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ドローンの革新性と悪用される懸念
ドローンはセンセーショナルな取り上げ方をされることが少なくありませんが、将来的にドローンの市場は10兆円産業になると予測されるほどの可能性を持っています。本書では、飛行の仕組みや規制、企業の動向などについてまとめており、ドローンを体系的に理解できる入門書となっています。
目次
はじめに
第一章 日本でも幕開けした「ドローン元年」
軍事技術として発達してきたドローンの歴史
誤爆で多くの犠牲者を生んだ“キラー・ドローン”
軍事技術のスピンオフによって産業に転用
ドローンの構造と技術
ドローンの公共活用
農業や映像分野で活躍する商用ドローン
ドローン・ジャーナリズムに観光PR、ラグビー日本代表も活用
アマゾンやDHLが動き出したドローン物流革命
「DIY」に惹かれて個人利用も増加
グーグル、フェイブックも参入する世界ドローン市場の規模と展望
第二章 ドローン産業の幕開け
世界の空を飛び回る中国DJI社のドローン
警察や公的機関がドローンを利用しているカナダ
意外にも後手に回っている!? アメリカのドローン事情
今後の飛躍が期待されるヨーロッパのドローン
世界最速!? ドローン開発に国家の威信をかけた韓国
ドローン産業が期待を集める最大の理由
第三章 国産ドローンの開発とドローン特区
セコムのドローンを使った警備サービス
研究責任者に聞く、警備用ドローン開発の真意
ドローン採用のもうひとつのメリット、人間の力を活かす
ドローンは総合技術、飛ぶだけでは不合格
空からの視点の追求、“ドローン以後”の可能性
FAAが世界で初めて認可、ヤマハの無人小型飛行機
日本政府のプロジェクトとしてはじまった無人機開発
ヤマハ発動機の教訓、ドローン実用化に必要なこと
ドローン特区構想・地方創生の夢
立ちはだかる法律の壁
第四章 ドローンの犯罪利用の可能性
フランス・サッカー代表ドローン盗撮事件
盗撮よりも被害が大きい?ドローンが持つ匿名性
麻薬カルテルも期待するドローン技術
ドローンが刑務所への輸送手段に
ホワイトハウスに墜落したドローン
ドローンが持つテロの危険性
市販ドローンは犯罪には威力を発揮しない
日本政府のドローン犯罪への対応
米国のドローン犯罪規制
ドローン少年逮捕の余波
これから起こりうるドローン犯罪
軍事利用シーンに見る、ドローン犯罪の可能性
一般人が犯罪を起こす可能性
第五章 日本産ドローンの未来はどうなる?
国産ドローンの開発第一人者・野波健蔵教授の歩んできた道
自律制御システム研究所が開発する国産ドローン
自律制御システム研究所の産業用ドローン
官民一体で目指すドローン大国ニッポン
ドローンは是か非か。法整備を巡る各国の動き
東日本大震災とドローン
災害用ロボットへの期待、その先鞭としてのドローン
野波教授に聞くドローン技術の未来
ドローンはどこに飛んでいくのか
おわりに
参考文献
はじめに
ドローンという言葉をよく耳にするようになった。
その名が広く一般に認知されるようになったのは、おそらく2015年4月頃ではなかっただろうか。
4月22日、首相官邸に一機のドローンが墜落しているのが見つかった。複数のプロペラを持ち、独特な機械音とともに空を駆け回る小型無人飛行機は、危険や犯罪を連想させる怪しげな飛行物として、まず広く日本社会の注目を浴びた。
ただドローンの名はすでに数年前から、ガジェット好きやラジコン愛好家など一部の人々の間ですでに広く知れ渡っていた。スタイリッシュでSF世界を連想させるような独特なフォルム、旧来のラジコンにはなかったような新機能の数々。そんな、次世代感。匂いたつ様相が、人々の心を惹きつけていたのだ。
現在、社会の相反する評価がある中で、世界の名だたる大企業たちがドローンに新たな可能性を見出し、次々と投資を加速させている。ビジネス分野においては、様々な用途で使えるであろう最新テクノロジーとして、熱狂と称賛を一身に浴びているのだ。
不安と犯罪を巻き起こす不吉な予兆として語られる一方、技術革新の新たな一幕として期待を背負うドローン。相反する評価と、賛否両論の渦。車、インターネットなど、過去に人間の生活を一変させた技術が登場した際に通過してきた道を、ドローンはいま進みはじめている。
はたして、ドローンとは一体何なのか。
ドローンが社会に与える衝撃の正体とは。
今回、本書を執筆する以前、ドローンのことを知りたいと考え、関連資料を漁ってみたことがある。ただ、ドローンに関する情報はほとんどなかった。なかったと言ったら語弊がある。情報としては存在していたが、その全体像を知ることができる書籍がなかった。それはきっと、ドローンが時代の先を行っているため、包括的に説明することがまだてきない証明なのではと感じた。
本書でドローンのことをすべて書ききれているとは到底思えない。ただ、ドローンについて少しでも知ってもらい、理解を含める足掛かりになれば書き手の冥利に尽きる。少し欲を言えば、ドローン文化が根付くのに寄与できればとも考えている。これは、同時にドローンに対する私のスタンスを告白するものでもある。
本書執筆するにあたり、国内外のドローン関係者の話を聞くことにした。その詳細については後述するが、皆が一様に話していた印象深い論点をまずここに記しておきたい。
「ドローンはロボットと人間の共生の第一幕を開く」
「ドローンの未来に必要なのは世論の同意」
本書を手に取ってくれた方々が本を閉じる際に、このふたつの論点について少しでも同意していただければ幸いだ。
本書ではまず、ドローンを取り巻いた社会の状況を整理するように努めた。賛否両論が巻き起こっているドローンという存在について、その論点を改めて整理してみようという趣旨だ。また、これから世界および日本のドローン産業が進むであろう方向を、読者のみなさんに正確に判断していただくために、できるだけ多くの情報ソースを集める作業に徹した。日本の資料はもちろん、海外の資料、また海外のドローン関係者、および直接研究に携わる人たちの声を通して、できるだけ詳細にドローンの現在地を描き出すことに務めたと理解していただきたい。
未開拓で、これから始まろうとしている新たな分野だけに、当初、どれくらいの情報が集まるか不安だったが、取材を続ける過程でドローン、もしくはドローン産業に対する新たな発見、論点を見つけることができたと自負している。特に国際的視点から日本のドローン産業を読み解くという作業はあまり成されていないので、本書がきっかけとなり議論が深まれば嬉しく思う。
なお、本書はドローンの技術を専門的に解説する、いわゆる技術専門書の類ではない。おそらく、ドローンが普及するにつれ、高名な研究者や企業、団体が発行する解説書が増えて行くだろうから、正確なドローン技術の現状については、そちらを参考にしていただいほうがよいだろう。
本書ではまず、第一章でドローンとはそもそも何なのか。現在、どのように使われているのか。今後、利用にあたりどのような可能性があるのかを概略的に見ていきたい。こちらには、すでに使われているもの、計画中のものなどを含む。各国ともに、ドローンに対する理解が少しずつ異なるが、細かい相違などはなるべく気にせず、その実態を大枠で知ることができるように整理した。
第二章では、国際市場におけるドローンについて取り扱う。欧米、アジアの国々は現在、ドローンについて何を考え、何を期待し、実際にどう動きだそうとしているのか。世界のドローン先駆者たちの声や資料をもとに、その実態に迫ろうと考えている。
第三章では、日本のドローンを産業の現状について整理した。また、ドローンを実際に現場で利用しようしている企業の研究担当者に直接取材を試みた。加えて、政府や地方自治体のドローンに関わる動きについても言及する。
第四章では、ドローンと犯罪について取り上げる。ドローンが普及するためには、決して逃れられないテーマである。ドローンの危険性は実際のところどれくらいなのか。また、これから先にその危険性が増えることはないのか。すでに世界で起こっている犯罪などを取り上げながら、未来に起こりうるであろう犯罪をシュミレーションする。終章となる第五章では、日本の国産ドローン開発第一人者である野波健蔵教授へのインタビューを通じて、日本のドローン産業の未来、またドローンそのものの未来を描いてみる。
これから先、ドローンはどこに飛んで行くのか。まずは、その歴史を振り返り、離陸地点から明らかにしていきたい。