かゆいところに手が届く 廃棄物処理法 虎の巻 2017年改訂版

【最新 – 廃棄物管理を学ぶおすすめ本 – 入門解説から実務まで】も確認する

廃棄物処理法への対応がよくわかる

とっつきにくい法律ですが、この本を読むことで廃棄物処理法への理解を深めることができます。適正な管理と日常業務を円滑に進めるための一助となるでしょう。今後の廃棄物関連法制度のあり方を考えるきっかけとなる一冊です。

堀口 昌澄 (著)
出版社: 日経BP; 2017年改訂版 (2017/11/3)、出典:出版社HP

はじめに

法律は守らなければなりません。そのためにも、その法律がなにを定めているのかがわかり やすいものでなければ困ります。特に、その法律を守らなければならない人が多ければ多いほど、 わかりやすさに配慮した法律にしなければなりません。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」は、廃棄物を出す人すべてにかかわ ります。生きていれば多かれ少なかれ廃棄物を出すのですから、社会生活を営んでいる日本人 全員に関係するものです。特に、事務作業も含めてなんらかの仕事に就いている方は無意識の うちに、多少なりとも、産業廃棄物を出しているはずです。したがって、少なくともその仕事場 の誰かが廃棄物処理法をしっかりと理解していなければなりません。ところが、廃棄物処理法 は難解な法律として有名で、独学では概略を理解するだけでも難しく、正しい理解を得るため には現場と法の規定の両方を理解している人のアドバイスが欠かせません。専門的知識があ るはずの処理業者、ISO審査員ですら間違った理解をしていることもあるので、注意が必要です。
廃棄物処理法を十分に理解していないと、悪意がなくても知らず知らずのうちに違法行為を 行ってしまう危険性があります。過去にも廃棄物処理法違反の結果、責任者が懲役刑や罰金 刑を受けたり、委託業者の不法投棄の責任を取らされたり、行政処分を受けて事業の遂行に支 障をきたす事態に発展してしまった事例があります。マスコミなどに取り上げられて、会社の イメージの悪化につながる恐れもあります。逆に、解釈がバラバラであるために、やらなくても よいことをやっていたり、現場に混乱が生じてしまうこともあります。
廃棄物処理法の解説書はこれまでに何冊も発行されていますが、概要を説明した一般向け の基本的なものと、条文を解説した専門家向けのものに二極化されています。前者は全体像を 理解するためには有用ですが、現場でぶつかる具体的な課題に対応するためには不十分です。 後者は課題への対処方法ではなく条文解説が中心で、それを現場にどのようにあてはめるべき かがすぐにはわかりません。特に、廃棄物を出す際に直面する応用問題にどう対処したらよい かを網羅的に取り扱った本がまだないのです。
日経BP社の「日経エコロジー」誌で私が連載してきた「廃棄物処理法Q&A」は、上記でい うところの応用問題への対処方法を解説するコラムです。1ページの読み切りで、廃棄物に直 接関係がない方でも比較的読みやすい内容です。読者からの支持が高く、異例の長期連載となっ ているのですが、誌面の関係で十分に説明しきれない、あまり細かい問題までは扱えない、一 定のボリュームがあるテーマしか取り上げられない、といった制約がありました。そこで、これ らの制約がないところで単行本の形でまとめたいと思ったのが、この本を書くことになったきっ かけです。
この本をどのような人が、どのように活用してくださるのか想像しながら原稿を書いてきま した。例えば、排出事業場の廃棄物管理担当の方が机上に載せて必要なときにすぐに手に取っ ていただける、法務部の本棚に六法と一緒に並んでいる、監査する側もされる側も参考書とし て持参している、処理業者の営業の方がカバンに忍ばせている、などなど。そんなふうにみな さまに使っていただけるのであれば、この本の目標の一つである「読者のみなさまの廃棄物処 理法への理解を深め、適正な管理と日常業務を円滑に進めるための一助となる」は果たせたことになると思います。
実はこの本を書くにあたって、もう一つ狙っていたことがあります。廃棄物処理法の無駄や 矛盾をあぶり出すという効果です。この法律には、ほとんど効果がないと思われる規制や、今 となっては無意味な規定が数多く残っています。不適正処理の原因になっているわけではあり ませんが、資源循環を阻害していたり、無駄な業務が発生したりしています。廃棄物処理法の 改正案やあるべき姿を検討することが本書の目的ではありませんが、読者のみなさまに少しだ けでも「今後の廃棄物関連法制度のあり方」を考えていただければと思います。

<本書の内容>
私がこれまでにセミナーやコンサルティングの現場でいただいた質問をまとめていますので、 実務に直接役立つ内容になっているはずです。基本的には排出事業者を対象としていますので、 処理業者だけにしか関係しないテーマは扱っていません。
また、廃棄物処理法の基本的理解があることを前提に構成しています。初心者の方はあらか じめ基礎的内容を扱ったセミナーへ参加するか、既存の入門書をお読みください。

<想定読者> 廃棄物管理にかかわりを持つ以下のような方たちを、この本の読者として想定しています。
●排出事業者の実務担当者
●処理業者の管理職
●排出事業者の管理担当者
●内部監査員
●排出事業者の本社の担当者
●ISO14001の審査員
●処理業者の事務管理担当者
●自治体など行政の担当者
●処理業者の営業担当者
主に廃棄物管理の現場の業務、管理、指導をされている方々にとって、業務のベースとなる 参考資料として使っていただければと思います。本書では足りない部分、疑義がある部分もあ るかと思いますが、みなさまからのご意見やご叱責をたまわり、今後の改善につなげていきた。 いと思います。
本書が、読者のみなさまの廃棄物処理法の理解を深め、適正な管理と日常業務を円滑に進 めるための一助となれば幸いです。
<ご注意>
本書では、法律の規定、通知、一般に普及している解釈を中心に、具体的な課題への対応方 法を提示しています。しかし、過去にいただいた質問を一般化しているものですので、個別の 事例についてそのまま適用することができないケースもあると思われます。本書は判断材料の 一つを提示すものです。実務では、管轄自治体や専門家、社内関係者と相談した上で、最終的 には読者のみなさまの責任で判断しなければならないことにご留意ください。

堀口 昌澄

堀口 昌澄 (著)
出版社: 日経BP; 2017年改訂版 (2017/11/3)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第1章 これはなんていう廃棄物?いや、そもそも廃棄物?
1-1 廃棄物とは
ガスは廃棄物ではない
土砂は廃棄物?
製造工程で発生した廃液を処理したら?
総合判断説をどう使うのか
無料で引き取りに来てくれる場合は?
運賃が購入代金より高い場合は?
1-2 産業廃棄物と一般廃棄物の区分
事業活動ってなに?
産業廃棄物の20種類に該当するか
業種限定で産業廃棄物から外れる
どの産業廃棄物に該当するのか
1-3 混合物をどのように扱うか
種類はどう書くかつ複数の名前を書く
種類はどう書くかの名称を書く
埋設廃棄物と汚染土壌と土壌の混合物
容器は廃棄物?
混合していない場合は?

第2章 用語の定義がどこにあるのかわからない
2-1 排出事業者とは
条文中には出てこない
2-2 処理と処分
「最終処分=埋立」ではない
中間処理業者
処理には処分も含まれる
中間処理業者が行う最終処分
中間処理産業廃棄物
処理業者が守る「産業廃棄物処理基準」
2-3 廃棄物処理施設
一般廃棄物処理施設(ごみ処理施設)
産業廃棄物処理施設
特定処理施設
2-4 そのほかの用語
災害療棄物
産業廃棄物管理票
管理票交付者
交付担当者
石棉含有産業廃棄物

第3章 実は悩ましい保管基準
いろいろな保管基準
一般廃棄物と産業廃棄物の保管場所を分けるべきか
どこからが保管場所か 囲いとは?
積み上げ高さについて
廃パレットの積み上げ高さについて
見やすくなくてはいけないのです
廃棄物の種類ごとに掲示板は必要なのか

第4章 委託基準の本当の話
4-1委託基準とは
排出事業者にとって最も大切な基準
誰が罰則を受けるのか
一般廃棄物の委託基準
4-2 それぞれ委託
2者契約と3者契約
積替え保管をする際の注意点
4-3委託契約のいろいろ
テナントからの廃棄物
マニフェストの交付などの事務をビル管理会社に依頼する
代理人を介した契約
連名での契約
覚書でもOKか

第5章 契約書の記載事項の注意点
5-1 法定記載事項
どこに法定記載事項が書かれているのか
空欄が埋まっているだけでは不十分
処理費が0円の場合はどうしたらよいか
最終処分を直接委託する場合の記載方法
売却先は記載しなければならないのか
2次中間処理は記載するのか
委託業務終了報告は何票が正解?
5-2 書き方のポイント
ひな形に注意
伝達方法とは?
排出事業者の損害賠償責任
「未処理の産業廃棄物の扱い」が記載されていない
契約内容と実態が違う
昔の契約書に法定記載事項が抜けていたら?
間違っていた契約書の変更・修正
吸収合併や社名変更の場合
法定記載事項以外の項目について
第6章 委託基準の応用編
6-1 専ら物
専ら物の委託
契約書と許可証
扱うことができる業者の範囲
専ら物の範囲
6-2 特別管理産業廃棄物
特別管理産業廃棄物の範囲は意外に狭い
特別管理産業廃棄物の委託基準
6-3 委託基準に関する現場の悩み
いわゆる実車テストには契約は必要なのか
事前協議ってなに?
窓口業者経由での料金の支払い
再委託の承諾書は大切に
あわせ産廃
広域認定制度を利用する場合
家電リサイクル法の場合
小型家電リサイクル法の場合
6-4 印紙の節約方法
委託契約書の印紙
目からうろこの節税方法
契約書の製本の手間を省く

第7章
マニフェストの記載方法
7-1 マニフェストの基礎
誰の罰則になるのか
勧告・命令もある
返送されたマニフェストの記載ミスと期限切れ
違反が見つかった場合の対処方法
7-2 マニフェスト記入演習
実際にマニフェストを書いてみましょう(電子化率100%の方も是非)
A票の法定記載事項
一般廃棄物や有価物の管理にマニフェストを使えるか

第8章 マニフェストの応用編
8-1 マニフェストの流れ
まずフローを確認する
返送されてくるマニフェストに書かれているべきこと
E票と契約書が違う場合(電子マニフェストでも同様の問題に注意!!)
8-2 困ったときの対処法
マニフェストをなくした
期限が過ぎているのにマニフェストが返送されない
措置内容等報告書は本当に出すべきか
保存義務があるマニフェスト
誰にどのマニフェストが最終的に残るのか
特別管理産業廃棄物のマニフェストの返送期限
毎月の請求書に同封されて返送されている場合
返送先はどこにすべきか
マニフェストの管理事務委託
マニフェスト交付等状況報告書について
積み込み時の立会いは義務か
間違った運用を見抜く方法
電子マニフェストで特に気をつける点
マニフェストの様式について
運搬だけ、処分だけを委託する際のマニフェスト
マニフェストの各票と条文について

第9章 これは誰のごみだ!
メンテナンス廃棄物
下取りについて
梱包材の排出事業者は誰か
倉庫廃棄物の排出事業者は誰か
返品、回収品はどこから廃棄物になるのか
OEMなどの製造委託先からの廃棄物は?
リース物件の排出事業者は誰か

第10章 不法投棄されてしまったら
行政処分 (措置命令)の可能性
どんな場合に措置命令を受けるのか
罰則を受ける可能性
社会的責任を問われる可能性

第11章 排出事業者の疑問に答える
特別管理産業廃棄物管理責任者の兼務は可能か
特別管理産業廃棄物管理責任者の資格
一般廃棄物の越境移動は可能か
分別についての考え方
怖い怖い欠格要件の話
加工委託とは?
有価物扱いになっているが
積替え保管場所での有価物の抜き取りについて
販売価格より運賃が高いために逆有償となる場合

第12章 ISO審査員の「おかしな指摘」集
指摘1 排出事業者とは廃棄物の所有者のこと
指摘2 マニフェストに押印がない
指摘3 最終処分業者とも契約を
指摘4 処理業者は有価物を扱えない
指摘5 マニフェストの伝票番号がおかしい
指摘6 マニフェストは排出場所ごとに交付しなさい
指摘7 廃棄物置場に有価物を保管してはならない
指摘8 一般廃棄物保管場所という表示をしてはいけない

第13章 「2010年改正」を徹底解説
13-1 影響が大きいと思われる改正
土地所有者の通報努力義務
自社処理帳簿
建設廃棄物の場外保管の届出
実地確認
A票保存の義務化
処理困難通知と通知を受けた際の措置
収集運搬業の許可制度改革
優良産廃処理業者のメリット付与
処理施設の定期検査
事故時の措置
建設廃棄物の排出事業者の明確化
元請業者に対する措置命令要件の拡大
多量排出事業者制度の改正
13-2 影響が限定的と思われる改正
欠格要件の無限連鎖の廃止
マニフェストの交付を受ける義務
認定熱回収施設の新設
広域認定のDFEの促進
廃棄物の輸入申請条件の緩和
不法投棄罰則の強化

第14章 スクラップも廃棄物に?「2017年改正」のポイント
14-1 不正転売を防ぐための法改正
不正転売を見抜く現場の確認方法
優良産廃処理業者認定制度の情報公開
マニフェストの罰則強化
電子マニフェストのシステム改善
電子マニフェストの一部義務化
14-2 雑品火災対策の法改正
有価物全般に目を光らせる
要注意の有価物
リユースでも注意
現地確認
専ら物との違い
なぜ火災が起こるのか?
14-3 親子会社での自社処理
14-4 水銀廃棄物
水銀に関連する廃棄物を整理
契約書やマニフェストに明記

コラム
総体産廃、総体一廃
通知に従わなくてはならないのか?
逮捕されるのは誰か?会社への影響は?
マニフェストの虚偽記載なんてわからない!
いろいろな「捨てる」の方言
許可取消にかかる制度の整備(改正法第19の10など)

堀口 昌澄 (著)
出版社: 日経BP; 2017年改訂版 (2017/11/3)、出典:出版社HP