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ミニマリスト入門書
持ち物を必要最小限にとどめるミニマリストという生き方は、人々の生活を豊かにします。モノを減らすことによって周りのノイズが消え、自分にとって本当に必要なこと、大切なことが何なのかが見えてきます。モノへの追求から距離を置くことで、改めて自分にとっての幸せが何かに気付かされる1冊です。
ぼくたちに、もうモノは必要ない。 - 断捨離からミニマリストへ
ミニマリスト?
2枚の写真とも、実は同じぼくの部屋。 「モノが捨てられず集めてばかり。 10年間引っ越せず、生き方まで停滞。 そんなときにぼくが出会ったのは、
モノを自分に必要な最小限に減らす 「ミニマリスト」という生き方。
「汚部屋からミニマリストへ。 モノを減らすと、なぜかぼくまで変わった。
ミニマリストへの道
1.冒頭の汚部屋はなんとか脱出。 お気に入りのモノも揃えながら、片 づければきれいな普通の部屋。
2.本はすべて処分。机も椅子も手 放してかなりすっきり。ここで止まればシンプルライフ。
3. マットレスも、テーブルもテレ ビも手放した。小物入れがテーブル。修行僧気分で生活する毎日。
こんな部屋に住んでいた
1,6畳の部屋になぜかソファが2つ。服を脱いでは散らかし、こんなアート作品が誕生する事態に。
2.汚れたままの机でビールを飲み、お菓子を食べながらゲーム。こんなことでは太るはず。捨てな!
3. アンティークのカメラ、よくわからないランプなどをオークションで買い集め喜んでいた時期。
4.廊下一面の本棚。CDとDVDも買えるだけ買い揃えていたが、残念ながら自分の身にならなかった。
Case1 ミニマリストのモデルハウス
10年ぶりの引っ越しでぼくが選んだのは「何の変哲もない」1Kの間取り、20mの部屋。 1人暮らしミニマリストのモデルハウスにするべく、何も置かずただの「部屋」にしている。
寝るときはこんな感じ。ミニマリスト御用達のアイリスオーヤマの 「エアリーマットレス」。太陽の光で、朝起きるのすら楽しみになる。
自炊もするけど、食器もミニマルに1人分。よく使うものだけ。 全部洗っても、時間なんてかからない。形もミニマルなものばかり。
クローゼット。ダウンジャケットから、スーツまで。白シャツを中心 にスティーブ・ジョブズみたいな「私服の制服化」を目指したい。
ラックなんて置かない、リンスもない。ただ 液体の石鹸で全身を洗う。お風呂あがりは、 手ぬぐいで全身を拭く。何の問題もない。
アブラサスの「薄い財布」に、家と自転車のカギ をつけている。この写真を撮っているiPhoneを ポケットに入れて、どこでもふらっと出かける。
Case2 ミニマリスト オリジネイターの部屋
ミニマリストブームを牽引した立役者の「人、肘さん。 「禅」を感じさせるシンプルな部屋に最新のデジタルガジェット。
この部屋に多くのミニマリストが影響を受けた。
Profile 肘(ひじ)。現役証券ディーラー。漫画と、ももクロに精通する。2012年頃よりブログを開設、ミニマリストブロ ガーの草分けの1人、ミニマリストブームを牽引した。 ブログ「物を持たないミニマリスト」minimarisuto.jp
廊下には何も出さず、ゴミ 箱も置かない。徹底したミ ニマリストぶり。冷蔵庫や 炊飯器、電子レンジ、必要 なモノだけが部屋にある。
肘さんの紹介で、ミニマリス ト御用達となった「エアリー マットレス」。たたんだ上に、 枕を乗せれば「マットレスソ ファ」の完成。
床に何もないので、場所 をとるボードゲームだっ て友達と楽しめる。団さ んおすすめの「カルカソ ンヌ」をプレイ中。
あまりにもガランと したクローゼット。 普段はしまわれてい る「Surface Pro」 と折りたたみチェア を出せば立派な書斎 が出現する。
SONYのヘッドマウントディ スプレイをつけた村さん。テ レビは捨てても、レコーダー 経由で番組を楽しめる。ホ ラー映画も大迫力に。
Case3 2人で作る 心地よい部屋
夫婦でミニマリズムに取り組んでいるおふみさん夫妻。 78m2→44m2への引っ越しをきっかけに130kgのモノを処分。 お気に入りのモノを大切にしつつ、ミニマルライフに取り組む。
Profile
夫婦2人揃ってミニマリスト。家を建てる直前、 持たない暮らし、ミニマリズムに目覚める。妻の おふみさんのブログ『ミニマリスト日和』mounthayashi.hatenablog.com Instagram(@ofumi_3) 旦那のteeさんのブログ『遅れてきたミニマリス ト』minimaltee.hateblo.jp
すっきりした和室にも 「sou・sou」の手作り掛 け軸でアクセントを。賃 貸でも「自分の家、陣 地」感が増したという。
「ほぼ日手帳」に断捨離したモノな ど絵日記をつけ、ブログにアップ。 配色、手の込んだ構図など、見てい るだけで楽しくなる絵日記。
友人などからのプレー ゼントは最小限にし、 ながらも大事に配 置。鳩時計、犬の置 物、ウクレレ。過剰 すぎず、なさすぎず のバランス。
リビングの壁。こちら にも「ミナペルホネ ン」の手ぬぐい。シン ブルな時計を配置、か わいいながらに禅の庭 のような空間の妙。
Case4 家族で暮らすミニマルライフ
もはや家具メーカーのショールーム。 お子様2人、4人家族でもここまですっきりと暮らすことができるという、見本のような家。掃除が行き届き、落ち着ける理想の住まい。
Profile
やまさん。夫と、子ども2人の4人家族で暮らす、家庭 持ち最強ミニマリスト。DIY、自作の洋服なども駆使し て、美しく落ち着ける住まいを追求。ブログ『少ない物 ですっきり暮らす』yamasan0521.hatenablog.com
庭も最小限の植物だけですっきりと。 目隠しとしても使える「トネリコ」が 植えられている。板壁も、やまさんの 手による自作の品。
かつて家族の「図書室」として使って いたスペースにも、何もない。何もな いからこそマルチスペースとして何に でも使えるという。
必要最小限に絞られ たインテリアが家族 の団欒を作る。イン テリアの色味も、目 に優しいものだけに 絞った「色のミニマ リズム」。
やまさんが着る、夏服のラインアップ 8枚。服の数も色も絞った、服のミニ マリズム。アイロンがけも、やまさん の大切な時間になる。
寝室として使用している和室。収納を 開けても、真っ白に統一された収納が お目見え。夫婦でも、お互いのモノに 干渉しないのがルールだとか。
Case5 世界一周できるミニマル・バックパック
伊藤光太さんが4年の試行錯誤の上、集めた「世界対応」の装備。 これさえあれば、世界一周しても困らないという厳選された持ちモノ。
バックパックひとつで生きていける。
Profile 伊藤光太(いとうこうた) Mac片手に世界中で音 楽を作りだす、若き冒険派ミニマリスト。持ちモ ノの最終リストはブログで要チェック。 ブログ『Minimalist Music Producer』 minimalist-music-producer.com
1MacBook Pro Mac 1台あれば、もはや 音楽は作りだせる。世界各 地で音楽を作ることが、伊 藤さんの仕事
2 ソーヤーミニ 高性能なポータブル浄水 器。有害な病原菌を除去。 汚れた水でもこれさえあれば安心して飲める
3 グラナイトギアのポーチ グラナイトギアのトレイル ワレット。軽くて丈夫なナ イロン製ポーチ。サブの貴 重品入れで使用
4mont-bellの寝袋 こちらはハンモックでは難 しい寒い場所で使用する寝 袋。「Down Hugger 800 #3」というモデル
5 Hennessy Hammock テントとハンモックがこれ ひとつで。引っ掛ける場所 さえあれば、どこでも寝床 へ変身する優れモノ
6 ヘッドランプ ブラックダイヤモンド社製] のヘッドランプ。暗い場所 を照らすだけでなく、ラン タン代わりにもなる
7 スパイベルト ベーシック 身体に巻きつけて使用す る、伸縮自在なベルト。貴 重品はどんなときでも肌身 離さず、が基本
8 Sony MDR-1ADAC こだわりのヘッドホン。デ ジタル信号のままデータを やり取りし、クリアな音が 聞こえるハイレゾ対応
9 iPhone 5S & LOKSAK 多機能なiPhoneは手放せな い。LOKSAKという60m防水 のケースに入れれば、どこ へでも持ちだせる
10 Sony a NEX-5N Sonyのデジタル一眼レフ カメラ。伊藤さんはSIGMA 30mm F2.8 DNというレン ズをつけて使用
11Amazon Kindle 言わずと知れた電子書籍端 末。コストパフォーマンス に優れた、スタンダードモ デルを選択し
12シュマグ(アラビアスカーフ) ストールだけでなく1枚で マスク、帽子、タオル、緊 急時にはろ過器になるとい う多機能なシュマグ。
13 洗濯物干しロープ | SEA TO SUMMITの便利な 物干しロープ。コンパクト になる上、洗濯物がずれな い仕組みになっている
14パスポート パスポートは常に持ち歩 く。緊急用のドルと一緒 に、これもLOKSAKに入れ て保管。最も大切な1品
15レトルト食品 いつもの「どん兵衛」だっ て、無駄なゴミのでないパ ウチ使用で。ゴミもミニマルに
16 レザーマンのマルチツール LEATHERMAN SQUIRT PS4 というモデルを愛用。はさ み、ナイフ、やすりなど機 能充実のツール
17 充電器&電源ケーブル 大切なデジタルガジェット の電源は、シルナイロン素 材のイーグルクリークの ポーチで大切に守る。
18 エマージェンシーブランケット 万が一のときにも、肌寒い ときにも使えるブランケッ ト。SOL社製でガサガサし ないしなやかさがある
19 BOSE Sound Link Mini Bluetoothスピーカー。音 楽を生業とする伊藤さんに は欠かせない1品。高級コ ンポを凌駕する音質
20 変換プラグアダプター 海外で必須なプラグアダプ ター。ミニマルなデザイン の無印良品のアダプターを セレクト
21MOLESKINEノートブック 他の旅行者にメッセージを もらったり、日記を書いた り、いまも欠かせないアナ ログのノート
22 MOLDEXO 最高レベルの遮音値を提供 する耳栓、Goin’Greenとい うモデル。あらゆるノイズ もミニマルに
23ポケットソープ SEA TO SUMMITのポケッ トソープ。シート状で、使う分だけ取り出せる。これ で簡単に洗濯できる
24トラベルキットパック FMラジオ、爪切り、ライ ターなどグルーミング用 品、小物を機能的に収納。 梅肉エキスもおすすめ
本の構成について
1章では、ミニマリストとは何なのか、その定義について考え ています。次にここ数年のうちになぜミニマリストが生まれたのかその理由を探ります。
2章では、逆に、どうして今までこんなにモノを増やしてきた のか? 人の習性や本質的な欲求とからめ、増えすぎた「モノ」 が持っている意味を掘り下げます。
3章では、具体的にモノを減らすための心構え、テクニックを ルール形式でまとめています。数々の捨てるための方法、その集 大成をここにまとめたつもりです。さらに捨てたいミニマリスト 向け追加リストとミニマリストが陥りやすい「捨てたい病」の処 方箋も、ここにまとめています。
4章では、モノを最小限に減らしたことで、ぼくが変わって いった変化について書いています。単に減らしただけでなく、 「最小限」に減らしたことで変わるポジティブな側面、減らした ことで見えてきた「幸せ」について、心理学の成果と合わせなが ら、考察します。
5章では4章で考えたぼくの変化がなぜ「幸せ」につながった のか改めて考えました。
ミニマリズムについて理解を深めるためには最初から読んでい ただくのがよいですが、それぞれの章は個別に読むこともできま す。3章だけ読んでいただいても、モノを減らすためには、きっ とお役に立てるはずです。
本書では、1自分に必要な最小限にすること、 2大事なもののためにそれ以外を減らすことを「ミニマリズム」。
そうする人のことを「ミニマリスト」と呼んでいます。
目次
本の構成について
はじめに
第1章
なぜ、ミニマリストが生まれたのか?
誰もが最初はミニマリストだった
ミニマリスト以前のぼくの1日
ミニマリストのぼくの1日
ぼくが捨てたもの
ミニマリストになった理由
日本人はみんなミニマリストだった
逆輸入されたミニマリズム
ミニマリストの定義とは?
ミニマリズムは「目的」ではない
究極のミニマリストは一体誰か?
断捨離、シンプルライフ、ノマドワーク
到底手に負えない情報量
「人間」は5万年前のハードウェア
ぼくは、ぐるぐるしている重いパソコン
ぼくらはスマホで何でもできる
モノを減らすためのモノ
シェアする文化の浸透 「モノ」に殺されるリスク
第2章
なぜ、モノをこんなに増やしてしまったのか?
欲しかったすべてのモノを持っていた
「慣れ」という毒
なぜ人は新しいモノばかり求めてしまうのか?
なぜ少女はおもちゃの指輪で満足できなくなるのか?
W杯で敗れた本田圭佑をどうやって慰めるか
優勝の喜びが続くのは3時間?
ビル・ゲイツは6回ご飯を食べられるか?
50倍の価格のApple Watchの機能とは?
未来の感情は予測できない
ジャケットを10回目に着たときの喜び
石器と土器は「必要」なモノだった
「自分の価値」を伝えるためのモノ
誰でも「孤独」アプリがインストールされている
猫と犬の孤独
あまりに多すぎる自殺者
すべては「自分の価値」を感じるために
自分の価値を手っ取り早く伝える方法
内面をモノで伝える
自分とイコールになったモノ
本棚を自分だと思い込んだぼく
自分を損なうモノ
第3章
捨てる方法最終リスト5!
さらに捨てたい人へ追加リスト5!
「捨てたい病」への処方箋
第4章
モノを捨て、ぼくが変わった2のこと
時間ができる
生活が楽しめる
自由と解放感を感じられる
人と比べなくなる
人の目線を恐れなくなる行動的になれる
集中力が高まる
自己に徹する
節約だってできる
エコにもなる
健康になれる
安全である
人との関係が変わる
今、ここを味わえる
感謝できる
第5章
幸せに「なる」のではなく「感じる」
「幸せのお手本」を捨てる
幸せは50%遺伝で決まる
環境は0%しか影響しない
幸運にも不運にも人は慣れる
幸せに「なる」ことはできない
「なる」のではなく「感じる」幸せ
幸せは自己申告制
ミニマリストになって変わった40の行動
おわりに マキシマムな謝辞
はじめに
モノが少ない、幸せがある。 だから、ぼくたちに、もうモノは必要ない。
この本で伝えたいことをミニマル(最小限)にまとめるとこうなる。 ぼくはモノが少ないことのすばらしさを、この本で伝えたい。
この本で伝えたいことと、今の「幸せのお手本」はまるで逆だ。とにかくたくさん持つ ほど幸せにつながる、将来何があるかわからないから、できるだけ蓄える。
モノを買うのでも、何でもお金で解決できるから、次第に人を持っているお金で判 るようになる。「お金さえあれば、何でも買える。……そう、人の気持ちだって買えるじ ゃないか、まるでモノみたいに。人の気持ちが買えるなら、幸せも買えるだろう。だから 稼ごう。ぼくだけ割を食うのはごめんだ。ぼくが稼ぐために、みんなに買ってもらおう」。
「ぼくのことを少しだけ。ぼくは3歳の男性で、独身。結婚経験はない。出版社で編集者 として働いている。0年住んだ東京都目黒区の中目黒(「住んでる場所? 中目黒」って ただ答えたかった)から、最近引っ越し、品川区の不動前というところに住み始めた。家 賃は6万7千円(前の家から2万円下がった)。貯金は引っ越しでほぼなくなっ(以下略)。
結婚もしておらず、いい年の割に大したお金も持っていない。ぼくのことを、この負け 犬が!と思う人もいるだろう。ともかく、ムダなプライドだけはあった以前のぼくなら、 とてもじゃないけど恥ずかしくて人に言えなかったことばかりだ。今は、かなりどうでも いい。なぜかは簡単で、こんなぼくでも、充分幸せだからだ。
10年前にぼくがどうしても出版の仕事がしたいと思ったのは、お金やモノでなく、価値 観自体を問える仕事がしたいと思ったからだった。だけどその初心は次第に失われていく ことになる。出版業界は斜陽産業だから、存続のためにはとにかくまず売れる本が必要だ。 売れる本を作らないと、価値のある本を出したくても、そもそも本を出すということ自体 ができなくなってしまう。そんな状況を目の当たりにし、ぼくは徐々に「大人」になって いった。出版を志した初心の気持ち、熱い気持ちはすっかり冷え込み、ぼくはついに屈したのだ。誰もがなんとなく思っている、「まあ、何だかんだで……『お金』だよね」とい う価値観に。
モノをたくさん捨てることでその価値観は、ぼくの中で完全にひっくり返ってしまった。
ぼくたちの社会で長期政権についているのは、自民党ではない。その後ろにある「お金 党」と「モノ党」と「経済党」の連立政権だ。その連立政権はあまりに蜜月で長期にわた っているので、もはや政権だとすら思われていない。当たり前の大前提になっているので、 疑うこと、もっと言えば意識することすら難しい状態だ。 連立政権が長らく座るイス。ぼくはまず、「モノ党」党首が座るイスに目をつけこう言 う。「ごめん、そこに座るの、1回だけ代わってもらってもいい? だめだったらまた座 ってもらっていいから!」。
持ちモノを自分に必要な最小限にする、ミニマリスト (最小限主義者)という生き方。 その生き方を通して見えてきたのは、単に部屋がスッキリして気持ちがいいとか、掃除が しやすいとか表面的なメリットだけじゃなく、もっと本質について。つまりどう生きるか、誰もが求めてやまない「幸せ」を、自分の頭で考えなおしていくことだった。
ぼくはモノをたくさん捨てた。 そして今、毎日幸せを噛みしめながら、生きられるようになった。 ぼくはモノを捨てることからスタートして、なぜか前より幸せを感じている。
誰しもが幸せになりたいと願い、生きている。毎日勉強に、スポーツに、仕事に、育児 に、趣味に励む。それは根本的には幸せになりたいと考えているからだ。他人から見れば 一見過酷で、孤独で、不幸を選択しているように見えても本人にとっての幸せを追求した 結果だ。人を突き動かしている根本のエネルギーは幸せを求めること。
今までぼくもご多分にもれず、モノを溜め込み、それが自分の価値、ひいてはぼくの幸 せにつながると考えていた。冒頭の汚部屋の写真を見てもらえばわかるけど、ぼくはモノ が大好きで、何も捨てられないタイプだった。ひたすらにモノを増やしたいタイプだった。
だがモノを持っていたぼくは、人と比べてばかりいて、みじめだった。自分がすべきことがわからず混乱ばかりしていた。何も深く考えられず、時間をムダにしていた。どうし ても、と自分で選んだはずの職業を後悔し始めてもいた。お酒に逃げ、女性に迷惑ばかり かけていた。自分はこの程度の人間だと、ただすべてに慣れていくことしかできなかった。
以前のぼくの様子はこうだ。汚部屋はなんとか脱出できた。週末に彼女が来ることにな ったら、片付けをし、見える部分だけの掃除をすれば、それなりに見栄えのする部屋にな る。センスがいいお気に入りの小物もバランスよく配置し、間接照明も効果的なつもりだ。
しかし普段は、収まりきらず本棚から溢れた本が、部屋のそこかしこに積まれている。 ほとんどがいつか読もうと思ったまま、ペラペラめくってみただけの本。借りたまま気が 乗らず長く返していない本たち……。
押入れを開けられては困る。かつてのお気に入りだった服がぐちゃぐちゃに詰め込まれ ているからだ。久々に着てみようかと引っ張りだして体に合わせてみるが、やはり外に出 かけるほどの勇気は出てこない。着た回数も少ないし、高かったし、天気がいい日に洗濯 してアイロンをかければ、いつかはうまくコーディネートできるかもしれない。
で投げだしたままの趣味の品々が部屋には転がっている。ホコリをかぶった入門用 のギターとアンプ。落ち着いたら手をつけようと思っている英会話の教材。すばらしいア ンティークのカメラにはフィルムを通したこともない。
ひとつの興味が続かないせいか家ですることがない。録画した『アメトーーク!』を見 終わったら、スマホでパズルゲームでもやろうか、いい加減やめたいけれどコンビニに行 って、またお酒をあおろうか。
人と比べてばかりいた。
大学時代の友人が住んでいるのは東京の埋め立て地にある高級マンション。きらびやか なエントランス、ダイニングには趣味のよい北欧家具と食器がならぶ。ぼくはいやらしく 家賃を頭の中で計算しながら、温かいおもてなしを受ける。友人は大手企業に入社し、安 定した高収入。社会人になって間もなく、映画の趣味が合う美しい彼女と結婚し、子宝に も恵まれた。おしゃれな服を身につけた赤ちゃんは本当にかわいい。大学では大差なかっ たのに、何が自分とこの友人を隔てていったのだろう?
真っ白なフェラーリのオープンカーが交差点をこれ見よがしに走り去っていく。ぼくが 借りているマンションが 2つは買えるだろうか? 友達から5千円で買い取った自転車の ペダルに片足をかけながら、消えていく車を見つめるばく。
そんな状態から、一発逆転の淡い期待を抱き、toto BIGを毎週買う。 この収入と貯金ではとても将来を考えられないと、彼女と別れたこともある。 そして、このすべての劣等感も妬みも巧妙に隠し、何も感じていないように振る舞った。 はっきり言って、モノを持っていた、かつてのぼくはクズだった。
モノを捨てて、本当によかった。 ぼくははっきりと、違う人間になり始めている。
おおげさに聞こえるかもしれない。 誰かに言われた。「モノを捨てただけ」。 確かにぼくは捨てただけだ。 まだ何も成し遂げていないし、人に誇れるようなことは何もない。
だけどこのことだけは、胸を張って言える。 ぼくはモノを少なくして、毎日幸せを感じられるようになった。幸せが何なのか、少し ずつわかり始めてきている。
かつてのぼくのようにみじめで、自分を誰かと比べてばかりの人、つまり自分のことを 不幸だと思っている人にはモノから一度離れてみることが、とにかくおすすめだ。最初か らモノに執着がない人や、モノのカオスの中から宝物を見つけられる天才はいる。だけど、 ぼくが考えたいのは、「普通」の人が、もっと「普通」の幸せを感じられるような在り方 だ。誰しもが幸せになりたいと願っている。だが、そう願って手にしたモノは、ほんのわ ずかの間しかぼくたちを幸せにしてくれない。 ぼくたちは幸せについて、あまりに無知である。
増えすぎたモノを減らすことは、幸せについてもう一度、考えてみること。 これもおおげさに聞こえるだろうか。
けれど、ぼくは本気でそう思っている。
epigraph
われわれは、幸福になるためよりも、
幸福だと人に思わせるため
四苦八苦している
ラ・ロシュフコート
お前の仕事はお前じゃない。
お前の銀行残高はお前じゃない。
お前はお前が乗り回している車じゃない。
お前の財布の中身はお前じゃない。
そのくそったれなブランドも、
お前とは一切関係がない。
タイラー・ダーデン『ファイトクラブ』
幸福とは、望んだものを
手に入れることでなく、
持っているものを、
望んでいる状態のことである
ラビ・ハイマン・シャハテル