大学1年生のための 伝わるレポートの書き方

【書き方をしっかり学ぼう – レポート・論文おすすめ本】も確認する

調べる・考える・書いて伝えるの3本柱を意識

大学では、論理的な文章を書けることが当たり前のスキルとして求められます。しかし、最初から完璧なレポートを書ける人はほとんどいません。本書は、「調べる・考える・書いて伝える」の3つの段階にわけてレポートを楽しんで書くコツが解説されています。初心者向けのレポート作成入門書です。

都筑 学 (著)
出版社 : 有斐閣 (2016/4/18) 、出典:出版社HP

まえがき

大学生にレポートはつきものだ。一度もレポートを書かずに卒業する学生は,まずいないだろう。

私も,学生時代に何本かのレポートを書いた。当時は,手書きするしかなかった。大学にコピー機もなかったので,手元には残っていない。どんなレポートを書いたかも覚えていない。

「学生時代に,レポートの書き方を教わったという記憶もない。図書館で本や資料を借りたりして,自己流に書いたりしたのだろう。そうやって,何とか仕上げていたのだと思う。

今は,授業で,レポートの書き方を教える大学も珍しくない。学生にとっては,大変よい時代になったものだ。

インターネットで検索すると,「レポートの書き方」の本は,百数十冊も出てくる。大学生全般を対象にしたものもある。特定の学問分野の学生向けのものもある。そうした本を読みながら,レポートを書く学生も大勢いることだろう。

本書は,そうした類書の一員に新たに加わるものである。目次を見てもらうとわかるように,3部構成になっている。第1部は,調べる。第2部は,考える。第3部は,書いて伝える,である。順々にたどれば,レポートは完成。もしそうであれば,こんな楽なことはない。レポートは,三段跳びではない。ホップ・ステップ・ジャンプとは行かないのである。調べる,考える,書いて伝える,の3つの段階。それらを行きつ戻りつ,進むことになる。そんなふうにして,レポートの中身が充実したものになっていくのだ。

レポートを書く動機はさまざまだと思う。どうせ書くならば,嫌々ではなく,楽しく書きたい。そんなふうに行きたいものだ。本書には,そういう気持ちが込められている。

本書が対象としているのは,初めてレポートを書こうとしている人だ。課題を出されたものの,どこからどんなふうに取り組めばよいか見当もつかない。そんなふうに思っている人には,是非読んでもらいたい。各章の最後には,ポイントがまとめられている。それに目を通してから本文を読んでもらうと,理解が深まると思う。

レポートを書いたことがあるが,どうも不満である。そんなふうに感じている人にも,本書を薦めたい。3つの段階のどこかに不十分さがあるようだ。自分なりに,何となく感じている人は,気になるところから読んでもらえればいい。自分なりに納得がいく箇所があれば,参考にしてもらいたい。

書くという行為は,自分との対話である。伝えたいという自分の意図を自覚する。それを書き言葉として表現していく。どうやったら,周囲の人にわかってもらえるか。どうしたら,興味深く読んでもらえるか。そういうことを自問自答しながらレポートを書いていく。それが,とても大事なことなのである。そういうプロセスを経て,書くという行為は上達していく。

話し言葉は,録音しなければ,その場で消えていく。書き言葉は,文字として残っていく。「文は人なり」と言われる。どういう文章を書くかは,その人自身を表すのだ。

文章を書くということは,一生ついて回るものである。大学生活で培った書く力は,卒業後も大いに役に立つ。本書を参考にして,楽しみながらレポートを書いてもらいたい。それを通じて,書く力を身につけてほしい。本書を通じて,書くことの楽しさを感じる学生が増えていく。それは私にとって,何よりの喜びである。

○著者紹介

都筑 学(つづき まなぶ)
1951年 東京都生まれ
1975年 東京教育大学教育学部卒業
1977年 東京教育大学大学院教育学研究科修士課程修了
1981年 筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位取得退学
1997年 博士(教育学)中央大学
現職 中央大学文学部教授
専門 発達心理学,青少年の時間的展望の発達
主要著作
『高校生の進路選択と時間的展望——縦断的調査にもとづく検討』(ナカニシヤ出版,2014年)
『今を生きる若者の人間的成長』(中央大学出版部, 2011年)
『中学校から高校への学校移行と時間的展望———縦断的調査にもとづく検討』(ナカニシヤ出版,2009年)
『小学校から中学校への学校移行と時間的展望――縦断的調査にもとづく検討』(ナカニシヤ出版,2008年)
『大学生の進路選択と時間的展望——縦断的調査にもとづく検討』(ナカニシヤ出版,2007年)
『心理学論文の書き方――おいしい論文のレシピ』(有斐閣,2006年)
『あたたかな気持ちのあるところ――いま,希望について』(PHP研究「所,2006年)
『希望の心理学』(ミネルヴァ書房,2004年)
『大学生の時間的展望――構造モデルの心理学的検討』(中央大学出版部 1999年)

目次

まえがき

序章 レポートを楽しんで書くコツ
なぜレポート・レジュメを書くのか 課題の意味を捉え直す 読み手を想像して書く レポートを書くということ

第1部 調べるInput

第1章 知的好奇心をもつ
疑問を大切にする 何事にも興味関心をもつ 学問分野にとらわれず貪欲に学ぶ セレンディピティ 耳学問 メモを取る

第2章 批判的なまなざしを養う
真理とは何か 常識を疑う ウラを取る 審美眼を鍛える 批判的思考 相対化してみる

第3章 徹底的に調べる
調べることの大切さ 調べまくる・集めまくる 情報を取捨選択する インプットなくしてアウトプットなし 丈夫な野菜づくりは土づくりから始まる ネット検索を活用する

第2部 考える―Construct

第4章 コンセプトを明確にする
頭の中を整理してみる 伝えたいことを明確化する 概念の定義を大切にする セールスポイント タイトルに明示する 自分の頭で考える

第5章 柱立てをつくる
話の筋立てを考える プロットをつくる プロットをつくったら寝かしておく プロットと材料を見比べる 具体例を入れる プラニング

第6章 論理の一貫性を大事にする
全体と部分の関係性を意識する 論理的なつながりが大切 原因と結果——要因・影響 先行研究を頼りにする 論理の飛躍に気をつける レビュー論文

第3部書いて伝える Output

第7章 厚みのある文章を書く
丁寧に説明する 自分で内容をわかっているか確認してみる 分厚く書く 縦横を意識して書く——時間軸と空間軸 情報を集めて書く 推敲しながら書く

第8章 科学の世界の文章作法を知る
人の文章を盗まない 引用と無断借用 自分の感情を挟まない 明晰な説明を心がける 一文 一義を心がける 一段落に一つのことを書く

第9章 効果的に伝える・見せる
ワープロに騙されない 図表を効果的に使う 写真やイラスト 体裁を工夫する 構成を考え る アウトライン機能を利用する

終章 書くことの楽しさを身につける.
自分でテーマを見つけて書いてみよう 書き終えるまでのスケジュールを立ててみる 書いたレポートをブ ラッシュアップさせよう レポートを書く頭をつくろう

あとがき
索引
(イラスト:ひのあゆみ)

都筑 学 (著)
出版社 : 有斐閣 (2016/4/18) 、出典:出版社HP

序章 レポートを楽しんで書くコツ

大学教師になって,30年以上になる。これまでたくさんのレポートを読んできた。レジュメの発表も数多く聞いてきた。そのなかには,面白いものも,つまらないものもあった。いいものも,悪いものもあった。
なかには,どこかの本に書いてあることを,そのまま引き写してきたようなレポートもある。どんなに立派なことが書いてあっても,それはダメなレポートだ。他人の意見をまとめるのは勉強になるかもしれないが,それだけではレポートにはならない。他人の意見と自分の意見を区別する。それがレポートでは大事になる。自分なりの考えがちょっとでも書いてある。そんなレポートは,読みながら興味を惹かれる。伝えたいという思いが溢れているものもある。そういうレポートは,読んでいて楽しいものだ。
4年間の大学時代には,いくつものレポートを書くことになるだろう。同じ時間をかけるのなら,自分でも「やった」と思えるようなものにしてもらいたい。そういうレポートを仕上げてもらいたいものだ。レポートを書くたびに工夫を加える。そうやって,上達していくものだ。大学教師としての私は,そんなふうに思っている。
大学教師生活のなかで,文章を書くときの要領も,それなりにつかめてきた。レポート作成には,これが正解というものはない。それでも,ポイントを知っておけば,役に立つはずだ。本書では,その極意をできるかぎりやさしく,誰にでもわかるように伝えてみたいと思う。世の中には,ハウツー本やマニュアル本が溢れている。本書はマニュアル本ではない。いくつかのコツが書かれているだけだ。全部を真似する必要はない。気に入ったところがあれば,ちょっと使ってみてほしい。それでレポートを書くのが楽しくなればそれに越したことはない。

なぜレポート・レジュメを書くのか

イギリスの登山家ジョージ・マロリーは,3度エベレスト登頂に挑んだ。残念ながら,3度目の登頂で遭難してしまった。彼は,生前,「なぜ,あなたはエベレストに登りたいのか」と問われたことがあった。そのとき,「そこに山があるから」と答えたそうだ。マロリーが3度もエベレスト登頂に挑んだのはなぜだろうか。きっと登頂という行為のなかに何らかの楽しみを見出したからだろう。だから死を恐れずに,彼は山頂を目指したのだと思う。75年後に遺体で発見された彼には,それをもはや語ることはできなかったが。
ここで,あなたに問いを出してみよう。「なぜ,あなたはレポートを書くのか」。その問いに対して,あなたはどんなふうに答えるだろうか。
「誰にでもすぐ思い浮かぶ答えがある。それは,「先生が課題としてレポートを出したから」というものだ。授業の一環として出されたものだったら,誤りとはいえない答えだろう。でも,これは形式的な答えであって,内容的な答えにはなっていない。
みなさんは,レポート・レジュメという山に登ろうとする。山までとはいかない,丘かもしれない。それでも,みなさんにとっては大きな課題といえるだろう。みなさんが,その山を登るのはなぜなのか,あらためてそれを問い直すところから始めてみよう。
それでは,もう一度,先ほどの質問を繰り返すことにする。「なぜ,あなたはレポート書くのか」。
それに対して,「単位がほしいから」と答える人もいるかもしれない。これは実に正直な答えだ。大学生にとって,授業の単位は重要な意味をもつ。1単位でも不足していたら卒業できない。レポートを出さなかったら,どうなるだろうか。1年間休まずに出ていた授業の単位がもらえないことになるかもしれない。だったら,どんな内容でもいいから,レポートを出そうと思う。それも一案かもしれない。「時間があまりないから,ネット検索して,とにかくコピペしてレポートを出してしまえ」。そんなふうに思ったとしたら,要注意。どこからか,教育的指導の笛が「ピーッ」と鳴りますよ。危ない,危ない。
それでは,「なぜ,あなたはレポートを書くのか」。さらにもう一度,質問を繰り返してみよう。
レポートを書くことは,どういう意味があるのだろうか。その課題を出した先生と真っ正面から向き合う。そこからレポートを書く作業は始まることになる。先生が何を求めているのか考えてみる。その問いの意味を深く考えてみることが,まず最初に大事なことなのだ。そうしたことについて深く考えずに,とにかく書き始めたりする。そうすると,後で収拾がつかなくなったりするものだ。何事も最初が肝心。
みなさんのなかには,文章を書くことが好きだという人がいるかもしれない。文章を書くのは苦手という人もいるかもしれない。小学校から高校まで,学校ではさまざまな課題が出されてきたと思う。たとえば,読書感想文や修学旅行に行った報告など,いろいろな,とを書く機会があっただろう。そうした文章とレポートやレジュメは,どこがどう違うのだろうか。それについてちょっと考えてみた
読書感想文は,本を読んだ後で自分が感じたことを書けば,それでよい。一方,課題図書が出されて,レポートの提出が求められたときはどうだろうか。たとえば,「日本経済の状況について論ぜよ」とか,「エミリー・ブロンテの生き方について,あなたの考えを述べなさい」という課題だったとしよう。「日本経済は厳しい」とか「ブロンテの生き方はすごい」というような個人的な意見を書いてもダメだ。課題図書に関係する本を少なくとも2,3冊,できれば10冊ぐらいは読んでほしいものだ。もちろん本にかぎらず,論文でもいい。レポートを書く前には,そんな準備が求められるのである。

課題の意味を捉え直す

レポートの課題には,定型的なものがある。「~について論ぜよ」とか,「~について述べよ」というものが多い。では,「論じる」とか「述べる」というのは,どういうことなのだろうか。あまりにも自明のような気がして,わかってしまったように感じるかもしれない。しかし生半可にわかったつもりになっているだけでは,物事はうまく進まない。そんなときには,その言葉について,まず辞書で引いてみるのがよい。

「論じる」の「論」には,こんな意味がある(デジタル大辞泉)。
① 物事の筋道を述べること。また,その述べたもの。意見。
② 意見をたたかわすこと。議論。論議。
③ インドの仏教学者が著した協議の綱要集。論書。また,狭義の注釈などをした文献。論蔵。
④ 漢文の文体の一。自分の意見を述べる文。

こんなふうに辞書を引くと,「論」には四つの意味があることがわかる。その中から,レポートに関係しそうなところを抜き出して考えてみると,次のようになりそうだ。

レポートとは,自分の意見を筋道立てて述べるものである。
レポートとは,自分の意見と他人の意見との異同を示すことである。

課題図書を出されたら,それだけではなく,それ以外の本も読んでほしいと書いた。それは,多様な視点から,考えてみることが大事だということを意味しているのだ。一つの本だけ読んでいたら,一つの視点しか得られない。複数の本を読めば,賛成の意見も反対の意見も書かれている可能性がある。そうしたいろいろな意見が書かれている本を探して読んでみる。そうしたこともまた重要なことなのである。
そうした読書は,本の書き手との対話でもある。何を言いたいのか,何が主題なのか。それを考えながら,本を読み進めていくのだ。「自分はこう思うけど,筆者は違った意見だ」。「筆者の意見は,なるほど納得できるものだ」。そんなふうに考えながら,読み進めていくと,理解も深まっていく。それが書き手との対話ということである。
そうした営みは,出されたレポートの課題の意味について,自分の生活とつなげて考えてみることにも通じる。「日本の経済状況」や「エミリー・ブロンテ」と自分との接点は何か。どこかに関係性がありそうだと考えてみるのだ。接点は,必ず何かあるはずだ。
「日本の経済状況」は,人々の日々の暮らしと関連している。たとえば,あなたがコンビニでアルバイトをしているとする。そうしたら,「近頃売れ行きの良い商品は何か」と考えてみる。それだけで,「日本の経済状況」はぐんと身近なものになる。
「エミリー・ブロンテ」についても,同じことが言える。彼女が「書いた小説が映画化されているものを観る。そのことで,あなたの心に強く響くものを見出すことができるかもしれない。
こんなふうにちょっとした工夫をしてみる。そこから,自分との接点を見つけることができたとする。そうなれば,レポート課題は,単なる授業の課題ではなくなる。レポート課題は,自分にとって必然性をもったテーマになるのだ。レポートを書くのも容易になるし,リアリティも増すことになる。書いていて,楽しいレポートになるに違いない。

読み手を想像して書く

レポートは,自分の意見を筋道立てて書いていくものだと述べた。ただ単に,「すごい」とか「素晴らしい」と書いただけではダメだ。ただの感想文になってしまう。自分の思いをあれこれ述べただけで「はダメなのだ。自分の意見と本に書かれている意見を区別することも大事だ。事実と考察を区別することも大事なことなのである。
「誰々は,こう述べた。他の誰々は,こう述べた。私は,こう考える」。こういうことを書き連ねても,面白いレポートにはならない。そういうレポートは,自分が勉強したことを,整理しただけに留まってしまう。ただの読書メモか,備忘録である。
そこで考えなければならないことがある。それは,そのレポートの読者は誰なのかということだ。もちろん,その答えは,レポートを出した教員である。その読み手が,どんなふうにレポートを読んでくれるのか,想像したことがあるだろうか。誤字脱字が多ければ,「なんだ,このレポートはきちんとしていない」と思わせるかもしれない。今どきはパソコンを使ったレポートが主流だ。美しい手書きのレポートなら,強い印象を与えるかもしれない。書き殴ったような手書きのレポートなら,読む気が失せるかもしれない。
自分が精一杯勉強したことを書くときに,それを読んでいる先生の顔を思い浮かべてみる。そうしながら,レポートの文章を書き進めていくのだ。レポートを書きながら,その途中で考えてみる。「別の表現のほうが伝わるだろうか」。「ここはわかりにくいかな」。そういったことを自問自答してみるのである。ニコニコした先生の顔が思い浮かべば○,しかめっ面だったら×。そんなふうにしてレポートを書いていく。そうすれば,よりリアルな伝わりやすい文章になっていくものだ。
レポートは論理的な筋道だったものでないといけない。客観的で学問的な知識に裏づけられたものでないといけない。それはそうなのだが,他方で,無味乾燥なものでもいけない。他の誰が書いても同じようなレポートになってしまう。それだったら,あなたが書く意味がない。レポートの背後に,書き手の伝えたい熱い思いが垣間見られるレポートは,読んでいてワクワクするものだ。学問的な文章の作法に則りながら,自分の思いを伝えること。それがレポートを書くうえで大切なことなのだ。そのためにも,レポートの読みを意識して書くことが求められるのである。

レポートを書くということ

ここまで読んできたあなた。レポートの書き方のポイントが少しはわかっただろうか。まだよくわからないと思っているあなた。心配することはない。本題はこれから始まるのだから。「習うより慣れろ」という諺があるが,闇雲に練習してもダメだ。自分勝手の無手勝流では,いつまで経っても上達しない。レポートも同じである。
何事も最初が肝心。文章を書くときにも,それは当てはまる。レポートを書くには,それぞれのステップでコツのようなものがある。それがわからないままにレポートを書いてもうまくは進まない。本書は,もっと水準の高いレポートを書いてみたいと思う人に向けて書いたものだ。そういう気持ちをもった人の手助けとなるようなことをまとめてみた。
レポートを書くには,三つの段階がある。第1は,調べる段階。材料がなければ料理ができないように,レポートを書くにも素材が必要だ。それを得るためには,図書館に行って本を借りたり,新聞を読んだり,雑誌に目を通したりする必要がある。今どきだったら,パソコンやスマホを使って,ネット検索をするという手もある。とにかく頭の中に,レポートの素材を蓄える作業から始めるのだ。それがある程度できたら,次の段階に進んでいくことになる。
第2は,調べたことにもとづいて考える段階。考えるときにも,いろいろな工夫が必要だ。手帳や紙にメモしていくと,自分が何を考えているかを可視化することができる。自分でも確認できるのだ。私は,ちょっと長い文章を書くときには,必ず手書きのメモを最初に作るようにしている。そのメモをもとに,さらにメモを新たに作り直すこともある。何度かやっているうちに,自分の考えがまとまっておおよその構成ができてくる。今どきは,パソコンを使って,こうした作業をやることもできるだろう。考えが整理できたら,次の段階に進んでいくことになる。
第3は,考えたことを実際に書く段階。私の学生・院生生活を過ごした1970年代にはパソコンもワープロもなかった。レポートや卒業論文・修士論文は,すべて手書きだった。今どきは,小説家でもパソコンで執筆する時代だ。学生もパソコンのワープロ・ソフトを使って,レポートを書いている。第2段階までに考えたことにもとづいて,パソコン画面を前に,キーボードを打つ作業となる。
それぞれの段階において,ポイントになることがある。それらを第1章から第9章までにまとめてある。実際に,レポートやレジュメを作成するときの参考にしてもらえればと思う。では,ホップ,ステップ,ジャンプと進めていこう。

CHECK POINT
1 「なぜ,あなたはレポートを書くのか」について考えてみよう。
2 書き始める前に,課題を出した先生が何を求めているのか,その問いの意味を深く考えてみよう。
3 読書感想文は本を読んだ後で自分が感じたことを書けばよい。レポートは,それとは異なり,自分の意見を筋道立てて述べるものである。
4 レポートのための読書は,書き手との対話である。自分の意見との違い,自分との接点を見つけてみよう。
5 レポートの読者は誰なのかを意識して,自分の考えを伝えよう。
6 レポートを書く作業には,三つの段階がある。①調べる段階,②調べたことにもとづいて考える段階,③考えたことを実際に書く段階。

都筑 学 (著)
出版社 : 有斐閣 (2016/4/18) 、出典:出版社HP