入門 国際経済学

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基本的な理論を徹底的に解説

この本は、国際経済学の国際貿易論と国際金融論に関する教科書です。グローバリゼーションが進行している現代では、重要となっている項目がいくつかあります。国際収支や貿易自由化・保護貿易政策、また、国際分業モデルや国際労働移動、為替など、様々な基本的な理論が取り上げられています。

大川 良文 (著)
出版社 : 中央経済社 (2019/10/12)、出典:出版社HP

はしがき

本書は、大学生および初学者向けの国際経済学に関する教科書です。米中貿易戦争や英国のEU離脱など、世界の経済情勢が不安定化する中で、国際経済学の必要性はますます高まっています。しかし、国際経済学はミクロ経済理論とマクロ経済理論を応用したものであることから、大学生たちにとってはハードルが高い講義のようであり、授業後のアンケートなどでは受講生から「内容が難しすぎる」との指摘を受けることも多くあります。そのため、今回の教科書作成に当たっては、国際経済学の教科書を作るというより、国際経済学が伝えようとするメッセージを読み手にわかってもらえるための本を作成しようということを心掛けました。

国際経済学は、ミクロ経済学を基礎として貿易や国際労働移動などを取り扱う国際貿易論と、主にマクロ経済学を基礎として国際投資や国際金融制度を取り扱う国際金融論の2つに大きく分かれます。国際貿易論のモデルは、その分析によって導かれる結論は「貿易自由化を行うと経済全体の利益が増加する」というように、シンプルなものが多いのですが、使用する分析手法である余剰分析や一般均衡分析を理解していることを前提として話が展開されているために、それらの分析手法が理解できず、その結果最終的に導かれる結論の内容も頭の中に入ってこないという学生を多く見かけてきました。このため、国際貿易と国際労働移動について取り上げた本教科書の第3章~第6章では、従来の教科書と比べて、余剰分析や一般均衡分析そのものの説明と、そのモデルから読み取れる経済的事象について、くどいほど詳しく解説することを心掛けました。

一方、国際金融論について取り上げた第2章と第7章・第8章では、国内外の資金の動きを示す国際収支と、すべての経済取引に関連し世界経済の動向に大きな影響を与える為替レートの仕組みについて、集中的に取り上げました。金融のグローバリゼーションが進んだ現在では、国際収支の動向や為替レートの変動が世界経済に与える影響は非常に大きなものとなっています。本教科書では、世界の経済情勢に関するニュースが理解しやすくなることを目的に、実際の世界経済の動向と関連付けながら、国際収支と為替レートの仕組みに関する基本的な考え方を伝えることを心掛けました。

基礎的な概念ほど説明に手間をかけたので、本教科書で取り上げた内容は、従来の国際経済学の教科書よりも狭い分野に限定されることになりました。国際経済学は、日々進化しており、次々と新しい理論や概念が生まれています。そのような最新理論も含む幅広い項目について取り上げた国際経済学の教科書も多く出版されています。しかし、取り扱う範囲は狭くても、基本的な理論について、くどいほど多くのページを割いた教科書も一冊ぐらいあってもいいのではないかと考えて、本教科書を作成しました。本書が読者の国際経済学に対する学びの第一歩としてお役に立てれば幸いです。

この教科書は、これまで大学で行った国際経済学の講義での経験をもとに作成いたしました。前任の滋賀大学、そして現在所属している京都産業大学で私の講義を受講してくれた多くの学生に感謝します。京都産業大学の学生である松本麻依さんと山崎紗代さんには、本書の草稿を丁寧に読んでいただき、学生の視点からのアドバイスをいただきました。中央経済社の酒井隆氏には、教科書初執筆の私に様々なアドバイスをしていただきました。これらの方々に心より感謝申し上げます。しかしながら、あり得べき誤認はすべて筆者の責任であることは言うまでもありません。

最後に、筆者の研究生活を常に支えてくれている妻の順子そして研究者となるまでの長い間、最大限の支援をしてきてくれた母・妙子そして本書の完成直前に永眠した父・征一郎に心より深く感謝いたします。

2019年9月
大川良文

大川 良文 (著)
出版社 : 中央経済社 (2019/10/12)、出典:出版社HP

目次

はしがき

第1章 国際経済学の世界
1-1 国際貿易の拡大
1-2 国際投資の拡大
1-3 国際労働移動の拡大
1-4 本書の内容

第2章 国際収支
2-1 国際収支統計と国際投資ポジション
2-2 グローバル・インバランス
2-3 経常収支と貯蓄投資バランス
2-4 国際収支発展段階説
2-5 日本と米国の国際収支を読み解く
●練習問題

第3章 貿易自由化と保護貿易政策 余剰分析
3-1 貿易自由化の歴史
3-2 貿易利益
3-3 輸入関税政策の経済効果
3-4 国内産業保護政策の比較
3-5 TPP交渉と日本の農産物に対する保護貿易政策
●練習問題

第4章 交易・特化の利益 一般均衡分析
4-1 一国全体の貿易構成
4-2 一般均衡分析の基礎
4-3 交易の利益
4-4 交易の利益と特化の利益
4-5 資源価格と交易条件の変化
●練習問題

第5章 国際分業モデル
5-1 貿易パターンの決定要因
5-2 リカード・モデル
5-3 ヘクシャー=オリーン・モデル
5-4 先進国と途上国間の貿易構造
●練習問題

第6章 国際労働移動
6-1 マグドゥーガル・モデルによる分析
6-2 外国人労働者が受入国にもたらす経済的影響
6-3 送出国における経済的影響
6-4 先進国における外国人労働者受入れ政策
6-5 日本における外国人労働者受入れ政策
●練習問題

第7章 為替レート
7-1 為替レートとは
7-2 為替レートの変動が経済に与える影響
7-3 為替レートの変動に影響を与える要因
●練習問題

第8章 為替相場制度と国際資本移動
8-1 為替相場制度の種類
8-2 国際通貨制度の歴史
8-3 為替レートに影響を与える政策
8-4 固定相場制度
8-5 変動相場制度
8-6 国際資本移動と経済危機
8-7 2000年代以降の国際資本移動の動向
●練習問題

練習問題解答
索引

大川 良文 (著)
出版社 : 中央経済社 (2019/10/12)、出典:出版社HP