レポート・論文の書き方入門 第4版

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テキスト批評で書き方を学ぶ

論文を書く初心者でもある大学生、また新社会人の方にもおすすめの1冊です。本書では、「テキスト批評」という方法を用いてある文章に対する読解や解釈の練習をし、レポート・論文作成力の向上を図ります。理解しやすい内容と構成になっています。

河野 哲也 (著)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/7/13)、出典:出版社HP

目次

1章 大学での勉強とレポート・論文の書き方―はじめてレポートを書く人のために一
1.1. 本書の目的と特徴
1.1.1 本書の目的
1.1.2 本書の特徴
1.2. 大学の教育とレポート・論文の書き方
1.2.1 大学でのレポート・論文とは
1.2.2 「学-問」と創造的能力の育成
1.2.3 講義中の態度・質問
1.2.4 レポート・論文とは「学-問」である
1.3. レポート・論文の有用性
1.4. 本書の構成

2章 テキスト批評という練習法
2.1. テキスト批評とは何か?
2.2. なぜ本(テキスト)を読むのか?
2.3. テキスト批評の仕方
2.3.1 テキストについて
2.3.2 全体の構成
2.3.3 各構成部分の作り方
2.4. テキスト批評の効果

3章論文の要件と構成
3.1. 論文とは何か?
3.2. レポートとは何か?
3.3. レポートを書く際の注意
3.4. 論文の構成部分とその順序
3.5.各部分で何を書くか?
3.5.1 「目次」
3.5.2 「序論」
3.5.3 「本論」
3.5.4「結論」
3.5.5 「付録」
3.5.6 「文献表」
3.5.7 「索引」
3.5.8 「謝辞」、「まえがき」、「あとがき」
3.6. その他の構成方法

4章 テーマ・問題の設定、本文の組み立て方
4.1. テーマ・問題の設定
4.2. 本文の組み立て方

5章 注、引用、文献表のつけ方
5.1. 注のつけ方
5.1.1 「注」とは何か?
5.1.2 注の目的
5.1.3 注の種類
5.2. 注記号(番号)と注欄のつけ方
5.2.1 注記号(番号)のつけ方
5.2.2 注欄のつけ方
5.2.3 注のつけ方の注意
5.3. 引用の仕方
5.3.1 著作権と引用
5.3.2 引用の仕方
5.3.3 引用の際の注意
5.4. 注欄における引用出典の書き方
5.4.1 日本語での一般的な出典表記法
5.4.2引用出典の実例
5.4.3 同一出典の略記
5.4.4 欧文語の文献を引用した時の出典表記法
5.4.5 引用出典の実例
5.4.6 簡易な組込注のつけ方
5.5.文献表の作り方
5.5.1 作成上注意すべき点
5.5.2 日本語での細目表記順序
5.5.3 欧文文献の表記の仕方
5.6. 欧文略号・略記一覧

付録1 「見本レポート」
付録2 接続語・接続表現による文の論理的結合
付録3 インターネットの利用法
参考文献
あとがき

1章 大学での勉強とレポート・論文の書き方 一はじめてレポートを書く人のために一

1.1. 本書の目的と特徴

「この本は、大学ではじめてレポートを書こうと思っている」
1.1.1 本書の目的や、卒業論文に取り掛かろうとしている人のために、そもそも大学でのレポートや論文とは何か、どう書くのか、を初歩から 説明したものです。 とくに、大学の1・2年生の総合的教育の講義でレポートを 課された人や、通信教育のレポートを書こうと思っている人に は、ぜひ知っておいてほしい基礎的な事柄が述べられています。

1.1.2 本書の特徴
(1) 本書では、レポートや論文を書くときに踏まえなければ ならない基本的な要件と形式をもっとも重視しています。
皆さんは、大学に提出したご自分のレポートや論文が、「感 想文の域を出ていない」と評価されたことはないでしょうか。 あるいは、何をもってレポートや論文と言うのかご存じでしょ うか。日本の学生、とくにいわゆる文系の1・2年の学生は、 感想文・エッセイと呼ばれるものと、学術的な文章であるレポート論文の区別がついていない場合がまだ多いのです。
本書は、この区別をはっきりと示しながら、簡単なレポート から卒業論文レヴェルまでを念頭に置き、レポートや論文の構 成の仕方をハウ・ツー的にまとめてみました。本書で言う論文 とは、おもに実験や観測、統計的調査などを伴わない人文・社 会科学系の分野のものを想定していますが、そのほかの分野に おいても基本は変わることはありません。

(2) 第二に本書の特徴として、「テキスト批評」という、これまであまり紹介されていなかったレポート・論文の非常に有効な準備方法について詳しく説明してあります。
新入生がいきなり独創性のあるレポートを書くことなど、日 本の教育法では、ほとんど不可能です。そればかりか、卒業論 文を書かなくてはならない段になっても、多くの学生が入学時 からあまり進歩していないのが実情です。とくに、学生にとっての悩みの種は、テーマ設定とテーマに関する問題設定です。 卒業論文では、自分自身でテーマを設定しなければなりません が、テーマは、突然思いつくものではないからです。
そこで、本書が推薦する有効な練習方法がテキスト批評です。 「テキスト批評」とは、ある論文なり著作なりを読んで要約し、 そこから自分なりの問題を提起して、その議論を展開させる文 章です。批評(コメンタリー)を書くことは、その本の主張を 鵜呑みにするのでなく、検討し考えながら読む練習になります。 それと同時に、自分独自のテーマ(主題)で論文を書くための、 非常によい準備にもなります。重要な著作を読みながら、自分 のテーマや問題を形成していく過程を学ぶことができるからで す。
また、本書で養ってほしいのは、議論(argument)するの に必要な表現力です。「議論」とは、意見が不一致ないし対立 している場合にそれを一致させたり、表明された意見の真偽を 明らかにしようとするコミュニケーションのことです。レポー ト・論文は、議論から成り立っています。テキスト批評は、こ の、議論する能力を向上させます。

(3) 第三に、本書は、「レポート・論文の書き方」という授 業のテキストに使えるように考慮しました。アカデミックな表 現力の向上を目的とした授業を行っている大学は近年かなり増えてきていますが、まだ本当にその教育方法が確立して、
査方法が確立しているは
きみません。しかし表現力やコミュニケーション能力を養う、
とは、今の社会でますます重要になっています。
「レポート・論文の書き方」という授業があるならば 、 の順序どおり、まずテキスト批評から始めて、そのなかで生まれたテーマと問題について、レポートなり論文なりを書くという手順が学生にとってやりやすく、また、その後の論文作成のためにも効果的と思われます。

(4) 第四の本書の特徴は、注や参考文献表の作成方法についての具体例を多くのせて、実用的であることを心がけた点にあります。実際にレポート・論文を書いている時に手元において、 いつでも使えるように工夫しました。後述するように、大学で のレポート・論文だからといって、引用や参考文献の出典をおろそかにはできません。
注や参考文献表の作成は最初は煩瑣に感じますが、規則さえ覚えればそれほど苦ではなくなります。その点、マニュアルや 辞書のように本書を利用していただければよいと思います。

河野 哲也 (著)
出版社 : 慶應義塾大学出版会 (2018/7/13)、出典:出版社HP