新しい高校地学の教科書―現代人のための高校理科 (ブルーバックス)

【最新 – 地学を学ぶためのおすすめ本 – 中学から大学の教養科目レベルまで】も確認する

科学的素養が身に付く1冊

本書は大変丁寧でわかり易い教科書です。特に学生時代終了から大分時間を空けてしまった社会人が、何かのきっかけでもう一度この分野の知識に触れてみたいと思った時、本書は大変よいガイド役になってくれます。適度に図表を織り込んだ流れのよい丁寧な記載は、多くの個所で納得感のあるを理解を促してくれます。

杵島 正洋 (著), 松本 直記 (著), 左巻 健男 (著)
出版社 : 講談社 (2006/2/21)、出典:出版社HP

・カバー装幀/芦澤泰偉・児崎雅淑
・カバーイラスト/山田博之
・本文デザイン/菅田みはる
・図版/さくら工芸社
・編集協力/下村坦・難波美帆

はじめに

もっと面白い、やりがいのある理科を!

地学、生物、化学、物理の4教科がそろったブルーバックス高校理科教科書シリーズは、すべての高校生に読んでもらいたい、学んでもらいたい理科の内容をまとめたものだ。理系だろうと、文系だろうと、だれもが学習してほしい内容を精選してある。
そして、本シリーズ4冊を読破することで、科学リテラシー(=現代社会で生きるために必須の科学的素養)が身につくことを目指している。本シリーズの特長を紹介しよう。

(1)内容の精選と丁寧な説明
高校理科の内容を羅列するのではなく、検定にとらわれずに「これだけは」という内容にしぼった。それらを丁寧に説明し、「読んでわかる」ことにこだわり抜いた。
(2)読んで面白い。「へぇ~、そうなんだ!」「なるほど、そういうことだったのか!」と随所で納得できる展開を心がけた。だから、読んでいて面白い。
(3)飽きさせない工夫クイズ・コラムなどを随所に配置し、最後まで楽しく読み通せる工夫をした。
(4)ハンディでいつでもどこでも読める持ち運びに便利なコンパクトサイズ。電車やバスの中でも気軽に読める。

本書『地学」編は、以上の特長に加え、さらに次の点にも留意した。
地学は地球と宇宙のしくみと成り立ちを考える学問である。対象は、地球そのものだったり、プレートや大陸だったり、太陽系の惑星だったり、輝く星や銀河や宇宙空間だったりする。私たちの日常生活では普段意識しないような大きな対象を具体的にイメージできるよう、身近なものに対比して解説したり、イラストを多数描き起こすなど、表現を工夫した。
一方、地震や火山活動、日々の気象の変化など、日常生活に密接する分野にも紙面を大きく割いた。また、地球温暖化やオゾンホール、資源の問題といった地球環境の諸問題にも迫っており、科学と社会との接点を重視した。「宇宙はもちろん、地球内部や深海にも、まだまだ未知の世界が広がっている。そして今日においても、次々と新発見のニュースが飛び込んでくる。本書にはできるだけ最新の情報を盛り込むようにした。また、主な学説についてはそれを提唱した人物像や社会背景にも触れ、学問の一番ホットな部分を感じられるようにした。
地学というと、原子から宇宙の果てまであらゆる対象を扱うため、博物学的な印象を持つ読者も多いだろう。しかし近年の科学の進歩に加え、各分野が垣根を越えて融合を進めたことにより、現在では系統的な地球科学・宇宙科学と呼べる学問に昇華している。本書ではこの系統性を重視して展開した。地学をこれから学ぼうとする人だけでなく、過去に学習した人にも新たな発見や驚きを体験してもらえると自負している。
本シリーズは、高校生の他に、こんな人たちにも読んで欲しい。

・少しでも科学的な素養を身につけたいと願う社会人
・地学、生物、化学、物理をもう一度きちんと学習したいと考える社会人
・地学・化学・物理を勉強せずに理工学部に入った、生物を勉強せずに医学部に入った等の大学生
・試験の問題は解けるのだが、ものごとの本質がよくわかっていないと感じる大学生

なお、このブルーバックス高校理科教科書シリーズは、ベストセラーとなった中学版『新しい科学の教科書I~III』(文一総合出版)と同様、有志が集い、教科書検定の枠にとらわれずに具体的な教科書づくりをした成果である。

最後に、本書の編集担当の堀越俊一氏には、原稿について忌憚のない意見をいただき、かつ執筆陣を鼓舞して完成に導いていただいた。ここに感謝申し上げる。

2006年2月20日
編者
杵島正洋
松本直記
左巻健男

杵島 正洋 (著), 松本 直記 (著), 左巻 健男 (著)
出版社 : 講談社 (2006/2/21)、出典:出版社HP

もくじ

はじめに

◆第1章地球の形と構造
1-1古代の人々の考えた地球
1-2地球はほんとうに球なのだろうか
1-3重力からわかること
1-4地球の内部には何がある?
1-5より詳しく地球内部を調べる

◆第2章地球をつくる岩石と鉱物
2-1元素・鉱物・そして岩石
2-2岩石をつくるプロセス:火成岩とマグマ
2-3堆積岩と変成岩:地球に特有の岩石

◆第3章地震・火山・プレートテクトニクス
3-1活動する地球
3-2地震と火山
3-3プレートテクトニクスと地殻変動
3-4マントルの対流

◆第4章変わりゆく地表の姿
4-1地表の景観を決めるもの
4-2過去の地球を読み解く

◆第5章地球と生命の進化
5-1地球の誕生と地球環境の変化
5-2生物の爆発的進化と陸上進出
5-3進化と絶滅、温暖化と寒冷化の歴史

◆第6章大気と水が織りなす気象
6-1私たちをとりまく大気
6-2太陽放射と大気の運動
6-3雲と雨、低気圧と高気圧
6-4日本の天気の移り変わり

◆第7章海洋がもたらす豊かな環境
7-1海のある惑星
7-2海水の振動
7-3海水の流れ
7-4海が抱える豊かな資源
7-5環境を安定なものにする海洋

◆第8章太陽系を構成する天体
8-1太陽系の発見
8-2惑星のすがた
8-3奇跡の星・地球
8-4母なる太陽
8-5第2の地球を探せ

◆第9章恒星と銀河、宇宙の広がり
9-1恒星の世界
9-2恒星の進化
9-3銀河
9-4宇宙の構造

編者・執筆者一覧
参考図書
さくいん

やってみよう
●重力加速度を測定する
●プレートの輪郭を描く

コラム
●コロンブスの航海を生んだプトレマイオスの誤り
●メートル法の制定
●指数の表し方
●宝石となる鉱物の条件
●生命圏を生んだ岩石とマグマ
●水が関与する鉱物
●灰に埋もれた日本列島
●水蒸気爆発
●標高のそろった山脈のできかた
●「太陽系誕生=46億年前」の根拠
●暗い太陽のパラドックス
●バージェス動物群と脊椎動物の祖先一
●大気中の酸素も「化石」?
●大気のない月面の温度環境
●オゾンホール
●春一番
●湿舌と雷
●台風の風と雨
●人体にある海の名残
●離岸流(リップカレント)に注意せよ
●エル・ニーニョ
●海水から金は取り出せないか
●夢のエネルギー資源〜メタンハイドレート~・
●海底熱水噴出孔周辺の特異な生態系
●ハレー彗星
●惑星っていったい何だ?
●エウロパに海が存在する?
●報道は正しいとは限らない
●スペクトル型と吸収線
●かに星雲のパルサー
●ニュートリノ天文学
●統合された謎の天体たち
●もっと広く、もっと奥へ
●アインシュタインと「望遠鏡になった男』

杵島 正洋 (著), 松本 直記 (著), 左巻 健男 (著)
出版社 : 講談社 (2006/2/21)、出典:出版社HP