最新版 大学生のためのレポート・論文術 (講談社現代新書)

【書き方をしっかり学ぼう – レポート・論文おすすめ本】も確認する

入門一歩前の基本がわかる

レポート作成における正しい知識が身に付きます。レポート・論文作成で欠かせない「ネット検索」における上手な活用法についても書いてあります。また、誰にも訊けないような内容も丁寧に解説されているため、初心者向きの1冊です。

小笠原 喜康 (著)
出版社 : 講談社 (2018/10/17) 、出典:出版社HP

はじめに

本書は、『大学生のためのレポート・論文術』の最新版である。『初版』から一六年、『新版』からも九年近くがたった。『初版』から『新版』への時期は、インターネットの普及が進んで、ネット検索が開発・発展し始めたころであった。それからこの間、そのネット検索の方法が改善され、ある程度定まってきた。

そこでこの『最新版』では、その検索方法を中心に書きなおすことにした。他に、いわゆる電子本、それもKindle版の普及は、引用表記を難しくしたので、それも新たに書きくわえた。また、全体を見直して修正を細かにくわえた。『初版』・『新版』にひきつづき、みなさんのレポート・論文執筆の一助にしていただければと願う。

最近、学士力とかジェネリック・スキルというコトバがいわれるようになってきた。これまでも、いろいろな「力」のコトバがいわれてきたので、一時のはやりかもしれない。もっとも、このコトバには具体的な中身がなく、意味不明である。「~力」などというのには、注意した方がいい。おおむね、私たち一人ひとりの生き方のためというよりも、経済界や国家からの、押しつけ人間像だからである。

とはいうものの、近年の人工知能(AI)の急速な進歩は、人びとの能力観に変化をもたらしつつあるようにみえる。なにかよくわからないが、人間という自分がAIに追いこされ、ゴミ箱に棄てられてしまうのではないか、という漠然とした恐れを人びとは抱いている。

こうした時代、ある種いい古されたコトバではあるものの、あらためて「考える力」が求められている。このネットとAIの時代、知識はキーをたたけば、たちどころに引きだせる。だから、知識よりも考える力だというわけである。もちろんこれも、「~力」というのだから、かなり怪しいところがある。とはいえこの時代、たしかに細かい知識の記憶量の価値は、相対的に下がっている。

では、この時代どういう知識や力が求められるのか。だが、知識と「~力」とは、別々のものでも、知識から考える力へ、といったものでもないことには注意しなくてはならない。知識も「~力」もじつは一緒で、共に世界への自分のかかわり方の別名にすぎない。そこに、自分の世界、自分のかかわりがなくては、どんな知識もどんな力も、スマホの画面を流れていく一時の根無し草にすぎなくなる。

では、自分の世界、自分のかかわりである、知識や「~力」をつけるにはどうしたらいいのか。ここで注目されるようになってきたのが、あたりまえといえばあたりまえであるが、論文を書く力である。論文を書くには、必要な情報を検索して、問題点を絞りこみ、筋道をたてて表現しなくてはならない。こうした、探求力、構想力、論理力、表現力を総合的に身につけられるのが論文を書く作業である。

こういうとすぐに、論理的思考や文章の本を読もうとする人がいる。だがそうした本をいくら読んでも、筋道だった文章が書けるようにはならない。なぜなら論理は、自分がつくるものだからである。必要なのは、自分の文章と格闘することである。そしてその格闘のために、より細かなところに気をくばることである。人間は、頭の中で考えずに、外の紙などに書いて、それをみつめて考えるようになったので、より複雑なことができるようになった。つまり、人間にとって大切なのは、頭の外で考えることなのである。

本書は、こうした考えから、最初に論文の形式をのべてある。それも、あたりまえの、いってみれば、些末な、くだらないとみえることから始めてある。これは、『初版』から変わらない、筆者の基本スタイルである。初学者にとっては、こうしたことが一番助けになるからである。そして、なにより基本ルールをきちんと守ることが、クリティカル(鋭敏)な論文につながるからである。

最近は、形式的なパラグラフ・ライティングを最初に書くことを勧める論もある。だが、最初からそのようなものを書けるなら、なにも苦労はしない。文章において、パラグラフを意識するのは重要である。だが現実の論文作成は、もっと泥臭く、もっと逡巡し、もっと後悔的である。簡単ではない。自分との闘いである。

厳しいことを最初にいうのは良くないかもしれない。しかしそうした、泥臭さや逡巡や後悔が、論文の出来不出来より重要である。その苦しさの中で、自身があらわれてくるからである。結果ではない、過程である。論文は、近代の中で分断され商品化された個をとりもどす、ポストモダンの自分物語りである。どうかあなたの論文の中に、あなた自身をみつけてもらいたい。

二〇一八年アジサイのころ
筆者

小笠原 喜康 (著)
出版社 : 講談社 (2018/10/17) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

1.レポート・論文のあたりまえの基本
1.1.レポート・論文の共通の書式とレイアウト
【ヒント1 Wordの頭を悪くする】
1.2.書き方の基本ルール
【ヒント2 アタマそろえの方法】
《1章 書式と表記法のまとめ》

2.レポート・論文の基本ルール
2.1.引用文の表記法
2.2.注釈・引用・参考の本文中の表記法
《コラム1 コピペは悪いことか?》
2.3.注釈・引用文献・参考文献の文末一括表記法
2.3.1.従来型の一括表記のきまり
(1)従来型の【注釈】のきまり
(2)従来型の【引用・参考文献】一覧のきまり
2.3.2.近年型の表記のきまり
(1)近年型の【注釈】のきまり
(2)近年型の【引用・参考文献】一覧のきまり
【ヒント3 英文の間延びを防ぐ方法】
2.3.3.Kindle本の引用表記
2.3.4.その他の資料
(1)インターネット資料の表記
(2)新聞記事の表記
《2章 引用・注釈などのまとめ》
《2章 注釈と文献一覧の表記法のまとめ》

3.文献・資料の集め方(テーマを絞る)
3.1.下調べの三つの方法
3.1.1.統合型辞書での下調べ
(1)Yahoo!辞書
(2)Weblio辞書
2. Wikipediaでの下調べ
3.1.3.Webでの下調べ
(1)Web検索の基本
(2)ドメイン検索
3.2.文献検索の三つの方法
3.2.1.Googleで.pdf検索
3.2.2.CiNiiなどのデータベース検索
3.2.3.その他のWeb検索
(1)研究機関のHP上の文書検索
(2)個人のHP上の文書検索
3.3.文献入手の方法
3.3.1.大学等の研究機関の図書館の所蔵情報確認
(1)論文の場合的
(2)図書の場合
3.3.2.公共図書館の所蔵情報確認
【ヒント4「やみくも・イモヅル・ねらいうち」文献資料収集】
3.4.さまざまな情報を探す方法
3.4.1.新聞情報
3.4.2.統計情報
3.4.3.情報への統合インデックス
3.4.4.さまざまな分野の役立ちサイト

4.レポート作成の基本
4.1.レポートの種類による基本構成
4.1.1.現地調査報告型レポートの形式
4.1.2.実践研究報告型レポートの形式
4.1.3.アンケート調査報告型レポートの形式
4.1.4.文献調査報告型レポートの形式
4.1.5.テーマ論証型レポートの形式
4.2.レポート提出時の注意点
4.2.1.通常提出の場合
4.2.2.メールによる提出のときの注意点
【ヒント5 図表を入れてわかりやすく】
4.3.パワーポイントを使ったプレゼンの基礎
4.3.1.パワポ・レイアウトの四つの基本
(1)ジャンプ率
(2)図版率
(3)グリッド拘束率
(4)版面率
4.3.2.パワポ「べからず」集
(1)パワポの画面は小さい
(2)アニメーションに凝らない
(3)書体をいろいろ使わない。

5.卒業論文の執筆
5.1.スケジュールをたてる
【ヒント6 資料は汚して読む】
【ヒント7 スマホでメモ・ノート】
【ヒント8 人の頭を借りる】
【ヒント9 執筆まっただ中のコツ――付箋を使う】
【ヒント10 “超重要”USBを捨ててクラウドを使おう】
《コラム2 論文と赤ちゃん》
5.2.卒業論文の構造
5.2.1.文献研究論文の基本構造
5.2.2.文献研究論文構造を詳しくみると
(1)序章の構成
【ヒント11 読む価値のある文献の見分け方】
(2)第1章~終章・資料・文献の構成
《コラム3 論文は人のふんどしで相撲をとるようなもの》
5.2.3.調査・実験研究論文と短い研究論文の基本構成
(1)調査・実験研究論文の基本構成
(2)短い研究論文の構成
5.3.論文の題名を決める
5.4.論文を整える=「瀬戸テク」
5.4.1.基本書式テク
(1)章題名書式
(2)節題名と項題名の書式
(3)図表の表記
(4)注釈・参考資料の表記
(5)引用・参考文献の表記法と文献リスト
5.4.2.論述テク
5.5.校正記号の使い方

6.わかってもらえるレポート・論文を書くために
6.1.文章のわかりやすさをつくる唯一の原則
6.2.その他の効果的なテクニック
6.3.わかってもらえるレポート・論文の三つの条件
6.3.1.自分のコトバで語る努力をしている
《コラム4 自分の考えを創る》
6.3.2.先人を少しでも乗り越える努力をしている。
《コラム5 ダメ論文アラカルト》
6.3.3.読む人を説得する努力をしている
6.4.論文不正の種類
《コラム6 論理的な文章を書いてはならない》

おわりに

小笠原 喜康 (著)
出版社 : 講談社 (2018/10/17) 、出典:出版社HP