AIにできること、できないこと、ビジネス社会を生きていくための4つの力

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AIは何ができて、何ができないのか

2010年代後半のAIブームでは、革新的な技術により、従来のAIから大きく飛躍しました。その結果、AIは様々な場面で話題になり、認知度が高まりましたが、その一方でAIに対して、正しい理解がされていないことが数多くあります。本書は、一般的に理解されていない重要なポイントを技術的な話を使わずに解説しています。

藤本 浩司 (著), 柴原 一友 (著)
出版社 : 日本評論社 (2019/2/19)、出典:出版社HP

はじめに

今、私たちの身の回りはAIの話題で持ちきりといっていいでしょう。すでに、日常生活の中にも浸透してきています。そしてこれは日本だけの話ではなく、先進国、そして開発途上国でも同じようなことが起こっています。つまり、世界レベルの力強い技術革新の波なのです。
AIに関する新聞記事を見ない日はありません。我が家に帰れば、テレビのニュースや特集で取り上げられるのを目にしますし、インターネット上でもネットニュース、ブログ記事などにはAIの話題があふれかえっています。東京では毎日どこかで、AIについての講演会が開かれているくらいの白熱ぶりです。
そうした近年のAIブームを支えているのが、「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術です。この技術はAIの性能に革新を起こし、さまざまな優れたAIを世に送り出しています。最近では、「AIが人の仕事を奪う」というセンセーショナルな話も耳にするようになってきました。
こうした流れが加速している一方で、逆に「AIとはどんなものなの?」「AIは何ができて何ができないの?」といった重要な点がいまひとつよく分からない、という人もまた増えてきているのではないかと思っています。たとえば、「AIは理解していない」と言われても、本当かどうか疑問に思ったりしていませんか? ニュースを騒がせているAIの話を耳にしていると、とてもそうは思えないのだけれど…なんて考えたこともあるのではないでしょうか。
「AIとはどんなものか」といった実態は、熟練のAI研究者であれば理解しています。しかし、AIの基本的な知識を抜きにして説明しようとすると、どうしても断片的な表現になってしまいます。そのため、説明を聞いても結局いまひとつ良くわからなかった、という結果になりやすいわけです。
この本では、技術的な細かい話を使うことなく、「AIは何ができて、何ができないのか」を納得できるかたちで理解できるようになることを目指しています。こうしてAIの正体さえ捉えてしまえば、その活かし方も分かりますし、逆にAIにできないことを自分の仕事にしていくこともできるようになる、というわけです。
AIを会社に導入する流れになってきているけど、実際に何ができるのか良く分からなくて困っているビジネスマンや、AIに触れてみてはいるけれど、その実態がいまひとつつかめていないエンジニアや若手研究者、AIに仕事を奪われるというニュースを見て、子供の将来に不安を感じている方、AIに関わる職につきたいと考えている学生の方など、AIの実態について知りたいけれど、自分で専門書を調べるのは大変だと考えている方を対象として、この本は執筆されています。

本書では以下の三点を大きな特徴としています。

1. AIの本質を理解することで、AIにできること、できないことがつかめる
「AIは何ができて、何ができないのか」を納得できるようになるためには、AIの本質を理解することが重要です。そこで、前半(1章、2章)では、人間、正確には人間が持つ「知性」と比べて、AIには何が足りていないのかを明らかにすることで、「AIにできること、できないこと」を浮かび上がらせています。
本書では、AIの本質をつかむ上で重要な点だけに絞り、高度な知識は一切使わずに説明をしています。その結果、厳密さに欠ける面もあるでしょうが、「AIにできること、できないこと」がきっと納得できるようになるでしょう。さらに深く理解するために、今のニュースを賑わせているさまざまなAIがどうやって実現されているのかについても、「AIにできること、できないこと」という観点を踏まえながら、その中身を明らかにしていきます(3章)。

2. AIの本質を踏まえつつ、ビジネスへと活かすための要点が分かる
みなさんが気になるのは、AIがこの先、自分とどう関わってくるか、という点でしょう。AIは次第にビジネスへと深く浸透してきています。これは、世界的な流れとして起きているのです。AIを取り入れていかなければ時代に取り残される、そういった不安が強くなっているのも事実です。特にビジネスマンやエンジニア、そしてこれから社会に飛び込んでいく学生の方など、どうしてもAIと関わらざるを得ない方々は、その必要性をひしひしと感じているのではないでしょうか。
そこで本書では、AIをビジネスに活かす上で必要なことを説明します(4章)。ビジネスにおけるAIの事例紹介は世の中にたくさんあるのですが、本書では活かし方に注力しています。「AIにできること、できないこと」といったAIの本質を踏まえて説明することで、ビジネスに活用するための要点が正しくつかめるようにしています。

3. AIに仕事を奪われないために、人は何を身につけるべきかが分かる
みなさんがAIについて一番不安に思っていることは、AIに仕事を奪われないだろうか、という点でしょう。そこで最後に、未来の展望や、その過程で人間に求められることは何なのかについて触れます(5章)。AIを本質から理解できるようになると、「AIにできること、できないこと」の全体像が見えてきます。そうなれば話は簡単です。AIに仕事を奪われないためには、AIができないことを身につければいいのです。
自分がこれからどう進んでいけばいいのか、あるいは子どもにどんなことを学ばせていけばいいのか、という方向性がきっとみえてくるようになるでしょう。

ここで自己紹介のために、少しだけ著者の会社についてお話させてもらえればと思います。
私の会社、テンソル・コンサルティング株式会社は、今のAIブームが始まる前に設立されました。テンソル社の社員は、そのさらに前からAIに携わってきたAI研究者でおもに構成されています。単にAI研究をするだけではなく、「稼げる研究者集団」という合言葉を掲げて、古くからピジネスでAIを活用することに従事してきました。
テンソル社の取引先は、おもに銀行やクレジットカードなどといった金融業界が中心です。たとえば、日本初で唯一のクレジットカード国際ブランドである株式会社ジェーシービーなどは古くからの取引先となっています(本書では、読みやすさを優先して、会社名の敬称を省略して表記しています)。他にも、株式会社エムアイカードなどといった大手の企業と長くお付き合いしています。
こうして培ったAI技術はさまざまな業界へと展開しています。たとえば、伊藤忠商事株式会社のような商社系、LINE株式会社のようなSNSサービス系、三井化学株式会社のような化学系、全日本空輸株式会社(ANA)のような航空系、他にも保険業界や医療業界、EC・通販業界、アパレル業界などです。また、いくつかの大学と共同研究にも取り組んでいます。
さらには、AIの実態を知りたいという人のために、多種多様な業界の方を対象として50回以上、AIに関するセミナーを開催しています。その参加者からは、「説明が難しくなく、分かりやすかった」「自分で調べてもいまいち理解できなかったAIを捉えることができ、さらに自分で調べたくなった」といった好評を多くいただいています。
こうした幅広い分野でのビジネス・研究・講演の経験をもとに執筆した本書は、きっとみなさんのお役に立てると思っています。さてそれでは、AIの本質を理解するためのお話を始めたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。

藤本 浩司 (著), 柴原 一友 (著)
出版社 : 日本評論社 (2019/2/19)、出典:出版社HP

AIにできること、できないこと ビジネス社会を生きていくための4つの力 目次

はじめに

1章 そもそもAIとはなにか
世間で言われるAIとは?
AIの歴史
活躍するAI

2章 AIの実態
AIに知性はあるのか?
今のAIの作り方
AIにできること、できないこと
AIは理解しているのか?
コラム 新しい概念の獲得

3章 AIの中身
ディープラーニングの中身
活躍するAIの中身
AIに対する疑問
コラム 重なった画像の理解

4章 AIのビジネスでの活用
役立つAIの設計指針
ビジネス活用に必要な要素
AIと人間の間違え方の違い
データサイエンティストの重要性
ビジネスでの活用事例
コラム 人間の優れた技能

5章 未来
AI分野以外の動向
AIに仕事を奪われないためには
AIが人間を超えるまでには
AIが人間に置き換わった未来

あとがき
参考文献

藤本 浩司 (著), 柴原 一友 (著)
出版社 : 日本評論社 (2019/2/19)、出典:出版社HP