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【最新 観光学について学ぶためのおすすめ本 – 観光の在り方や持続可能性を理解する】も確認する
観光振興担当者には必携の1冊
国、都道府県、区市町村、さまざまな立場からの観光政策論集です。全集を構成するにふさわしい網羅的かつ啓蒙的な内容になっています。この本は、多くの研究者がこの分野にも目をむけるきっかけとなる本となるでしょう。
刊行の辞
日本政府は,2003年に観光立国宣言をし,2007年,観光基本法を43年ぶりにみした観光立国推進基本法を施行した。2008年にはわが国初の観光庁が設置
これね、政府がこのように本腰を入れて観光政策に取り組むのは、1930年に観半局を設置して以来のできごとである。国の動きに連動して,日本各地の自治休においても,観光事業に積極的に取り組む姿勢をみせている。
このような国の観光政策に対する大きな方向転換は、観光が国や地域経済に与える効果が大きいということが認識されてきたからであるが,観光は,人間が生きて成長していくために,そして世界平和に寄与するためにも,その役割がおおきいことも理解してほしい。
こうした国及び自治体の動きに呼応して,大学においても観光学部・学科の設置が盛んである。4年制大学で、1987年以前にはわずか2校を数えるのみであった観光学科が、1987年に施行された総合保養地域整備法の影響と今日の積極的な政府の観光政策から、全国各地に観光学科が新設され,2009年にはその数も40校に迫りつつある。
大学の数が増えれば当然,観光学の専任教員も学生も増加するわけで,その関連から観光関連の専門書籍も数多く出版されるようになったのは望ましい状況である。
しかし,このように観光分野が急成長を遂げつつある一方で,観光学の学問体系は存在するのかといった声も聞かれる。たしかに、新しい学問だけに観光の専門分野別にみても集大成された専門書は少ないし、まして体系化をにらんでの全集は刊行されていないのが事実である。
そこで、いまや700名を超える私たち日本観光研究学会が、そうした批判のに応えるために,観光学全集を刊行する責務があるだろうと、学会の事業として取り組むことになった。
観光現象が早い速度で変化するだけに,観光学がなかなか理論化できない面もあるが,いつまでたってもそれは同じことで,とにかく出版をし,他の観光関連学会や行政,民間など多くの方々からご意見をいただくことにした。各分野からのご意見を参考に,修正をしながら,10年くらいのスパンで全集を完成させていきたいという気持を持っている。
その意味からも,歴史のある他学問と比較すると,まだ観光学はひよこ程度にしかみえないかもしれないが,とにかく大きな目標に向かってスタートを切った。観光学を一人前に育てるためにも、多くの方々からご意見、ご指導を賜りたいというのが,全集を刊行した私たちの率直な気持ちである。
最後に,本学会のこうした企画にご理解を示し,全集の出版をお引き受けいただいた原書房成瀬雅人社長並びに編集の労をとられた中村剛さん,早川江里さんに、心から感謝の意を表したい。
日本観光研究学会,観光学全集編集委員一同
はじめに
観光学において政策論は新しいジャンルであるものの,その重要性は急速にしている。特に2007年及び2008年は観光政策をめぐり大きな出来事があった。自由民主党と保守新党との政策合意に基づく「観光立国、観光立学が民主党等も含めた超党派による衆議院国土交通委員長提案の観光立国推進基本法として結実した。更にはエコツーリズム推進法も制定され、2008年10月には観光庁が設置された。これらの動きに先立つこと2006年5月、日本観光研究学会においては観光立国推進基本法案をテーマにシンポジウムを開催し,全国各地の大学における観光学関係の学部,学科設置の潮流にあわせて、観光政策論への期待を真剣に議論したところである。行政改革,財政再建が推進されている環境の中,観光行政への期待は逆に大きくなってきており、国、地方公共団体においては観光政策部局が拡充強化されてきている。しかしながらこれを単なるキャンペーン行政,コンテスト行政に終わらせないためには、研究者等の手による観光政策論の展開が必要である。このような状況において、これまで体系的にまとめられることのなかった観光政策論が,シンポジウムに引き続き日本観光研究学会の観光学全集としてまとめられることは、まことに時宜を得たものである。
本巻は,第1章において観光政策論全体の意義付けを展開するとともに今後の政策論の進め方を提案している。第2章においてわが国において実施された観光施策の分類と分析・評価を行っている。第3章においては日本及び外国の国際観光政策・観光関係国際協力政策に関し分析し、ビジット・ジャパン・キャペーンに関する政策評価等を行っている。第4章においては中央政府及び沖縄県が実施する沖縄に関する観光施策の分析・評価を行っている。第5章においては荒川区,練馬区を例に東京都区部自治体の観光政策の分析している。第6章においては群馬県草津町の観光政策に関する分析を展開している。付論は観光政策史の一翼を形成するものと位置づけられものであるが,今後の観光政策論の発展を期待する視点からも不可欠なものである。
政策論においては研究者の求められる分野は無限に広がっており,本書が多くの研究者がこの分野にも目をむけるきっかけとなることが出来れば望外な喜びである。観光学全集がきっかけとなり,研究分野が広がり深度化することを期待するものである。
著者を代表して
寺前秀一
目次
刊行の辞
はじめに
第1章 観光政策の意義と役割……….寺前秀一
1 観光政策論展開の必要性
2 観光政策の目的
3 観光政策と観光制度
4 観光立国推進基本法の成立と観光政策論の今後の課題
第2章 実施された観光施策の分析・評価……….寺前秀一
1 実施された観光施策の分類及び分析・評価
2 観光施策実施責任主体の関係
3 公的主体としての交流事業
第3章 国際観光政策の展開……….新井俊一
1 日本の国際観光振興政策
2諸外国政府観光局の組織と活動
3.観光協力
第4章 沖縄に関する観光政策とその評価……….伊佐良次・寺前秀一
1 沖縄観光の経緯
2沖縄振興開発特別措置法及び沖縄振興特別措置法による施策
3 沖縄県により展開された観光施策
4 観光政策と環境政策の調和に関する政策
――政策先進地域としての沖縄
5 沖縄観光に関する政策評価分析
第5章 東京都区部における観光政策
一荒川区及び練馬区を中心に…….伊澤敦・井上努
1 東京都における観光行政の変遷
2 東京都特別区の観光行政
3 荒川区の観光政策
4 練馬区の観光政策
第6章 群馬県草津町の観光政策…….片岡美喜・寺前秀一
1 草津町における観光の概況
2 草津町における観光行政の概要
3 草津町で展開された観光施策の沿革
4 草津町における温泉及び自然観光資源を中心とした行政対応とその課題
5 総括
付論 植民地統治と「観光」政策
―日本統治下南洋群島における内地観光団を事例に…….千住一
1 はじめに
2 第1回・第2回内地観光団
3 第3回・第4回内地観光団
4 第5回・第6回内地観光団
5 おわりに
参考文献
索引
執筆者一覧(執筆順)
寺前秀一(加賀市長)
新井俊一(株式会社コスモメディア顧問)
伊佐良次(高崎経済大学地域政策学部觀光政策学科准教授)
伊澤敦(東京都交通局千住自動車營業所)
井上努(東京都練馬区企画部)
片岡美喜(高崎経済大学地域政策学部觀光政策学科講師)
千住一(川村学園女子大学人間文化学部非常勤講師)
編集委員一覧
溝尾良隆(帝京大学经济学部觀光經營学科教授)
安烏博幸(立教大学觀光学部教授)
下村彰男(東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻教授)
十代田朗(東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻准教授)