップが世界でもっと増えれば、世界は活性化し、より良い場所になると信じている。スタートアップを始めたい人、既にスタートアップを始めて壁にぶつかっている人、さらに一般企業の新規事業担当者が成功するために本書が一助になれば幸いである。
なお、本書の制作に当たっては、書籍『リーン・スタートアップ』(日経BP社)、『Running Lean実践リーンスタートアップ』(オライリー・ジャパン)、スライド集「あなたのスタートアップのアイデアの育てかた」(馬田隆明氏作成)に学ぶところが多かった。改めて感謝を申し上げたい。

本書の構成

本書は5章立てで起業して成功するまでの20ステージを紹介している。
第1章の「IDEA VERIFICATION(アイデアの検証)」では、スタートアップの準備段階で必須となる、どんな課題解決をスタートアップのアイデアに定め、それをどう磨き込むかを解説する。
第2章の「CUSTOMER PROBLEM FIT(課題の質を上げる)」では、第1章で磨いたアイデア(課題仮説)を、顧客が本当に抱えているのかを検証する。
第3章の「PROBLEM SOLUTION FIT(ソリューションの検証)」では、検証が済んだ課題仮説を実際に解決するにはどんな方法が適切なのかを検討する。実作業としてはプロトタイプ(試作)を用いたユーザーインタビューを行う。
第4章が「PRODUCT MARKET FIT(人が欲しがるものを作る)」。市場で顧客から熱狂的に愛されるプロダクトを実現するPMFの達成は、本書の最も重要な目標だ。市場の反応を検証するための実用上最小限のプロダクト「MVP」を構築して顧客の声を集め、熱狂的に愛されるプロダクトを実現するための改善を続ける方法を解説する。
最後の第5章は「TRANSITION TO SCALE(スケールするための変革)」。PMFを達成したプロダクトをユニットエコノミクス(顧客1人当たりの採算性)という観点から改善し、利益が出る状態を実現する方法を解説する。PMFが達成でき、ユニットエコノミクスがプラスになったらスタートアップはいよいよスケール(事業拡大)する段階に進むことができる。

第1章

第2章

第3章

第4章

第5章

本書が提供すること

自分たちが正しい方向に進んでいるかを判断するコンパスを提供する
スタートアップは、活動を始めてから、市場に熱烈に受け入れられるプロダクトを実現するPMFの達成まで、事業がどのくらい進捗しているのかを把握することは容易ではない。本書は、各ステージにおける進捗のチェックリストになり、スタートアップが正しい方向に進んでいるのかを確認できる。

時期尚早な拡大を防ぐためのガイドラインを提供する
スタートアップの多くは、アイデアや課題設定、プロダクトの検証が不十分なまま時期尚早な拡大に走ってしまう傾向がある(多くのスタートアップが時期尚早の拡大が理由で死んでしまう)。それを防ぐため、本書では、ステージごとにすべきこと、してはならないことの基準となるガイドラインを示す。リソースが限られるスタートアップが、無駄なことに注力して資金が尽きるという失敗の可能性を下げられる。

各ステージの目標を具体的なアクションに落とし込むノウハウ、ツールを提供する
本書では、抽象的な理論ではなく、スタートアップが実践できるノウハウ、フレームワーク、チェックリストなどのツールを提供している。スタートアップの経営者が、次に行うべき具体的な施策やアクションを明確に理解できる。

包括的な情報を提供する
私は5年の歳月をかけて、スタートアップに関する300冊以上の書籍、500本以上のブログを読み、1000本以上の動画を見た。さらに1000人以上の起業家・投資家などとディスカッションし、アドバイスやメンタリングを行った。そこに自分自身の起業経験・投資経験を加えたものをベースに本書を作り上げた。忙しい起業家にとって有用な情報の全体像が整理できる内容にまとめた。貴重なリソースである時間をセーブできるはずだ。

田所 雅之 (著)
出版社 : 日経BP (2017/11/2) 、出典:出版社HP

Contents

はじめに

Chapter1 IDEA VERIFICATION 【アイデアの検証】
1-1 スタートアップにとっての「良いアイデア」とは一
いかに課題にフォーカスするか
誰が聞いても良いアイデアは避ける
他の人が知らない秘密を知っているか?
なぜクレージーなアイデアが求められるのか?
スタートアップが避けるべき7つのアイデア
1-2 スタートアップのメタ原則を知る
スタートアップとスモールビジネスの違い
97%のことにNOと言えるか
スタートアップは極端に直感に反する
1-3 アイデアの蓋然性を検証する
スタートアップはタイミングが命
市場環境の流れを読む
PEST分析で「兆し」を見つける
破壊的イノベーションと持続的イノベーション
スタートアップの10のフレームワーク
ターゲットの市場に狙いを定める
1-4 Plan A(最善の仮説)を作成する
リーンキャンバスの書き方 ピボットの重要性と留意点
COLUMN サイドプロジェクトでアイデアを練る

Chapter2 CUSTOMER PROBLEM FIT 【課題の質を上げる】
2-1 課題仮説を構築する
課題の質を上げる
ペルソナを想定する
カスタマーの体験に寄り添う
2-2 前提条件を洗い出す
ジャベリンボードの使い方
2-3 課題~前提の検証
Get out of the building!
プロブレムインタビューの心得
仮説を修正していく

COLUMN 創業メンバーは課題が腹落ちしているか (ファウンダー・プロブレム・フィット)

Chapter3 PROBLEM SOLUTION FIT 【ソリューションの検証】
3-1 UXブループリントを作る
最適化する前に入念な検証をする
3-2 プロトタイプの構築
UX設計をベースにプロトタイプを実装する
3-3 プロダクトインタビュー
カスタマーの声がリスクを減らす
Problem Solution Fit終了の条件
COLUMN 共同創業するチームを作る

Chapter4 PRODUCT MARKET FIT 【人が欲しがるものを作る】
4-1 ユーザー実験の準備をする
リーン・スタートアップをより実践的にする
MVPの型を知る
4-2 MVPを構築する
MVPからの学びを最大化する
4-3 MVPをカスタマーに届ける
恥ずかしい状態のうちに市場に出す
マーケティングより直接対話する
4-4 MVPの評価を計測する
スプリントの繰り返しで評価を計測
定量分析で定番の指標を使う
定性分析のインタビューでインサイトを得る
4-5 新たなスプリントを回す
PMF達成へ再びスプリントを実行
PMFは達成できたか?
4-6 UXを磨き込む
UXがユーザーの愛着を左右する
ユーザーを定着させるUXの秘訣
分かりやすさがユーザー定着の決め手
4-7 ピボットを検討する
ピボットをするか
辛抱するか
残り何回ピボットできるか?
COLUMN PMF達成へ柔軟性の高いチームを作る

Chapter5 TRANSITION TO SCALE 【スケールするための変革】
5-1 ユニットエコノミクスを計測する
顧客が増えれば利益も増える形に
LTV(生涯価値)を計測する
5-2 顧客1人当たりのLTVを高める
顧客を長く定着させるには秘密がある
5-3 顧客獲得コスト(CPA)を下げる
PMF直後のCPAを把握する
オーガニックでCPA低減
情報をストックして幅広い層にリーチ

おわりに

編集協力=郷和貴
カバー・表紙イラスト=アフロ
オビの写真=菊池一郎、Snapchat

本書の図版は、スライド集『スタートアップサイエンス2017』をもとに作成した。
また、本書に掲載したURLは2017年10月初め時点のものである。

田所 雅之 (著)
出版社 : 日経BP (2017/11/2) 、出典:出版社HP