ベーシック・インカム―基本所得のある社会へ

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労働に関する考え方を見直す

本書は、労働に対する考え方を中心として、ベーシックインカム議論について考えていきます。労働について、根本的に考え方を見直すような内容となっています。ベーシックインカムに関する議論の外観を掴むのに適した入門書といえます。

ゲッツ・W. ヴェルナー (著), G¨otz W. Werner (原著) , 渡辺 一男 (翻訳)
出版社 : 現代書館 (2007/11/1) 、出典:出版社HP

目次

序言――私たちは転換点に立っているのだろうか?

第一章 ゲッツ・W・ヴェルナーの提言、および彼とのインタビュー
未来への基礎: ベーシック・インカム
つねに種を蒔くこと
月並みの改革ではなく、根本的な改革を
私たちの生活はパラダイス状態にある
労働をマニアック視することで、みんな病気になる
根本的に考えて、一歩一歩行動しなければならない

第二章 ベーシック・インカムの効果について――論考とインタビュー
不安の報酬
労働市場と社会保障政策の分離
賃金は非課税
租税改革とは新たな分配を学ぶこと
自由を可能にし、共同体を強化する

第三章 反応
異議と回答
読者からの手紙

[解題] ゲッツ・W・ヴェルナー著『ベーシック・インカム――基本所得のある社会へ』に寄せて
小沢修司

参考文献およびリンク
訳者あとがき

装幀 渡辺将史

凡例
一、本書はGötz W. Werner: Ein Grund für die Zukunft: das Grundeinkommen, Stuttgart 2006の全訳である。
一、原注は( )で示した。
一、訳者による注記は[ ]で示した。
一、読者の便宜を図るため、適時、解説も併記した。

ゲッツ・W. ヴェルナー (著), G¨otz W. Werner (原著) , 渡辺 一男 (翻訳)
出版社 : 現代書館 (2007/11/1) 、出典:出版社HP

序言――私たちは転換点に立っているのだろうか?

数千年にわたって、人間の大小の共同体の基本的な生活の糧は、奴隷の労働によって賄われていた。その後徐々に、奴隷ではない自由人への労働の委託に対しては、対価が支払われるようになっていった。その結果、人びとは労働対価によって自身と家族を多少なりとも養えるようになったのである。そして、組織的な分業と生産の産業化にともなって、生産性は予測しえなかったほどに上昇した。人間の手による労働は、その後も創意に富む人びとによってますます大規模に節約されつつある。もはや以前のように人間によって処理されねばならない仕事は多くはない。すでにだいぶ前から、経済学者や社会学者のなかでも先見の明のある人たちは、就労希望者全員に稼得労働を提供するという意味での完全雇用はもはや保証しえないことに注目している。しかしこの事実は、政党間にあっては、少なくとも公的には認知されておらず、またこの事実が社会生活の形成にいかなる結果をもたらすかについての認識も欠けている。

私たちは、労働能力を有する者すべてを完全に雇用するというのは近代工業国家における過去の現象であるという認識に立って、労働と所得の関係がいかに新たに秩序づけられうるかを考慮しなければならないであろう。

二〇〇四年一二月に、「デーエム・ドゥロゲリー・マルクト」〔全欧規模で展開されているドラッグストアのチェーン・ストア〕の創業者ゲッツ・ヴェルナーは生活マガジン『ア・テンポ』においてすべての人に対する無条件のベーシック・インカム〔ドイツ語ではGrundeinkommenで、「基本所得」とも訳せるが、以下ではベーシック・インカムと訳す。本書で出てくる「市民所得」も「基本所得」と同意である〕の導入に賛意を公表した。二〇〇五年四月には、先進的な企業家の経済マガジン『ブラント・アインス』に、ベーシック・インカム構想に関するゲッツ・ヴェルナーの詳細なインタビューが掲載されると、その後数ヵ月間に他の主導的な雑誌や新聞において種々のインタビューがあらわれた。雑誌『シュテルン』におけるインタビューもその一つである。

全員に無条件のベーシック・インカムを導入することによって、ドイツは世界でパイオニアの地位を占めることになるかもしれない。

私たちが社会的・歴史的な転換点に立っているというにはまだ早すぎる。しかし、ますます多くの人びとがベーシック・インカム構想を支持するならば、私たちは転換点にいくらか近づくことになる。

二〇〇六年七月、シュトゥットガルトにて、

ジャン=クロード・リン(出版者)

ゲッツ・W. ヴェルナー (著), G¨otz W. Werner (原著) , 渡辺 一男 (翻訳)
出版社 : 現代書館 (2007/11/1) 、出典:出版社HP