論文・レポートの基本

【書き方をしっかり学ぼう – レポート・論文おすすめ本】も確認する

レポート・論文の書き方の入門書

大学生が避けて通れないレポートや卒論。そんな文章を書く上での構成の立て方が体系的に学べる1冊です。文章の基本構造、テーマ設定や論理的な文章展開、表現のコツなど、例文や課題を通してわかりやすく解説されています。

石黒 圭 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2012/2/23)、出典:出版社HP

論文・レポートの基本

はじめに 論文・レポートとは何か

レポートや論文で悩んでいる人に

大学は新入生にとって一見不親切なところに思えるかもしれません。ま 近は親切な大学も増えてきましたが,それでも,高校までとは異なり、 生が勉強の仕方を手取り足取り教えてくれるわけではありません。
大教室の講義では,毎週,担当の先生が 90 分間一方的に話しつづけます。そして,学期が終わるころになると,さも当たり前のように期末のレポートを書くように指示します。
しかし,レポートの書き方なんて中学でも高校でも教わったことはあり ません。新入生にとって、慣れない大教室の講義についていくだけでも大 変なのに、そのうえ、書いたこともないものをいきなり書けと言われてる。 どうしたらよいか,戸惑うばかりです。
また,見よう見まねで書きはじめたレポートがようやく板について来た 大学4年には、卒業を控えて卒業論文という大きな論文を書かなければな りません。人生において、そんなに長い文章を書くのは初めてです。しか し,卒業論文の書き方も、先生が丁寧に指導してくれる様子はありません。 このときもまた,どのように書いたらよいのかわからない手探り状態のなかで完成させていくことになるのです。 「さらに,大学を卒業したあとすぐに就職せず,そのうえの大学院に進学 するという選択肢も身近なものになっています。大学院に進学すると,研 究者の卵として学術雑誌に高い水準の論文を載せる必要が出てきます。し かし,そこでもまた,論文の書き方について十分な指導はなく、独力で書くことが期待されるのです。
「大学は、人から教わらなくても自力で解決することが求められるところ です。しかし、何の手がかりもなく解決できることには限界があります。 本書は,大学に入ってレポートの書き方がわからない新入生、卒業論文をまえに途方に暮れている大学4年生,論文の書き方の基本を確認し,そ の精度を高めたいと考えている大学院生を支援するために書かれた論文作法書です。

小論文とレポート・論文はどう違う?

大学に入学したての新入生が,レポートや論文をイメージする場合,参 考にするのは小論文でしょう。大学受験に小論文という科目があり,その 準備をした経験があるからです。なるほど,小論文・レポート・論文は, 示された問いに答え,その答えが正しいことを論証する文章であるという 点で共通しています。
しかし,大学における学びでは,小論文を参考にしすぎると危険な面が あることを強調しておきたいと思います。
たしかに,小論文が得意な人は文章が上手に書けることが多く,文章表 現力を高めるトレーニングとして小論文は役に立つことは事実です。とこ ろが,小論文には,見すごすことのできない弊害があるのです。
その弊害は,小論文が試験のために書かれる文章であるという点に由来 しています。小論文は時間制限と戦いながら試験場で書く文章です。その ため、その場で思いついた発想を自分なりの論理で組み立てて面白く書け ばよく、厳密な検証は要求されません。また,以前人から聞いた、あるい は本で読んだアイデアを,あたかも自分の考えであるかのように語ることも大目に見られがちです。
レポートや論文といった学術的な文章には、深く考えるというプロセス と詳しく調べるというプロセス,この二つのプロセスを経ることが必須で す。ところが,小論文にはその大切なプロセスのいずれも経ることが求められていないのです。これが、小論文の最大の弊害です。 レポートや論文を小論文と同一視してしまうと、レポートや論文も短時間で簡単に書けるものという錯覚に陥りがちです。しかし、レポート。 文は、深く考える,および詳しく調べるという手間のかかる面倒くさ ロセスを経て徐々に形を成していくものなのです。 ここで、小論文・レポート・論文の違いを整理しておきましょう。

表1 小論文・レポート・論文の違い

小論文は、就職活動のさいに大学生が書くこともありますが,大学受験 のために高校生のときに書くのがふつうです。
その目的は、文章表現力と論理構成力が一定の水準にあることを示して 試験に合格することです。問いは、問題という形で出題者から与えられます。時間制限があり、資料などを参考にできない環境での執筆ですので、 内容が面白ければ多少のウソは許容され,厳密な意味でのオリジナリティ, すなわち書き手自身が初めて考えたという独創性は求められません。
レポートは,大学院で書かされることもありますが,大学の講義や演習 で書くものが中心です。
その目的は,授業の内容がどのくらいわかっているかという理解を報告 することです。問いは、自分で立てることもありますが、「~について論 じなさい」という形で先生から指定されるほうがふつうです。学術的な又 章ですので、きちんと調べて書かなければならず,不正確な内容を盛りむことは認められていません。オリジナリティはあれば望ましいです! 高い独創性が求められることはありません。
論文は,学部では,卒業論文という形で書くこともありますが,本格的 に執筆するようになるのは大学院に入ってからです。
その目的は,学術的に価値のある発見を論理の積み重ねによって説得することです。問いは,指導教員から与えられることもありますが,自分で 選んで立てるのがふつうです。レポートと同様,学術的な文章ですので, きちんと調べて書かなければならず,また,ウソを排除しなければなりません。そして,どんなに小さくても,先行研究にない,学術的に価値のあるオリジナリティをそのなかに含んでいなければなりません。
こうして見ると,小論文よりレポートのほうがレベルが高く,レポート より論文のほうがレベルが高いことがわかります。つまり,小論文はレポートが書けるようになるための準備段階,レポートは論文が書けるように なるための準備段階なのです。
そう考えると,なぜ大学入試で小論文が課されるのか,なぜ大学の授業 でレポートが課されるのかが わかります。
大学は,現代においては高度職業人養成機関,すなわち, きわめて高い知識と技能を持った社会人を育てる機関としての面も持っていますが,本 質的には研究者養成機関,す なわち研究者の卵を育てる機 関です。
研究者は優れた論文を書く ことによって評価されますから,カリキュラムもまた優れた論文を書けるように整えられていそうに整えられているわけです。
大学教育におけるゴールは論文であり,論文の書き方のなかには学術的 な研究を遂行するのに必要なエッセンスがつまっています。
そこで,本書でも、最終目標を論文に定め,ここからさきは「論文・レ ポート」と併記することはせずに,「論文」とだけ書くようにします。 ちろん,本書ではレポートも対象にしていますから,必要におうじて「論 文」を「論文・レポート」と置き換えながら読むようにしてください。

本書の構成

本書は,論文の考え方を知る第1部,論文の表現をみがく第2部の二 つの部からなっています。
第1部は論文の構成面に注目します。 「論文は,第1章で説明するように「問う」→「調べる」→「選ぶ」→ 「確かめる」→「裏づける」→「まとめる」という構成をとる文章です。 これは論文の定石です。
しかし,囲碁の定石がそうであるように,手順だけ丸暗記しても実践に は使えず,なぜそうした手順になるのかという考え方を身につけることが 必要です。
「第1部では,論文の構成と,その背後にある考え方を学びます。
第2部は論文の表現面に注目します。 「問う」「調べる」「選ぶ」「確かめる」「裏づける「まとめる」といった 各パートの中身は、1文1文の積み重ねによって成り立っています。 した1文1文を、どうすればウソの少ない表現にできるかどうすればオリジナリティを明確にできるかについて,日本語の表現という角度から考 えます。
また,第2部には練習問題がついており,練習問題を解くなかで論文の 表現力がみがけるようになっています。
本書の内容を読み,読者のみなさんが論文を書くことに目覚め,「論文 を書くことが楽しい」と感じられるようになることを、心から願っています。

石黒 圭 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2012/2/23)、出典:出版社HP

CONTENTS

この1冊できちんと書ける! 論文・レポートの基本
はじめに論文・レポートとは何か
レポートや論文で悩んでいる人に
小論文とレポート・論文はどう違う?
本書の構成

第1部論文の構成
第0章 論文の構成の考え方
基本は序論・本論・結論
じつは6部構成
第2章問う一目的
問いを立てる
問いを1文で示す
問いを絞りこむ
問いの言葉を定義する
魅力的な問いは発見と探求心から
第3章調べる一先行研究
巨人の肩のうえに立つ。
先行研究を引用する意味
インターネットによる検索の活用法
Wikipedia は使える?使えない?
引用にはマナーがある。
文献のレベルは専門・入門・一般の三つ
本(著書)の3レベル
雑誌(学術誌)の3 レベル
辞典・事典の2レベル
第4章選ぶ一資料と方法
調査には量的調査と質的調査がある 量
的調査のポイント
質的調査のポイント
六つの調査方法
第5章 確かめる一結果と分析
結果を整理して伝わる論文に
結果を見やすくする工夫
第6章裏づける一考察
目に見えないメカニズムをあぶりだす
憶測を防ぐ方法
第7章まとめる一結論
結論は独立した要旨にする今後の課題は背伸びしない
第8章校正する一提出前の原稿チェック
校正の五つのチェック項目
論文のFAQ

第2部(論文の表現
第9章 論文の表現の考え方
ウソは減らせる。
ツッコミを入れる
オリジナリティが大切な理由
ウソが許されない理由
本書第2部の構成
第10章正確な言葉選び
第10章の構成
第1課 専門用語の考え方
専門用語と日常語の区別
専門用語の調べ方
専門用語選択の失敗
第2課 語の定義
定義が必要な語とは
論文における定義の実際
第3課 怖い変換ミス
タイプミスの原因
変換ミスの実際
第の口正確な表記
第11章の構成
第4課 漢字と仮名の書き分け
語種による書き分け
機能による書き分け
書き分けのバランス
第5課 読点の打ち方
読点を打つ基準
修飾・被修飾の関係が切れる効果
それぞれまとまって見える効果
第6課 記号の使い方
5種類の記号
かっこの使いすぎに注意
第12章論文専用の表現
第12章の構成
第7課 論文を構成する動詞
論文の構成と動詞
論文における六種の重要動詞
第8課 論文の文末表現
推量の文末表現
当為の文末表現
第9課 論文のオトナ語 * 119
オトナ語とは
論文のオトナ語の実際
第四章 論文の文体
第13章の構成
第10課 話し言葉と書き言葉
意外と難しい話し言葉との区別
なぜ話し言葉と書き言葉の区別が生じるのか
第11課 論文になじまない言葉
副詞に気をつける
オノマトペに気をつける
略語に気をつける
敬意を含む表現に気をつける
第12課 論文の軸となる名詞
論文のなかの名詞
名詞を使う長所と短所
第14章明晰な文
第14章の構成
第13課 複数の意味を持つ文
わかった瞬間にわからなくなる
誤解の要因
修飾・被修飾の関係
誤解の要因2連体修飾節の制限用法と非制限用法
誤解の要因3名詞の意味と相対性
誤解の要因のように〜ない」などの否定表現
第14課 読者を迷子にする文
ガーデンパス文を避けるには
予測しやすい文にするポイント
文の長さの調整
修飾先の遠近の調整
「は」と「が」の使い分け
第15課 あいまいさを含む文
言葉に潜むあいまいさ
あいまいさと品詞の関わり
第四章明晰な文章展開
第15章の構成
第16課 指示詞の使い方
文脈指示の「こ」と「そ」の違い
文をなめらかにする指示詞・省略・繰り返し・言い換え
第17課 接続詞の使い方
論文の5大接続詞
注目したい接続詞
接続詞の実際の使い方
第18課 予告と整理
先行オーガナイザーとは 要旨を述べる予告文
整理を担う序列表現
第16章書き手の責任
第16章の構成
第19課 主張する
主張と事実の境界線
主張を支える根拠の収集
第20課 引用する
引用の目的
出典を明示する
引用の範囲を明確にする
第21課 破綻を防ぐ
事実と主張をめぐるウソ
動機や感想に注意
練習の解答
参考文献
おわりに

カバーデザインの萩原弦一郎(デジカル)
カバー・本文イラストの坂木浩子
本文デザイン・DTPOムーブ(新田由起子、徳永裕史

石黒 圭 (著)
出版社 : 日本実業出版社 (2012/2/23)、出典:出版社HP