トコトンやさしいドローンの本 (今日からモノ知りシリーズ)

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ドローンの基本がわかる入門書

ドローンは、近年注目を集めており、様々な産業での活用が期待されています。本書では、ドローンの歴史からドローンの市場、法規制、ドローンの種類、飛行の仕組みと制御法、実際の操縦やメンテナンスなど幅広い基礎的な知識をまとめています。

鈴木 真二 (監修), (一社)日本UAS産業振興協議会 (編集)
日刊工業新聞社

はじめに

ドローンという言葉が一般的になったのは、2013年12月にAmazon.comがドローンを使った配送のデモンストレーション・ビデオを発表したときでした。小さな模型ヘリコプターのような無人航空機が注文した商品を自宅の玄関先に届ける映像は衝撃的でした。
ドローンはそもそも第二次世界大戦中に標的用無人航空機(ターゲット・ドローン)として開発され、その後も軍用の無人航空機を指すことが多くありました。現在のような小型無人航空機がドローンとして認知されだしたのは、2010年にフランスで発売されたAR Droneという複数のプロペラで飛行するマルチコプター型ホビー機あたりからで、その後、中国のDJI社のドローンが空撮用小型無人航空機として世界中に普及しました。マルチコプターが愛好家用のラジコン模型機の枠を飛び出し、一般の人に受け入れられたのは、電動駆動用のバッテリー、ジャイロや加速度計などのセンサ、WiFiなどの通信機器など、主要なコンポーネントがスマートフォンと共用でき、安価で、しかも簡単に飛ばすことができるためでした。
2014年にドローンに関係する組織や人のコミュニティーとして私どもは一般社団法人日本UAS産業振興会(略称JUIDA)を設立しました。UASは無人航空機システムを意味します。当時は、ドローンに関する基本的な法律もなく、安全に利用するための自主的なガイドライン作りから活動を始めました。こうした動きは、2015年4月に首相官邸屋上でのドローン落下事件で、状況が一変しました。その年に、航空法が改正されドローンを利用する基本的な規則が定まり、安全上認められる範囲を超えた飛行には申請して許可を得ることが必要になりました。
ドローン利用の規制が強められたとはいえ、「空の産業革命」ドローンには大きな経済波及効果が期待されています。安倍首相は、2015年11月に、「早ければ3年以内に小型無人機(ドローン)を使った荷物配送を可能にする」と発言し、規制だけではなくその活用にも政府が取り組むことを明言し、事実、翌12月には「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が設置され、議論が定期的に行われています。JUIDAでは、ドローンの操縦法、基礎知識、安全管理手法を学ぶJUIDA認定スクール制度を発足させ、技能と知識を備えた人材養成を開始しています。
本書では、ドローンの基礎的な項目を、その歴史から始め、一般的な飛行の原理やドローン固有の技術と操作法といった技術的内容、日本のそして世界的なルール作り、活用方法など、ドローンを取り巻く話題を網羅しました。ドローンは、従来の航空技術、電気電子技術、通信技術を安価で簡単に利用できる小型無人航空機というかたちで融合した空飛ぶロボットです。この飛行ロボットをどのように利用すればよいのか、災害現場での空撮や物資輸送、大規模な建造物の点検のような公共的な利用は、私たちが安全で安心な生活を送るために、映画や番組でのダイナミックな空撮は私たちの生活を活気あるものに、物流や通信での利用は新たな産業振興のために推進されるでしょう。こうしたものは受け身の利益にすぎません。大空の下でドローンを飛ばせば、鳥のように空を飛びたいという太古からの人類の夢をいとも簡単に叶えてくれます。こうした体験は、皆さんの人生観を変える、ドローンの最大の利用法かもしれません。新たな技術である無人航空機ドローンをトコトン知るために本書を利用いただきたいと思います。
2016年10月

鈴木真二 JUIDA理事長

鈴木 真二 (監修), (一社)日本UAS産業振興協議会 (編集)
日刊工業新聞社

目次

第1章 ドローンとは何か
1 ドローンの種類「マルチコプターが多く普及」
2 ドローンの歴史①「標的機から始まったドローン開発」
3 ドローンの歴史②「ドローンの産業利用は農薬散布から始まった」
4 主なドローンメーカー「ベンチャー企業が群雄割拠する」
5 ドローンの市場予測「急成長を遂げるドローン市場」

第2章 ドローンの仕組み
6 飛行の原理「翼型は上下の圧力差で揚力を得る」
7 水平飛行とホバリング「安定な飛行には力のつり合いが重要」
8 飛行機の操縦「飛行機は、推力・エルロン・エレベーター・ラダーで操作」
9 ヘリコプターの操縦「ローターのピッチ角を変えて揚力を操作」
10 マルチコプターの操縦「複数のプロペラを多様に回転させて移動」
11 ドローンの機構「基本的な遠隔操作用の機器」

第3章 ドローンの要素技術
12 プロポの仕組み「遠隔操作により、ドローンに指令を与えるのがプロポ」
13 受信機の仕組み「プロポから電波で遠隔操作、指令を受け取るのが受信機」
14 モーターの仕組み「小型高出力のモーター」
15 プロペラの仕組み「プロペラのピッチで推力が決まる」
16 バッテリーの仕組み「ドローンに必要な電力のエネルギー源」
17 有線給電/無線給電「ドローンの飛行時間を拡大するための方策」
18 スピコンの仕組み「ドローンのモーターを制御」
19 フライトコントローラーの仕組み「姿勢安定と航法を司る心臓部」
20 機体の構造「ドローンの機体の構造」
21 ジャイロ、加速度計の役割「ドローンの姿勢を安定化させるために必要なセンサ」
22 コンパスの役割「ドローンの向いている方向を検出するのがコンパス」
23 GPSの役割「ドローンの航法はGPSベースが主流」
24 高度計の役割「ドローンの高度は、GPSのほかに、高度計で補填されている」
25 視覚センサの役割「ドローンに視覚センサを搭載し可能性が拡大」
26 無線技術「ドローンの飛行には地上と繋ぐ無線技術が不可欠」
27 無線通信の将来「ドローンの飛行を広範囲に拡大するキーテクノロジー」

第4章 ドローンの飛ばし方
28 プロペラの調整と組立「バランスが重要なプロペラ」
29 バッテリーの特徴「電圧、容量、放電能力が重要なスペック」
30 カメラのセッティング「ドローンでは比較的簡単に空撮が可能」
31 飛行前の調整「起動前のさまざまな点検が重要」
32 航空気象「天候や周囲の風の変化に常に注意を払う」
33 飛行に注意すべき場所「安全に飛行を楽しむために」
34 使用する周波数帯「電波帯をきちんと把握」
35 点検整備「飛行後点検と日常点検」
36 離着陸の練習「ドローンを傷つけないために」
37 上昇・降下、ホバリングの練習「基本操作をきちんと覚えよう」
38 前進・後退、左右の移動の練習「移動を自由に行う技術を身に付けよう」
39 プライバシーへの配慮「リスクと伴うため十分な配慮が必要」
40 目視範囲とドローンの見え方「VLOSで飛行させる」
41 飛行中に発生するトラブル「トラブル要因を把握」
42 ドローンの墜落「事故発生時の対応」
43 高度な飛行「自由自在の操作できるようにしよう」
44 FPV飛行「自分がドローンに乗っているような感覚」
45 自動飛行「指定したルートで指令を実行」

第5章 安全に飛ばすには
46 落下の危険性「正常な飛行ができない状態になったとき」
47 リスクの考え方「ドローンの安全な運用のためにリスク管理を行う」
48 フェールセーフの考え方「より安全側に作動する仕組みを組み込む」
49 飛行計画の立案、飛行ログの保存「飛行計画を提出する場合」
50 目立つことで衝突防止「派手な色や光で目立つ存在に」
51 バッテリーの取り扱い「小型軽量、高出力のリチウムポリマーバッテリー」
52 日本の法規制(航空法)「無人飛行機に対応した航空法が施行」
53 改正された航空法について「飛行空域と飛行方法の設定」
54 飛行許可の申請方法「国土交通省に許可申請を行う」
55 航空法以外の規制「さまざまな法律にもドローンの規制がある」
56 操縦ライセンス「各国で進むドローンの操縦のライセンス化」
57 保険への加入「ドローンを安心して運用するため」
58 安全技術(ジオフェンス、自動帰還)「ドローンの安全な航行をサポート」

第6章 ドローンの利用方法
59 空撮での利用「手軽なドローンで空撮が広がる」
60 測量での利用「土木分野で活躍するドローン」
61 農業での利用「農業のIT化にかかせないドローン」
62 物流での利用「小包などの配達で実用化が進む」
63 中継基地としての利用「電波通信網の一翼を担う」
64 点検・警備での利用「人の代わりに安全な作業を実現」

【コラム】
●ドローンレース
●マリリン・モンローとドローン
●ソーラープレーン
●美しきハリウッド女優と無線技術
●室内での自動飛行
●世界の法規制
●ドローンによる国際貨物輸送
●GPSの精度

【付録】
●各国のドローンに関連する主な支援組織
●主なオープンソース、フライトソフト
●主なドローン用フライトシミュレータソフト

参考文献
索引
監修者・著者略歴

鈴木 真二 (監修), (一社)日本UAS産業振興協議会 (編集)
日刊工業新聞社