人材マネジメント論―儲かる仕組みの崩壊で変わる人材マネジメント (BEST SOLUTION)

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人材マネジメントの方向性がわかる

本書では、「人材マネジメント」の本質的な部分から、具体的な例まで、「人材マネジメント」について体系的にまとめられています。本質を解説している部分では考え方を、具体例の部分ではより実践的な方法を学ぶことができる一冊です。

高橋 俊介 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2006/5/1)、出典:出版社HP

新版 人材マネジメント論―儲かる仕組みの崩壊で変わる人材マネジメント

まえがき

この本の前著にあたる『人材マネジメント論』は、人材マネジメントを経営的な視点からとらえ、企業経営 における人材マネジメントの方向性を示したものであった。本書はその内容をさらに一歩進め、現在そして将 来予想される経営環境のなかで、企業が直面するであろう課題を考慮し、大幅に書き改めたものである。
前著が世に出てからまだ一〇年にも満たないというのに、IT技術の急激な進歩や、グローバル化による中 国やインドといった新興国の躍進などで、この間世界経済の様相は、めまぐるしく変わった。日本国内におい ても、産業のサービス業化が進み、製造業であるにもかかわらず実態がサービス業に近かったり、製造部門以 上にソフトウェア開発やサービス分野に力を入れる企業が増えるなどの変化が起こっている。また従業員全体 における非正規社員の割合が増加するなど、人材マネジメント分野でも、数年前の常識ややり方が通用しなくなりつつある。
このようないまという時代を正確に把握し、そのうえで、どんな枠組みで人材マネジメントを考え進めれば いいかというテーマを、歴史や過去の経緯にも言及しながら解説していこうというのが本書のねらいである。

ゆえに、現在人事の現場に携わっていて最新の人事トレンドを知りたい人や、人材マネジメントを体系的に 理解しそれを経営に活かしたいマネジャーやビジネス・リーダー諸氏には、ぜひ一読をお勧めしたい。また大 学等で人材マネジメント全般を学ぶ際のテキストブックとしても奏効するのではないかと自負するしだいだ。
人材マネジメントの分野におけるこの一〇年を振り返ると、まず九〇年代の半ばから後半にかけて、多くの 企業がこぞって賃金制度を年俸制に移行し始めた。いわゆる賃金制度改革である。年齢によって賃金が決まる それまでのやり方では、企業業績に関係なく、従業員の平均年齢が上がれば自動的に人件費総額が上がる。経 済が右肩上がりの時代ならそれでもよかったが、バブル後の不況下に、下方硬直性の強い年齢給では、企業経 営が立ち行かない。そこで業績に連動する形で賃金総額をコントロールできて、なおかつ個人の合意も得やすいという理由で、年俸制の導入が進んだのだ。 一般的に賃金制度改革は、社員の活性化を図るために成果主義を採用するという構図でとらえられがちだが、 実際は企業による人件費総額の適切なコントロールが主たる目的だったのである。このように人材マネジメン トにおいては、新たに現われたキーワードをその都度正確に理解していくことも重要だ。

またこの時期には、厚生年金基金の代行返上、企業年金の給付切り下げや廃止、確定拠出年金への移行など の話題が、しばしば世間を賑わしたが、いずれも賃金制度改革と根は同じであると考えていい。つまり人件費 総額のコントロールという経営上の難問を、いかに社員に納得させながら解決するかが、九○年代後半の企業 が抱える最大の課題だったというわけだ。
そしてリストラも、やはりこの流れの延長にある。もちろんそれまでも、リストラがまったく行われていな かったわけではないが、やはり日本企業といえば終身雇用が当たり前というのが社会の常識だった。それがこ の時期、大手企業もリストラに手をつけ始めたことで、終身雇用が崩壊したという認識が世の中に一気に広が った。いまや終身雇用を堅持すると宣言する経営者のほうが、むしろ少数派となってしまった感があるが、その転換期は九〇年代後半にあったといっていいだろう。

二〇〇〇年になると今度は、企業において学卒入社組はすべて幹部候補生であるという図式が成り立たなく なってきた。これは少子化が進み、いわゆる大学全入時代になったことで、エリートとしての価値が学卒から 失われてしまったことに加え、リストラによる組織のスリム化によって、大幅にポストが削減されたからだ。 昔なら学卒であれば、どこの企業でも四〇代でほとんどの人が管理職に昇進できたのに、バブル入社組以降は、 生涯役職に就けない人たちが多数派になるといわれるようになったのである。もはやかつてのように全員を管 理職候補とみて、段階的に時間をかけた選抜で、全員に出世のチャンスがあるかのようなメッセージを与えモ チベーションを維持する従来のやり方は通用しなくなった。 一方で、日産のゴーン氏やキヤノンの御手洗氏のように、トップが強烈なリーダーシップを発揮して組織を 変革するという事例を目の当たりにして、多くの企業がリーダーの重要性を認識し始めた。早い時期から将来 の経営者やビジネス・リーダーを選抜し育成しようと、コーポレート・ユニバーシティを設立したり、大企業 のみならず中堅企業においても、社内のリーダー候補の早期選抜や教育に力を入れるという傾向が顕著になったのは、いずれも今世紀になってからである。

労働者に目を転じてみると、若者も中高年もともにキャリアに対する意識が高まったというのも、二〇〇〇 年以降の特徴といえよう。これはやはり終身雇用制の崩壊によって、どの世代であっても突然のキャリアチェ ンジとは無縁でいられなくなったというのが大きい。ところがとくに中高年のなかには、キャリアに対する柔 軟性が相変わらず低い人も少なからず見受けられる。また自分のキャリアを会社の都合で振り回されたくないという若者も、ここにきて急速に目立ってきた。二○○○年以降、企業がキャリア教育や、キャリアカウンセ ラーの育成に力を入れ始めた背景には、このような現実があるのである。

さらに二○○五年になると、目前に迫った「二〇〇七年問題」をどうするかで、各企業の人事部は頭を悩ませることになる。一九四七年から一九五一年にかけて生まれた団塊の世代が、定年年齢に達する最初の年が二 ○○七年なのである。この団塊世代の一斉リタイアで、労働力不足と同時に、OJTを中心としたこれまでのような人材育成が成り立たなくなる事態が懸念されている。いくら力を入れてビジネス・リーダーの発掘と育 成に努めたところで、組織を構成する人が育たなければ、会社としてうまく機能しなくなるのは明白だ。そこ で社員全体を見た人材育成施策の再生にどのように取り組むかが、今後の大きな課題のひとつとして、まさに 現在浮上しつつあるのである。
ここで取り上げたのは人材マネジメントの根幹にかかわる重大な変化ばかりだが、これ以外にも従来の手法 や考え方を見直す必要のある部分はいくつもある。今回、それらをできる限り考慮して、前著を大幅に書き換 えることにした。
急激な変化を前に、途方に暮れ立ち止まるのではなく、本書を活用し新たな人事戦略構築に臨まれることを 願ってやまない。

二〇〇六年五月
高橋俊介

高橋 俊介 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2006/5/1)、出典:出版社HP

目次

まえがき
第1章 企業ビジョンと人材マネジメント
1……人材マネジメントの経営的視点
「戦略」とはなにか
人材マネジメントの成功事例
新規事業を創出し続けるリクルート
2……顧客重視の事業ビジョン
事業ビジョンと人材マネジメント
誰が顧客か
顧客重視で成功した青梅慶友病院
顧客重視とはなにか
3……価値提供のビジョン
どのような価値を提供するか
タソリューションと単なる受注の違い
どのように儲けるのか
アウトソーシング・モデルの収益構造
4……顧客接点重視のマネジメント
人材ブランディング
ブランドと顧客満足度
キーワードは「エピソード」
タイレギュラー時の三点確保
スターバックス・モデル
青梅慶友病院の提供価値と評価
サービス業の本質とはなにか
もうひとつの本質は「一○○ -一=○」であるということ。
5……人材の戦略的活用
コア人材の確保と多様な雇用形態
日興コーディアル証券のファイナンシャル・アドバイザー制度
金融業界の資産管理ビジネス
人材マネジメントの基本は戦略性
第2章 人材マネジメントの三つの分野 |
組織マネジメント
人材フローマネジメント
報酬マネジメント
人材マネジメントのチェックリスト
第3章「組織マネジメント
1……組織マネジメントのキーワード
組織マネジメントを考える三つの軸
市場の成熟がもたらす変化速度の加速と複雑性の増大
将来予測性と管理可能性の低下
※対立概念の一方向にシフトする
2……ピラミッド組織と自律組織
タピラミッド組織と自律組織の違い
組織マネジメントと目的合理性
各セブン-イレブンに見る個別対応性と仕事の予見性
各キャリア開発や人材育成と目標管理
タコミュニケーションとマネジメントのスタイル
変化と複雑性の組織マネジメント指標
タマネジメントとリーダーシップの違い
※メッセージの伝達と組織マネジメント
3……画一性重視の組織と多様性重視の組織
ダイバーシティ・マネジメントの意味の変遷
ダイバーシティ・マネジメントのメリット
ダイバーシティ・マネジメントの注意点
4……公式の組織コミュニケーションと社会関係資本による相互作用
信頼と互酬性
結束型と橋渡し型
ITによるコミュニケーションと強い絆の強化
求められる弱い絆と組織の役割
第4章 成果を生み出す能力と人物像
1……成果を生み出す能力と人材像
タスキル
思考力 今思考・行動特性
動機
ネスペシャリストとプロフェッショナル
2……雇用とキャリア概念の変遷
ハイヤー・アンド・ファイヤー
アップ・オア・アウト
抱え込みと雇用の二重構造
終身雇用と長期雇用
3……採用と配置のさまざまな考え方
各部門人事権か人事部人事権か
社内流動性の活用
採用と昇進の相対基準モデルと絶対基準モデル
4……育成の多様な要素と課題
育成環境の変化1~組織環境
育成環境の変化2~社会環境
育成環境の変化3~求められる能力
タビジョンなき多忙による疲弊
若手への試練不足と進まない自己啓発、旧態依然のマネジメント
各研修投資の選択と集中
5……組織の育成力強化の方策
成長の多様性の創出
冷健全な自律的キャリア形成概念の普及
新たなる人材育成の方法論の実践
第5章 報酬マネジメント
1……日本の報酬制度の変遷
高度成長期
予見性・序列性・一律性
オイルショック以降
バブル崩壊以降
二○○○年以降
2……米国の報酬制度の変遷
公民權法以前
公民權法制定後
八〇年代以降
ストックオプションの活用
幹部報酬制度の見直し
3……人件費の適正管理の考え方
月数ボーナスとプロフィット・シェア
4……報酬とコミットメント
コミットメントとエンゲージメント、エンプロイメンタビリティ
外因的コミットメントを引き出す条件
燃えつき症候群
内因的コミットメントを機能させる衛生要因
内因的コミットメントを引き出す要素
四つのコミットメント
福利厚生・年金退職金の変遷
第三世代の福利厚生
あとがき

装丁 山田英春
本文DTP 寺田祐司

高橋 俊介 (著)
出版社 : 東洋経済新報社 (2006/5/1)、出典:出版社HP