会社のことよくわからないまま社会人になった人へ【第3版】

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会社のことをよりわかりやすく

この本では、会社の種類、会社という組織は今後はどうあるべきか、働き方改革のような課題について書かれており、理解することに至るまで必要な知識が、池上さんお得意の分かりやすい解説で書かれています。会社選びのアドバイスも書かれているので、社会人の方だけじゃなく、これから社会に出る人にもおすすめです。

はじめに

会社に就職したのはいいけれど、よく考えてみると、会社がどんな組織なのか、基礎の基礎がわかっていなかった。あるいは、これから就職活動を始めるけれど、どんな観点で会社選びをすればいいかわからない。そんな人のために、この本が生まれました。そもそも会社とは、生き物ではないのに、まるで生き物のように成長したり成熟したり、場合によっては、死んで、しまったりする、不思議な存在です。

会社にも寿命があるのです。漫然と経営していると、寿命は短いかもしれませんが、しっかりとした経営をしたり、新しい仕事を見つけたりすると、寿命はいくらでも延ばすことができます。会社の名前とやっている仕事の内容が大きく違う会社などは、途中で再生することに成功した企業かもしれません。

二〇一八年の暮れには日産自動車の経営トップだったカルロス・ゴーンCEOが東京地検特捜部に逮捕される事件が起きました。日産自動車は緊急の取締役会を開き、CEOの職を解きましたが、取締役会から追放することはしませんでした。その権限があるのは株主総会であり、その時点で株主総会が開かれる見通しは立っていなかったからです。つまり「追放しなかった」のではなく、「追放できなかった」のです。株主総会で選任された取締役を辞めされることができるのも株主総会だけなのです。株主が一番「えらい」からです。

また、日産自動車の親会社はフランスのルノーで、カルロス・ゴーンCEOはルノーから送り込まれていました。ルノーは日産自動車の株を大量に持っているので、日産自動車から多額の配当を受け取り、利益を上げていました。また、日産自動車にいろいろな経営上の指示をしてきました。株式会社の大株主とは、そういう力を持っているのです。「会社とは何か」を知っていると、こうしたニュースの意味も理解できるのです。

ニュースといえば、セクハラやパワハラ、データ改ざんなど、会社の不祥事も起きています。「ブラック企業」という言葉も聞きます。どうしてそんなことが起きるのか。会社に就職して悲しい思いをしないように、会社のことを知っておきましょう。この本が少しでもお役に立てれば幸いです。

二〇一九年 二月
ジャーナリスト 池上彰

目次

はじめに

第1章 会社の正体
会社の正体1 会社の社会的役割って、なんだろう?
会社って、いったいなんだろう?
会社は法律上の「人」だ

会社の正体2 今ある大企業はどのように生まれ、発展してきたのか?
始まりはみんなベンチャー企業だ
企業は生き物だ
企業にも寿命がある
会社は世の中が求めているものを常に考えなければいけない
会社には大きくなろうとする性質がある

会社の正体3 会社選びのポイントはあるのか?
社風の良い会社が良い会社
採用試験は会社側も選ばれている

会社の正体4 「良い会社」「悪い会社」ってあるの?
社会に役立つ会社かどうかが問われている
儲かっている会社、儲かっていない会社

会社の正体5 新しい「会社法」ができた
会社には四つの形態がある
一円で会社が作れるようになった
そもそも株式会社って、なんだろう?
株の上場とはどういうこと?

会社の正体6 「法人」って、なんだろう?
お金を儲けなくてもよい法人もある
財団法人とは?

第2章 会社の組織
会社の組織1 会社で一番偉いのは誰だろう?
一番偉いのは株主だ
社長はどのようにして選ばれるのか?
あなたの会社が買収されるかも?
ホールディングスの誕生

会社の組織2 取締役会って、いったいなんだろう?
取締役会が会社を運営する
会社の上の組織を見れば、会社の性格も見えてくる
決断のスピードが求められている

会社の組織3 アメリカと日本、経営トップにどのような違いがあるのか?
「社外取締役」って、どんな制度?
経営と業務の執行を分けるのがアメリカ型だ

会社の組織4 組織の形態にはどんなものがあるのか?
日本の会社組織は小さなピラミッドが組み合わさってできている
アメリカと日本の組織の違い
今、求められるのはどんな組織か?

第3章 会社の経営
会社の経営1 日本的な経営って、どんな経営?
終身雇用・年功序列が「安定した生活」を支えてきた
「日本的経営」が日本の目覚ましい発展を支えた
発明対価は誰のもの?
「隠蔽体質」改善が急務

会社の経営2 「成果主義」は、成果を上げたのか?
日本の給与体系はうまく機能していたのか?
成果主義は見直しの時期にきている
アメリカの大企業の多くは終身雇用だ

会社の経営3 会社のあり方が問われている
不祥事への対応で会社の本質が明らかになる
「説明責任」と「透明性」が求められている

会社の経営4 優れた経営者とは、どんな人なのか?
良い指導者、悪い指導者
「余人を以て代え難い」では会社はダメになる
自立しても活躍できる人を生み出す会社

第4章 雇用
雇用1 「就職」とは、どういうことか?
「就職」は会社との契約だ?
社員には契約を守る義務がある
仕事が終わったら、さっさと帰ろう
サービス残業は会社側が義務を怠っている

雇用2 「働き方改革」で何が変わるの?
取り組みはいつごろから?
三つの課題

雇用3 「給料」をもらうって、どういうこと?
給料は当然の対価か?
働く人のモラルを下げない給与体系はあるのか?
退職金は終身雇用という慣例を生んだ一つのきっかけだ

雇用4 男女の雇用格差は本当になくなったのか?
女性が社会に進出した
「ガラスの天井」が存在する
育児・介護休業法もあるけれど

雇用5 雇用形態はいろいろある?
おもな雇用形態
メリット・デメリットをよく考えよう
ブラック企業が問題に

雇用6 「福利厚生」って、どういう制度?
日本の会社にはいろんな手当がある
家族の形が多様化してきた
会社の保養所も姿を消しつつある

雇用7 「労働組合」って、いったい何?
「労働組合」は憲法で認められている
「ストライキ」は伝家の宝刀だ
管理職は組合員ではなくなる
もしニッポン放送に労働組合があったなら?
労働組合は会社の健康診断をしている

第5章 会社員を目指す人へ
会社員を目指す人へ1 今後、間違いなく発展する会社を見極める方法はあるのか?
発展する会社を見極める方法はあるのか?
人気企業は成熟しきった企業

会社員を目指す人へ2 辞めたくなったとき考えるべきことは?
とにかく三年我慢してみよう
会社員の先輩として思うこと
今の環境も一つのチャンスかも知れない。

会社員を目指す人へ3 「会社で働く」とは、どういうことか?
働くことは自己実現だ
目的意識を持って働こう
「会社員」であっても、会社とはまったく別の世界を持ってほしい。

おわりに