行動分析学入門

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わかりやすい事例で解説

本書は、わかりやすい事例を交えながら行動分析学について解説した一冊です。入門とタイトルにある通り入門者も読むことができますが、専門的な内容が入っていたりボリュームもあるため、行動分析学をある程度学習された方や別の初学者向けの入門書を読んだ方におすすめです。

杉山 尚子 (著), 島宗理 (著), 佐藤方哉 (著), リチャード・W. マロット (著), アリア・E・マロット (著)
出版社 : 産業図書 (1998/3/30)、出典:出版社HP

行動分析学入門
杉山尚子 島宗理

読者の皆さまへ

十数年前のことだった。5月末、私は、国際行動分析学会(ABA)に出席するために、ミシガン州のディアボーンのホテルに滞在していた。すると、事務局長のシャロン・マイヤーズが、私のところにやって来て、こう言うのだ。サトウマサヤ(佐藤方哉)という日本人が、私に会いたがっていると言う。日本人?誰だって?何て名前だって?サトウマサヤ?知らないな。シャロンが言うには、その男は私の著書や論文を読んで、私に会いたがっているのだそうだ。

へえー、驚いたな。でも名誉なことじゃないか。私の書いたものなんか読む人がいるのか、しかも日本人で。
そういうわけで、私はその男に会ってみようと思った。私はアメリカ人だ。だから、もちろん、約束の時間に遅れたことは言うまでもない。それもひどく遅れたので、その男はとっくに寝てしまっていた。それでも私が部屋を訪ねると、起き上がって私を迎えてくれた。部屋には、その男だけでなく、日本から来た他の研究者や学生たちも集まっていた。私はそこに30分ほどいたが、お互い無口だから、ほとんどろくに話もせず、気まずい思いで顔を見合せるだけだった。次の日の夜に、恒例のバンケットが開かれた。我々は待ち合せて一緒のテーブルに着くことにした。この時ようやく、二言三言、言葉を交わした。その時初めてわかったことだが、サトウは、ABAが国際組織になった1979年から、毎年、年次大会に参加していたのだった。いつも他の日本人や学生を引きつれて。しかし、私は、これまでそんなことに少しも気がつかなかった。私だけではない。他のアメリカ人だってそうだろう。ある年などは、会期中に日本酒のパーティまで開いている。でも参加者はほとんどいなかったようだ。それでもサトゥは、仲間や学生をつれて、めげずに毎年ABAに参加していた。

翌年、サトウは、いつものように仲間や学生を引きつれてABAにやってきた。しかし、この年▽トゥの傍らにいた。この年もまた、我々はバンケットで同じテーブルに着いた。そして、1年前と同じように、二言三言、言葉を交わした。

それから1年後、私宛てに1枚の写真が送られてきた。驚いたことに、何と、サトウと例の女子学生とが、日本の伝統的な格式ある正装で臨んだ結婚式の写真ではないか。彼女が、スギヤマナオコ(杉山尚子)である。「何年かたって、マリアと私は、マサヤの招きに応じて日本を訪問する機会を得た。そして、滞在中に、いつものように二言三言、言葉を交わした。日本に着いた最初の日に、ハンサムで、熱意のある1人の男子学生を紹介された。この男は、サトウセンセイに指導を受けている慶應の修士課程の学生で、マリアと私の最新の共著論文を読んだのだという。そして、我がウェスタンミシガン大学(WMU)の博士課程に進み、私の指導を受けたいのだという。翌年、その若者はWMUにやって来て、3年間で応用行動分析の学位を取得した。私がそれまで指導したうちでも優秀で、最高の行動分析学的思考を身につけた学生の1人であり、今では、最も優秀で、最高の行動分析学的思考を身につけた仲間の1人となった。この青年がシマムネサトル(島宗理)で1994年になると、ナオコは、私がWMUで夏学期に行なう行動分析学の4週間のセミ日本各地の大学院生を送り込むプロジェクトに着手して、マサヤと共にカラマズーに。もちろん、2人は、それまで通り、ABAにも仲間や学生を誘って参加していた。そしてと私は、いつものように、二言三言、言葉を交わした。

昨年のABAの年次大会で、ある日本人の行動分析家が、「行動分析学を国際的に普及させとして顕彰された。そして、本年、その行動分析家はABAの会長に就任する。ABAの24年にもる歴史上初めて誕生した、アメリカ人以外の会長である。その行動分析家とは、言うまでもなく、サトウマサヤだ。そして、常に彼の傍らに寄り添っていた、かつての女子学生は、いまやARAの国際拡大委員会で副委員長の要職にある。
1988年に、マリアと私が日本を訪れた時、当時2人で執筆中だった、Elementary Principles of Behavior(EPB)の第2版(初版は、故Don Whaleyと私とで執筆した)の原稿をマサヤとナオコに献呈した。その際、我々は、出過ぎた申し出だとは思いつつ、この本の日本語版を書いてはどうかと打診してみたのである。すると2人は、まさに自分たちの方こそそれをお願いしてみようかと考えていたところだと、快諾してくれたではないか。

そして、日本語版は、EPBの単なる翻訳ではなく翻案にしたい、日本人読者のために新しい本として書き直したいというのが、2人の希望だった。EPBは、初版の時から、教科書というより小説のようなスタイルで書いていた。登場人物を名字ではなく名前で呼び、スラングを交えた会話題の表現を多用している。このスタイルは、高校生から大学院生に至るまで、学生たちからの評判はとても良かったが、日本語版の作成に際しては障害になる。だからこそ、マサヤとナオコは、翻訳ではなく翻案を思い立ったのだろう。日本の文化にあった日本人の登場人物や実例を新たに創作し、日本文化にあった言い回しやユーモアを盛り込み、さらには、EPBの記述を最新の分析に従って新しくし、補足し、修正したものを作ろうとしているようだった。

その上で、マサヤとナオコは、執筆陣にサトルを加えた。これは素晴らしい思いつきだった。サトルは私の下でEPBを勉強し、WMUの学部生に対して、EPBを使ったコースで教壇に立ったこともある。サトルはEPBに書かれた、アメリカ文化と米語会話表現のニュアンス、そしてもちろん、行動分析学のすべてを完璧に理解していたからである。EPBの改訂のために、有益な示唆を常に、重要な論点を指摘し続けてくれている。くれたほどである。事実、サトルとナオコは、今行なわれているEPB第4版の執筆に際しても、こうして生まれた本書は、したがって、単なるFPBの翻訳ではなく、異文化間のコミュニケションにおける1つの実験だと言ってよい。その実験に、マリアと私も参画できたことは、本当港に思う。特に、日本は、行動分析学の研究の量においてこそ本家アメリカに次ぐものの、 研究の質においては本家と肩を並べるまでの国だからである。

1998年1月19日
アメリカ合衆国ミシガン州カラマズーにて
Richard W. Malott

杉山 尚子 (著), 島宗理 (著), 佐藤方哉 (著), リチャード・W. マロット (著), アリア・E・マロット (著)
出版社 : 産業図書 (1998/3/30)、出典:出版社HP

目次

読者の皆さまへ
第1章
好子
第2章
好子出現による強化
第3章
嫌子消失による強化
第4章
嫌子出現による弱化
第5章
好子消失による弱化
第6章
消去と復帰
第7章
分化強化と分化弱化
第8章
シェイピング
第9章
強化スケジュール
第10章
生得性好子と生得性嫌子
第11章
特殊な確立操作
第12章
習得性好子と習得性嫌子
第13章
刺激弁別
第14章
刺激般化と概念形成
第15章
模倣
第16章
阻止による強化
第17章
阻止による弱化
第18章
並立随伴性
第19章
刺激反応連鎖と反応率随伴性
第20章
レスポンデント条件づけ
第21章
言語行動
第22章
強化モドキ
第23章
ルール支配行動の理論
第24章
ペイ・フォー・パフォーマンス
第25章
道徳と法による行動の制御
第26章
行動の維持
第27章
行動の転移
第28章
研究法
索引
あとがき

杉山 尚子 (著), 島宗理 (著), 佐藤方哉 (著), リチャード・W. マロット (著), アリア・E・マロット (著)
出版社 : 産業図書 (1998/3/30)、出典:出版社HP