5Gでビジネスはどう変わるのか

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5Gが社会をどのように変えるのか

超高速、低遅延、多数同時接続のスペックばかりが注目される5Gが、本質的に社会をどう変えるのか、その可能性がわかりやすくまとまっています。当たり前のようにわかっていると思う事でも、この本のような具体的な解説があると、テクノロジーがもたらす変化、タイミング、ステークホルダーが明確になります。5Gの入門書としておすすめです。

クロサカ タツヤ (著)
出版社 : 日経BP (2019/11/14)、出典:出版社HP

はじめに

「5Gでビジネスはどう変わりますか?」「5Gのビジネスチャンスは何ですか?」筆者がコンサルタントとして日々さまざまな関係者と向かい合う中、ここ数年共通してよく聞かれる質問です。

5Gとは、次の世代(第5世代)の移動通信システムのことで、日本国内では2019年にプレサービスが開始され、2020年から本格的なサービス展開が始まります。5Gには超高速、低遅延、多数同時接続という技術的な特徴があり、これまでにないような新しいサービスが生まれるのではないか、企業にとって千載一遇のチャンスになるのではないかと期待も高まっています。それゆえ、5Gの普及に合わせて新しい事業開発を進めようと考える企業も増えています。新たなビジネスが生まれると予想される分野はゲーム、放送、住宅、医療、物流、自動車などと多岐にわたり、さまざまな産業で5Gの一大ムーブメントが巻き起ころうとしているのです。

しかし、超高速や低遅延といった技術的な特徴ばかりに目を向けてしまうと、5Gを使った事業開発はうまくいきません。5Gそのものは、現行の4G/LTEを高度化するアプローチで作られており、それだけにとらわれてしまうと単に4Gより高速な通信ができるだけ、となってしまうからです。実際に多くの方が、5Gに大きな期待を寄せながらも、「いつ」「どう」ビジネスが変わるのか分からないという状態に置かれています。ですから、筆者にも冒頭に挙げたような質問がよく投げかけられるのです。

それに続くのは、「5Gの具体的なユースケースは何か?」「スマートフォンはなくなるのか、なくならないのか?」という問いです。そしてこれは、一般のモバイルユーザーだけではなく、新しいビジネスチャンスを見込む企業の担当者に加え、通信事業者や政策当局といった5Gインフラの当事者自身からも、実はしばしば尋ねられます。本書では、こうした皆さんの問題意識を踏まえ、二つのことを明らかにしたいと思っています。一つは、5Gサービスが人間の社会生活にもたらす特徴や影響は何か。もう一つは、ビジネスとして5Gとどのように向かい合うべきか、です。

この二つの論点を、筆者がコンサルタントとして理解している、技術、標準化、また産業の動向を踏まえながら、技術的な説明はできるだけ簡潔にして、サービスイメージや産業動態の視点から説明を試みています。本書を読んでいただくと、モバイルユーザーの方は5Gならではのサービスやその用途が分かるようになり、企業でサービスを生み出す方々には大きなヒントを得ていただけると考えています。

クロサカ タツヤ (著)
出版社 : 日経BP (2019/11/14)、出典:出版社HP

本書の構成

1章では、5Gがもたらすインパクトについて、4Gとの違いや、事業開発の鍵となる特徴、そして5Gが実現する新しい社会のパラダイムについて解説しています。またその一環として、現時点で見えている市場予測や、その背景にある産業構造の変革の可能性についても触れています。

2章では、5Gの普及が始まった2019年を起点として、6Gの登場が予想される2030年までの12年間について、5Gの展開・普及に関する予想シナリオを構想しています。あくまで筆者の予想に基づくものではありますが、こうした年単位での普及タイムラインは、これまであまりなかったものではないかと思います。この普及タイムラインの中では、2020年後半ごろから5Gが「幻滅期」を迎えると予測しています。商用化が始まったばかりだからこそ、多くのユーザーが5Gに対して「期待外れ」という印象を抱くのではないか、ということです。しかし事業開発の視点に立脚すると、この幻滅期の過ごし方がその後の勝敗を決めることになるはずです。

3章では、5G時代に普及することが予想される新たなサービス分野をピックアップしていきます。それぞれ具体的なサービス内容を描き出すとともに、期待される主要なプレーヤーやステークホルダー、適切な参入時期について解説しています。ここでは、5GをはじめとしたIT(情報通信技術)側の視点だけでなく、高齢化など現時点で想定される日本社会の動態も折り込んで分析しています。

そして4章では、5Gを使って事業開発に取り組む企業に求められる心構えや、確実に理解しておかなければならない留意点を記しています。5Gそのものだけでなく、AIやビッグデータ解析、個人情報などのデータプライバシーという視点を含めて整理しました。

5Gの「G」は、10年を一つの区切りとしたジェネレーションを意味します。ここから始まる10年間で、これまでになかったような5Gサービスが花開くことで、私たちの生活は豊かになり、それを支えるビジネスこそが日本経済を活性化します。そして5Gは、単なる通信規格の世代交代ではなく、デジタル・トランスフォーメーションが本格化する起点にもなるでしょう。その影響は2030年以降の6G(あるいはさらにその次の世代)にも連綿と続いていきます。

逆に言えば、5Gサービスを考えるということは、これからの10年~20年間を私たちがどう過ごすか、という大きな問題を解くことでもあります。5Gは人間社会の在り方をも大きく変えていくきっかけとなり得るからです。本書を通じて、まもなく訪れる大きな社会変革と、そこから生まれるビジネスチャンスの可能性を感じていただければ幸いです。

クロサカ タツヤ (著)
出版社 : 日経BP (2019/11/14)、出典:出版社HP

Contents

はじめに
本書の構成

1章 5Gがもたらす本当のインパクト
5Gの本質は超高速通信だけにあらず
4Gと5Gは似て非なるもの
事業開発は4G時代より難しくなる
事業企画の鍵Ⅰ. 新たなマネタイズプラットフォーム
事業企画の鍵Ⅱ. ダイレクトなブロードパンド
事業企画の鍵Ⅲ. フルコネクテッド
「窓」がなくなり、サービスも変わる
ユーザーの固定概念から変えよう
5G市場の本命は「非スマートフォン」
Column 未来予想 :5Gは人の生死も分ける〜高血圧の講演者クロサカを救う技術
高血圧に倒れたクロサカさん編
5Gに救われたクロサカさん編
解説

2章 「普及タイムライン」で読み解く事業開発の最適期
5Gが完全に普及するまでの四段階
【黎明期+ピーク期】2017~2019年 準備が進む中「ゲーム&動画」に進化の兆し
【幻滅期】2020~2022年 モバイル利用より先に「屋内サービス」に変化
【啓蒙活動期】2023~2025年 少子高齢化社会の課題解決インフラに成長
【安定期】2026~2029年 社会全体をつなぐ「フルコネクテッド」が実現
Column 5G時代の通信キャリアに迫る三つの変化
自社インフラの所有からシェアリングへ
トラストアンカーからトラストマネジャーへ
自社囲い込みのサービスからレベニューシェアへ

3章 分野別「5G×新事業」の有望株
ゲーム配信 : ストリーミング&サブスクで新境地に
動画配信 : 「高精細」と「バラ売り」が新たな商機に
ライブ中継 : ファン心理に応えるインタラクティブ・ライブが台頭
テレビの再送信 : 本格的な「IP同時再送信」が始まる
ゲーミフィケーション : 各種データを駆使して買い物がエンタメ化
スマートシティ :5Gで本当の「公共活動の最適化」が進む
スマートハウス : 介護のニーズも汲んだ「安心センサー」に進化
スマートファクトリー : 「チョコ停・ドカ停」を減らす救世主に
スマートサプライチェーン : 輸送の最適化&ブランド力の向上に寄与
MaaS:交通のサービス化に絡むプレーヤーは多い
Column 新しい概念となる「ローカル5G」とは何か
Wi-Fiとの違い
ローカル5Gはなぜ期待されるのか
ローカル5Gが“化ける”ために必要なこと

4章 5Gビジネスを成功させる事業開発のコツ
前期の最重要課題は「幻滅期」の過ごし方
啓蒙活動期以降は社会の変化への対応が大事
事業開発の必要条件は「カスタマイズ指向」
5G時代のビジネスモデルとプライバシー
事業開発の重点Ⅰ. 体験設計
事業開発の重点Ⅱ. 行動科学
事業開発の重点Ⅲ. 信頼構築
顧客とのエンゲージメントが変わる
課金は「収益還元法」が主流に?
B2B2Xの関係性
垣根を越えることが最大の価値
5Gは待っていても来ない

おわりに

クロサカ タツヤ (著)
出版社 : 日経BP (2019/11/14)、出典:出版社HP