PR視点のインバウンド戦略—訪日中国人の興味は「爆買い」から「体験」、「都市」から「地方」へ

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これからの新しいインバウンド・ビジネス

インバウンドといえば、中国人観光客による「爆買い」を思い浮かべる人も少なくないでしょう。しかし、現在は、そのような買い物や景勝地巡りといった典型的な観光から新たな分野へ広がりつつあります。本書は、これからのインバウンド・ビジネスを成功に導くための考え方を解説しています。

電通パブリックリレーションズ (著), 電通公共関係顧問 鄭燕 (著), 日中コミュニケーション 可越 (著)
宣伝会議

目次

はじめに

第1章
いま、日本のインバウンド市場に何が起きているのか?
1-1 間もなく1000万人突破か?訪日中国人は間違いなく増え続ける
・韓国や台湾を抜いて中国人が訪日観光客のトップへ
・中国人のインバウンド消費が日本の経済を下支えする?
・外国人の受け入れ態勢が今後の最重点課題
1-2 訪日中国人観光客が増加したことには、これだけの理由がある!
・中国版「高度成長」で中産階級が激増
・効果絶大だったビザ発給要件の緩和
・「爆買い」を加熱させた円安や消費税免税
・ネットの普及が日本への関心を高める
1-3 インバウンド事業取り組みの遅れをチャンスに変える
・中国人観光客を地方に誘致することで問題解決へ
・中国人インバウンドがもたらす新たな「開国」
【コラム】15万人が来場。北京「旅行博」から見えてきた訪日旅行

第2章
インバウンド事業、成功と失敗の分かれ道はどこに?
2-1 地方へ広がるインバウンド。「モノ消費」から「コト消費」へ
・「爆買い」から新たなステージへ
・多様化するインバウンドの観光ニーズ
・「コト消費」のインバウンドは地方に向かう
・自分自身を再発見することのむずかしさ
・彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず
2-2 インバウンドを地方へ誘致するためのヒント
・きめ細かい情報発信の必要性
・地域内の連携でインバウンドに対処
・多角的な視点で地元の魅力を探る
・日本には魅力的なテーマ旅行がまだまだある
・中国の旅行会社に企画旅行を提案
・タクシーの手配案内などで外国人観光客の利便を図る
2-3 成功事例から学ぶ中国向けインバウンド・ビジネスへの視点
・中国でプロモーションに成功している日本企業はまだ少ない
・中国人による中国人のためのプロモーションを
・スタート時点から中国人のスタンスに立って戦略を考える
【コラム】中国旅行会社リポート
①《凱撒旅游総公司(Caissa)》
②《知行家》

第3章
中国の社会とヒトを読み解く
3-1 日本を訪れる中国人は、どのような人たちか?
・訪日中国人観光客の中心は20~30代
・日本の「質の高いサービス」を評価
・日本は、中国人にとって一度は行ってみたい国
3-2 急激に変貌する中国社会と中国人のライフスタイル
・スマホひとつで何でも片づく「デジタル超先進国」
・安心・安全や品質を求める「80后」や「90后」世代
・家族や地縁を重視するメンタリティ
3-3 インバウンド誘致のための情報戦略
・旅行前も旅行中も、情報収集はSNSから
・中国人気女優のフォロワー数は4000万人
・KOL効果を最大限に導き出す! ―中国プロモーション成功事例―
・中国人の心をつかむテーマ旅行! ―旅行企画ケーススタディー―
・口コミの拡散=リスクの拡散?リスクをチャンスに変える取り組み
・ウィーチャットが時代遅れになる日が来る?
【コラム】中国デジタルPR事情レポート
巨大ガラパゴス?それとも次代の先駆者?
手法から読み解く中国のコミュニケーション最前線

第4章
コミュニケーションの誤解を解き、未来志向へ
4-1 異文化コミュニケーションに対する理解力を高める!
・グローバル化する「R后」以降の世代 人に対する「距離感」の微妙な違い
・「鷹揚さ」や「気配り」の視点に民族性の相違
・「空気を読む」ことができるのは日本人だけ?
・個人を律する基準はどこの国でも同じ
4-2 インバウンド・ビジネスの将来性
・信頼できるパートナーと組むことが成功のポイント
・中国人インバウンドの将来はどうなる?
・匠の心を求めて、日本に学ぶ中国政府と企業家たち
【コラム】中国デジタルPR事情レポート2
13億人を動かすべく奔走する、中国のデジタルPR

第5章
地方創生の切り札は「インバウンド」だ!
【インタビュー】旅行客の地方誘致とPRの役割
・地方創生を支える観光振興のプレーヤーたち
・活躍が期待される「日本版DMO」とは?
・現状を把握し、ターゲットを設定する
・「何もない」ところから「ストーリー」を紡ぎ出す
・ターゲットに「刺さる」情報の発信を
・インバウンド誘致の合意形成を図る
【座談会】地方はインバウンド需要を取り込めるか
――地方創生への期待と課題
・官民連携でインバウンドを地方創生に活かす
・インバウンド誘致にマーケティングの考え方を取り入れる
・地元が稼ぐ仕組みづくりでDMOを設立
・欧米のFITに特化して独自性を発揮
・旅行博への出展やSNSで情報発信
・多くの自治体にとって「インバウンド」は手探り状態
・オンリーワンの観光資源を見つけて「地方創生」の促進へ
・インバウンド推進には地元の理解を得ることが大切
・無理せず自然体でインバウンドに臨む
・国内と海外の需要バランスを考えて健全な発展を
【コラム】広域連携でインバウンド誘致に取り組む「せとうち観光推進機構」

おわりに

電通パブリックリレーションズ (著), 電通公共関係顧問 鄭燕 (著), 日中コミュニケーション 可越 (著)
宣伝会議

はじめに

インバウンド(訪日外国人旅行)といえば、中国人観光客による「爆買い」を思い浮かべる人も少なくないでしょう。しかし、いま、そのような買い物や景勝地めぐりといった定型的な観光から、インバウンドは新たな分野へ広がりつつあります。京都の禅寺で座禅を体験したり、四国のお遍路の旅に癒やしを求めるなど、日本文化を体験するという人たちも増え始めています。
文化体験といえば、音楽鑑賞も有力なコンテンツのひとつ。東京は実にたくさんのコンサートを開催している都市です。コンサートへ中国人観光客を誘致しようという活動も積極的に推進されています。このように、「日本に来れば、こんなにも多様な文化体験ができるのだ」という評価が、中国人に着実に浸透しつつあるようです。
他方、こうしたインバウンドの動向を見据えて、都心だけでなく、少子高齢化によって縮小傾向にある地方へ、中国人観光客を呼び込もうという機運が各分野で高まりを見せています。

本書の著者、鄭燕(てい・えん)さんと可越(か・えつ)さんは、多様化するインバウンド誘致を軌道に乗せるため、中国人の視点を活かしたサポートを行っています。日中双方の事情に詳しい二人は、インバウンド・ビジネスを成功に導く「水先案内人」の役割を果たしています。
鄭さんは、中国にある日中合弁企業に就職したことが、日本とかかわる契機となっています。同社が経営するホテルで働いていたときに、日本へ留学する機会を得て、一橋大学商学部に入学。その後、アクセンチュア日本法人を経て、2003年に電通に入社。電通本社では、大手グローバルメーカーの海外営業兼戦略プランナーとして、アジアをメインとした海外生活者調査、現地コミュニケーション支援構築、グローバルブランドガイドブックの制作、9カ国共通イントラネットの構築などを手がけてきました。
現在の鄭さんは、北京、上海そして広州に拠点を置く電通公共関係顧問(北京)の総経理(社長、最高経営責任者)を務めています。設立7年目の同社は、クライアントの7割以上が日系企業、その他が中国企業や台湾企業などです。中国における日系PR会社の中で最も著しい発展を遂げてきただけでなく、過去5年間の中国PR業界の平均成長率が約15.5%(中国国際公共関係協会発表の中国公共関係業年度調査報告による)であるのに対し、同社の成長率はそれをはるかに上回っています。業務については、日本製品やサービスのPR案件はもとより、従来のPRの枠を超えてより深く戦略的なコミュニケーションに重点を置いた、ブランドレピュテーションマネジメントやビジネスリーダーのプレゼン能力を高めるスピーチ研修など、トータルなPR戦略を積極的に展開しています。また近年、隆盛を見せるインバウンドビジネスに、より深く関与していくため、インバウンド業務も積極的に開拓しています。
一方、可さんは1994年に留学のため来日し、97年に電通に入社。その後、東京大学の修士課程でメディアを研究。修了後、2004年に日中コミュニケーションを創業しました。
そのころから可さんは、インバウンド業務に関与しています。当時の小泉首相は2010年までに1000万人の外国人を誘致するというスローガンを掲げていました。
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」という施策が始まり、推進本部の中に中国関係の部会が設置され、可さんはそのメンバーでした。2013年には観光庁と日本観光振興協会の「観光おもてなし研究会」の委員に就任しました。
可さんの会社は、日本企業の中国向けPRをメイン業務としており、起業当初は、家電量販店などへの中国人誘致に貢献していました。現在は、自治体から観光誘致の相談を受けることも多く、外国人という第三者の目で、「地方創生」のアドバイスも行っています。このほか、中国に関する講演も行っており、中国文化への理解の橋渡しに努めています。
この鄭さんと可さんが出会ったのは2008年のこと。「中国PR研究会」という会合のメンバーになったことがきっかけです。この研究会では、日中間のコミュニケーションのギャップをどのように埋めていくのかを検討。日本の企業をいかにして中国へPRすべきかを研究していました。そのころから、すでに二人は、日中間のコミュニケーションをテーマにして、両国にメリットのある本を出版できないかと話をしていました。
そして私たち電通パブリックリレーションズは、マーケティング・コミュニケーションおよびコーポレート・コミュニケーション領域でPRコンサルティングから専門的なソリューションまでを提供する会社です。インバウンドを契機にPRの需要開拓を行うため、社内に専門チームを立ち上げ、企業や自治体を対象に、日本の魅力を訪日観光客に伝えるための支援を強化しています。PR視点で、特に中国人のインバウンドを推進していく上では、日中間のコミュニケーションは欠かせません。そこで、インバウンドを切り口に、三者の視点から、日本人に役立つ書籍を出版しようと決心しました。

内容は、中国人のライフスタイルやメディア接触の現状、対中コミュニケーションの戦略や課題、インバウンドを地方へ誘致するヒントなど盛り沢山です。
日本はいま、数千年の歴史の中で一度も経験したことのない大変革に直面しています。なぜかというと、これほど多くの外国人が日本に来ることは、過去になかったからです。年間2000万人もの外国人が来ることはまさに大変革であり、これからも続いていくわけです。これは時代の趨勢であり、日本および日本人にとって直面せざるを得ない事実なのです。
そのとき、異文化とのコミュニケーション力が重要になってきます。育った環境や価値観が違う人と接するときは、対立を避けて確かな信頼を築いていくことが肝要です。観光客に対して、どのように接していけば、より安心できる社会づくりができるのか、日本人は考えていかなければなりません。
訪日客による観光が、買い物だけでなく、文化体験に重きが置かれるようになる中で、また、旅行先が都心だけでなく地方へも広がっていく中で、異文化とのコミュニケーション力を鍛えていくことが、ますます重要なテーマとなっています。言葉だけのうわべのコミュニケーションではなく、文化や価値観、個人の生育環境をはじめ、相手の考えなどを分かり合うことが大切で、それがインバウンドを日本に根付かせることにもつながります。
インバウンドからビジネスチャンスを得ようとする場合にも、しっかりと腰を据えて、相手の文化を知ることが必要になってきます。やがて、インバウンド・ビジネスにおいて、勝ち組と負け組の色分けが出てくるでしょうが、勝ち組は、積極的に海外に情報発信を行っていく企業や自治体です。異文化コミュニケーション力を高めていくことこそが勝ち組への近道であることは間違いありません。

「親しい友人同士でも、いろいろとギャップを感じることがあります。意見が衝突することもあります。中国人と日本人の間に違いがあって当然。たとえ日中関係が悪くなっている時期でも、おだやかな心で対応していくことが大切だと思います。この本では、私たちの経験や中国人の考え方などを多岐にわたってご紹介していますが、それがみなさんのお役に立てば幸いです」(鄭さん・可さん)

本書には、親日家である二人の中国人女性が抱く日本への熱い思いと、インバウンド・
ビジネスを成功に導く示唆が込められています。

(電通パブリックリレーションズ インバウンドプロジェクトチーム)

電通パブリックリレーションズ (著), 電通公共関係顧問 鄭燕 (著), 日中コミュニケーション 可越 (著)
宣伝会議