図解入門ビジネス 最新FinTechの基本と仕組みがよ~くわかる本

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最新テクノロジーによる金融サービスがわかる

「やさしく知りたい先端科学シリーズ」の1冊であり、そのタイトル通り、知識がゼロの状態からでもわかるように丁寧に解説されています。本文中にはイラストも多用されており、仕組みについて視覚的にもわかりやすくなっています。初学者におすすめです。

長橋賢吾 (著)
出版社 : 秀和システム (2016/12/2)、出典:出版社HP

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はじめに

筆者は、先日、ある金融機関の方とこんな話をする機会がありました。「上司から、FinTechをウチもやるからサービス考えておいて、と言われたけど、そもそもFinTechって何のためにあるの?」。この方に限らず、こうした疑問を お持ちの方は意外と多いのではないでしょうか。
FinTechは、金融(Financial)+技術(Technology) の略であり、一般的には、金融に新しいテクノロジーを持ち込むこと、と定義されています。では、新しい技術とは何か?それが本書の中心となるテーマです。

本書において、この新しい技術は、それぞれの技術ではなく、むしろ、社歴の浅いスタートしたばかりのスタートアップ企業が生き残りをかけて製品開発+マーケティングをすることで生み出されたモノ・サービスと定義し、そうしたスタートアップ企業が既存の金融ビジネスを変革(ディスラプション)することがFinTechの流れと考えます。
こうしたFinTechは、既存の金融機関にとって自社のビジネスを奪う脅威となるのか、それとも、お互いを補完しあう共存関係となるのか。本書では、後者の立場、すなわち、既存の金融機関がスタートアップ企業による新しいモノ・サービスを積極的に取り入れることが、今後のFinTechの発展に不可欠と考えます。そして、そうした共存を実現するためには、既存の金融機関は、スタートアップ企業を理解する必要があり、その概観を提供する、というのが本書の狙いです。

具体的には、第1章でFinTechの概要について概観し、第2章では銀行の機能のうち融資ならびにクラウドファンディングを取り上げ、第3章では決済を取り上げます。第4章ではFinTechと保険について触れ、第5章ではロボアドバイザーを中心とした資産運用について取り上げます。第6章では、新しい技術として注目されているビットコイン・ブロックチェーンについて触れます。そして、第7章では、こうしたスタートアップ企業がどういう技術基盤に強みを持つかを触れます。本書は、海外の事例を主に取り上げますが、日本の事例についても第8章で取り上げます。

2016年11月
長橋賢吾

長橋賢吾 (著)
出版社 : 秀和システム (2016/12/2)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第1章 FinTechとは何か?
1-1 FinTechとは何か?
1-2 破壊的イノベーションをもたらすFinTech
1-3 FinTechとエコシステム
1-4 FinTechとAPIエコノミー
1-5 FinTech先進国中国の第3者決済
1-6 ビットコインとブロックチェーン
1-7 第1章のまとめ
コラム シリコンバレーとオールブラックスに見る裾野の広さ

第2章 FinTechで変わる融資
2-1 クラウドファンディングとは?
2-2 P2Pレンダリング大手一岐路に立つレンディングクラブ
2-3 融資をマッチングするレンディングツリー
2-4 卒業生と学生とに融資を絞るSoFi
2-5 世界最大のFinTech企業Lufax
2-6 第2章のまとめ

第3章 FinTechで変わる決済
3-1 FinTechと決済機能
3-2 ウーバームーブメントとは?
3-3 海外送金でイノベーションを起こすトランスファーワイズ
3-4 携帯電話を銀行口座にするM-PESA
3-5 インドのモバイルワレットペイティーエム
3-6 モバイルPOSを提供するスクエア
3-7 第3章のまとめ
コラム アナログの効用

第4章 FinTechで変わる保険
4-1 FinTechと保険業務
4-2 天候データに強みを持つクライメートコーポレーション
4-3 P2P保険のフロンティアを開拓するフレンドシュランス
4-4 ディスカバリー社の三方よしのビジネスモデル
4-5 第4章のまとめ

第5章 FinTechで変わる資産運用
5-1 FinTechと資産運用
5-2 ロボアドバイザーとは?
5-3 ウェルスフロントによるロボアドバイザー運用
5-4 お金のデザインによるロボアドバイザー THEO
5-5 PFMサービスを提供するミントドットコム
5-6 第5章のまとめ
コラム アクティブ運用での勝ち方

第6章 ビットコインとブロックチェーン
6-1 ビットコイン・ブロックチェーンとは?
6-2 ビットコイン取引所一コインベース
6-3 ビットコインを活用したP2P送金一Abra
6-4 金融機関でのブロックチェーン利用をリードするR3 CEV
6-5 価値のインターネットを提供するリップル
6-6 第6章のまとめ
コラム 広く併せ呑むブロックチェーン

第7章 FinTechを支える技術
7-1 ウェブサービスとしてのFinTech
7-2 モバイルUX
7-3 大規模サービスインフラを支える技術
7-4 サービスを連携するウェブAPI
7-5 データから価値を産む人工知能
7-6 第7章のまとめ
コラム 正規分布とブラックスワン

第8章 日本のFinTech
8-1 日本のFinTech―融資編
8-2 日本のFinTech―決済編
8-3 日本のFinTech―保険編
8-4 日本のFinTech―資産運用編
8-5 日本のFinTech―ビットコイン・ブロックチェーン編
コラム 世界の中の日本

おわりに
索引

第1章 FinTechとは何か?

最近、新間・雑誌などの紙メディアあるいはウェブのニュースといったウェブメディア、様々なメディアにおいて、「フィンテック」が取り上げられています。では、このフィンテックとは一体何を指すのでしょうか?本書では、このフィンテックをスタートアップ企業による銀行、保険、証券、クレジット決済といった金融サービスの展開と定義します。
従来までは、銀行・証券・保険といった金融サービスを展開するためには、規制、複雑なシステム開発など、様々なハードルがありました。しかしながら、スタートアップ企業がこうしたハードルを越え、そして、何よりも利用者にとって利便性を提供することで、既存の金融機関と差別化をします。
スタートアップ企業による金融サービスの展開――このフィンテックは金融機関にとって既存のビジネスを奪う脅威ともなれば、そのサービスを一緒に活用することで連携する、いずれも考えられます。では、このフィンテックがどう影響を及ぼすのか、見ていきます。

1-1 FinTechとは何か?

最近、フィンテックというキーワードをしばしば目にします。このフィンテック、スタートアップ企業による金融サービスの展開であり、こうしたスタートアップ企業は、製品開発+マーケティングを同時に行うことでユーザのニーズを取り込みます。

フィンテックはバズワード?

最近、フィンテックというキーワードを見かける機会が増えました。でも、このフィンテック、クラウド、ビッグデータのように、定義が曖昧のまま、人や立場によって都合良く解釈する、いわゆる、バズワード、と言ってよいかもしれません。
とはいうものの、クラウド、ビッグデータがかつてバズワードと呼ばれながらも、様々な場面で利用が促進されたことで、徐々に市民権を得て、一般的に利用されつつあるようになったように、フィンテックもいずれは、当たり前に利用されるようになるのではと筆者は考えます。

フィンテックの定義

このフィンテックとは何者でしょうか?そもそも、フィンテックは、Financial Technology、直訳すれば、金融技術です。銀行、保険、証券、クレジット決済といったサービスを提供する金融機関は、情報技術(IT: Information Technology)を活用します。すなわち、あえて「フィンテックと呼ばずとも、すでにITを積極的に活用しています。たとえば、銀行であれば、ある利用者が、現在、どれだけ普通預金に残高があり、次の引落しでどれだけ残高が減るか、これを紙のようなアナログで処理していては、とても手間がかかります。こうしたこともあり、金融機関は、他の業種に先駆けて60年以上前からコンピュータを導入してきました。
このようにITを積極的に活用している金融サービスについて、あえて、”フィンテック”をつけなくてはいけない理由、それは、やはり、情報技術が進化している点にあります。具体的には、スマホ経由での金融サービスの利用、仮想通貨の利用などです。そして、スタートアップ企業(本書では、ベンチャー企業、テクノロジー企業、これをあわせてスタートアップ企業と呼びます)によって、こうした新しい金融サービスが展開されつつあり、本書では、このフィンテックをスタートアップ企業による金融サービスの展開と定義します。

シリコンバレーがやってくる

スタートアップ企業による金融サービスであるフィンテックが既存の金融機関に対してどのような影響を与えるのでしょうか?米国大手銀行グループJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは、2015年同社の投資家向け年次報告書において「Silicon Valley is coming (シリコンバレーがやってくる)」と指摘しています。「シリコンバレーがやってくる」に続いてダイモンCEOは、こう指摘します。

「there are hundreds of statups with a lot of brains and money working on various alternatives to traditional banking(優秀な頭 脳、潤沢の資金を持つ何百ものスタートアップ企業が既存の銀行を置き換 えようとしている)」

シリコンバレーは、米国サンフランシスコ近辺にあるベンチャー企業が集積しており、こうしたシリコンバレーに代表されるスタートアップ企業が既存の銀行ビジネスに影響を与えることを指摘しています。
生まれたばかりで従業員も数えるほどしかいないスタートアップ企業が、なぜ、何万人、何十万人と従業員を抱える金融機関にとって脅威となるのでしょうか?もちろん、数名のスタートアップ企業が、すぐに巨大金融機関の収益を奪うという話ではありません。むしろ、革命は辺境から始まる、というように、スタートアップ企業が金融の世界において革命を起こしつつある、これがフィンテックの流れと筆者は考えます。

長橋賢吾 (著)
出版社 : 秀和システム (2016/12/2)、出典:出版社HP