図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書

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日本農業の現状と将来がよくわかる

新型コロナウイルスの感染拡大は、外食需要の激減、人材不足、米相場の値崩れなど、農業にも少なくない影響を与えています。本書は、刻々と変わる状況を冷静に把握し、今後の点棒を保つための情報を可能な限り盛り込んでいます。農業の現状把握、主要産物の生産・消費・流通、環境へのリスク、海外進出の動きなどを紹介します。

窪田 新之助 (著), 山口 亮子 (著)
出版社 : 技術評論社 (2020/6/20)、出典:出版社HP

はじめに

新型コロナウイルスの感染の拡大は、農業にも少なくない影響を与えている。外食需要の激減、外国人技能実習生の入国が困難になったことに伴う人材不足、高止まりしていたコメ相場の値崩れなど。収入保険を始めとするセーフティネットの重要性は、かつてなく高まっている。「STAY HOME」と呼びかけられ、人々が職場と娯楽を離れて家に閉じこもったことで、生活の根幹をなす「食」への関心はむしろ高まったようだ。ただし、コメの常軌を逸した買い占め、消費者による種苗法改正への感情的な反対などが起き、よいことばかりではない。こうした不合 理な行動に、農業現場と消費者の距離の遠さをあらためて感じる。

農業の全体像を把握し、変化に備えるための知識を本書にまとめたつもりだ。農業の現状把握から始まって、構造調整や主要作物の生産・消費・流通、農業資材の業界の動向、環境へのリスク、スマート農業の現状、海外進出の動きなどを紹介する。

国内農業は農家の高齢化と離農が進み、その構造を大きく変えようとしている。本書はこれをことさら危機として煽る立場は取らない。刻々と変わる状況を冷静に把握し、今後の展望をもつための情報を可能な限り盛り込んだ。手垢のついた農業論にならないよう、2人の著者のこれまでの取材に基づき、構成した。また、各章に入りきらなかった農業のこぼれ話や論点を、コラムとして挿入している。

頭から読み進めてもいいし、関心のある章から読んでもらってもいい。巻末に索引を付しているので、気になる用語の解説から確認していくこともできる。2人の著者は、氷河期世代とミレニアル世代。圧倒的多数の高齢で零細な農家の保護を念頭に置いた農業言論界のスタンダードとは違う視点を、感じていただければ幸いだ。本書が農業への理解を深める一助になることを願ってやまない。

2020年6月 窪田新之助 山口 亮子

窪田 新之助 (著), 山口 亮子 (著)
出版社 : 技術評論社 (2020/6/20)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

Chapter 1 日本の農業はどこへ行くのか
01世界飲食産業という巨大市場にどう食い込めるか
緊急事態下における人手不足とスマート農業による省力化

02 経済効果抜群!やみくもに作業量の多い農業からの脱出
衛星とドローンを活用した可変施肥

03簡易で汎用的な技術が誕生する可能性あり
品種改良を加速させるニューバイオ

04技術をパッケージ化して国際展開する。
メイド・バイ・ジャパニーズ

05餌としての適性を見極めたデータ管理が可能に
牧草地の衛星データをAI 解析で草種判別

06小集団活動が変える現場
カイゼンが進む農業の現場
COLUMN1 ロボトラが走る日は来るのか

Chapter 2 日本の農業を知るための基礎知識
01農業衰退の主因はコメにある
減少する農業の総算出額

02全体の9%の農家が売上の73%を稼ぐ
日本の農家の実態

03かつてないほどの規模で進む離職
大量離農の時代

04造成しすぎた農地のなれの果て
耕作放棄地を問題視する必要はない

05収穫量、価格力ともに課題は多い
日本の農業技術は高いのか

06農業を生業としない組合員が増えていく
日本最大級の組織・JA

07 輸入野菜の加工品や冷凍野菜が好調
日本の野菜市場における輸入品の役割

08 ジュースなど加工品の落ち込みが響く
果実の輸入のすう勢
COLUMN2 農業は危険な職業

Chapter 3 主要作物の生産・消費・流通の最新動向
01必要なところに足りない状況が続く
コメの生産状況と消費動向

02用途に応じた品種の開発と生産が進む
商品としてのコメに求められる“付加価値”

03依然大きな比重を占めるブランド米の開発
相次ぐ新品種のデビューと収量の改善

04総額8兆円以上にものぼる一大政策
減反政策は廃止されたのか

05麦の9割は輸入
麦の生産・流通・消費

06秋まき品種で収量の10~15%増が期待できる
北海道の小麦農家が期待する「みのりのちから」

07実行に移すにあたっては慎重な検討が必要
園芸の振興はコメの減少分を補えるのか

08大規模な経営体が続々誕生
畜産業は規模拡大の流れ

09WAGYUと和牛、共存と棲み分け
海外で評価が高まる和牛

10 小売価格は安定、卸売価格は激しく変動
「物価の優等生」の卵の実際

11多様なサービスと商機が考えられる
花きの生産と需要

12厳しすぎる基準にメリットはあるのか
農産物検査の合理化

13 主要作物の生産・消費・流通の最新動向
施設園芸で成功するヒント
COLUMN3 ブランド米「つや姫」の陰

Chapter 4 生産性向上の鍵を握る資材とその業界の動き
01農業資材の進歩がもたらした食糧増産
農業資材と人口増加

02海外進出とリースの台頭
農機メーカー

03販売競争がはたらきにくい業界構造
農薬メーカー

04小規模事業者がひしめきあう
肥料メーカー

05厳しい状況にあり再編が続く
飼料メーカー

06環境ストレスから植物を守る新技術
農業資材の新区分・バイオスティミュラントとは

07生き残るためには輸出を伸ばすことが不可欠
種苗メーカー

08今後大手への集約が予想される
苗業界

09農家の生産コストを上げている農業資材
世界との農業資材価格の違い

10データ通信の相互接続性を担保する
ISOBUS

11農業分野での国際標準化の促進を目指す世界的なつながり
AgGateway Asia
COLUMN4 原料の枯渇が懸念される化学肥料

Chapter 5 変革する農業経営
01残る農家に土地が集まる
大規模化する農業経営体

02法人化すれば節税になることも
増え続ける農業法人

03 15haの壁をどう乗り越えるか
規模拡大の限界と突破

04 「農業で稼ぐ」を実現する
フード・バリュー・チェーンを意識した儲かる農業ビジネス

05大量離農の受け皿
フランチャイズ農業

06課題が山積し、経営が行き詰まる
集落営農の陥るジレンマ

07 集落営農を次世代へ引き継いでいくために
広域化と連携が集落営農の解

08加速する大規模化、株式会社化。
農地の集積

09 心理的ハードルが色濃く残る
農地の境界を超えるトランスボーダーファーミング

10自営を増やすのではなく雇用型を支援すべき
新規就農支援事業は増額すべきか

11 農業のユニバーサルデザイン
農福連携

12農家とアルバイターの互恵関係を築く
JAが主導する農家の人材確保

13 「最後の担い手」の重要性
拡大するJA出資型法人
COLUMN5 稲作を始める米穀店

Chapter 6 国の食糧戦略を示す農政
01国の食糧戦略を示す農政
自給率をめぐって迷走する食料・農業・農村基本計画

02公正な価格形成を実現するために
自由市場のないコメ

03 生産者に補給金が支払われる緩和策
野菜価格安定制度は必要か

04用途別にそれぞれ乳価がある
生乳の特殊な流通とプール計算

05広域をカバーする強力な組織
指定団体による生乳の需給調整

06 増羽しないと経営が厳しくなる
採卵養鶏の生産調整が大規模化に果たした役割

07類似した制度がいくつもあり見直しも必要か
農家のセーフティネット

08なぜ実態と違ってしまうのか
ゆがむ統計

09都道府県で優良な品種を育成するために
種子法廃止と民間育種

10国の食糧戦略を示す農政
改正農薬取締法
COLUMN 6 都市農業の価値と2022年問題

Chapter 7 流通の変化と展望
01卸売市場を経由するルートは右肩下がり
食品の流通ルート

02食品の新しい流通ルート
ネット販売やオーナー制度

03消費者ニーズに基づいた生産が可能に
激変する農業マーケット

04 データを使ったフード・バリュー・チェーンの構築
量より質でJAと連携するスタートアップ

05業界再編の端緒となるか
改正卸売市場法

06 ステークホルダーと連携を
卸売市場発の変革

07メーカーやショップとの直接取引
契約栽培の拡大

08健康という切り口から食品に新たな価値をもたらす
成長する機能性表示食品
COLUMN7 コメ先物取引で中国の後塵を拝する日本・

Chapter 8 農業と環境
01地球上の土壌の33%以上が劣化している
危機にさらされる土壌

02発生情報の確保と迅速な対応が求められる
日本国内に棲息する病害虫

03さまざまな技術を総合的に組み合わせる
環境に配慮した防除のあり方

04日本農業にとっての脅威になりうる
侵入病害虫

05農業の生産活動における適正な管理のための規格
GAP

06 たった1度の気温上昇が及ぼす多大な影響
気候変動による農業への打撃

07 新たなビジネスにつながる研究が盛んに行われる
化学肥料を減らす微生物

08化学農業、化学肥料に依存しない
冬水田んぼ

09 お互いがお互いに支え合い成り立つ
農業が自然環境に与える影響

10額面以上の深刻な影響も懸念される
あらためて問う鳥獣害対策
COLUMN 8 野生動物の解体処理施設を増やすべきなのか・

Chapter 9 スマート農業の可能性と課題
01 “賢い”農業を目指す!
スマート農業とは何か

02スマート農業の象徴ともいうべき新技術
「GPSガイダンスシステム」と「自動操舵装置」

03質の良いビッグデータは利益を生み出す
スマート農業の鍵を握るデータのありか

04収量と品質のデータを活用して上昇スパイラルに
農業におけるPDCA

05創意工夫で最新テクノロジーを活用
メーカーに依存しないスマート農業化

06省力化はもちろんウシの状態まで分析可
搾乳ロボットの偉大な力

07人工衛星で収穫の適期を割り出す
人工衛星と農業

08住み続けようと思ってもらえる農村環境を目指す
健康までカバーする岩見沢市の農業戦略
COLUMN9 東京・新宿で広がる内藤とうがらし

Chapter 10 世界における日本農業の戦略
01農林水産物輸出額の目標は1兆円
急成長する世界の食市場と日本の輸出力の実態

02農業と農村が果たすべき新たな役割
観光資源としての農村

03 優れた苗を提供し、経営を発展させる
アジアに進出する苗ビジネス

04 海外への無断流出の蛇口を閉める
強まる種苗の保護の動き

05全国で増えるてん茶の生産
世界的抹茶ブームが茶産地の景色を変える

06 小麦に取られた市場を取り返すチャンス
コメの新たな商機・グルテンフリー

07遺伝資源の流出を阻止することが重要
日本の知財の流出を防げ

索引

窪田 新之助 (著), 山口 亮子 (著)
出版社 : 技術評論社 (2020/6/20)、出典:出版社HP