「同一労働同一賃金」はやわかり (日経文庫)

【最新 – 同一労働同一賃金について学ぶためのおすすめ本 – 法律の解説から実務の対応まで】も確認する

企業実務の対応策について解説

本書は同一労働同一賃金をめぐる立法・裁判例、そして2018年の通常国会において成立した新報や、最新の最高裁判例をもとに、企業に求められる対応策を解説しています。同一労働同一賃金の法的問題と企業の実務対応策などを理解することで、議論が進む「働き方改革」を、より正しく知ることができます。

北岡 大介 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/7/25) 、出典:出版社HP

はじめに

2017年から政府が進める一連の働き方改革の中で最も難問であるのが、「同一労働同一賃金」の実現です。「同一労働同一賃金」は、西遊記における「天竺」のごとく、理想郷的なイメージを感じさせる言葉ですが、論者によっては「同一価値労働同一賃金」の意で用いたり、あるいは「均等待遇」「均衡待遇」として論じられるなど、極めて多義的であり、まずはその意味するものを明らかにする作業が必要不可欠です。また「理想郷」の問題にとどまるだけであればいざ知らず、空前の求人難の中、パート・有期契約社員等から同一労働同一賃金絡みの処遇等に関する不平・不満も顕著に増えており、各職場において、同一労働同一賃金問題が「今そこにある危機」となりつつあります。

そのような中、2018年6月に同一労働同一賃金をめぐって重要な最高裁判決が登場するとともに、働き方改革関連法が可決成立し、同一労働同一賃金関連法制の一層の整備が進められました。同法の施行は大企業については2020年4月、中小企業は2021年4月であり、急ピッチで法施策が進められる中、企業としても同法対応に向けた対策が急務といえます。しかし、「同一労働同一賃金」という理想郷に向かう道のりは遠く険しいものとなっています。

本書ではまず第1~3章において、多義的で判然としない「同一労働同一賃金」の「見える化」を目指していきます。第1章はいわゆる「同一価値労働同一賃金」と日本型雇用との相違性を明らかにした上で、日本型同一労働同一賃金の一つで、「等しき者は等しく」を定める「均等待遇」規定を取り上げ、解説します。次に第2章では革新的な日本型同一労働同一賃金法制と位置づけられる「均衡待遇」規定(異なる者にも処遇ごとのバランスを求めるもの)につき、最新の最高裁判決等を挙げながら、企業実務へのインパクトと法解釈内容等を解説します。さらに第3章では、2018年6月末に国会で可決成立した働き方改革関連法における同一労働同一賃金関連法の改正内容を、特に「均衡待遇規定の行政法化」の視点から解説します。

その上で、実務家にとって最も関心が高い企業実務の対応策につき、本書では第4章で近々に対応すべき法的課題と対応策を、そして第5章において、腰を据えて取り組むべき中長期的な法的課題と企業対応上の留意点を解説しています。

本書が労使双方の実務家にとって、同一労働同一賃金の実現という「天竺」までの良き道しるべとなれば幸いです。

2018年7月
北岡 大介

北岡 大介 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/7/25) 、出典:出版社HP

「同一労働同一賃金」はやわかり 目次

はじめに

第1章 同一労働同一賃金が求められる背景
1 同一価値労働同一賃金と日本型同一労働同一賃金
2 日本型同一労働同一賃金の萌芽――丸子警報器事件判決
3 均等待遇規定の展開
4 同一労働同一賃金強化の背景とは――非正規雇用の変容
5 今そこにある危機

第2章 均衡待遇規定の解釈と法的課題
1 労働契約法20条における均衡待遇規定とは
2 労働契約法20条の法解釈と最高裁判決

第3章 さらに「均衡」のとれた職場を求めて
1 働き方改革と同一労働同一賃金法制との関わり
2 改正パート・有期雇用法について
3 包括的な均衡待遇規定の見直し
4 説明責任の強化と行政ADR
5 同一労働同一賃金ガイドライン案とは

第4章 「今そこにある危機」への企業対応
1 第1歩としての「見える化」――誰がどの仕事をやっているのかを洗い出す
2 各種給付ごとの均衡待遇について
3 説明責任への対応
4 会社の相談体制・苦情処理機関整備の必要性

第5章 中長期的な対応
1 基本給・昇給・退職金などの均衡待遇に向けた対応
2 非正規社員の基本給・手当の見直しと助成金
3 限定正社員、正社員転換推進と無期転換請求
4 正社員の人事評価制度と運用の見直し
5 正社員の各種手当削減・本給見直しの動き
6 労使コミュニケーションの新たな姿

北岡 大介 (著)
出版社 : 日本経済新聞出版 (2018/7/25) 、出典:出版社HP