5Gの衝撃

【最新 – 5Gについて理解するためのおすすめ本 – 入門からビジネスへの応用まで】も確認する

5Gの未来像と諸問題

2020年春に始まる次世代の移動通信「5G」。従来よりも桁違いに高速な通信が可能になり、スマホやタブレットに動画など大容量データを瞬時にダウンロードできるようになります。
5Gの技術的な解説はもとより、5Gがもたらす未来像と諸問題を分かりやすく解説してあります。技術読本ではないので、気軽に読み始められる為、全ての方におすすめです。

小林 雅一 (著)
出版社 : 宝島社 (2020/1/28)、出典:出版社HP

まえがき

ケータイからスマホ、そしてIoTへ――私達の携帯端末と、それを支える無線通信技術が今、10年ぶりにして史上最大のアップグレードを遂げようとしています。2020年春に始まる次世代の移動通信「5G」。従来よりも桁違いに高速な通信が可能になり、スマホやタブレットに動画など大容量データを瞬時にダウンロードできるようになります。

既に5Gサービスが開始された米国では、現行4Gの3~50倍程度という驚異的なスピード(実測値)を記録。これまで2時間の映画をダウンロードするには平均6、7分かかりましたが、5Gでは僅か数秒から1、2分程度にまで短縮するとみられます。このため、5G時代には毎月のデータ容量制限がなくなり、使い放題プランが主流になるとの予想も聞かれます。通信料金は4G時代より若干上がる一方で、データ容量当たりの通信料は下がることになります。

5Gには「通信の遅延時間が短い(低遅延)」という別の長所もあります。遅延時間とは通信ネットワークの反応時間のことで、これが短いほど通信系のアプリがサクサク快適に動くようになります。特に、その恩恵を受けるのはゲームとみられています。これまで、スマホ・ゲームは誰でも手軽に遊べる簡易型が主流でしたが、今後は豪華なグラフィクスを満載したアドベンチャー・ゲームなど、本格的タイトルがスマホやタブレットなどからも遊べると期待されています。

これは、インターネットでストリーミング配信される「クラウド型」として提供されます。4G時代のクラウド型ゲームは、通信遅延の問題からボタンを押すタイミングと動きにズレが生じるなど不人気でした。これに対し低遅延の5Gでは、そのような問題が解決され、もっと快適に遊べるようになりそうです。その先にあるのが「VR(仮想現実)」や「AR(拡張現実)」などの次世代アプリです。高精細CGで作り出した3D空間に没入したり、現実風景にサイバー空間の情報を重ねて表示したりする技術のことです。

元々、よりリアルなゲーム体験などを実現するために開発されましたが、最近は「製品の組み立て工場」や「コールセンター」の業務支援にも活用されるなど、ビジネス市場にも広がりを見せています。これはスマホに続く、5G時代の次世代端末にも影響してきます。

たとえば、アップルは数年以内に、VR/AR機能を搭載した「HMD(ヘッドマウント・ディスプレイ)」や「スマートグラス(眼鏡型端末)」などを発売するとみられます。フェイスブックは、眼鏡を通して見える風景などを音声操作で撮影し、これらの写真やビデオ映像をソーシャルメディアでシェアできるスマートグラスを開発中といわれます。グーグルやアマゾンも同様の動きを見せるなど、いわゆるGAFAに代表される巨大IT企業が今、これらVR/AR分野に注目しています。

5Gはまたロボット、ドローン、自動運転車など様々なモノが、インターネットにつながる「IoT(モノのインターネット)」社会を実現するとみられています。しかし、社会の隅々にまで浸透した、これら5G端末から企業や国家が私達の情報を吸い上げ、顔認識システムで常時監視するなど、プライバシー侵害も懸念されます。また、5Gネットワークに接続した自動車や航空機、ロボット、あるいは発電所や交通システムなど社会インフラがサイバー攻撃を受ければ、人命に関わる大惨事を引き起こす恐れもあります。

これら5Gがもたらす未来像と諸問題を、今から読者の皆さんとチェックしていきましょう。なお、本書はあくまで著者個人の見方や考えに基づくものであり、KDDI並びに同総合研究所の経営計画やIR情報、公式の研究成果などに依拠するものではありません。

令和2年(2020年)初春 小林雅一

小林 雅一 (著)
出版社 : 宝島社 (2020/1/28)、出典:出版社HP

Contents

まえがき

Chapter1 5Gとは何か? それは私達にとって何を意味するのか?
ついに実用化が始まる次世代移動通信技術「5G」
国際標準化団体が定めた5Gの性能
米国で検証された5Gの実力
5G電波の周波数帯と通信速度の関係
世界における5Gの展開
5G電波の割り当て結果から予想されること
当面のメリットは何か?
5Gのキラーアプリはクラウド型ゲーム
セルラー通信の原理とエッジ・コンピューティング
IoT社会の到来を促す
自動運転と5Gの関係
5Gの電波を柔軟に使う
乱立する5G基地局への反発

Chapter2 ポスト・スマホは何か? 5G端末と次世代ビジネスの行方
5Gが生み出す巨大なビジネス・チャンス
5G対応スマホの2020年販売台数を予想する
再び注目を浴びるVR(仮想現実)
ゲーム業界の思惑
フェイスブックもVRには苦戦
セカイカメラが示すARの難しさ
『ポケモンGO』大ヒットの理由
ブルーカラーの情報化
XRが実現する「時間と場所の制約を超えた働き方」
ポスト・アイフォーンは「XR対応のスマート・グラス」
グーグル・グラスの挫折を教訓に
日本のキャリアもXR技術に注力
5G時代に脚光を浴びる手術ロボット
手術ロボットの構造と仕組み
ロボット手術は本当に安全なのか?

Chapter3 次世代ハイテク覇権を巡る米中5G戦争
次世代通信インフラの主導権を狙う中国
米中のハイテク覇権争い
ファーウェイを巡る目まぐるしい動き
ファーウェイとは何か
標準化プロジェクトのトップ・ポジションを買い取る
諸外国に踏み絵を迫るトランプ政権
本当はどちらがスパイなのか
同盟諸国の反応は曖昧
叩かれても負けない不屈の企業
米国にとってファーウェイ問題が意味すること
米中ハイテク戦争の本質とは

Chapter4 AIと5Gによる監視社会とプライバシー、セキュリティ問題
中国で進行する国民監視社会の動き
最新テクノロジーで続々と容疑者を逮捕
監視ビジネスが一大ブームに
政府のプロパガンダが奏功
アマゾンの顔認識で窃盗犯を逮捕
一般市民への濫用を懸念するNGO
顔認証にかけたフェイスブックの執念
顔認証で「貴方は特別なお客様」
位置情報の精度が高まることの意味
IoT社会で脅かされるプライバシー
5Gで「セキュリティ」の持つ意味が変わる
5G通信網を国有化せよ
汚いネットワークが前提
5Gのセキュリティ・ホールとは
5Gセキュリティの政治的側面
新たな覇権を巡る国際競争の始まり

あとがき
参考文献

小林 雅一 (著)
出版社 : 宝島社 (2020/1/28)、出典:出版社HP