ページコンテンツ
【最新 – FinTech フィンテックを学ぶおすすめ本 – 分かりやすい入門から応用まで】も確認する
世界のFinTechがよくわかる
金融テクノロジーは多種多様な要素から構成されているため、FinTechのあらゆる側面や細部を自分だけで、あるいは自分たちだけで網羅できるなどという個人や集団は存在していません。本書は、FinTechとは何なのか、お金の課題を解決することができるのかという疑問を、85人に及ぶ最前線の実務家や専門家が丁寧に解説していきます。
FinTech大全
今、世界で起きている金融革命
編著者 スザンヌ・キシュティ ヤノシュ・バーベリス
日本語版壁訳 瀧俊雄
訳者 小林啓倫 映像翻訳アカデミー
The FinTech Book
The Financial Technology Handbook for
Investors, Entrepreneurs and Visinaries
First published in 2016
Copyright 2016 Susanne Chishti and Janos Barberis
Japanese translation rights arranged
with John Wiley & Sons Limited
through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo
はじめに
本書の編者である我々2人は、ほぼ同じタイミングでFinTech分野の研究を始めた。そしてすぐ、この分野に関して、信頼の置ける幅広い情報源がないことに気づいた。ある晴れた日、我々は英国ロンドンのカフェに集まり、互いがFinTechに対する情熱を抱いていること、そしてより研究を深めたいと願っていることを確認し合った。そして起業家にありがちな話だが、FinTechに関する知識のギャップを埋めるために、自分たちでFinTechの本を書こうと考えたのである――FinTechの入門者はもちろん、専門家にも役立つような内容の1冊を。それが本書の生まれたきっかけだ。
本書を読めば、これがFinTech分野で初となる「世界的クラウドソーシング」によって生まれた1冊であることに気づくだろう。グローバルな FinTechコミュニティーを頼り、数多くの寄稿者を集めた理由は、「金継テクノロジー」という世界が多種多様な要素から構成されるためである。FinTechのあらゆる側面や細部を自分だけで、あるいは自分たちだけで網羅できるなどという個人や集団は存在しない。さらに世界中から寄稿者を募ることで、我々はFinTechの精神にのっとって、コミュニケーションのテクノロジーを駆使して協力者たちと接触し、コンテンツを集め、精査することができただけでなく、世界中のあらゆる地域が、FinTechに対して発言権を持っているということを確認できたのである。そこで我々は、まだこの分野で注目されずにいる人々や、FinTechコミュニティーに参加していない人々に発言の機会を提供し、その声を世界中の読者に届けることを、本書の最も重要な目標の1つとすることにした。我々は本書の編さんを、心から楽しむことができた。読者の皆さんにも、我々と同じくらい本書を楽しんでもらえれば幸いである。
本書をまとめる課程で、27カ国から集まった160人以上の著者が、189の記事概要を提供してくれた。そして我々は、グローバルなFinTechコミュニティーにそれを渡し、本書に掲載する記事として議論を深めるのはどれがよいか、レビューしてもらえるよう尋ねたのである。さらに寄稿してくれた著者たちにアンケートを行い、彼らのバックグラウンドや専門領域について質問した。
要約すると、最終的に選ばれた記事の著者の出身国は、20ヵ国に達した。過半数(60%)が修士以上の学位を有しており、多様な分野で専門知識を持っている(図1)。また著者の93%が、これまでに著作が出版された経験を持っている。
図1 著者の専門領域(複数回答可)
図2では、著者の約半数がFinTech系スタートアップで働く起業家(その多くが創業チームの一員)であることが示されている。また彼らの4分の1が既存の金融機関、もしくはテクノロジー企業出身で、残りの4分の1はコンサルティング企業や法律事務所など、FinTech分野で各種サービスを提供する企業の出身である。
図2 著者の勤務先
著者の約5分の1が、従業員5人以内のスタートアップで働いており、55%が従業員100人以内のスタートアップまたは中小企業に勤務している。一方、著者の17%は従業員1000人以上の大企業で働いている。
起業家もしくは大企業における「社内起業家」としての活動を通じて、FinTech分野における高いスキルと多くの経験、そして情熱を持つ人々が著者として集まってくれたことを、我々は非常にうれしく感じている。彼らは皆、FinTech革命において重要な役割を演じている人物だ。こうした非凡な人々が、本書を通じて自らの知見を共有してくれている。
何よりもこのプロジェクトは、本書に多くの貢献と寄稿をしてくれた人々(最終的な記事を執筆してくれた著者たちだけでなく、最初に検討用の概要を書き、全世界のFinTechコミュニティーに提供してくれた方々)なしには成立しなかった。さらに、編集作業の最終段階で多くの助力をしてくれた、インナ・アメシェバ、スキ・ジュトラ、マヤ・ビーターソンの3人にもお礼を申し上げる。最後に、ワイリーの編集者の方々にも感謝したい。彼らのアドバイスと支援は、ロンドンのカフェで単なるアイデアとして生まれたこのプロジェクトを、皆さんが今、手に取っている本として実現することに大きく貢献してくれた。
2016年
スザンヌ・キシュティ、ヤノシュ・バーベリス
「FinTech大全今、世界で起きている金融革命」編著者
目次
はじめに
第1章 イントロダクション
書籍に起きたこと、銀行に起きること
なぜ人々はFinTechに惹かれるのか
銀行業界を揺るがすFinTechの革命
第2章 FinTechの主要テーマ
銀行とFinTech競争より協調を
グローバルなコンプライアンスがカギを握る
21世紀の融資
個人情報
FinTechが起こす次のイノベーション
ノンバンクへと変貌する大手IT企業
FinTechのユーザー体験デザイン
第3章 FinTechハブ
英国 新たなFinTechコミュニティーを育てる
フランスでFinTechスタートアップは成功するか?
オランダ 統合されたFinTechエコシステムを目指す
ルクセンブルクはFinTechハブになり得るか
ウィーン モバイル決済の勝者となるか
インドのFinTechエコシステム
シンガポール 東南アジアのFinTechハプ
第4章 新興市場とFinTechの社会的影響
FinTechの社会的重要性 米国の事例から
メキシコ 金融サービスにおける差別を克服
途上国におけるFinTechの興隆
スマートフォン、FinTech、教育アンパンクト層にも金融サービスを
ナイジェリア FinTechの社会的インパクト
インド 社会参加の機会を増やすFinTech
第5章 FinTechソリューション
契約を書き換えるB2Bサプライチェーンへの道
決済システムとPOS
予測アルゴリズム
ピッグデータはコンプライアンスシステムの基礎
契約最適化を支援するFinTechソリューション
行動パイオメトリクス セキュリティーの新時代
トレーディング戦略としての超高速テキスト分析
規制クラウドファンディングのエコシステム
低コストの海外送金
中小企業向けFinTechソリューション
Apple Payをはじめとした決済ソリューション
金融以外の領域にも進出する FinTechソリューション
ウェアラブルのためのFinTech革命
第6章 資本と投資
投資と資本 基本の理解
最高のFinTech企業を生み出すエンジェル投資家
クラウドファンディングとP2Pレンディング
デジタル投資領域は破壊的変化をもたらすか?
投資家主導型アプローチによるクラウドファンディング
ロボアドバイザーはiPod 他業界の教訓から
アルファのクラウドソーシング
ヘッジファンドをクラウドソースする
資金調達の進化
第7章 既存の金融機関は変われるか?
銀行はイノベーションを起こせるか?
イノベーションラボは答えなのか?
FinTechと銀行カギを握るのはコラボレーション
金融とデジタルをすべての人へ
パートナーシップがカギを握る
コーポレートベンチャーキャピタル FinTechエコシステムの新たな有力プレーヤー
保険におけるFinTech
第8章 その他の成功事例
イートロ 世界最大級のソーシャル投資ネットワーク
アヴォカ 13年間の努力の末、突然得た成功
パンカプルサービスとしてのパンキング
シティグループのイノベーション物語 第2幕
FinTechスタートアップ 市場インフラ、ホールセールバンクと提携
第9章 暗号通貨とブロックチェーン
FinTechとデジタル通貨集約か、衝突か
プロックチェーンと暗号通貨
第10章 FinTechの未来
新技術が変える金融サービス
金融サービスの未来
データを活用した銀行サービスの刷新
FinTech銀行が世界を制覇する理由
FinTechスーパーマーケット 銀行は死んだ、銀行万歳!
FinTechベンチャーと銀行の提携で 生まれる統合型UX
銀行Techの台頭 銀行にとってのハイブリッドモデルの意義
リテールパンキングにおけるFinTechの衝撃 銀行は垂直統合へ
コネクテッドAPIエコノミー 「つながること」から価値が生まれる経済
金融は経済の血液
顧客の経済生活から摩擦を取り除く
未来はFinTechにあり
現金のない世界へ
FinTechにおける倫理
謝辞
日本語版監訳者あとがき
編者について
寄稿者一覧
FinTech (Financial Technology)は2016年に大きく注目された産業の1つだ。革新的なビジネスモデルや製品、サービスを持つスタートアッ プが数多く登場し、FinTech革命は世界中で金融業界を変えようとしている。FinTech企業が提供する数々の金融サービスは、これまで銀行が独占的に行ってきたものだ。銀行はFinTechブームを警戒すべきなのだろうか? 2015年末の記事で、米フォーブス誌は次のように解説している。
FinTechスタートアップの流行とブロックチェーン技術への関心の高まり、そしてミレニアル世代(訳注:1980年以降に生まれ、21世紀への変わり目の頃に社会に出た世代)の台頭により、銀行業界は変革の時代に入った。銀行は進化しつつあり、新たな情威や潜在的な不正リスクを検討する中で、サイバーセキュリティーへの対応が最優先課題となっている[1]。
本章ではFinTechを概観し、その背景や「FinTech」が何を意味するのかを整理する。本章の各稿は、第2章以降での詳細な議論を理解する上で、よい導入となるだろう。