天然系調味料の知識

【最新 調味料について学ぶためのおすすめ本 – 料理初心者から上級者まで役立つレシピ】も確認する

新たな調味料についての知識が身に付く

天然系調味料とは、天然の食品素材を原料とした調味料のことである。近年の社会・経済的な変化に伴い、生活様式が変化していく中で、食に対する認識も変わりつつあるのが現状である。食に関わる職業の方や、食に関連する事項を専攻している大学生には、特におすすめの一冊です。

石田 賢吾 (著)
出版社 : 幸書房 (2020/10/20)、出典:出版社HP

 

天然系調味料の知識

はじめに

1955年出版の広辞苑第1版によると,「調味」とは「食物の味を調べること,食物に味をつけること」そして「調味料」とは「飲食物の味を調えるに用いる材料,味覚・嗅覚を刺激して食欲を進め,消化・吸収を佳良にするために用いる。鹹味料・旨味料・酸味料・甘味料及び苦味料などに分け,食塩・醤油・ソース・味の素・鰹節・昆布・煮出汁・酢・砂糖・飴・脂肪・澱粉などの種類がある。」と記されている。「日本標準商品分類(1990年改訂)では,中分類にその他の食料品があり,ここに調味料及びスープが記載されており,これには,「食塩・みそ・しょうゆ・ソース・食酢・うま味調味料・調味料関連製品・スープ・その他の調味料及びスープ」が商品項目としてあげられている。
近年の社会・経済的な変化に伴い、人々の生活様式のニーズとして簡便化が大きなキーワードになっている。このような中で、加工食品や外食産業,コンビニに代表される中食の発達には著しいものがある。したがって,日本標準商品分類の調味料関連製品やその他の調味料およびスープに分類される調味料は,著しく発達し,変化し拡大している。
天然系調味料とは、農・水・畜産物および酵母を原料として抽出・濃縮してつくるエキス調味料と,大豆・小麦・その他の副生成物のたん白質を分解してつくる、たん白加水分解物調味料との,2つの系統の調味料に対して用いる業界用語である。一言でいえば天然の食品素材を原料とした調味料ということになる。食品の表示においては天然・自然などの用語は,公正競争規約などに別途定められているので,それに準じて使用しなければならない。
このように,エキス調味料はいわゆる日本の“だし”,西欧の“ブイヨン”,“フォン”,“スープストック”,中華の“湯(たん)”に相当するもの,あるいはそれらの加工度を向上して、加工食品や外食産業などに使いやすくしたものといえる。一方のたん白加水分解物は,しょうゆやみそ,魚醤油のように,一般に安価な原料を使用して、たん白質を分解してアミノ酸を作り,使いやすくした調味料である。市販の加工食品の表示を見て頂ければおわかりのように,このようなエキスやたん白加水分解物は,ほとんどの食品に使用されている。
おいしい食物をつくるにはその風味が重要であり,調味料の役割は大きい食品の風味に関与する成分の解明,うま味,コク,減塩調味に加えて風味と健康機能との関係など新しい研究も進展している。
一方,調味料として風味が優れたものを作り,保存性も良く,安心して安全に使用されるためには、原料の選択,抽出法,濃縮法,保存安定性の確保など製造技術面の役割が大きい。「著者は,民間会社でうま味調味料,たん白加水分解調味料,エキス調味料の研究,開発,製造に携わり,さらに関連する業界団体で経験した安全・安心の確保なども含めてまとめたのが本書である。「天然系調味料は,非常に広く食品業界に浸透しているため,調味料会社の方はもとより、食品に関与されている製造,販売,研究,給食関係,および大学で食品を専攻される方々の参考になれば幸いである。
最後に,各章ごとに参考文献を掲載したこの場を借りて引用先の先生方に謝意を述べさせて頂きます。特に三菱商事ランフサイエンス(株)のメールマガジン「味な話」からは,多数の処方を引用させて頂いたことに感謝致します。
また,本書の出版にご尽力、ご協力を賜った幸書房の社長夏野雅博氏と編集部の伊藤郁子さんに感謝致します。
2020年9月
石田賢吾

石田 賢吾 (著)
出版社 : 幸書房 (2020/10/20)、出典:出版社HP

 

目次

第1章 天然系調味料の概要
1.1天然系調味料の定義と分類
1.1.1定義
1.1.2分類
1.2天然系調味料の歴史
1.3天然系調味料の安全性と品質
1.3.1安全性の確保
1.3.2品質
1.3.3品質管理
1.3.4 HACCPによる衛生管理

第2章 天然系調味料の原料と製造法
2.1天然系調味料の原料
2.2天然系調味料の製造法
2.2.1畜産エキス・水産エキス
1)製造工程
2)エキスの抽出条件
3)抽出時に生成するアク
4)エキスの風味を改善する香味野菜
5)水産エキスの原料と製造工程
6)畜産・水産エキス製造への酵素の利用
7)エキスの濃縮
2.2.2魚醤油(魚醤)
1)伝統的な製造工程
2)新しい製造法
2.2.3農産エキスの製造工程
1)製造の特徴
2)製造に利用される酵素
3)しいたけエキスのグアニル酸
2.2.4酵母エキスの製造工程
1)製造の特徴
2)酵素分解法を利用した製造
3)酵母エキスを用いたプロセスフレーバーの製造
2.2.5たん白加水分解物の製造法
1)酸加水分解と酵素分解
2)酸分解調味料とクロロプロパノール
2.2.6シーズニングオイルの製造法

第3章 天然系調味料製造の設備と装置
3.1抽出・分解工程
・回分式常圧抽出装置・回分式加圧抽出装置・超臨界流体抽出法・超高圧処理装置
3.2分離工程
・金網かご方式・湿式振動飾・竪型遠心分離機,横型遠心分離機・スクリュープ
・中一人型超遠心分離機·自動排出型三相分離機
3.3 3過工程
・ろ過槽式・フィルタープレス・回転型ろ過機
3.4濃縮工程
・常压濃縮法・真空,減压濃縮法・真空凍結乾燥法・液循環型濃縮装置・型濃縮裝置
・凍結濃縮法・膜濃縮法
3.5乾燥·粉化工程
・常旺熱風乾燥法・流動層乾燥法・減圧フライ乾燥・噴霧乾燥法・真空乾燥法・ドラム下入乾燥法・マイクロ波加熱乾燥法
3.6混合·調合工程
・回分式低速混合装置・回容器型混合機・固定容器型混合機
3.7造粒工程
・乾式压縮解碎造粒機·搅拌造粒機・流動層造粒機・押出造粒機・酝動造粒機・破碎造粒機
3.8殺菌工程
・液体連続殺菌装置・高温高压調理殺菌装置・江一心加熱殺菌装置・粉粒体殺菌装置
3.9充填·包装工程
・顆粒,粉体自動充填包裝機・液体,粘体自動充填包裝機・スティック自動充填包裝機・無菌充填包裝機・バッグインボックス充填機

第4章天然系調味料と食品の風味成分
4.1食品のおいしさを構成している要素
4.1.1おいしさと天然系調味料
4.1.2食品の味を構成する成分
4.1.3食品の旨み(旨味)とうま味について
4.2畜産エキス調味料の成分
4.2.1ビーフエキス
4.2.2ポークエキス
4.2.3チキンエキス
1)鶏肉エキスと鶏ガラエキスのアミノ酸
2)名古屋コーチンとブロイラーのエキス
4.2.4畜産エキスの基本呈味成分と香気との関係
1)畜肉の基本的な呈味成分としてのエキス
2)前駆物質の加熱によって生成するミートフレーバー
3)畜肉の種類と風味.
4.2.5畜肉エキスの香気成分
1)ビーフエキスの香気成分
2)鶏ガラエキスの香気成分
3)豚骨エキスの香気成分
4.3水産エキス調味料の成分
4.3.1水産エキス調味料の分析値
4.3.2主要魚介類エキスの風味成分
1)魚介類エキスの風味成分の概要
2)ズワイガニエキスの呈味成分
3)魚醤の風味成分
4)かつお節エキスの風味成分
5)こんぶエキスの風味成分
4.4農産エキス調味料の成分
4.4.1農産エキスの風味成分
1)トマトエキスの風味成分
2)玉ねぎエキスの風味成分
3)にんにくエキスの風味成分
4)きのこエキスの風味成分
4.5酵母エキス調味料の成分
4.5.1酵母菌体の成分
4.5.2酵母エキスの呈味成分
4.6たん白加水分解物の成分
4.6.1 HVPEHAP
1)HVPとHAPの呈味成分
2)HVPの香気成分
4.6.2たん白酵素分解物

第5章 天然系調味料の加工食品への利用
5.1日本の加工食品の概要
5.2日本の調味料の概要
5.3配合型天然系調味料
5.4天然系調味料の使用効果
5.5天然系調味料の各種加工食品への利用
5.5.1スープ類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.2たれ・つゆ類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.3カレー類への利用
1)業界の動向
2)カレー粉の配合例
3)処方例
5.5.4マヨネーズ・ドレッシング類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.5風味調味料・液体だしへの利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.6ソース類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.7食肉加工品への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.8水産加工品への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.9漬物類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.10米菓・スナック菓子への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.11冷凍食品・レトルト食品・惣菜類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.12珍味・ふりかけ・お茶漬け類への利用
1)業界の動向
2)処方例
5.5.13植物性たん白利用食品への利用
1)大豆たん白業界の動向
2)大豆たん白等利用食品の処方例
3)大豆たん白の調理への利用
5.5.14健康食品への利用
1)業界の動向
2)天然系調味料の成分と健康機能
3)健康食品の処方例

第6章 天然系調味料の今後
6.1天然系調味料の生産量の推移
6.2ライフスタイルの変化と調味料
6.3健康志向と天然系調味料
6.4食料資源からみた天然系調味料
6.4.1原料からみた資源の有効利用
6.4.2調味による資源の有効利用
6.5天然系調味料の海外展開
6.5.1世界で注目される日本食
6.5.2海外での天然系調味料の生産
6.6天然系調味料の持続的発展のために
索引

石田 賢吾 (著)
出版社 : 幸書房 (2020/10/20)、出典:出版社HP