知識ゼロからのフィンテック入門

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FinTechの全容が理解できる

「フィンテック」とは、お金に関する悩みや不便をITで解決し、より良い金融サービスや、お金のあり方を追求するものです。本書では、フィンテックの全体像を掴むために、その成り立ちやサービス事例を掲載し、解説しています。フィンテックについて興味がある人におすすめの一冊です。

桜井 駿 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2020/5/27)、出典:出版社HP

はじめに

インターネットやスマートフォンの登場で、便利なサービスが次々と誕生し、私たちの暮らしに浸透し始めています。「お金」を扱う企業といえばこれまでは「銀行」や「証券会社」だけでしたが、巨大なIT企業がスマホのキャッシュレス決済サービスを提供したり、ベンチャー企業が資産運用サービスを提供したりと、その顔触れも豊かなものになっています。「お金」は私たちの暮らしに密接に関わるもので、無関係な人はまずいません。「フィンテック」は、そんなお金に関する悩みや不便をITで解決し、より良い金融サービスや、お金の在り方を追求するものです。「皆さんの財産であるお金を守るために、金融業者には厳しい規制がかけられていますが、技術やサービス出現の変化が早い現代においては、私たち利用者自身の金融リテラシー、ITリテラシーが求められています。
本書では、フィンテックの全体像をつかむために、その成り立ちやサービス事例を掲載し、解説しています。皆さんがフィンテックに興味を持ってくださり、生活や仕事で活用するきっかけになればと思います。
株式会社デジタルベースキャピタル 代表パートナー 桜井 駿

フィンテックって何? 理解するための7つのキーワード
フィンテックが誕生した背景、サービスの種類、現在の状況まで。
押さえておきたい7つのポイントを紹介します。

●:フィン子
お金の整理が苦手な社会人2年目子マネーやポイントを使いこなせない現金派。
◆:桜井先生
ベンチャーキャピタリストとして、フィンテック企業への投資や講演も数多くこなす。

IT技術で便利になった新しい金融サービス
●:数年前から、経済新聞などでよく目にするようになった「フィンテック」。お金にまつわるものということはイメージできますが、その正体は?
◆:フィンテックは、「金融 =Finance (ファイナンス)」と、「IT技術 =Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語。つまり、IT技術を駆使した金融サービスのことだ。
メディアでは、そんなサービスを提供するベンチャー企業なども、まとめてフィンテックと呼ぶことがある。この本では混乱を避けるために、そういった企業は「フィンテック企業」と呼ぶよ。
●:でも、「IT技術×金融」なら昔からあったのでは? ATMでの入出金や、クレジットカードでの支払いも、IT技術を利用していますよね。
◆:そう、「IT技術×金融」は決して新しくない。資金の移動や与信審査には、膨大な情報を処理する必要があり、それを可能にするのがIT技術。だから金融業界は、他の分野に先駆けてIT技術を取り入れてきたんだ。
最近注目されるようになったのは、金融機関以外のベンチャー企業やスタートアップ(社会問題を解決するために作られた企業)が、金融サービスを提供し始めたから。金融機関だけが金融サービスを提供するという構図が崩れたことで、注目を集めたんだ。

キーワード その1 世界的な金融危機

金融危機で発展し、技術の進歩で加速
●:アメリカの金融危機をきっかけに発展したとか。
◆:その通り。リーマン・ショック(P14)によって、優秀なIT技術者が金融業界を離れ、ベンチャー企業やスタートアップに移って、新しい金融サービスを作り始めたんだ。もともと既存の金融サービスに 不満を持っていた消費者も、さらに金融機関に不信感を募らせ、便利で新しい金融サービスを求めるようになった。
さらに、IT技術の進歩で、より多くの人がサービスを利用しやすい環境を手に入れたことで、加速的に発展していったんだ。

キーワード その2 IT技術の進歩

決済から送金、投資まで。様々な種類がある
●:金融サービスというと、具体的にどういうものがあてはまるのでしょう?私も利用しているもの?
◆:もちろん利用しているよ。金融とは、広い意味では「お金の融通」のこと。経済社会で、お金が滞ることなく通じている現象のことを指すんだ。例えば、ものを購入した際にお金を払ったり(決済)、誰かにお金を送ったり(送金)するね。また、事業などでお金を借りたり(融資)、手持ちのお金を殖やしたり(投資)する人もいる。これらは全て金融サービスで、銀行や証券会社などの金融機関が提供してきた。でも今では、銀行以外の企業もこうしたサービスを 提供している。
ところで、フィン子さんはLINEを使っているかい?
●:使っていますよ。家族や友達のIDを登録して、メッセージをやり取りしています。
◆:そのLINEに付随した機能として、「LINE Pay」がある。遠くに住んでいる家族や友達にお金を送りたいと思ったとき、このLINE Payを使えば、LINEのIDを使って直接送金することができる。これまでのように、いちいち銀行口座を開いて、振り込む必要はないんだ。時と場所にかかわらず手軽に送金できるし、振込手数料もかからない。わかりやすいフィンテックの一例だ。

キーワード その3 金融×テクノロジー

既存の金融にはなかった 新しいサービスも登場
●:「自動貯金アプリ」や「仮想通貨」などは?いわゆる“金融”とはちょっと違いますが、これもフィンテック?
◆:IT技術によって実現した、これまでにない新しいサービスといえるね。「もっと簡単に貯金できればいいのに」「新しい通貨があったらいいのに」といった、お金にまつわる希望を実現させたり悩みを解決したりするのも、フィンテックなんだ。IT化の波は、金融業界に限らず他業界にまで広がっている。保険業界や不動産業界などでも、お金に関わるサービスはフィンテックの1つととらえられるね。

キーワード その4 進化するサービス

「脅威」から「協業」へ銀行の立ち位置も変化
●:フィンテックが話題になり始めた当初は、「銀行の脅威」といわれていましたよね。
◆:金融業界以外の企業が金融サービスを行うようになり、それまで金融業界が独占していた顧客のシェアを奪ってしまうと考えられたからね。銀行は、近年来客が減ったこともあり、顧客のニーズをつかんだり、それに応えるようなサービスを提供することが難しくなっていた。新規参入しづらい業界ゆえに競争が起こりにくいことも、サービスの質が向上しなかった理由といわれている。一方、フィンテックは基本的に「消費者目線」に立って作られたサービスだ。ベンチャー企業やスタートアップが目指すものはそうだし、最近では大きなIT企業が金融サービスを始めたりしているけれど、それも「顧客が自社の本 業のサービスをより使いやすいようにしよう」という狙いから展開しているもの。消費者がフィンテックサービスに惹かれるのは当然といえる。
●:じゃあ海外でいわれているように、近い将来、銀行は不要になってしまうの?
◆:今のところ、それはないだろう。フィンテック企業の台頭を受けて、金融機関も、IT技術の活用を学んだり、企業的な顧客志向を取り入れたりと工夫しているからね。最近ではフィンテック企業と連携し、互いの強みを 持ち寄ってより良い金融サービス 作りを展開している。企業と金融 機関の協業路線が現状だ。

キーワード その5 顧客志向のサービス

現金社会が充実しているため日本でのニーズは少ない
●:でも、日本ではフィンテックが海外ほど普及していないですよね。それはなぜ?
◆:海外でフィンテックが急速に広まったのは、それまでの金融サービスが使いにくく、不満があったからだ。日本では、偽札も少ないし、故障の少ないATMから問題なくお金を引き出せる。クレジットカードの審査は甘く、銀行口座を持つことも簡単だ。現在の現金を中心とした社会で困っていることが少ないから、新しいサービスのニーズもないというわけ。とはいえ、銀行もフィンテックに対して積極的になっている今、IT化の流れは避けられない。例えば、電車に乗る際に一昔前は切符を使っていたのが、今ではICカードを使うのが当たり前になっているように、いずれ皆がごく自然にフィンテックを利用するようになるだろう。
そのうち、高額な商品を購入しようと思ったとき、融資可能な金額や返済条件がスマホに提示され、ローンの申し込みや審査のステッブを飛ばして購入できるなど、フィンテックの存在はどんどん黒子的になり、気づかないうちにフィンテックを利用する機会が増える だろうと予想されているよ。

キーワード その6 知らぬ間に利用

金融&情報リテラシーの高い人が得をする世の中に
●:これからますますフィンテックが普及したら、どんな社会になるんでしょう?
◆:金融サービスがもっと身近なものになるだろう。これまで、融資や資産運用などの金融サービスは、金融機関が一部の富裕層向けに提供しているものだった。でも、フィンテックの登場で、クラウドファンディング(PS)など、所得レベルに関係なく受けられる金融サービスが生まれた。つまり、金融サービスの選択肢が増えているんだ。
金融についての情報の集め方や、金融サービスの選び方も変化している。今ではオンラインで金融の専門家に相談したり、ネットのコミュニティから、お得な情報を得たりできるよ。
●:そうなんですね。知らなかった……。私のように、お金のことに疎い人間は損をしてしまいそうですね。
◆:その通り。高額な買い物をするときにお得な返済プランを組んだり、賢く資産を運用したり。より意識的に行動した人が得をする世の中になる。そのためにはまず、お金に関する情報収集が大切だ。それに、フィンテックが発展すると、個人情報の流出や詐欺のリスクが高まる。個人情報の管理につとめ、怪しい事業者には近づかないなど、被害を最小限にする工夫がそれぞれ必要になるね。

キーワード その7 金融・情報リテラシー

桜井 駿 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2020/5/27)、出典:出版社HP

もくじ

ITでお金はもっと身近なものになる
フィンテックって何?理解するための7つのキーワード

第1章 フィンテックはなぜ生まれたの?
海外で生まれ、人気のフィンテックサービス。
日本は遅れているって本当?

・フィンテックはどこで生まれた?①
インターネットサービスの普及に伴い、新しい金融サービスが次々に誕生
・フィンテックはどこで生まれた?②
大手金融機関が破綻したことで、人々の金融機関離れ、がさらに進んだ
・フィンテックはどこで生まれた?③
スマートフォンの使用者が増え、サービスの提供・利用がしやすくなった
・フィンテックは今どこにいる?①
ステージ1 すでにあった金融サービスがIT技術でより便利になった
・フィンテックは今どこにいる?②
ステージ2 これまで存在しなかった新しい金融サービスが登場した
・フィンテックは今どこにいる?③
ステージ3 大きなIT企業やテクノロジー企業が、独自の金融サービスを始めた
・フィンテックは今どこにいる?④
ステージ4 建設業や不動産業など、規制の厳しい他業界まで波及
・日本のフィンテックはどうなっている?①
日本では、現状の金融サービスが充実。新しいサービスはゆっくり広まる
・日本のフィンテックはどうなっている?②
金融機関とIT企業が手を取り合って、より便利なサービスを作り出している
・日本のフィンテックはどうなっている?③
フィンテックの普及に向け、法改正も。これからの発展が期待されている

1分でわかる! 第1章のおさらい

第2章 どんなサービスがあるの?
お金を使ったり、借りたり、管理したり。
様々な分野でサービスが展開されている

・お金を使う(決済)①
ネットショップでのやり取りに欠かせない。
売り手と買い手をつなぐ「オンライン決済」
・お金を使う(決済)②
作るのも、使うのも、お金の管理も簡単。若者に人気の「プリペイドカード決済」
・お金を使う(決済)③
売り手と買い手の利便性がともにアップ。
スマホ1つで支払いができる「モバイル決済」
・お金を送る(送金)①
スカイプの技術を送金サービスに応用。為替手数料いらずで低コストの「海外送金」
・お金を送る(送金)②
登録した「友人」に即入金できる。細かいお金のやり取りに使える「個人間送金」
・お金を借りる(融資)①
会ったこともない人が支援者になる。
夢のスタートを支える「クラウドファンディング」
・お金を借りる(融資)②
今まで融資を受けられなかった層にもチャンスを。
貸し手と借り手をつなぐ「ソーシャルレンディング」
・お金を殖やす(投資)
自分に最適のプランを提案してくれる資産運用の強い味方「ロボアドバイザー」
・お金を管理する①
レシートを撮影するだけでOK。家計を自動で管理することができる「PFM」
・お金を管理する②
知らない間にお金を貯められる?ユニークな発想で楽しめる「自動貯金アプリ」
・お金を管理する③
中小企業の会計情報を、見える化。経理業務の効率をアップする「クラウド会計」
・お金を管理する④
従業員も会社も、業務の効率アップ。「クラウド型経費精算サービス」
・金融機関向けのサービス
本人確認から利用者とのやり取りまで。膨大な業務をテクノロジーで支援する
・新しいサービス①
パソコン、インターネットに続くイノベーション。
発行者も管理者もいない新しい通貨「仮想通貨」
・新しいサービス②
給料や代金支払いをよりフレキシブルに。若者に人気の「前払い・後払い」サービス
・金融を超えるフィンテック①
健康促進からマーケティングまで。
IT技術で革新を起こす「保険テック(インステック)」
・金融を超えるフィンテック②
これからITが必要になる業界。
不動産に関わる課題を解決する「不動産テック(プロップテック)」

1分でわかる! 第2章のおさらい

第3章 これから何が起こるの?
知らぬ間にサービスを利用していることも。
知識や判断力が、損得を決める時代に

・社会はどう変わる?①
銀行は、金融業からサービス業へ。顧客視点に立った改革はますます進む
・社会はどう変わる?②
証券会社からカード会社、ITベンダーまで。金融業界の仕事は大きく変化する
・社会はどう変わる?③
ケータリングから民泊まで。「実体を扱う事業会社」が金融を展開
・生活はどう変わる①
未来では、「データのお金」が現金と同じくらい大切なものになる
・生活はどう変わる?②
気づかないうちに始まっていた?金融サービスはより「黒子的」な存在に
・生活はどう変わる?③
学べば学ぶほど、得をする世界。「お金の教育」が義務化されるのも近い
・生活はどう変わる?④
増える詐欺や、情報流出。情報リテラシーを身につけよう

1分でわかる! 第3章のおさらい

第4章 フィンテックを支えるキーテクノロジー
テクノロジーの大幅な進化が
フィンテックの誕生と発展を支えてきた

・モバイル
フィンテックサービスの利用にも発展にも欠かせない存在
・クラウド①
“雲の向こう”で作られたサービスをいつでも好きなだけ利用できる
・クラウド②
新しいフィンテック企業が新サービスを開発・運用しやすくなった
・ビッグデータ①
膨大な情報を集めて解析することで新たなサービスが生まれる
・ビッグデータ②
個人情報の収集や活用は、金融サービスの発展に不可欠なもの
・AI(人工知能)①
限りなく人間に近い存在になった。状況判断や意思決定ができる人工知能
・AI(人工知能)②
人より精度の高い分析ができる。融資や投資の分野で人工知能が活躍
・API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)①
1つの入り口から複数のサービスを使うには企業と企業の「連携」が欠かせない
・API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)②
API公開にはメリット、デメリットがある。どこまで連携を許すかはこれからの課題
・ブロックチェーン①
全ての取引記録が1本の鎖に。改ざんも不正もできない分散型台帳
・ブロックチェーン②
世界中にいるたくさんのマイナーたちが、ブロックをつなぎ、報酬をもらっている
・IoT
あらゆるモノがネットにつながりより多くの情報が集められるようになる
・デザイン(UIとUX)
サイトの見やすさ、わかりやすさは、フィンテックサービスの大きな強み

1分でわかる! 第4章のおさらい

キャッシュレス決済が普及。今、フィンテックの「入り口」に。
さくいん・参考資料

桜井 駿 (著)
出版社 : 幻冬舎 (2020/5/27)、出典:出版社HP