もういちど読む数研の高校地学

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地学現象を基礎から理解

数研出版の新課程用「地学基礎」「地学」の教科書をベースに1冊の書籍にまとめたもので、分野ごとにきちんと整理されています。カラフルな視覚的説明が多用されていて非常に分かりやすい構成になっています。

数研出版編集部 (編集)
出版社 : 数研出版 (2014/5/1)、出典:出版社HP

目次

第1編 地球の構成と内部のエネルギー
第1章 地球の形と重力・地磁気
1. 地球の形と重力
2.重力異常
3. 地球の磁気
第2章 地球の内部
1. 地球の内部構造
2. 地球内部の状態と構成物質
3.地殻熱流量

第2編 地球の活動
第1章 プレートテクトニクス
1. プレートテクトニクス成立の歴史
2. プレートテクトニクス
3. プルームテクトニクス
第2章 地震と火山
1. 地震
2. 火成活動
3. 火成岩
第3章 変成作用と造山運動
1.変成作用
2. 造山運動

第3編 地球の大気と海洋
第1章 大気の構造と運動
1. 大気の構造
2. 地球全体の熱収支
3. 大気の大循環
4. 大気中の対流と水蒸気の役割
5. 日本付近の気象の特徴
6. 世界の気象と気候
第2章 海洋と海水の運動
1. 海洋の構造
2.海洋の大循環
3. 海面の運動
第3章 大気と海洋の相互作用
1. 大気と海洋の相互作用
2.水や炭素の循環

第4編 地球表層の水の動き締
第1章 地表の変化
1. 岩石の風化
2. 砕屑粒子の運搬・堆積作用
第2章 地層の観察
1. 地層の形成と堆積岩
2. 地層の観察
3. 野外調査と地質図

第5編 地球の環境と生物の変遷
第1章 地球環境の変遷と生物の変遷
1. 地質時代の区分と化石
2. 地球の誕生
3. 古生物の変遷
4.地球環境の変遷
第2章 日本列島の成り立ち
1. 日本列島の地体構造
2.日本列島の生い立ち

第6編 宇宙の構造
第1章太陽系
1. 太陽系の天体
2. 地球の自転と公転
3. 惑星の運動
第2章 太陽
1. 太陽の表面
2. 太陽の活動
第3章 恒星の世界
1. 恒星の性質
2. 恒星の進化
3.星団
4.星間物質と星間雲
第4章 宇宙と銀河
1. 銀河系の構造
2. 銀河の世界
3. 宇宙観の発展

第7編地球の環境
第1章 環境と人間
1.環境と人間
2.地球環境問題
第2章 日本の自然環境
1. 日本の自然環境
2.日本の自然災害

本文資料
1. 地学に必要な予備知識
2. 地学のための数学の知識
3. 気象庁震度階級関連解説表
4. 天気図の記号
5. 惑星の諸量
6. 天球座標

索引

数研出版編集部 (編集)
出版社 : 数研出版 (2014/5/1)、出典:出版社HP

地学を学ぶにあたって

日本の惑星探査機「はやぶさ」は, 小惑星「イトカワ」に着陸し,地球を出発してから7年後の 2010年 6月,微粒子をもち帰った。人類 史上初めての、惑星・小惑星からのサンプル・リターンであった。 最大径 0.18 mmの,総計1500 個の微粒子ではあったが,粋を集めた研究によって,惑星や地球の形成に関して多くの新事実が明らかになりつつある。

その一つに、宇宙風化現象の解明がある。小惑星の衝突により飛び散った破片が再集積してできた「イトカワ」には、地球と違って大気も磁場もない。そのため、太陽風粒子や宇宙塵の継続的な衝突を受け、表面にある岩石の鉱物は、その表面に微小なクレーターがあいた り,非結晶化し表面剥離を起こしたりしている。「イトカワ」は、このような宇宙風化によって、100万年に10 cmの割合で細っており,現在,長径500mほどあるが、10億年後には消滅するとの計算もなされている。


このような事実がわかったのも, 科学技術の進歩とともに、地球や惑星,宇宙といった地学の対象になる事物の研究が連綿として続けられてきたからである。研究の発端やその解明へ向けての方法論の確立まで、遠い道のりがあったはずだ。21世紀初頭の今日、それらの一つの到達点が,小惑星「イトカワ」の形成史の解明であったといえる。

太古の昔から,人類は自然の中 で自然と向き合い、自然とともに, またある場合には,自然に立ち向かって生活してきた。自然に畏敬を抱いていたかもしれない。
人類の自然に関する知識は,かなり昔においても,分野によっては驚くほど正確なものであった。今から数千年も前にメソポタミアで, あるいは、約千年も前にそれとは独立にマヤで,正確な天文暦が作られていたといわれる。


農耕の始まりとともに、天体の運行から季節を読みとるために,また、宗教的儀式のために,天体観測によって暦が作られたのである。
人類の進歩は、私たちの生活や知識を非常に高めたことは事実である。特に、農業や医療を始め多くの科学技術の進歩のおかげで,人口は増え、寿命は飛躍的に伸びた。

人や物の流れ、情報の交換は量・速さともに増した。今や情報は瞬時に世界中に伝わる。
ところが,産業革命以降,人口の増加と生産の増大,生活水準の高度化に伴い、大気中の温室効果ガスの濃度が著しく増加し,それが海水準変動や異常気象など気候状態の変化を招いているのではないか,ともいわれている。また,こうした人為的な要因による森林伐採や汚染物質の排出が環境変化を招いている。
2011年3月に東日本を襲った巨大地震とそれに関係するさまざまな事象は,私たちの自然への知識や備え,理解がまだ不十分であったことを思い知らせた。
今,もし,近代都市のどれかが, ポンペイの遺跡のように瞬時にして埋まり,それが何百年,何千年 後に掘り起こされたとすると,発掘した人たちは、21世紀の人々はさぞかし高度な物質的生活を送っていたことだろう、と思うに違いない。私たちは過去を歴史として知っている有利さがある。しかし、正確な未来予測に関しては,すべての分野でなされているわけではない。


21 世紀を迎え,宇宙と地球と,地球上の生命の研究は,大いに進んだが,一方で、不十分さもわかってきた。
地学現象の理解と地学現象による災害への対策は,私たちの世界観 をも支配するようになっている。「地学」は,私たちの生きる場の知識を、宇宙と地球の起源と形成史を、環境の変化と生命の進化などの知識を授けてくれ、生きるために必要な情報を与えてくれる。しかし,未来をより正確に予測するにはどうしたらよいだろうか。「地学」の果たす役割や責任は,誠に大きいものがある。
皆さんは、地学のもつさまざまな内容,方法,考え方を、本書をもとに学んでほしい。皆さんの未来のために。

数研出版編集部 (編集)
出版社 : 数研出版 (2014/5/1)、出典:出版社HP