【最新 – 銀行業界を知るためのおすすめ本 – 仕事内容から社会との関わりまで】も確認する
図解で銀行業界を知る
本書は、銀行とは何か、銀行は何をしているのか、銀行員は何をしているのかなど、消費者視点での疑問に答えています。バンカー、企業の経営者・財務担当者、就活生、消費者など幅広い読者を対象とし、銀行業界の背景にある企業文化や銀行員のマインドセットも含めた全体像を、図解を含めながらわかりやすく解説しています。
はじめに
本書『イラスト図解 銀行のしくみ』の初版の発行は2008年に遡ります。その後、ほぼ毎年の重刷の際には、銀行業界の変化に合わせて、業界構造、商品、業務プロセスの変化や統計値の更新、コラムの刷新など、アップデートを繰り返し、いつのまにか第8刷となっていました。しかし、近年の金融業界の劇的な変化はすでに更新というレベルを超えていると感じ始めていました。ちょうどそんな折、日本実業出版社の編集者の方から全面改訂版の発行のお話をいただき、二つ返事でお引き受けしたのが2018年の秋です。
日本政府がキャッシュレス社会への移行を本格的に推進し、FinTechが台頭してきた時期です。世界中で、ブロックチェーン・AI・ロボットなどの技術が実用化され始め、ビッグデータの活用はビジネス上の日常になりました。メガバンクがこぞって大量の人員削減と店舗の閉鎖を発表したのも、この少し前です。ここぞとばかりに引き受けた仕事ですが、正直なところ、書き進めるにつれ、これは難しいな、と後悔し始めていました。金融業界の日進月歩の技術革新、次々と生まれる新しいビジネスと、行政の方針の変更、明日にはどう変わるかわからないような状況を文字にして残すことは大変な作業です。
本書の初版の「はじめに」を振り返ってみると、こんなくだりがあります。
「銀行業界は素朴に消費者の視点で『なぜ?』と問われることに慣れていません。理由は問わず規則には従う、ひいては、顧客にも、『規則で決まっているから仕方ありません』といってしまうカルチャーをもった業界です。本書は元銀行員で、銀行を離れてからもずっと銀行業界にマーケティング・コンサルタントとして携わってきた著者が、顧客視点で『なぜ?』への回答を試みたものです。といっても、本書の内容はその理由を肯定しようとするものではありません。理由やしくみを解き明かしてみると、顧客のために、銀行自身のために、社会のために、変えたほうがよいこと、変えられることがたくさんあることに気付きます」
さて、いまこの本を手にとった、あなたはどんな人でしょうか?自分が身をおく業界が、なんだかザワザワしている、ちょっと勉強しなければと思っているバンカーでしょうか?これから銀行との付き合いを始めようとしている企業の経営者や財務担当者、または、取引先としての銀行を知ろうというIT業界やコンサルタントの方かもしれません。銀行を就職先として考えるかどうか悩んでいる就活中の学生さんもいるでしょう。消費者の一人として利用している銀行に何かしら疑問をもたれている方かもしれません。本書では、そういった多様なニーズに対応できるように、業界の基本的なことから最新動向までを含む構成にしています。それに加えて、銀行という業界の雰囲気が伝わるよう、その背景にある企業文化や銀行員のマインドセットも含めた全体像を描くように工夫したつもりです。
「銀行とは何か」から始まり、収益、チャネル、人の働き方、商品、いままさに起きていることなどを取り上げました。テーマ別になっているので、興味のある章だけを読んでいただくこともできます。また、コラムはすべての方に是非読んでほしいと思っています。筆者は金融マーケターですので、マーケティングの基本思想である、「顧客の視点」でみたときにちょっと気になる事例をコラムとして取り上げました。
保守的で変化に乏しいと思われてきた銀行業界ですが、現在は革新的で動的な業界になった、または、なろうとしています。もし筆者がいま学生なら、迷わず金融業界を選ぶでしょう。なにしろ、これほど大きな変化のまっただ中で仕事ができる機会はめったにありません。お上の重箱の隅をつつく検査もなくなりました。銀行が本来行なうべきこと、つまり、顧客の生活の質の向上や夢の実現を経済面でサポートする仕事をイノベーティブな発想・手法で実現することができるようになったのです。
最後に本書改訂にあたり、企画していただいた日本実業出版社の皆様、情報収集やコラム執筆に協力いただいた株式会社マーケティング・エクセレンスの丹野愼太郎に感謝申し上げます。本書が銀行業界への興味をより高めるきっかけとなり、また、銀行をより社会や人々の生活に役立つ企業に変えていくヒントとしてお役に立てれば幸いです。
2019年9月
戸谷圭子
Contents
最新版 イラスト図解 銀行のしくみ
はじめに
第1章 銀行とは何か
1-1 銀行とは?
1-2 銀行の種類と役割
1-3 個人と銀行のかかわり
1-4 企業と銀行のかかわり
1-5 金融庁と銀行の関係
1-6 日銀と銀行の関係
1-7 銀行の統合・合併の歴史
1-8 銀行のグループ会社
1-9 他業種からの参入
column❶ キャッシュレス社会
column❷ 情報銀行
第2章 銀行の収益のしくみ
2-1 銀行とお金の流れ
2-2 預金と貸金からの収益
2-3 国内振込手数料収益
2-4 外国為替収益
2-5 投資信託と保険の手数料収益
2-6 クレジットカードからの収益
2-7 現在の銀行の財務体質は?
column❸ 預金が没収される
第3章 さまざまな銀行のチャネル
3-1 さまざまな支店のタイプ
3-2 支店の全国分布
3-3 支店窓口と渉外係
3-4 ATMのしくみ
3-5 コンビニATMのしくみ
3-6 ネットバンキングのしくみ
3-7 なぜ銀行は3時に閉まるのか?
column❹ お客様には保険をお売りできません
第4章 銀行の支店のしくみ
4-1 典型的な支店のつくりは?
4-2 預金窓口のしくみ
4-3 外為窓口のしくみ
4-4 融資窓口のしくみ
4-5 資産運用窓口のしくみ
4-6 支店の仕事を定めるマニュアル
4-7 IT化が進む支店
4-8 もしも銀行強盗が来たら?
column❺ 新しい銀行のかたち
第5章 銀行員のキャリア
5-1 求められる人材
5-2 支店長代理って偉いの?
5-3 銀行員のキャリアプラン
5-4 ゼネラリストになるための転勤
5-5 銀行員の給料は?
5-6 女子行員のキャリアパスの変化
5-7 新卒採用
column❻ 投資銀行は銀行とどこが違う?
第6章 銀行の本部の仕事
6-1 本部と支店の関係
6-2 企画部門の仕事
6-3 市場部門の仕事
6-4 国際部門の仕事
6-5 システム部門の仕事
6-6 事務部門の仕事
6-7 リスク管理部門の仕事
6-8 審査部門の仕事
6-9 マーケティング部門の仕事
column❼ いつの間にか借入が……自動融資にご注意!
第7章 部署別の銀行員の1日
7-1 頭取の1か月 (地方銀行頭取の場合)
7-2 支店長の1日
7-3 融資・渉外係の1日
7-4 窓口担当者の1日
7-5 本部行員の1日① 市場部門
7-6 本部行員の1日② 企画部門
7-7 本部行員の1日③ 審査部門
column❽ ゆうちょ銀行はこれからどうなる?
第8章 融資のしくみ
8-1 住宅ローンのしくみ
8-2 カードローンのしくみ
8-3 融資のプロセス
8-4 融資の種類
8-5 協会融資(マル保)
8-6 法人への経営支援
8-7 消費者ローンのしくみ
column❾ 会計ルールが「貸し渋り」「貸しはがし」を生み出す!?
第9章 さまざまな金融サービスのしくみ
9-1 定期預金の種類と金利
9-2 外貨預金のしくみ
9-3 デリバティブのしくみ
9-4 社債のしくみ
9-5 アフリカ・アジアの新金融サービス
9-6 金庫のしくみ
column➓ 高齢化時代の金融ニーズ
第10章 銀行とビッグデータ
10-1 勘定系システム
10-2 情報系システムとAI活用
10-3 銀行APIとFinTech
10-4 厳格な情報管理体制
column⑪ あなたの口座はのぞかれている
参考文献一覧
※本書の内容は2019年9月時点の情報に基づいています。