サブスクリプションシフト DX時代の最強のビジネス戦略

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サブスクリプションをITと組み合わせる

本書は、サービスがビジネスの中心となりつつある状況でのサブスクリプションの活用について解説している本です。ITが生活を変革している現代では、様々な場面でのデジタル化が重視されます。その中で、サブスクリプションのビジネスモデルをどのように活用するかをこの本で解説しています。

荻島 浩司 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/14)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに

第1部 デジタルトランスフォーメーション(DX)への構想
第1章 DXとサービス化
実店舗をデジタル化するAmazon GO
サービス化するビジネス
IT産業が提供する価値の変化=「SaaS」

第2部 SaaS/サブスクリプションの価値
第2章 SaaS/サブスクリプションとは何か
SaaS/サブスクリプションが「すごい成長」をする仕組み
SaaS/サブスクリプションの三つの公式
高く仕入れて安く売れ
カスタマーサクセスのための「アジャイル開発」
課金方式としてのサブスクリプションは成長エンジン
はじめ投資家の理解は得られなかった
サブスクリプションと五つの勘定科目
「売上」が小さく見えるサブスクリプションの罠
2年目は売上の三角が四角になる
新規売上にフォーカスすれば全体が伸びる
サブスクリプションは先行優位のビジネスモデル
経営管理の難しさと参入障壁
サブスクリプションの「隠れた価値」
LTVこそが見えない資産であり、成長の源泉
解約率マイナスが理想の姿
セールスフォース・ドットコムの戦略からのヒント

第3章 SaaS/サブスクリプションのビジネス戦略
TeamSpiritを、どうやって創造したのか
ERPのフロントウェアとしてのポジショニング
SoR、SoEの時代
クラウドERPとのポジショニングの違い
《コラム》経産省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」

第3部 DX時代の働き方・生産性・創造性
第4章 なぜ「働き方改革」のためにDXが必要なのか
働き方改革を阻む4つのジレンマを解消するために
勤怠管理のジレンマ
経費精算のジレンマ
原価管理のジレンマ
決裁権限のジレンマ
内部統制に関わるジレンマを解決する

第5章 DX時代の生産性の方程式
日本の生産性が低いという現実
労働時間を直接時間と間接時間で考える
創造性のネック =間接業務を圧縮せよ
働き手の工数を削減する思想でシステム化する
創造的な仕事にするための3段階。手作業、仕組み化、パラダイム・チェンジ
成果主義と長時間労働の弊害
ビジネスモデルの改善は難しいのか

第6章 創造性とビジネスモデル
斧を研ぐ時間を創れ
上流に遡り仕事を再定義する
思考原則1 : 既存のカテゴリーを壊す
思考原則2 : クワドラント(4象限)で考える
思考原則3 : 高い目標を掲げギャップを埋める
目標実現ツールとしてのTeamSpirit
めざす姿を明確に記述して、タスクに落とし込む
業務効率化から、さらにその先をめざして
SaaSだからこそ、考えなければいけないこと

第4部 チームスピリットの軌跡
第7章 すべては起業後の出会いから学んだ―チームスピリットのストーリー
「やらされること」に反発していた
将来が見えずに選んだデザインの道
デザインの才能がないことに気づいた社会人1年目
誰もやっていないことを「やるしかなかった」
プログラマーとしても挫折。でもわずかに見えた光明
セミナーを成功させるために100万円の投資
パソコン通信をきっかけに起業への決意を固める
「やってはいけない」をやってしまった最初の起業
自分がやりたいことをやろうと1人で再起
プロデューサーとして、東芝のプロジェクトを担当
銀行のリスク量算出システムを開発
クラウドサービスとの衝撃的な出会い
セールスフォース・ドットコムからの想定外のオファー
「TeamSpirit」の前身となる「アッと@勤務」
勤怠管理と経費精算を一つのシステムに
働き方の見直しで受託をストップ
投資家探し
日本企業からの厳しい要件に対応して品質アップ
上場へ

おわりに
新しい価値をつくること
「直感」を信じる「勇気」を持つ
SaaS/サブスクリプションの世界を広げたい
SaaS/サブスクリプションは「明日を創っていくこと」

荻島 浩司 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/14)、出典:出版社HP

はじめに

DXによる激変の時代をチャンスに変えるために
今この時代、私たちは大きな変革期をむかえつつあります。それは産業や社会のさまざ まな分野で進行する デジタルトラ ン スフォーメーション(DX : Digital Transformation)の波によるものです。そしてこのDXの時代を牽引するのが、本書の テーマであるサブスクリプションのビジネスです。

DXとは、何でしょうか?
経済産業省の定義では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優 位性を確立すること」とあります。文書や手続きなどの一般的な業務のIT化からさらに進んで、ビジネスのあらゆる分野をIT化して業務を変革することだといえます。

しかし、こう言われてもなかなかピンとこないのではないでしょうか?
なぜなら、私たちはすでに「インターネット革命」「IT革命」という言葉と時代の変 化を体験しており、既視感をもっているからです。
ここで強調したいことは、「DX」は、単なる「デジタル化(デジタイズ)」ではないということ。手書きの文書がワープロ化され、アナログレコードがCD化され、インターネット配信されるといった単なる媒体やモノの変化ではないということです。

出版産業であれば、手書きの原稿のレイアウトやデザインがDTPになること、そこか らさらに進んで、電子書籍やインターネットによる書籍販売を行うことがデジタイズであるとすれば、DXとは、出版というビジネスが新たなメディア産業、あるいはまったく新しい産業として変化することといえます。
DXは、これまでのITやインターネット産業の世界にとどまらずに、全産業に影響を及ぼし、私たちの生活や社会のあり方そのものも変えていきます。産業においては、金融、 製造、流通・小売り、交通、医療、そして都市やエネルギーなどの社会基盤のあり方までが、「再定義」されることになります。

では、このようなDXの時代のビジネスやDXが世の中に与える衝撃を私たちはどこまで構想することができるでしょうか?
未来を予測することはできません。しかし、過去を振り返ることで変化のイメージを持つことは可能です。
ここで平成という時代を振り返ってみましょう。平成元年にはインターネットはまだ普及していませんでした。Windows95の発売が平成7年なので、平成元年はその7年前。その時代に日本企業は世界の中で圧倒的な存在感を示していました。ところが、その後の低迷と閉塞は御存知の通りです。パソコンやマルチメディアで世の中は大きく変わるだろうという予測はありましたが、その時代に、今日のGAFA(グーグル、アマゾン、 フェイスブック、アップル)などプラットフォーマーと呼ばれる企業の台頭は予測できま せんでした。

さらにこれからの10年に起きる変化は、平成の30年間の変化を上回るものになると想像 できます。ビジネスにおいてはAIやIoTそして5G通信といったデジタル技術によって生み出される膨大で多様なデータから、これまでにないビジネスモデルを展開する挑戦者が登場し、ゲームチェンジを起こしていくことでしょう。
こうした産業革命に匹敵する、激変する時代の波を乗り越えていくためには、過去の分 析から将来を予測して、少しずつ変化に順応するような今までのやり方は通用しなくなるでしょう。これからは過去とは非連続にいきなり明日をつくり出す、突然変異を生み出す ような力が求められます。そのために真の意味での「働き方改革」が求められます。

その意味での「働き方改革」とは、労務的な意味での制度の改革にとどまらず、個人や 組織が生産性を高め、創造性を発揮するための環境をつくり出す経営戦略です。創造性を 高めた結果として、画期的な製品やサービスや価値を生み出し、激変の時代に生き残ることが可能になります。

荻島 浩司 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/14)、出典:出版社HP

本書の目的

◎筆者と「チームスピリット」について

そして本書のタイトルの「サブスクリプションシフト」とは、こうしたDXの時代を牽引するビジネスという意味と、人々が創造的に働くための環境をサブスクリプションが実現するという意味をこめています。
本書が扱うサブスクリプションは、BBB型の「SaaS/サブスクリプション」が中心となります。すべての企業とそこで働く従業員の方々が、DXによって激変する世の中に対応し、新しいビジネスを創造することを願い、筆者が「TeamSpirit」という製品を生み育ててきた経験を踏まえて、新しいサービスやビジネスモデルの生み出し方について、紹介していきたいと考えます。あわせて、その前提となる「DX時代の創造的な働き方」についても、考察を試みています。

筆者は2018年8月に東証マザーズ市場に上場した株式会社チームスピリットという会社の創業者です。本書の中で、カタカナで表記される「チームスピリット」は筆者が創業した会社であり、アルファベットで表記される「TeamSpirit」は、そのチームスピリットが提供する製品の名称のことです。
「TeamSpirit」は、SaaS/サブスクリプション型のクラウドサービスで、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議など、いわゆる企業のバックオフィ ス業務といわれる、従業員が日々利用する機能を一つに結合し、企業の生産性向上や内部 統制の強化を支援する「働き方改革プラットフォーム」です。
読者の中にはSaaS/サブスクリプション型のクラウドサービスとDXがどう関係するのか疑問に思われる方もいらっしゃるかと思います。

IT業界には今まで、お客様の課題をシステムの要件として取りまとめ、個別のオーダーを受けてお客様専用の製品を開発する「受託開発型」と、お客様の共通のニーズに基づきメーカー側で汎用的な製品を開発し、そのソフトウェアを商品として売ることで代金を回収する「パッケージ提供型」の二種類のビジネスモデルがありました。

これに対して「SaaS/サブスクリプション型」とはクラウドというテクノロジーを利用し、ソフトウェア自体を商品として売るのではなく、そこから得られるベネフィット (恩恵)を商品として、利用期間に応じて定額で代金を回収する、まさにソフトウェアを サービスとして提供(SaaS : Software as a Service)する、まったく新しいビジネ スモデルです。

筆者はこの「新しいテクノロジーを利用し」「製品をサービスとして提供する」「新しいビジネスモデル」という三つの要素が、DXの要諦となる考え方だと捉えています。そのSaaS/サブスクリプション型のクラウドサービスをつくり出した経験から、DX時代の新しいビジネスを創造するヒントがご提供できるのではと考えました。
チームスピリットも創業当初は「受託開発型」の製造業的なビジネスを行っていました が、事業展開の中で「SaaS/サブスクリプション型」のサービス業的なビジネスに生 まれ変わりました。このDXの要諦となる三つの要素と、DX時代の企業に生まれ変わる (トランスフォームする)方法に関して、業界を問わず、分かりやすく解説しようという のが本書の目的です。

◎本書の構成について

本書は大きく分けて、「DXの解説」「SaaS/サブスクリプション のビジネスモデル」「DX時代の生産性と創造性」「チームスピリットの創業ストーリー」という四つの内容から構成されます。

第一部では、DXについて、DXの要諦となる三つの要素の視点から紹介するとともに、SaaS/サブスクリプションというビジネスモデルとの関係を考えます。

第二部では、SaaS/サブスクリプションがなぜ急成長するのかについて、三つの公式を使い、ビジネスモデルの経済的な側面から説明しようと思います。会計上はつかまえにくい「隠れた価値」やLTVという見えない資産からサブスクリプションを解説します。
第三部では、SaaS/サブスクリプションのプロダクトの作り方と、私たちがさらに 創造性を高めるためにはどうするべきかについて考察していきます。DXがもたらす働き 方の変化と次の時代の生産性と創造性について述べます。

第四部ではチームスピリットという会社が、SaaS/サブスクリプションのビジネスモデルにどのようにトランスフォームしたのか、どのように成長させたのかを紹介します。
今後、新しい事業を企画される方に、日本のスタートアップ企業である私たちの経験を通じて、なるべく実践的な方法論をお伝えできればと思います。

本書を通じて、読者がこれからやってくるDXの時代を機会として捉え、自らのビジネスに活かしていただければ、これほど嬉しいことはありません。
なお本書は、筆者の個人の主観が強く反映された内容となっています。本書の内容は会社としてのチームスピリットの意見を代表しているわけではありませんので、その点をご理解、ご了承いただければと思います。

荻島 浩司 (著)
出版社 : 翔泳社 (2020/1/14)、出典:出版社HP