水泳選手のためのコンディショニングトレーニング 《基礎・上半身編》

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水泳の上半身のトレーニング方法を学ぶ

水泳選手向けに特化したストレッチ・トレーニング本の、基礎・上半身編です。本書は、実際トレーニングを行っている写真や、NG例の写真が掲載されているので視覚的にわかりやすく、より正しくストレッチを行うことができます。下半身・応用編との併読もおすすめです。

小泉 圭介 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2019/9/19)、出典:出版社HP

はじめに

水泳選手が陸上でトレーニングする重要性
スポーツのトレーニングでは、競技動作に基づいたトレーニングでなければトレーニング効果が期待できないという「特異性の原理」があるとされる。つまり、泳ぎが上手になるため、速く泳げるようになるためには、「水中」で「泳ぐ」練習をしなければならない。
そんなことは当たり前、と思うかもしれない。では、“泳ぐだけ”でよいのだろうか。水泳は、浮力が生じる水中で行われる。浮いた状態、つまり地上のように支点がない状態で前に進むという、人間の身体にとっては非日常的な環境で行うスポーツといえる。そして、そのような特殊な環境下では、かなりの上級者であっても、常に全身をまんべんなく動かして泳ぐことは、なかなか難しい。

泳いでいるだけでは、まんべんなく身体を動かせない
たとえば肩が柔らかい選手が肩の不調を訴える時、よくよく身体を見てみると、肩自体は柔らかいものの、胸郭――つまり肋骨のあたりは動きが悪い、ということがある。さらに、腰のあたりは動きすぎるくらい動いているというケースも少なくない。
肩と腰の動きが柔らかいと、その間にある胸郭の動きは小さくなりやすい。そうした状態で1日に何千メートルも泳いだら、それは肩に違和感も出るだろう。肩のストレスを分散するためには、肩だけでなく胸郭や肩甲骨をしっかり動かすことが重要だ。同時に、動きすぎている腰の部分は、しっかりと腹筋を使って自分で止めなければならない。そうしないと良い姿勢で泳ぐことはできないし、すぐ腰痛になってしまう。

セルフコンディショニングの重要性
そのような胸郭を動かすストレッチやエクササイズ、腹筋のトレーニングを、水中でしっかり行うことは難しい。実際、陸上で動かせない部分は、水中でも動かせない。よって水泳に関しては、泳ぎが上手になったり速くなるために、陸上でのトレーニングが必要ということになる。むしろ、水中で動かしにくい部分をしっかり動かせるようになるためには、陸上で動かせるようにしたほうが近道ともいえるわけだ。
こうしたストレッチやエクササイズなど、泳ぐための準備として行う必要があるものを、総称して「コンディショニング」と呼んでいる。いわば、泳ぐためのコンディションを整えることが、コンディショニングだ。
コンディショニングは、できる限り自分自身で行わなければならない。毎日毎日、いつもコーチやトレーナーが身体の状態を見てくれるわけではない。何より、スタート台に立って水に飛び込んだら、あとは自分1人で戦わなければならない。
レースの結果は自分の責任であり、人の責任にしてはならない。だからこそ、自分でコンディショニングを行う「セルフコンディショニング」が重要になる。そしてそれが、速いだけでなく強い選手を育てることにつながると考えている。
本書ではまず、セルフコンディショニングを理解するうえで必要な、基本的な身体の構造や使い方について説明し、次に水泳選手の身体的な特徴と基本的なストレッチを解説している。さらに上半身のトレーニングとして、胸郭の柔軟性や動かし方、ストローク動作において腕と腹筋を連動させるトレーニングを紹介している。
上半身を動かすうえで重要なのは、肩だけを動かすのではなく、根元の胸郭や肩甲骨をしっかり動かすことだ。さらに、末端の腕から動かすだけではなく、中枢の体幹から動かすという順番も身体に覚え込ませることがポイントになる。
本書では、スタンダードなものから水泳特有の動作につながるものまで、幅広く網羅する形でメニューを取り上げている。また、水泳の動作におけるさまざまな課題例を挙げ、その解決につなげるための考え方も紹介するよう心がけた。自分の泳ぎに関する課題は、自分で見つけ、自分で解決法を探さなければならない。
ここで紹介しているのは、新しい理論でも新発見でもない。速くなるため、うまくなるための近道はない。特に選手の皆さんには、『速い』だけでなく『強い」選手になれるよう、考えながら練習に取り組んでほしい。
本書が、いろいろなことに取り組み、自分なりのスタイルを築き上げるための参考になることを願ってやまない。

小泉 圭介 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2019/9/19)、出典:出版社HP

目次

はじめに
本書の使い方
第1章 概論 (水泳選手の特徴)
1 骨の仕組み、筋肉の仕組み
2 ローカル筋とグローバル筋 (Bergmark 1989)
3 胸腰筋膜
4 インナーユニットとアウターユニット (Vieeming 1995)
5 重心と浮心
6 ストリームラインと抵抗
01 美しいストリームライン
02 正しい「姿勢」
03 正しい前屈と後屈
04 片脚立ち
05 関節の柔軟性のチェック
06 筋肉の柔軟性のチェック
Column① 水泳選手の姿勢の特徴

第2章 水泳選手のセルフコンディショニン
07 ストレッチの意義と種類
08 広背筋のストレッチ
09 胸郭のストレッチ
10 首と肩のストレッチ
11 スリーパーストレッチ
12 大腿四頭筋のストレッチ [基本編】
13 大腿四頭筋のストレッチ 応用編] 14 脚の裏側のストレッチ
15 膝から下のストレッチ (前面)
16 殿筋群のストレッチ
17 殿筋群と広背筋のストレッチ
18 フルアークストレッチ
19 セルフケア① ポール
20 セルフケア② ポール&テニスボール
21 サスペンションストレッチ①
22 サスペンションストレッチ②
23 サスペンションストレッチ③
Column② 練習前にストレッチはすべきではない?

第3章 上半身のメカニズム(泳動作)
24肩周りの仕組みと動き
25 胸部の構造と動き
26 胸郭の運動
27下部胸郭を広げる
28 ハイエルボー
Column③ 「泳ぐ」という動作は、人間の動きとしてとても変わった動きである

第4章 上半身トレーニング 基礎編(胸郭・体幹)
29 トランクツイストストレッチ
30 胸椎伸展トレーニング①
31 胸椎伸展トレーニング②
32 背筋のトレーニング① 上体反らし
33 背筋のトレーニング② バランスボール
34 胸郭回旋トレーニング① アトレーニングとしてのトランクツイスト
35 胸郭回旋トレーニング② バランスボール
36 胸郭回旋トレーニング③ バランスボール
37 ラットプルダウン
38 懸垂
39 シーテッド・グッドモーニング
40 横向き体幹アーチ
41 腹筋トレーニング、その前に
42 「腹圧」を知ろう
43 シットアップ(上体起こし)
44 腹圧+片脚スイング
45 横向き両脚上げ(マーメイドエクササイズ)
46 肘立てサイドシットアップ
47 オーバーヘッドシットアップ
48 リバースシットアップ
49 壁クランチ
Column④ 腰が痛くならない腹筋運動とは?

第5章 上半身トレーニング 応用編(腕と体幹の連動)
50 フロントブリッジ① 基本姿勢
51 フロントブリッジ② 脚上げ
52 フロントブリッジ③ 腕上げ
53 フロントブリッジ④ 腕と脚上げ
54 フロントブリッジ⑤ 胸郭回旋
56 プッシュアップ
56 胸郭リフト
57 骨盤リフト
58 ローテーターカフ (回旋筋腱板)
59 膝立ちプルオーバー
60 ローラー腹筋
61 キャッチポジションでのスタビトレーニング① ロールアップ
62 キャッチポジションでのスタビトレーニング② サスペンションプル

著者紹介
おわりに
撮影協力:株式会社 Perform Better Japan

小泉 圭介 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2019/9/19)、出典:出版社HP

本書の使い方

本書では、水泳の競技力を向上させるためのストレッチやトレーニングの方法を、実演写真やイラストを用いてわかりやすく説明している。また単に方法を紹介するだけでなく、身体の構造や動き方の特徴、水泳で必要な要素も合わせて解説しており、競技における動作をイメージしながらメニューを理解することができる。なお、第1章では身体の仕組みに関する概論、第2章と第3章では主にストレッチをテーマに取り上げ、第4章と第5章ではトレーニング解説というように、段階的にステップアップしていく構成になっている。

写真解説
ストレッチ、トレーニングの姿勢や動きを、写真で丁寧に解説。さまざまな角度からポイントや注意点が示されており、説明文と合わせてイメージすることで、実際に行う時の正しいやり方やNG例を理解できる。

タイトルおよびテーマ
メニューの内容とテーマが一目でわかる

アドバイス
項目ごとに注意点や狙い、重視すべき点をまとめたアドバイスを掲載。取り組む際の参 考になる。

矢印および注意書き
→赤の矢印および新学=正しいやり方のポイント
→青の矢印および青字=間違ったやり方のポイント
— 点線=骨格を示すライン
> スイングを示す矢印
ねじれを示す矢印

小泉 圭介 (著)
出版社 : ベースボール・マガジン社 (2019/9/19)、出典:出版社HP