裁判所ってどんなところ?:司法の仕組みがわかる本 (ちくまプリマー新書)

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裁判の基礎知識が身に付く

裁判員制度が導入され、いつ誰に通知や呼出状が届くか分からないようなこのご時世で、裁判に関する基礎知識はあって損はありません。本書では、司法制度の仕組みや、裁判について深く理解することができます。内容は、比較的専門性が高く、司法に関心のある方にとっては非常に興味深いものになっています。難解ではないので、初学者にとっても有益な1冊です。

目次

第一章 日本の裁判所はいつからあるか
1 「遠山の金さん」「大岡越前」は裁判所の人?
2 とても歴史の浅い日本の裁判所
3 裁判所「裁判をするところ」
「裁判権」と「司法権」どこがどう違う?/裁判を受ける権利
4 裁判所の日本近代史
初代法務大臣を死刑に/調味料を欠いた五目ずし/立憲主義の成立と裁判所のその後/戦後大きく変わった裁判所
コラム1 日本人の伝統的意識とのギャップ

第二章 裁判所の中はどうなっているか
1 法廷ってどんな場所?
法廷の見取り図/法廷内の決まり/公開の場としての法廷/弁論の場としての法廷/真相解明の場としての法廷
2 法廷のほかには何がある?
裁判官は普段はどこにいるか/結論はどこでどうやって決まるか/法廷外の裁判手続
3 裁判官ってどんな人たち?
日本の裁判官はキャリア・システム/裁判長・右陪席・左陪席の順序/裁判官の女性比率/法服を着ない裁判官たち/裁判官の給料はどれくらい?
4 裁判官以外の裁判所にいる人たち
書記官と事務官/速記官、執行官、廷吏、法廷警備員/家庭裁判官と調停委員/各種委員と審判員、そして裁判員
コラム2 意外に多彩な裁判官の素顔

第三章 裁判所にはどんな種類があるか
1 「最高、高等、地方、簡易」——縦の関係
各県の地方裁判所と八つの高等裁判所/三審制の審級図/三審制とは裁判を三回やり直すこと?/最高裁判所の役割——司法の流動性/最高裁判所判事にはどういう人がなるか/最高裁事務総局とは何か/簡易裁判所の役割/特別裁判所の禁止
2 「民事、刑事、家庭裁判所」——横の関係
裁判所の民事部と刑事部/民事と刑事の違いとは?/行政裁判所とは何か/特殊な家庭裁判所の位置づけ/微妙な「家裁」の仕事/漫画『家栽の人』/家庭裁判所の役割——裁判による福祉
3 全国に散らばる支部と簡易裁判所
実は身近なところにある裁判所/弁護士なしでできる少額訴訟
コラム3 少年法と家庭裁判所

第四章 憲法は裁判所についてどう定めているか
1 司法って何をすること?
司法とは——法を適用して事件を解決すること/証拠って何?——事実の痕跡/『ヴェニスの商人』に見る法の適用——「司法」を誤解した物語
2 三権分立と裁判所
「権力を弱める」という考え方/行政の裁判所への影響力——司法行政権の問題/法務省・検察庁・裁判所の関係を整理すると/憲法が認める/行政機関の裁判/裁判所が裁判しない方が良い場合がある?/裁判官の身分保障/裁判官はみな平等——上司も部下もない世界
3 法と良心にしたがう
「法の番人」としての裁判所/「法治国家、法律、民主主義」の三位一体/国家法と自然法/裁判官の良心とは——悪法にもしたがうのか?
4 基本的人権と違憲立法審査権
「人権の砦」としての裁判所/「法律の留保」/近代憲法の原理——国会中心の法治国家/現代憲法の原理法治国家から司法国家へ/違憲立法審査って何をすること?/憲法裁判所との違い/「法の支配」の変化/基本的人権と自然法
コラム4 「人権宣言」「立憲主義」と裁判所

第五章 裁判所という世界の美しい理念
1 裁判所と真理——「論理に基づく真実の裁き」
紛争を論争に変換/民主主義モデルと真理モデル/「投票で真理は決まるか」
2 裁判所と人権——「人権を保障し自由と平等を実現する」
人権と国民主権の関係/国民主権と裁判所/「民主的専制」「多数者支配」とは何か/司法の積極主義と消極主義/日本の人権救済のあり方
3 裁判所と正義——「徳・善・正義の要請」
犯罪被害者の訴え「正義を示してほしい」/公害問題で被害住民を救済-無過失責任へ道を開く/医療問題では患者側に——因果関係のハードルを外す/家族関係では旧弊打破——尊属殺人罪違憲判決/投票価値の平等と違憲判断/集会・デモの自由には消極的/公務員の労働基本権では二転三転/自衛隊と憲法九条では現状追認/様々な社会正義の実現
コラム5 裁判所をめぐる「民主主義的原理」と「自由主義的原理」

第六章 裁判所をめぐる理想と現実のギャップ
1 民事裁判は書面主義「法廷は三分で終わり」
民事司法は中身より事件処理件数/極端な書面主義は憲法違反の疑いあり
2 刑事裁判は検察依存「九九・九パーセント有罪」
刑事裁判官と民事裁判官の大きな違い/日本の刑事司法は中世並み?
3 憲法訴訟は判断回避「違憲はいけん」
裁判所の違憲判断の実績/国際平和と戦争放棄から手を引く
4 これからの裁判所を展望する
新しい公共世界の主役/社会の中で変わりつつある「裁判の真実」「裁判所の正義」
コラム6 集団的自衛権容認で国家緊急時の人権保障はどうなるか

あとがき